2016年05月07日
事例研究行政法第2版 第1部問題10 自然公園の開発不許可をめぐる紛争
設問1−1
自然公園法上の特別地域の指定(同法20条1項)が「処分」(行訴法3条2項)に当たるかが問題となる。
処分とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。この定義から、ある行政行為が処分であることの要件は@公権力性、A法効果性、B個別具体性(紛争の成熟性)と解される。
本件は@Aは認められるが、問題はBである。特別地域に指定されると、その地域に土地を所有する者は20条3項各号の行為を行うのに、国定公園にあっては都道府県知事の許可が必要になる。このような制限は特別地域内に権利を有する者すべてに科せられる不利益であり、個別性がないといえる。また、許可を受ければ20条3項各号の行為ができるのであるから、不許可処分が出た場合に初めて不利益が具体化するものであり、具体性がないと言える。
したがって、Bの要件を満たさず、処分に当たらないため、Xは本件指定の取消訴訟を提起できない。
設問1−2
1 Xは、Dが20条3項本文の許可処分をすることの義務付訴訟(行訴法3条6項2号)と、不許可処分の取消訴訟(同3条2項)を併合提起(同37条の3第3項2号)すべきである。
2(1)違法性の主張としては、一般的に取消訴訟ではすべての違法を主張できるのが原則である(例外は行訴法10条1項、2項)。そのため、Xは本件不許可処分の違法性のみならず、環境大臣が行った国定公園の指定(自然公園法5条2項)の違法性を主張することができる。具体的には、国定公園の指定が関係者の所有権尊重義務(自然公園法4条)に違反するものであることや、財産権(憲法29条)を侵害するものであることを主張しうる。
(2)また、不許可処分自体の違法性として、Xが行おうとしている約80haの区域の立木の皆伐は、自然公園法20条3項2号の「木竹を伐採すること」に当たるが、同法施行規則11条14項基準に適合するため、不許可処分は裁量権濫用であることを主張しうる。
設問1−3
1 損失補償制度は、公益の実現のため個人の特別の犠牲によって生じた損失を平等原則(憲法14条)及び財産権(憲法29条)の趣旨に基づいて国民全体の負担とするための制度である。損失補償の要否は、@規制の対象が一般的か個別的か、A規制の程度が重大か、B規制の目的が消極的か積極的か、C規制の態様が財産権に内在する制約と言えるかという観点を総合的に考慮して決められる。
本件はXを対象としているから個別的である。そして、規制の程度は所有する土地の木を利用することができないのだからある程度の重要性はある。そして、規制の目的は自然保護、生物多様性の確保(自然公園法1条)という積極目的である。そして、侵害態様は所有する土地の木を換金することを禁止するものであり、財産権に内在する制約とは言えない。
したがって、Xの損失補償請求は認められる。
設問2
自然保護団体A及び地元の自然愛好家で「甲山の自然を守る会」会長Eに原告適格(行訴法9条1項)が認められるかが問題となる。
原告適格は処分によって法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者に認められ、法律上保護された利益があると言えるためには、法が当該利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むことが必要である。そのような趣旨を含むか否かは9条2項の事由を考慮して個別法規を判断する。
自然公園法は自然保護等を目的とし(1条)これ自体は個々人の利益を保護していないが、関係法令である同施行令11条14項4号は、「学術研究」「地域住民」と定めているから、学術研究者や地域住民の利益をも保護しているという議論も可能性はある。しかし、「学術研究」「地域住民」という文言はなお広範すぎる。しかし、ある私人への処分によって不特定多数の第三者が不利益を受ける場合に、その第三者のなかで誰も原告適格が認められないということになると、行政庁の処分を司法の場で争う機械がなくなってしまうから、法の目的と同じ目的を追求するために活動する団体には、政策的に原告適格を認めるべきという議論がある。
しかし、前述した現行法の原告適格の判断枠組みはそのような団体の原告適格を想定したものではなく、これを認めると、個別具体的な事例において原告適格を認められる団体と認められない団体の線引きが直ちに問題になると言わざるを得ず、現行法の解釈としては採用できない。
したがって、本件でも、A及びEの原告適格を認めることはできない。 以上
自然公園法上の特別地域の指定(同法20条1項)が「処分」(行訴法3条2項)に当たるかが問題となる。
処分とは、国又は公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。この定義から、ある行政行為が処分であることの要件は@公権力性、A法効果性、B個別具体性(紛争の成熟性)と解される。
本件は@Aは認められるが、問題はBである。特別地域に指定されると、その地域に土地を所有する者は20条3項各号の行為を行うのに、国定公園にあっては都道府県知事の許可が必要になる。このような制限は特別地域内に権利を有する者すべてに科せられる不利益であり、個別性がないといえる。また、許可を受ければ20条3項各号の行為ができるのであるから、不許可処分が出た場合に初めて不利益が具体化するものであり、具体性がないと言える。
したがって、Bの要件を満たさず、処分に当たらないため、Xは本件指定の取消訴訟を提起できない。
設問1−2
1 Xは、Dが20条3項本文の許可処分をすることの義務付訴訟(行訴法3条6項2号)と、不許可処分の取消訴訟(同3条2項)を併合提起(同37条の3第3項2号)すべきである。
2(1)違法性の主張としては、一般的に取消訴訟ではすべての違法を主張できるのが原則である(例外は行訴法10条1項、2項)。そのため、Xは本件不許可処分の違法性のみならず、環境大臣が行った国定公園の指定(自然公園法5条2項)の違法性を主張することができる。具体的には、国定公園の指定が関係者の所有権尊重義務(自然公園法4条)に違反するものであることや、財産権(憲法29条)を侵害するものであることを主張しうる。
(2)また、不許可処分自体の違法性として、Xが行おうとしている約80haの区域の立木の皆伐は、自然公園法20条3項2号の「木竹を伐採すること」に当たるが、同法施行規則11条14項基準に適合するため、不許可処分は裁量権濫用であることを主張しうる。
設問1−3
1 損失補償制度は、公益の実現のため個人の特別の犠牲によって生じた損失を平等原則(憲法14条)及び財産権(憲法29条)の趣旨に基づいて国民全体の負担とするための制度である。損失補償の要否は、@規制の対象が一般的か個別的か、A規制の程度が重大か、B規制の目的が消極的か積極的か、C規制の態様が財産権に内在する制約と言えるかという観点を総合的に考慮して決められる。
本件はXを対象としているから個別的である。そして、規制の程度は所有する土地の木を利用することができないのだからある程度の重要性はある。そして、規制の目的は自然保護、生物多様性の確保(自然公園法1条)という積極目的である。そして、侵害態様は所有する土地の木を換金することを禁止するものであり、財産権に内在する制約とは言えない。
したがって、Xの損失補償請求は認められる。
設問2
自然保護団体A及び地元の自然愛好家で「甲山の自然を守る会」会長Eに原告適格(行訴法9条1項)が認められるかが問題となる。
原告適格は処分によって法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者に認められ、法律上保護された利益があると言えるためには、法が当該利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むことが必要である。そのような趣旨を含むか否かは9条2項の事由を考慮して個別法規を判断する。
自然公園法は自然保護等を目的とし(1条)これ自体は個々人の利益を保護していないが、関係法令である同施行令11条14項4号は、「学術研究」「地域住民」と定めているから、学術研究者や地域住民の利益をも保護しているという議論も可能性はある。しかし、「学術研究」「地域住民」という文言はなお広範すぎる。しかし、ある私人への処分によって不特定多数の第三者が不利益を受ける場合に、その第三者のなかで誰も原告適格が認められないということになると、行政庁の処分を司法の場で争う機械がなくなってしまうから、法の目的と同じ目的を追求するために活動する団体には、政策的に原告適格を認めるべきという議論がある。
しかし、前述した現行法の原告適格の判断枠組みはそのような団体の原告適格を想定したものではなく、これを認めると、個別具体的な事例において原告適格を認められる団体と認められない団体の線引きが直ちに問題になると言わざるを得ず、現行法の解釈としては採用できない。
したがって、本件でも、A及びEの原告適格を認めることはできない。 以上
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