2016年02月01日
民法 平成19年度第1問
設問1(1)AB間の登記に合致する贈与があった場合
1 XはBに対してT真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを求めたい。訴訟物は所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権である。
また、U甲土地の引渡しを受けていない場合には、それも求めたい。訴訟物は所有権に基づく返還請求権としての甲土地引渡請求権である。
また、VAB間の売買契約に対して詐害行為取消権(424条)を行使し、Aに対する移転登記請求をすることも考えられる。
さらに、W甲土地の引渡しを受けている場合には、Bからの明渡請求に対してAに対する債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として留置権(295条)を主張することも考えられるが、これはXのBに対する請求ではないため検討しない、
2(1)TUのいずれも要件は甲土地の@X所有AB占有(登記名義)である。
(2)これに対してBは、自己に登記名義があることから、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出す。BはXにとって甲土地の得喪変更に正当な利益を有する者であるから「第三者」(177条)にあたる。したがって、Bが背信的悪意者に当たることを主張立証しないかぎり、Xの請求は認められない。
3 Vの要件は@Aに対する被担保債権(所有権移転登記請求権)の取得、A@が詐害行為(AB間の売買契約)の前であること、BAの無資力、C財産権を目的とする法律行為であること、D詐害性を基礎づける事実である。これに対してBはEAを害することを知らなかったことを抗弁に出せる。
このように対抗要件で劣後する債権者も詐害行為取消権を行使できるのは177条の趣旨に反するようにも思えるが、両制度は趣旨が異なり、要件効果も異なるので問題ない。
本件ではCが問題となるが、移転登記請求権も債務不履行があれば損害賠償請求権という金銭債権に変化するため、詐害行為取消権行使時に損害賠償請求権に転化していればこれを満たす。Dについて、詐害性の判断は行為の客観面と主観面の総合判断であるが、贈与は客観的に詐害性が強いため、主観的害意が認定できない本件でも詐害行為に当たると解する。
したがって、BとEの要件を満たせば、Vは認められる。
設問1(2)AB間の登記が虚偽の登記であった場合
この場合はAB間で登記を移転させる意思表示は無効(94条1項)であるから、TUの請求が認められる。
設問2(1)AB間の登記に合致する贈与があった場合
1 請求は設問1のT〜Wと同じである。Wを検討しないことも同じである。
2 請求TUに対して、Cは自己が「第三者」(177条)にあたることを理由に対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出し、これはC自身が背信的悪意者であることをXが立証できないかぎり認められる。
なお、Bが背信的悪意者である場合も、無権利者ではないから、CはBから甲土地を承継する。
3 請求Vは、Cに対して甲土地所有権登記をAに移転させることの請求である。詐害行為取消権の効果は相対的なので、BはCに対して追奪担保責任(561条)を追及できない。
要件は設問1で検討した通りである。
設問2(2)AB間の登記が虚偽の登記だった場合
1 XはCに対してTUの請求をする。
2 これに対してCは、自己が94条2項の「第三者」に当たることを理由に、XとCが対抗関係に立ち、登記を備えたCが確定的に所有権を取得する(177条)という、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出すと考えられる。この抗弁が認められるか。
CがAB間の通謀について善意の場合には、この主張は認められる。94条2項は表見法理を定めた規定だから無過失も要件となるという見解もあるが、文言上要求されていないから不要と解する。
この場合、甲土地の所有権はどのようにCに移転するのか。第三者が現れたからと言ってAB間の贈与が有効になるわけではないので、A→B→Cと移転するという説は妥当でない。AからCに法定承継されると解する。したがって、甲土地はA→C、A→Xという二重譲渡がなされたことになり、CとXとは対抗関係である。
そしてAB間の虚偽表示について善意である以上、AX間の売買について背信的悪意ということはありえないから、Cは177条の第三者に当たる。
したがって、Cの抗弁は認められる。
3 Vの詐害行為取消しは認められるだろうか。これも設問1(1)3のBEが認められる限りで認められる。
なお、CがAB間の虚偽表示について善意であっても、それが債権者Xを害することを知っているということはあり得る(設問1(1)3のEの抗弁は直ちに認められるわけではない)。 以上
1 XはBに対してT真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを求めたい。訴訟物は所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権である。
また、U甲土地の引渡しを受けていない場合には、それも求めたい。訴訟物は所有権に基づく返還請求権としての甲土地引渡請求権である。
また、VAB間の売買契約に対して詐害行為取消権(424条)を行使し、Aに対する移転登記請求をすることも考えられる。
さらに、W甲土地の引渡しを受けている場合には、Bからの明渡請求に対してAに対する債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として留置権(295条)を主張することも考えられるが、これはXのBに対する請求ではないため検討しない、
2(1)TUのいずれも要件は甲土地の@X所有AB占有(登記名義)である。
(2)これに対してBは、自己に登記名義があることから、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出す。BはXにとって甲土地の得喪変更に正当な利益を有する者であるから「第三者」(177条)にあたる。したがって、Bが背信的悪意者に当たることを主張立証しないかぎり、Xの請求は認められない。
3 Vの要件は@Aに対する被担保債権(所有権移転登記請求権)の取得、A@が詐害行為(AB間の売買契約)の前であること、BAの無資力、C財産権を目的とする法律行為であること、D詐害性を基礎づける事実である。これに対してBはEAを害することを知らなかったことを抗弁に出せる。
このように対抗要件で劣後する債権者も詐害行為取消権を行使できるのは177条の趣旨に反するようにも思えるが、両制度は趣旨が異なり、要件効果も異なるので問題ない。
本件ではCが問題となるが、移転登記請求権も債務不履行があれば損害賠償請求権という金銭債権に変化するため、詐害行為取消権行使時に損害賠償請求権に転化していればこれを満たす。Dについて、詐害性の判断は行為の客観面と主観面の総合判断であるが、贈与は客観的に詐害性が強いため、主観的害意が認定できない本件でも詐害行為に当たると解する。
したがって、BとEの要件を満たせば、Vは認められる。
設問1(2)AB間の登記が虚偽の登記であった場合
この場合はAB間で登記を移転させる意思表示は無効(94条1項)であるから、TUの請求が認められる。
設問2(1)AB間の登記に合致する贈与があった場合
1 請求は設問1のT〜Wと同じである。Wを検討しないことも同じである。
2 請求TUに対して、Cは自己が「第三者」(177条)にあたることを理由に対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出し、これはC自身が背信的悪意者であることをXが立証できないかぎり認められる。
なお、Bが背信的悪意者である場合も、無権利者ではないから、CはBから甲土地を承継する。
3 請求Vは、Cに対して甲土地所有権登記をAに移転させることの請求である。詐害行為取消権の効果は相対的なので、BはCに対して追奪担保責任(561条)を追及できない。
要件は設問1で検討した通りである。
設問2(2)AB間の登記が虚偽の登記だった場合
1 XはCに対してTUの請求をする。
2 これに対してCは、自己が94条2項の「第三者」に当たることを理由に、XとCが対抗関係に立ち、登記を備えたCが確定的に所有権を取得する(177条)という、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出すと考えられる。この抗弁が認められるか。
CがAB間の通謀について善意の場合には、この主張は認められる。94条2項は表見法理を定めた規定だから無過失も要件となるという見解もあるが、文言上要求されていないから不要と解する。
この場合、甲土地の所有権はどのようにCに移転するのか。第三者が現れたからと言ってAB間の贈与が有効になるわけではないので、A→B→Cと移転するという説は妥当でない。AからCに法定承継されると解する。したがって、甲土地はA→C、A→Xという二重譲渡がなされたことになり、CとXとは対抗関係である。
そしてAB間の虚偽表示について善意である以上、AX間の売買について背信的悪意ということはありえないから、Cは177条の第三者に当たる。
したがって、Cの抗弁は認められる。
3 Vの詐害行為取消しは認められるだろうか。これも設問1(1)3のBEが認められる限りで認められる。
なお、CがAB間の虚偽表示について善意であっても、それが債権者Xを害することを知っているということはあり得る(設問1(1)3のEの抗弁は直ちに認められるわけではない)。 以上
にほんブログ村 | にほんブログ村 |
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/4685875
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック