2014年05月21日
A392 ・「転ばぬ先の杖」〜誰もが分かっているはずなのに
「どんな病気でも、早期発見、早期治療!がとても大切です」
と聞くと、多くの人は素直に納得します。
ところが、ちょっとへそ曲がりな人がいて、
「”早期発見”より”病気にならないように”の方が大切では?」
とつぶやきます。
確かにこちらの方が正論です。それでも世間一般では、ずぼらか無自覚かなどを続け、挙句は病院のお世話になるのが大勢のようです。
大体、世の中の仕組みがその様に出来ている。と、言えそうです。
「健康診断」は広く普及してはいますが、病院での「治療」に比べると、関与する人と時間と費用は圧倒的に「治療」に偏っています。
「病院」「医者」は病気を治すことを本分と心得ている!というのが相場のようです。
一部で「予防医学」活動が行なわれているようですが、格段にマイナーだと感じます。
私達の通念として「病院は病気を治す所」であって、一般的には予防の指導を受けるところとは心得ません。
医者は、病気の症状が発病異常があることを前提に、患者に「どうしました?」と問診し、病院は病人を受け入れ、治療することを目的に運営される。のであって、予防、検診などは極く一部、というのが社会通念と思われます。
因みに、警察では、市民から不安を届けられても、事件が起こらなければ本腰を入れないようです。ストーカー事例で度々報道されている通りです。
大体、人間の特性として、先のことをあれこれ考えて先手を打っていくよりも、事後処理の方が得意というか、楽なのかもしれません。
水が高きから低きに流れるように、人間社会全体が「目先の楽」を求めて流れていくと考えると、説明できるケースが多い様です。
こんな流れがあるとしても、病については「転ばぬ先の杖」を実践したいというのが今回のテーマです。
かくすれば 斯くなるものと 知りながら
かくはせずのが 世の人の常
などと愚痴っていても、前には進みません。
「上工(じょうこう)は己病(いびょう)を治さず、未病(みびょう)を治す」
2000年以上前、中国最古の医学書『黄帝内経』の中の言葉だそうです。
発病前、つまり未病段階での対応が大切であることを、漢方の世界では古代から語り継がれてきたと理解されます。
「上工(真に優れた医師)は発病してしまってからの病よりも、それ以前の未病(みびょう)を治す」
「未病(みびょう)を治す」のが優れた医師の要件!というのです。
現代の中国はどうなのか知りませんが、日本では「未病」という言葉を目にはしますが、国語辞典には載っていないので、お堅く言うと日本語になっていないようです。
末病(まつびょう)ではありません。ご注意!
「最先端医療」という言葉がよく聞かれるように、医療の発達は物凄い水準を行っているようです。こういった面での医療者も研究者も脚光を浴びますが、「未病」の領域ではどうなのでしょうか。
一般人もまた「未病」より「治療」に意識が向いているように思われます。
「治療」よりも「未病」に万人の意識が向くような世の中こそが、健全な人間社会と言えるるのではないかと思うのです。
予防医療が活性化し、「転ばぬ先の杖」となる生活習慣が広く一般の人々に根付いた社会を想定します。その実現のためには、「未病対策費」と「医療費」が逆転する位のエネルギーを要するかもしれません。
一人一人が意識を高め、「隗より始めよ」で個人がそれぞれに行動し、やがてその輪が広がり、様々なネットワークがつながり、国家プロジェクトに発展する・・・などと夢見ます。
平均寿命が長いという点では、日本は世界一の長寿国と統計上はなっています。
実情はどうでしょうか?
平均被介護期間が10年以上にもなっているようです。
健康寿命は平均所妙より10年以上も短いという事です。
人口は減少し、高齢者率が急速に高まること必至のわが国で、介護に向けられるエネルギーの莫大さを考えるとき、「未病」が、改めて大きくクローズアップされるのです。
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