2016年02月01日
民法 平成17年度第2問
設問1
1 CがEに対して所有権に基づく返還請求権の行使として庭石の引渡しを請求できるか検討する。
(1)請求原因は@庭石のC所有、AE占有である。@の立証はAC間の売買契約で足りる。
Aは明らかに認められる。
(2)Eは対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出すと思われる。すなわち、CとDとは庭石の二重譲渡を受けた関係にあり、Dが先に引渡し(178条)を受けたからDが優先し、Dは確定的に所有者となった。EはDからの譲受人であるから、確定的な所有権を承継している。
(3)これに対してCは、Dが背信的悪意者であることを再抗弁とすることが考えられるが、認められるか。
178条は、意思表示のみによって生じる動産の物権変動(176条)は、引渡しをするまでは不完全であり、多重に譲渡があった場合には引渡しを先に受けた者が確定的に所有者になることを定めた規定と解する。同条は「第三者」(物権の得喪変更の引渡しの欠缺を主張する正当な利益を有する者)の主観的要件を定めていないが、自由競争が建前である以上、悪意であっても保護されるべきである。しかし、背信的悪意者の場合は自由競争の枠外の問題なので、保護されないと解する。要件は@悪意、A信義則(1条2項)違反である。
本件では、Dは@AC間の庭石売買について悪意である。そして、AもっぱらCに嫌がらせをする意図であるから信義則違反がある。よってDは背信的悪意者に当たる。
ここでCは、背信的悪意者であるDは庭石の所有権を承継しない(無権利者である)ことを前提として、無権利者からの譲受人であるEはまた無権利者であるから、「第三者」に当たらないと主張したい。
しかし、背信的悪意者は権利の承継を「第三者」に対抗できないだけであり、無権利者ではない。したがって、背信的悪意者からの譲受人がまた背信的悪意者でないかぎり、背信的悪意者の譲受人は「第三者」に当たる。
したがって、Eが背信的悪意者でないかぎり、CはEに庭石所有権を対抗できない。
2 以上より、CはEが背信的悪意者でないかぎり、所有権に基づく返還請求権の行使として庭石の引渡しを請求できない。
設問2
1 BはEに対して抵当権に基づく返還請求権の行使として本件庭石の引渡し請求ができるか検討する。
(1)そもそも抵当権に基づく物権的請求権が認められるか。
抵当権も物権であるから、物権的請求権を観念しうる。しかし、抵当権は物の価値を把握する価値権であるから、価値の減少が認められることが行使要件として必要である。もっとも、単に価値の減少があっても依然として被担保債権の満足に十分な場合にまで物権的請求権を認める必要はない。したがって、被担保債権の満足が得られなくなる価値の減少があることを要件とすべきと考える。
(2)甲土地の抵当権の効力が庭石に及んでいるか。
従物(87条1項)とは、@物として独立性があり、A主物に付属しており、B主物の効用を高め、C主物と同一の所有者に属するものをいうが、本件庭石はこれらの要件を満たすから甲土地の従物に当たる。
そして、従物は主物の処分に従う(87条2項)ところ、抵当権の設定は「処分」に当たる。
したがって、甲土地の抵当権の効力は庭石に及んでいる。
(3)そうすると、時価200万円の庭石が担保価値から外れると甲土地の時価は2900万円となり、被担保債権額3000万円を下回るから、Bは抵当権に基づく返還請求権としての本件庭石の引渡請求権を有する。
(4)では、それをEに対抗できるか。
従物に抵当権の効力が及んでいることは、当該従物が抵当不動産上にある限り、抵当権の登記により知ることができる。そのため、抵当不動産上の従物に対して権利を取得した者に対しては、抵当権の効力を対抗できると解する。
本件では、Dは抵当不動産である甲土地上の庭石に対して権利取得したから、Dに対しては対抗できるが、Eは甲土地外で庭石の権利を取得したから、Eに対しては対抗できない。
2 したがって、BはEに対して、抵当権に基づく返還請求権の行使として庭石の引渡しを求めることはできない。 以上
1 CがEに対して所有権に基づく返還請求権の行使として庭石の引渡しを請求できるか検討する。
(1)請求原因は@庭石のC所有、AE占有である。@の立証はAC間の売買契約で足りる。
Aは明らかに認められる。
(2)Eは対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を出すと思われる。すなわち、CとDとは庭石の二重譲渡を受けた関係にあり、Dが先に引渡し(178条)を受けたからDが優先し、Dは確定的に所有者となった。EはDからの譲受人であるから、確定的な所有権を承継している。
(3)これに対してCは、Dが背信的悪意者であることを再抗弁とすることが考えられるが、認められるか。
178条は、意思表示のみによって生じる動産の物権変動(176条)は、引渡しをするまでは不完全であり、多重に譲渡があった場合には引渡しを先に受けた者が確定的に所有者になることを定めた規定と解する。同条は「第三者」(物権の得喪変更の引渡しの欠缺を主張する正当な利益を有する者)の主観的要件を定めていないが、自由競争が建前である以上、悪意であっても保護されるべきである。しかし、背信的悪意者の場合は自由競争の枠外の問題なので、保護されないと解する。要件は@悪意、A信義則(1条2項)違反である。
本件では、Dは@AC間の庭石売買について悪意である。そして、AもっぱらCに嫌がらせをする意図であるから信義則違反がある。よってDは背信的悪意者に当たる。
ここでCは、背信的悪意者であるDは庭石の所有権を承継しない(無権利者である)ことを前提として、無権利者からの譲受人であるEはまた無権利者であるから、「第三者」に当たらないと主張したい。
しかし、背信的悪意者は権利の承継を「第三者」に対抗できないだけであり、無権利者ではない。したがって、背信的悪意者からの譲受人がまた背信的悪意者でないかぎり、背信的悪意者の譲受人は「第三者」に当たる。
したがって、Eが背信的悪意者でないかぎり、CはEに庭石所有権を対抗できない。
2 以上より、CはEが背信的悪意者でないかぎり、所有権に基づく返還請求権の行使として庭石の引渡しを請求できない。
設問2
1 BはEに対して抵当権に基づく返還請求権の行使として本件庭石の引渡し請求ができるか検討する。
(1)そもそも抵当権に基づく物権的請求権が認められるか。
抵当権も物権であるから、物権的請求権を観念しうる。しかし、抵当権は物の価値を把握する価値権であるから、価値の減少が認められることが行使要件として必要である。もっとも、単に価値の減少があっても依然として被担保債権の満足に十分な場合にまで物権的請求権を認める必要はない。したがって、被担保債権の満足が得られなくなる価値の減少があることを要件とすべきと考える。
(2)甲土地の抵当権の効力が庭石に及んでいるか。
従物(87条1項)とは、@物として独立性があり、A主物に付属しており、B主物の効用を高め、C主物と同一の所有者に属するものをいうが、本件庭石はこれらの要件を満たすから甲土地の従物に当たる。
そして、従物は主物の処分に従う(87条2項)ところ、抵当権の設定は「処分」に当たる。
したがって、甲土地の抵当権の効力は庭石に及んでいる。
(3)そうすると、時価200万円の庭石が担保価値から外れると甲土地の時価は2900万円となり、被担保債権額3000万円を下回るから、Bは抵当権に基づく返還請求権としての本件庭石の引渡請求権を有する。
(4)では、それをEに対抗できるか。
従物に抵当権の効力が及んでいることは、当該従物が抵当不動産上にある限り、抵当権の登記により知ることができる。そのため、抵当不動産上の従物に対して権利を取得した者に対しては、抵当権の効力を対抗できると解する。
本件では、Dは抵当不動産である甲土地上の庭石に対して権利取得したから、Dに対しては対抗できるが、Eは甲土地外で庭石の権利を取得したから、Eに対しては対抗できない。
2 したがって、BはEに対して、抵当権に基づく返還請求権の行使として庭石の引渡しを求めることはできない。 以上
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