2016年05月07日
事例研究行政法第2版 第1部問題4 ラブホテル建築規制条例をめぐる紛争
設問1
1 処分(行訴法3条2項)とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものを言う。
この定義から、ある行為が処分に当たるための要件は@公権力性、A法効果性、B具体性(紛争の成熟性)と解する。
2 本件不同意は、乙市市長という行政庁の行為だから公権力性がある(@充足)。
Aについて、不同意の決定(条例3条3項)は、条例の規定上、それ自体が直接に何らかの法的効果を生じさせるものではない。建築基準法上も、市町村長の同意が建築確認の要件となるという規定はないから、建築主は、条例3条2項の同意を得なくても、建築確認申請をして建築確認を受け、建築を進めることは可能である。そうすると条例3条3項の不同意決定の法的性質は観念の通知であり、処分に当たらないとも思える(A不充足)。
そのうえ、不同意決定を無視して建築確認申請をし、建築確認を得て建築を進めた場合、条例により建築中止命令を出されるおそれがある(条例6条)。この中止命令は罰則で担保されているから(条例11条)、処分に当たることは疑いない。そうすると、B紛争の成熟性の観点からも、建築主には中止命令の取消訴訟を提起させれば足りるとも思える。
しかし、不同意の決定を争いたい建築主は、不同意決定を無視して建築を進め、中止命令を出されるまで争えないというのは迂遠であり、不同意決定が出た段階で不同意決定自体を争わせた方が紛争の実行的解決に資する。また、不同意決定にもかかわらず建築を進めたい建築主が不同意決定が出た段階で取りうる手段は、不同意決定を無視して建築確認申請をし、建築確認を得て建築を進めることしかない。また、乙市では過去、同様の事例でほぼ確実に中止命令が出されている。このような法の仕組みと運用を考慮すると、不同意決定が出た段階で、建築を進めたい建築主は、将来中止命令を受けるべき法的地位に立たされたと評価できる。そうすると、不同意決定の段階で実質的に中止命令という法的効果が発生し、紛争が成熟していると言いうる(AB充足)。
3 したがって、本件不同意は処分に当たる。
設問2
1 Aが甲県に対して抗告訴訟で争う場合、建築確認の義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が適切である。この場合には建築確認がなされない不作為の違法確認訴訟を併合提起する(同法37条の3第3項1号)。
2 甲県の対応の行政法上の評価
甲県は、Aに対し、行政指導をしていることを理由に建築確認を留保している。行政指導という事実行為により建築基準法6条4項の期間を経過して建築確認を留保することが適法かが問題となる。
この点は、行政指導を理由に建築確認を遅延させることは直ちに違法ではないとされている(判例)。しかし、申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず行政指導を継続し建築確認を留保することは、任意の協力を求めるという行政指導の性質(行手法32条1項参照)に反し、違法である(同33条)。甲県という地方公共団体の行政指導には行手法は適用されないが(行手法3条3項)、同内容の行政手続条例があるからこの議論が当てはまる。
本件ではAは出店計画を一切変更するつもりがないことをはっきりと言っているので、「行政指導に従う意思がない旨を表明」している。
したがって、Aに対してこれ以上の行政指導を続け、建築確認を留保することは違法である。 以上
1 処分(行訴法3条2項)とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものを言う。
この定義から、ある行為が処分に当たるための要件は@公権力性、A法効果性、B具体性(紛争の成熟性)と解する。
2 本件不同意は、乙市市長という行政庁の行為だから公権力性がある(@充足)。
Aについて、不同意の決定(条例3条3項)は、条例の規定上、それ自体が直接に何らかの法的効果を生じさせるものではない。建築基準法上も、市町村長の同意が建築確認の要件となるという規定はないから、建築主は、条例3条2項の同意を得なくても、建築確認申請をして建築確認を受け、建築を進めることは可能である。そうすると条例3条3項の不同意決定の法的性質は観念の通知であり、処分に当たらないとも思える(A不充足)。
そのうえ、不同意決定を無視して建築確認申請をし、建築確認を得て建築を進めた場合、条例により建築中止命令を出されるおそれがある(条例6条)。この中止命令は罰則で担保されているから(条例11条)、処分に当たることは疑いない。そうすると、B紛争の成熟性の観点からも、建築主には中止命令の取消訴訟を提起させれば足りるとも思える。
しかし、不同意の決定を争いたい建築主は、不同意決定を無視して建築を進め、中止命令を出されるまで争えないというのは迂遠であり、不同意決定が出た段階で不同意決定自体を争わせた方が紛争の実行的解決に資する。また、不同意決定にもかかわらず建築を進めたい建築主が不同意決定が出た段階で取りうる手段は、不同意決定を無視して建築確認申請をし、建築確認を得て建築を進めることしかない。また、乙市では過去、同様の事例でほぼ確実に中止命令が出されている。このような法の仕組みと運用を考慮すると、不同意決定が出た段階で、建築を進めたい建築主は、将来中止命令を受けるべき法的地位に立たされたと評価できる。そうすると、不同意決定の段階で実質的に中止命令という法的効果が発生し、紛争が成熟していると言いうる(AB充足)。
3 したがって、本件不同意は処分に当たる。
設問2
1 Aが甲県に対して抗告訴訟で争う場合、建築確認の義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が適切である。この場合には建築確認がなされない不作為の違法確認訴訟を併合提起する(同法37条の3第3項1号)。
2 甲県の対応の行政法上の評価
甲県は、Aに対し、行政指導をしていることを理由に建築確認を留保している。行政指導という事実行為により建築基準法6条4項の期間を経過して建築確認を留保することが適法かが問題となる。
この点は、行政指導を理由に建築確認を遅延させることは直ちに違法ではないとされている(判例)。しかし、申請者が行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず行政指導を継続し建築確認を留保することは、任意の協力を求めるという行政指導の性質(行手法32条1項参照)に反し、違法である(同33条)。甲県という地方公共団体の行政指導には行手法は適用されないが(行手法3条3項)、同内容の行政手続条例があるからこの議論が当てはまる。
本件ではAは出店計画を一切変更するつもりがないことをはっきりと言っているので、「行政指導に従う意思がない旨を表明」している。
したがって、Aに対してこれ以上の行政指導を続け、建築確認を留保することは違法である。 以上
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