2016年05月07日
事例研究行政法第2版 第1部問題2 予備校設置認可をめぐる紛争
設問1
1 取消事由のついて
Xは取消事由として行手法5条違反を主張できるか検討する。
同条は申請に対する処分に適用される(申請と処分の定義について行手法2条2号、3号)。Xが行った学校教育法(以下「法」)4条の認可の法的性質は、都道府県教育委員会が無認可の各種学校に教育中止命令をだすことができ(法136条2項)、その命令は罰則で担保されている(法143条)から、処分(行手法2条2号)である。そしてXの申請は、中止命令を出されずに教育をするという利益を付与する処分を求めるものであり、法4条より都道府県知事に応答義務が課せられていると解されるから、申請(行手法2条3号)に当たる。したがって、本件には行手法5条が適用される。
行手法5条は1項で審査基準を定めることを行政庁の義務として定め、同3項で審査基準の公表義務を定めている。本件でXはY県の担当部署に審査基準がないか問い合わせた際、ないと返答を受けたため、この返答が真実ならば5条1項違反であり、この返答が真実でなくても公表されていなかったと認められるから5条3項違反である。
もっとも、行手法違反があってもそれが取消事由となるかを検討しなければならない。手続法違反があっても、当該手続きを行ったとしても結果が変わらなければ取消事由とするほどの重大な瑕疵ではないと考えられるからである。しかし、「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」が考慮されることが知らされていれば、Xとしては定員の削減などの対策をとることが現に可能であったのだから、審査基準を知らされていたならば本件の不許可処分は出されなかった可能性がある。
したがって、本件の手続法違反は取消事由となる。
2 X勝訴の場合のY県知事の義務
取消判決は処分庁を拘束する(行訴法33条1項)。そのため、Y県知事は、審査基準を定め、又はすでに定められている審査基準を公表して、改めてXの申請に対する処分をしなければならない(同33条2項)。
許可処分が義務付けられるわけではない。Xは、勝訴判決により許可処分を確実に得たいならば許可の義務付け訴訟を併合提起すべきである(同3条6項2号、37条の3第3項2号)。
設問2
1 取消事由について
都道府県知事が各種学校を認可するための要件は法に規定がないから、都道府県知事の裁量事項であるが、まったくの自由裁量ではなく、法の目的に拘束される。そして、実際に都道府県知事の判断過程で当然尽くすべき考慮を尽くさず、または本来考慮すべきでない事情を考慮に入れもしくは過大に評価すべきでない事情を加重に評価した場合には、その判断過程に誤りがあり違法となると解する。
法4条の認可をするにあたり考慮すべき事情は同法には規定がないから省令を参照する。各種学校規定(以下「省令」)2条は、各種学校の水準の維持、向上を図る努力義務を定めている。ここでいう水準とは教育水準であることは明らかである。そうすると、省令の生徒数(4条)、入学資格(6条)、教員数(8条)の定めはいずれも一定の教育水準を確保する目的と解される。また、省令9条は保健衛生に言及しているから、教育水準維持とともに保健衛生確保の目的も考慮しうる。
本件で考慮されたのは「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」であり、教育水準維持とも保健衛生確保とも異なる。したがって、本件の都道府県知事の判断は本来尽くすべき教育水準維持や保健衛生確保の考慮を尽くさず、本来考慮すべきでない予備校間の適正配置を考慮に入れたものであり、判断過程に誤りがある。
したがって、本件処分は違法である。
2 Y県知事の義務について
取消判決は処分庁を拘束する(行訴法33条1項)。そのため、Y県知事は判決の趣旨に従い、予備校の適正配置を考慮せずに改めて申請に対する処分をしなければならない(同33条2項)。同条により、Xは改めて申請をする必要はない。
許可処分を得たい場合に義務付け訴訟を併合提起すべきことは設問1と同様である。 以上
1 取消事由のついて
Xは取消事由として行手法5条違反を主張できるか検討する。
同条は申請に対する処分に適用される(申請と処分の定義について行手法2条2号、3号)。Xが行った学校教育法(以下「法」)4条の認可の法的性質は、都道府県教育委員会が無認可の各種学校に教育中止命令をだすことができ(法136条2項)、その命令は罰則で担保されている(法143条)から、処分(行手法2条2号)である。そしてXの申請は、中止命令を出されずに教育をするという利益を付与する処分を求めるものであり、法4条より都道府県知事に応答義務が課せられていると解されるから、申請(行手法2条3号)に当たる。したがって、本件には行手法5条が適用される。
行手法5条は1項で審査基準を定めることを行政庁の義務として定め、同3項で審査基準の公表義務を定めている。本件でXはY県の担当部署に審査基準がないか問い合わせた際、ないと返答を受けたため、この返答が真実ならば5条1項違反であり、この返答が真実でなくても公表されていなかったと認められるから5条3項違反である。
もっとも、行手法違反があってもそれが取消事由となるかを検討しなければならない。手続法違反があっても、当該手続きを行ったとしても結果が変わらなければ取消事由とするほどの重大な瑕疵ではないと考えられるからである。しかし、「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」が考慮されることが知らされていれば、Xとしては定員の削減などの対策をとることが現に可能であったのだから、審査基準を知らされていたならば本件の不許可処分は出されなかった可能性がある。
したがって、本件の手続法違反は取消事由となる。
2 X勝訴の場合のY県知事の義務
取消判決は処分庁を拘束する(行訴法33条1項)。そのため、Y県知事は、審査基準を定め、又はすでに定められている審査基準を公表して、改めてXの申請に対する処分をしなければならない(同33条2項)。
許可処分が義務付けられるわけではない。Xは、勝訴判決により許可処分を確実に得たいならば許可の義務付け訴訟を併合提起すべきである(同3条6項2号、37条の3第3項2号)。
設問2
1 取消事由について
都道府県知事が各種学校を認可するための要件は法に規定がないから、都道府県知事の裁量事項であるが、まったくの自由裁量ではなく、法の目的に拘束される。そして、実際に都道府県知事の判断過程で当然尽くすべき考慮を尽くさず、または本来考慮すべきでない事情を考慮に入れもしくは過大に評価すべきでない事情を加重に評価した場合には、その判断過程に誤りがあり違法となると解する。
法4条の認可をするにあたり考慮すべき事情は同法には規定がないから省令を参照する。各種学校規定(以下「省令」)2条は、各種学校の水準の維持、向上を図る努力義務を定めている。ここでいう水準とは教育水準であることは明らかである。そうすると、省令の生徒数(4条)、入学資格(6条)、教員数(8条)の定めはいずれも一定の教育水準を確保する目的と解される。また、省令9条は保健衛生に言及しているから、教育水準維持とともに保健衛生確保の目的も考慮しうる。
本件で考慮されたのは「地元予備校間での過当競争を防ぐための適正配置」であり、教育水準維持とも保健衛生確保とも異なる。したがって、本件の都道府県知事の判断は本来尽くすべき教育水準維持や保健衛生確保の考慮を尽くさず、本来考慮すべきでない予備校間の適正配置を考慮に入れたものであり、判断過程に誤りがある。
したがって、本件処分は違法である。
2 Y県知事の義務について
取消判決は処分庁を拘束する(行訴法33条1項)。そのため、Y県知事は判決の趣旨に従い、予備校の適正配置を考慮せずに改めて申請に対する処分をしなければならない(同33条2項)。同条により、Xは改めて申請をする必要はない。
許可処分を得たい場合に義務付け訴訟を併合提起すべきことは設問1と同様である。 以上
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