2016年05月07日
事例研究行政法第2版 第1部問題5 パチンコ店の営業許可をめぐる紛争
設問1
1 原告適格は処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)に認められる。法律上の利益を有する者とは、自己の権利または法律上保護された利益を必然的に侵害され、または侵害されるおそれのあるものをさし、当該法律が保護する利益が一般公益に吸収解消されることなく、個々の国民の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解される場合に法律上保護された利益が認められる。処分の相手方以外の者について法律上保護された利益の有無を判断する場合には、9条2項の要素を考慮する。
2(1)風営法の目的は善良で清浄な風俗環境の維持と青少年の保護である(風営法、以下「法」1条)。その目的を達成するため、同法は営業時間(13条)、照度(14条)、振動・騒音(15条)、広告等(16条)を制限している。また、風俗営業を営もうとするものは都道府県公安委員会の許可を受けなければならず(法3条)、都道府県知事は、営業所が良好な風俗環境を保全するため政令で定める基準に従った都道府県の条例で定める地域内にあるときは許可をすることができない(4条2項2号)。そして政令で定める基準は風営法の「関係法令」(9条2項)たる風営法施行令6条に規定があり、そこでは住宅集合地域が定められている(施行令6条1号イ)。条例で定める地域はA県の場合資料2の条例が定めている。この条例は自主条例ではなく、風営法に委任された委任条例であるから「関係法令」に当たる。条例3条は第1種地域を指定しており(条例3条1号)、第1種地域には都市計画法の第1種低層住宅専用地域が含まれる(条例別表、都市計画法9条1項参照)。そうすると、風営法は風俗営業所の近辺の住宅の生活環境を保護する趣旨を含むというべきである。
(2)そして、住宅の生活環境は、当該住宅が営業所に近ければ近いほど乱れる性質のものであり、法令に違反した営業所が建てられた場合の生活環境の被害は、生命・身体の利益ではないものの、当該営業所が存在する限り昼夜を問わず発生し続ける。
このように法の趣旨・目的並びに処分において考慮されるべき利益の内容・性質を考慮すると、法は風俗営業所の近辺の第1種地域に住宅を有し現に居住する住民ないし条例3条2号に該当する施設が良好な生活環境を害されないという具体的利益を、単に一般公益としてではなく、個別的利益として保護する趣旨を含むというべきである。
3 本件では、Qは本件パチンコ屋付近に居住する住民だが、商業地域内に居住する住民であるから、その良好な生活環境は保護されていない。一方、Rは第1種低層住宅専用地域に居住しており、その住居は本件パチンコ屋の駐車場から50メートルという近場にあるから、その良好な生活環境が条例3条1号によって個別的利益として保護されている。
4 したがって、Qには原告適格がないが、Rには原告適格がある。
設問2
Rは、本件パチンコ屋の駐車場の一部が第1種地域(条例3条1号)内にあるにもかかわらず本件許可をしたことが、法4条2項2号違反であることを主張できる。
一方、C小学校の教育環境が悪化するにも関わらず本件許可をしたことは、R自身がC小学校に通学中ないし通学予定の子を有していない以上、主張できない(行訴法10条1項)。
以上
1 原告適格は処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)に認められる。法律上の利益を有する者とは、自己の権利または法律上保護された利益を必然的に侵害され、または侵害されるおそれのあるものをさし、当該法律が保護する利益が一般公益に吸収解消されることなく、個々の国民の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解される場合に法律上保護された利益が認められる。処分の相手方以外の者について法律上保護された利益の有無を判断する場合には、9条2項の要素を考慮する。
2(1)風営法の目的は善良で清浄な風俗環境の維持と青少年の保護である(風営法、以下「法」1条)。その目的を達成するため、同法は営業時間(13条)、照度(14条)、振動・騒音(15条)、広告等(16条)を制限している。また、風俗営業を営もうとするものは都道府県公安委員会の許可を受けなければならず(法3条)、都道府県知事は、営業所が良好な風俗環境を保全するため政令で定める基準に従った都道府県の条例で定める地域内にあるときは許可をすることができない(4条2項2号)。そして政令で定める基準は風営法の「関係法令」(9条2項)たる風営法施行令6条に規定があり、そこでは住宅集合地域が定められている(施行令6条1号イ)。条例で定める地域はA県の場合資料2の条例が定めている。この条例は自主条例ではなく、風営法に委任された委任条例であるから「関係法令」に当たる。条例3条は第1種地域を指定しており(条例3条1号)、第1種地域には都市計画法の第1種低層住宅専用地域が含まれる(条例別表、都市計画法9条1項参照)。そうすると、風営法は風俗営業所の近辺の住宅の生活環境を保護する趣旨を含むというべきである。
(2)そして、住宅の生活環境は、当該住宅が営業所に近ければ近いほど乱れる性質のものであり、法令に違反した営業所が建てられた場合の生活環境の被害は、生命・身体の利益ではないものの、当該営業所が存在する限り昼夜を問わず発生し続ける。
このように法の趣旨・目的並びに処分において考慮されるべき利益の内容・性質を考慮すると、法は風俗営業所の近辺の第1種地域に住宅を有し現に居住する住民ないし条例3条2号に該当する施設が良好な生活環境を害されないという具体的利益を、単に一般公益としてではなく、個別的利益として保護する趣旨を含むというべきである。
3 本件では、Qは本件パチンコ屋付近に居住する住民だが、商業地域内に居住する住民であるから、その良好な生活環境は保護されていない。一方、Rは第1種低層住宅専用地域に居住しており、その住居は本件パチンコ屋の駐車場から50メートルという近場にあるから、その良好な生活環境が条例3条1号によって個別的利益として保護されている。
4 したがって、Qには原告適格がないが、Rには原告適格がある。
設問2
Rは、本件パチンコ屋の駐車場の一部が第1種地域(条例3条1号)内にあるにもかかわらず本件許可をしたことが、法4条2項2号違反であることを主張できる。
一方、C小学校の教育環境が悪化するにも関わらず本件許可をしたことは、R自身がC小学校に通学中ないし通学予定の子を有していない以上、主張できない(行訴法10条1項)。
以上
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