2016年05月06日
行政法 予備試験平成26年度
設問1
1 本件不許可処分を、@占用許可申請を拒否する処分ではなく、A占有許可の撤回処分と理解することによって、まず授益的法律行為の撤回は制限されるという法理を導くことができる。すなわち、法治国家原理に基づく法的安定性及び既得権の保護を根拠として、合理的理由のない撤回は許されない。
さらに、授益的法律行為の撤回が侵害行為の性質を帯びるから法律の根拠が必要であるとまで主張することも考えられる。菊田医師事件では法律の根拠は不要とされたが、本件はCの側に落ち度があるわけではないから、同判例の射程外だと主張することも考えられる。もっともこの点については、授益的法律行為の撤回は法の仕組みによって与えられた地位がなくなるだけであり、本来の侵害行為とは異なるから、公益上の必要があれば法律の根拠は不要と解するのが正当である。
また、撤回できるとしてもCに特別の犠牲を強いるものであるから補償が必要であると主張することもできる。
2 行政手続法の観点からは、@だと申請に対する処分(第2章)の規定が適用されるだけだが、AだとよりCに有利な不利益処分(第3章)の規定が適用され、しかも本件は許認可等を取消す不利益処分(13条1項1号イ)に該当すると考えられるので、聴聞手続きが必要となるという違いがある。
3 行政事件訴訟法の観点からは、@だと許可の義務付け訴訟(3条6項2号)に拒否処分の取消訴訟(3条2項)を併合提起(37条の3第3項2号)し、仮の救済として仮の義務付け(37条の5)を求めることになるが、Aだと拒否処分の取消訴訟だけでよく、仮の救済としては執行停止(25条)を求めることになる。Aには、このように提起する訴訟が一つで済むという利点の他、仮の救済まで求める場合には、Cが主張立証する要件が軽い(37条の5、25条対照)という利点もある。
設問2(1)
1 @法39条2項に従って判断する法律論では、規定の文言からは行政庁に原則として許可が義務付けられる。この規定の趣旨は、漁港という行政財産をできるだけ活用することにより漁港の発展を図ることにあると解する。また、行政財産の管理の点では地方自治法の特別法とする趣旨もあると解する。
2 A地方自治法238条の4第7項に従って判断する法律論では、規定の文言からは不許可が原則である。この規定の趣旨は、行政財産が私人の便益を図る目的のそれでない場合には、私人の財産と同じようにこれを当然に利用しなければならないものではないという一般原則を確認するとともに、行政の中立性も企図されていると解する。
3 Aの法律論は、@で企図された行政財産の活用という立法目的を回避し、不許可を適法とする可能性が高まるという利点がある。
設問2(2)
1 本件において、A県側の法律論は、@法39条2項によって判断する場合は法1条の目的を促進する占用に限られる、ACによる本件敷地の占用は、法1条の目的を促進するものではないという二つの前提のもとに、上記Aの法律論を主張するものである。
2 前提@は認められる。ある法の適用範囲がその法目的に拘束されるのは当然だからである。
3 しかし、前提Aは認められない。本件の事実関係を見ると、本件公共空地付近の魚市場の廃止に伴いAは観光客を誘引する目的で本件事業を行っている。そうすると、本件の事情の下では観光客を誘引することが具体化された法1条の目的と解釈できる。そして、Cは観光客を対象にして店内の内装工事を行っているから、Cの占用は法1条の目的を促進するものである。
4 したがって、A県側の法律論は認められない。 以上
1 本件不許可処分を、@占用許可申請を拒否する処分ではなく、A占有許可の撤回処分と理解することによって、まず授益的法律行為の撤回は制限されるという法理を導くことができる。すなわち、法治国家原理に基づく法的安定性及び既得権の保護を根拠として、合理的理由のない撤回は許されない。
さらに、授益的法律行為の撤回が侵害行為の性質を帯びるから法律の根拠が必要であるとまで主張することも考えられる。菊田医師事件では法律の根拠は不要とされたが、本件はCの側に落ち度があるわけではないから、同判例の射程外だと主張することも考えられる。もっともこの点については、授益的法律行為の撤回は法の仕組みによって与えられた地位がなくなるだけであり、本来の侵害行為とは異なるから、公益上の必要があれば法律の根拠は不要と解するのが正当である。
また、撤回できるとしてもCに特別の犠牲を強いるものであるから補償が必要であると主張することもできる。
2 行政手続法の観点からは、@だと申請に対する処分(第2章)の規定が適用されるだけだが、AだとよりCに有利な不利益処分(第3章)の規定が適用され、しかも本件は許認可等を取消す不利益処分(13条1項1号イ)に該当すると考えられるので、聴聞手続きが必要となるという違いがある。
3 行政事件訴訟法の観点からは、@だと許可の義務付け訴訟(3条6項2号)に拒否処分の取消訴訟(3条2項)を併合提起(37条の3第3項2号)し、仮の救済として仮の義務付け(37条の5)を求めることになるが、Aだと拒否処分の取消訴訟だけでよく、仮の救済としては執行停止(25条)を求めることになる。Aには、このように提起する訴訟が一つで済むという利点の他、仮の救済まで求める場合には、Cが主張立証する要件が軽い(37条の5、25条対照)という利点もある。
設問2(1)
1 @法39条2項に従って判断する法律論では、規定の文言からは行政庁に原則として許可が義務付けられる。この規定の趣旨は、漁港という行政財産をできるだけ活用することにより漁港の発展を図ることにあると解する。また、行政財産の管理の点では地方自治法の特別法とする趣旨もあると解する。
2 A地方自治法238条の4第7項に従って判断する法律論では、規定の文言からは不許可が原則である。この規定の趣旨は、行政財産が私人の便益を図る目的のそれでない場合には、私人の財産と同じようにこれを当然に利用しなければならないものではないという一般原則を確認するとともに、行政の中立性も企図されていると解する。
3 Aの法律論は、@で企図された行政財産の活用という立法目的を回避し、不許可を適法とする可能性が高まるという利点がある。
設問2(2)
1 本件において、A県側の法律論は、@法39条2項によって判断する場合は法1条の目的を促進する占用に限られる、ACによる本件敷地の占用は、法1条の目的を促進するものではないという二つの前提のもとに、上記Aの法律論を主張するものである。
2 前提@は認められる。ある法の適用範囲がその法目的に拘束されるのは当然だからである。
3 しかし、前提Aは認められない。本件の事実関係を見ると、本件公共空地付近の魚市場の廃止に伴いAは観光客を誘引する目的で本件事業を行っている。そうすると、本件の事情の下では観光客を誘引することが具体化された法1条の目的と解釈できる。そして、Cは観光客を対象にして店内の内装工事を行っているから、Cの占用は法1条の目的を促進するものである。
4 したがって、A県側の法律論は認められない。 以上
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