2016年02月01日
民法 平成18年度第1問
設問1(1)
1 AのCに対する甲絵画の所有権に基づく返還請求が認められるか検討する。
2 請求原因は甲絵画の@A所有、AC占有である。
@について、取消によりAB間の売買契約が遡及的に無効となるから(121条本文)、Aの所有権は認められる。Aは明らかに認められる。
3 これに対してCは、甲絵画の@即時取得の抗弁(192条)、A対抗要件具備による所有権喪失の抗弁(178条)という2つの抗弁を出せる。
(1)@の構成について
@は、取消の遡及効を前提とした主張である。つまり、Aの取消によりBは遡及的に無権利者となる。ここで動産取引安全のための即時取得の問題と考えるのである。
192条から要件となり得るものを挙げると⑴取引行為、⑵⑴による占有取得、⑶平穏、公然、善意、⑷無過失、⑸前主の占有である。このうち⑶は186条1項(暫定真実の規定と解する)によって立証責任が転換されているためCが主張立証する必要はない。また、⑷は188条(法律上の権利推定の規定と解する)で推定されるため、やはりCが主張立証する必要はない。⑸は⑵の内容に含まれるから改めて検討する必要はない。したがってCが主張立証すべき要件は⑴⑵である。
本件では、⑴CはBとの売買契約により⑵甲絵画の占有を取得した。
したがって、Aの請求は認められない。
(2)Aの構成について
Aは、取消によって物権がBからAに承継されることを前提とした主張である。そのためAとCとは甲絵画を巡る二重譲渡の関係になり、対抗問題と考えるのである。
これによると要件は⑴BC売買契約、⑵⑴に基づく引渡し(178条)である。本件ではいずれも認められ、したがってAの請求は認められない。
(3)@とAの比較
以上みた通り@とAとでCが主張立証すべき事実はほぼ同じであるが、@だとAから占有の強暴、陰秘、悪意、過失の再抗弁を許すことになる。これに対してAではAは配信的悪意者の再抗弁しか出せないから、Aの方がCに有利である。
設問1(2)
1 取消の効果が遡及すると考えるか否かに関わらず、BはAの物をCに売ったということになるから、CはAに対し、追奪担保責任を追及することができる(560条、561条)。
2 まず、「売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないとき」にあたる事実としてCが甲をAに返還しなければならなかったことを主張立証することにより、解除ができる(561条前段)。解除によりBC間の売買契約は遡及的に無効となると解されるから、CはBに対し、原状回復請求権(545条本文)の行使として300万円と受領時からの利息(545条2項)の返還請求ができる。
3 次に、損害賠償請求ができる(561条後段)。損害賠償の範囲は信頼利益である。
これに対してBは、CがAB間の売買契約が取消されたことについて悪意だったことを主張立証することにより、561条後段を根拠とする損害賠償を免れることができる。
もっとも、売主の帰責事由によって権利移転ができない場合は561条後段で損害賠償できない場合でも415条により損害賠償できると解されているから、415条に基づく損害賠償をも免れるためにはBは帰責事由がないことをも主張立証する必要がある。415条による損害賠償が認められた場合、損害賠償の範囲は履行利益である。
設問2
1 AのCに対する所有権に基づく返還請求が認められるか検討する。
2 請求原因は甲絵画の@A所有、AC占有である。
3 Cの抗弁として、@192条類推、A95条1項但書の「第三者」該当という2つの構成が考えられる。
(1)@について
取消前にはBは甲絵画の所有権を有しているから、192条を直接適用することはできない。しかし、取消により法律関係が遡及的に消滅(121条本文)すると、Bも遡及的に無権利者となる。また、取消の前後で第三者の保護要件が異なるのは妥当でない。したがって、取消前の第三者にも192条を類推し、同条の要件の下で保護しようとする考え方である。
要件は設問1で検討した通りである。
(2)Aについて
95条1項但書は取消の遡及効(121条本文)によって害される者を保護する規定と解されるから、Cは同条の第三者に当たる。要件は、⑴BC間の売買契約、⑵⑴がAの取消前であることと考えられる。本件ではいずれも認められる。
これに対してAは、CがAB間の売買契約がBの詐欺によるものであることについての悪意を再抗弁とすることができる。条文上要求されていないから第三者保護要件として無過失は不要であり、したがってAはCの過失を主張立証することを再抗弁とすることはできない。対抗要件又は権利保護要件の要否も解釈上問題となり得るが、本件ではCが引渡しを受けているため、Aとしては論じる実益がない。
(3)@とAの比較
Aの構成だとAは抗弁として悪意しか主張立証できないが、@だと強暴、陰秘、悪意、過失を主張立証できるから、Aの方がCに有利である。 以上
1 AのCに対する甲絵画の所有権に基づく返還請求が認められるか検討する。
2 請求原因は甲絵画の@A所有、AC占有である。
@について、取消によりAB間の売買契約が遡及的に無効となるから(121条本文)、Aの所有権は認められる。Aは明らかに認められる。
3 これに対してCは、甲絵画の@即時取得の抗弁(192条)、A対抗要件具備による所有権喪失の抗弁(178条)という2つの抗弁を出せる。
(1)@の構成について
@は、取消の遡及効を前提とした主張である。つまり、Aの取消によりBは遡及的に無権利者となる。ここで動産取引安全のための即時取得の問題と考えるのである。
192条から要件となり得るものを挙げると⑴取引行為、⑵⑴による占有取得、⑶平穏、公然、善意、⑷無過失、⑸前主の占有である。このうち⑶は186条1項(暫定真実の規定と解する)によって立証責任が転換されているためCが主張立証する必要はない。また、⑷は188条(法律上の権利推定の規定と解する)で推定されるため、やはりCが主張立証する必要はない。⑸は⑵の内容に含まれるから改めて検討する必要はない。したがってCが主張立証すべき要件は⑴⑵である。
本件では、⑴CはBとの売買契約により⑵甲絵画の占有を取得した。
したがって、Aの請求は認められない。
(2)Aの構成について
Aは、取消によって物権がBからAに承継されることを前提とした主張である。そのためAとCとは甲絵画を巡る二重譲渡の関係になり、対抗問題と考えるのである。
これによると要件は⑴BC売買契約、⑵⑴に基づく引渡し(178条)である。本件ではいずれも認められ、したがってAの請求は認められない。
(3)@とAの比較
以上みた通り@とAとでCが主張立証すべき事実はほぼ同じであるが、@だとAから占有の強暴、陰秘、悪意、過失の再抗弁を許すことになる。これに対してAではAは配信的悪意者の再抗弁しか出せないから、Aの方がCに有利である。
設問1(2)
1 取消の効果が遡及すると考えるか否かに関わらず、BはAの物をCに売ったということになるから、CはAに対し、追奪担保責任を追及することができる(560条、561条)。
2 まず、「売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないとき」にあたる事実としてCが甲をAに返還しなければならなかったことを主張立証することにより、解除ができる(561条前段)。解除によりBC間の売買契約は遡及的に無効となると解されるから、CはBに対し、原状回復請求権(545条本文)の行使として300万円と受領時からの利息(545条2項)の返還請求ができる。
3 次に、損害賠償請求ができる(561条後段)。損害賠償の範囲は信頼利益である。
これに対してBは、CがAB間の売買契約が取消されたことについて悪意だったことを主張立証することにより、561条後段を根拠とする損害賠償を免れることができる。
もっとも、売主の帰責事由によって権利移転ができない場合は561条後段で損害賠償できない場合でも415条により損害賠償できると解されているから、415条に基づく損害賠償をも免れるためにはBは帰責事由がないことをも主張立証する必要がある。415条による損害賠償が認められた場合、損害賠償の範囲は履行利益である。
設問2
1 AのCに対する所有権に基づく返還請求が認められるか検討する。
2 請求原因は甲絵画の@A所有、AC占有である。
3 Cの抗弁として、@192条類推、A95条1項但書の「第三者」該当という2つの構成が考えられる。
(1)@について
取消前にはBは甲絵画の所有権を有しているから、192条を直接適用することはできない。しかし、取消により法律関係が遡及的に消滅(121条本文)すると、Bも遡及的に無権利者となる。また、取消の前後で第三者の保護要件が異なるのは妥当でない。したがって、取消前の第三者にも192条を類推し、同条の要件の下で保護しようとする考え方である。
要件は設問1で検討した通りである。
(2)Aについて
95条1項但書は取消の遡及効(121条本文)によって害される者を保護する規定と解されるから、Cは同条の第三者に当たる。要件は、⑴BC間の売買契約、⑵⑴がAの取消前であることと考えられる。本件ではいずれも認められる。
これに対してAは、CがAB間の売買契約がBの詐欺によるものであることについての悪意を再抗弁とすることができる。条文上要求されていないから第三者保護要件として無過失は不要であり、したがってAはCの過失を主張立証することを再抗弁とすることはできない。対抗要件又は権利保護要件の要否も解釈上問題となり得るが、本件ではCが引渡しを受けているため、Aとしては論じる実益がない。
(3)@とAの比較
Aの構成だとAは抗弁として悪意しか主張立証できないが、@だと強暴、陰秘、悪意、過失を主張立証できるから、Aの方がCに有利である。 以上
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