2016年05月07日
事例研究行政法第2版 第1部問題3 指定医師の指定取消しをめぐる紛争
設問1
Xは、甲県医師会会長を被告として、指定医師の指定の取消処分の取消訴訟を提起すべきである。
設問2
1 実体法上の違法事由(比例原則違反)
(1)Xの主張
Xは、たった2例と少なく、かねてよりのXの人工妊娠中絶反対の主張につじつまを合わせようとしたもので悪質でない人工妊娠中絶の届出義務違反により、指定医師を取消されるのは比例原則に違反すると主張すべきである。
比例原則とは、行政処分が行われるのは必要な場合でなければならないという必要性の原則と、必要な場合であっても目的と手段が比例していなければならないという過剰規制の禁止を内容としており、元来は警察権の行使の場合に用いられていたが、現在は権力的な行政行為一般に妥当するものと解されている。
Xは、かねてより人工妊娠中絶反対を公言していたのであり、そのこととつじつまをあわせるために問題とされた届け出義務違反を行ったのであり、悪質性がない。また、違反の回数も2例と少ない。加えて、人工妊娠中絶自体は母体保護法の要件を満たしている。そうすると、取消処分の必要性がない。仮に必要性を肯定したとしても、警告、停止(規則15条本文)等、打撃緩和措置を採り得るのであり、突然に取消すという手段は均衡を失している。
(2)反論及び結論
反論として、人工妊娠中絶の届出義務は指定医師としての最も基本的な義務の一つであり、これを履行しないのは重大な義務違反である。このような重大な義務違反が2例もあり、しかも過失によるものではなく故意によるものであるから、悪質性が大きい。したがって、比例原則に反しないというものが考えられる。
しかし、25条違反は罰金で処理されるのが法で予定されていることからすれば(32条)、25条違反は被告の主張するほどに重大な義務違反とは到底考えられない。Xに対してなんらの打撃緩和措置を採らずに指定を取り消すのは明らかに均衡を失している。
したがって、Xの主張は認められる。
2 手続上の違法事由
(1)聴聞手続の欠缺
指定医師の取消しは不利益処分(行手法2条4号)に当たるから、原則として聴聞手続(同13条1項)が必要である。しかし、本件では聴聞手続きがなされていないから、違法である。聴聞手続きがあれば本件のような明らかな比例原則違反の処分はなされなかったと考えられるから、かかる手続違背は取消事由となる。
これに対して、被告はXに事実関係を確かめたことを主張するかもしれないが、法定の様式(15条)にのっとっていないため、聴聞に当たらない。また、手続違反が取消事由にならないことも主張しうるが、聴聞手続きを欠くことは重大な違法であるから、認められない。
(2)理由の不備
指定取消しの通知書に書かれた理由は不備であり、違法(行手法14条)である。理由付記の趣旨は行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制し、不服申立ての便宜を与えることである。侵害処分に対しては、特段の事情のない限り、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを処分の相手方が記載自体から知り得ることが必要である。本件の記載は適用条文が書かれているが、適用の号が書かれていないため、Xは問題の人工妊娠中絶がどの違法事由として評価されたのか記載自体から知ることができない。
しかし、適用条文は記されているから、この程度で恣意の抑制と不服申し立ての便宜を図る趣旨は達成されている。その事実関係のあてはめは聴聞手続き等で示されれば足りると解され、号数までをする必要はない。
したがって、行手法14条違反は認められない。 以上
Xは、甲県医師会会長を被告として、指定医師の指定の取消処分の取消訴訟を提起すべきである。
設問2
1 実体法上の違法事由(比例原則違反)
(1)Xの主張
Xは、たった2例と少なく、かねてよりのXの人工妊娠中絶反対の主張につじつまを合わせようとしたもので悪質でない人工妊娠中絶の届出義務違反により、指定医師を取消されるのは比例原則に違反すると主張すべきである。
比例原則とは、行政処分が行われるのは必要な場合でなければならないという必要性の原則と、必要な場合であっても目的と手段が比例していなければならないという過剰規制の禁止を内容としており、元来は警察権の行使の場合に用いられていたが、現在は権力的な行政行為一般に妥当するものと解されている。
Xは、かねてより人工妊娠中絶反対を公言していたのであり、そのこととつじつまをあわせるために問題とされた届け出義務違反を行ったのであり、悪質性がない。また、違反の回数も2例と少ない。加えて、人工妊娠中絶自体は母体保護法の要件を満たしている。そうすると、取消処分の必要性がない。仮に必要性を肯定したとしても、警告、停止(規則15条本文)等、打撃緩和措置を採り得るのであり、突然に取消すという手段は均衡を失している。
(2)反論及び結論
反論として、人工妊娠中絶の届出義務は指定医師としての最も基本的な義務の一つであり、これを履行しないのは重大な義務違反である。このような重大な義務違反が2例もあり、しかも過失によるものではなく故意によるものであるから、悪質性が大きい。したがって、比例原則に反しないというものが考えられる。
しかし、25条違反は罰金で処理されるのが法で予定されていることからすれば(32条)、25条違反は被告の主張するほどに重大な義務違反とは到底考えられない。Xに対してなんらの打撃緩和措置を採らずに指定を取り消すのは明らかに均衡を失している。
したがって、Xの主張は認められる。
2 手続上の違法事由
(1)聴聞手続の欠缺
指定医師の取消しは不利益処分(行手法2条4号)に当たるから、原則として聴聞手続(同13条1項)が必要である。しかし、本件では聴聞手続きがなされていないから、違法である。聴聞手続きがあれば本件のような明らかな比例原則違反の処分はなされなかったと考えられるから、かかる手続違背は取消事由となる。
これに対して、被告はXに事実関係を確かめたことを主張するかもしれないが、法定の様式(15条)にのっとっていないため、聴聞に当たらない。また、手続違反が取消事由にならないことも主張しうるが、聴聞手続きを欠くことは重大な違法であるから、認められない。
(2)理由の不備
指定取消しの通知書に書かれた理由は不備であり、違法(行手法14条)である。理由付記の趣旨は行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制し、不服申立ての便宜を与えることである。侵害処分に対しては、特段の事情のない限り、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを処分の相手方が記載自体から知り得ることが必要である。本件の記載は適用条文が書かれているが、適用の号が書かれていないため、Xは問題の人工妊娠中絶がどの違法事由として評価されたのか記載自体から知ることができない。
しかし、適用条文は記されているから、この程度で恣意の抑制と不服申し立ての便宜を図る趣旨は達成されている。その事実関係のあてはめは聴聞手続き等で示されれば足りると解され、号数までをする必要はない。
したがって、行手法14条違反は認められない。 以上
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5036750
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック