2017年08月25日
漫画『踏切時間』1巻の感想とあらすじ 踏切、それは青春と笑いが生まれる場所
『踏切時間』1巻の感想。
踏切時間
著者:里好
掲載:月刊のアクション
1巻発売日:2016年12月12日
鉄道と道路が交差する場所に設けられている「踏切」。人や車、列車の安全な運行を確保するためには、なくてはならない大切な設備。
そして、カンカンという警報音が鳴り響き、遮断機が降りきったその瞬間、列車が通過して再び上がるまでの待ち時間、そこは様々な人たちによってドラマが繰り広げられる劇場と化す。女の子同士の甘酸っぱい会話、生徒を見つけて声を掛けようか迷うシャイなコワモテ教師、小学生が遭遇した怪談話など、踏切待ち時間で起こる数々の出来事。
踏切、そこは足止めされる人たちがちょっとだけ青春を織り成す場所。行けば何かがある、何かが起こるかも――。
踏切で足止めされる様々な人たちが、列車が通り過ぎるまでの待ち時間の中で、青春したり、怪談したり、ドキドキしちゃうなど、ちょっとした出来事を描いたショートストーリー集。
オムニバス日常ショート。帯での謳い文句は「オール踏切!!!!!!!」。月間漫画雑誌「月刊アクション」の2016年7月号にて連載開始。
作者は『ディス魔トピア』や『うぃずりず』などで知られる漫画家・漫画原作者の里好(さと よしみ)先生。
大好きな漫画はジャンルに拘らず何でも読んでるつもりでしたが、その中でことオムニバス形式の漫画に関しては、これまで数えるほどしか読んでいなかったことにふと気づきました。このブログで紹介している作品も、おそらく『にじいろコンプレックス』と『AIの遺電子』ぐらいですね。
どちらかというと、ひとつのストーリーをじっくり楽しめる作品の方が好きだからという理由が大きいかなと。その点で、上にタイトル名をあげた2作品は、オムニバスでも?がりを持たせているので普通に楽しめてます。別に嫌いというわけではないんですけどね。尚月地先生の『廃墟少女』なんかはおすすめしたい作品でもありますから。
まあそんなこんなで、何か面白そうなオムニバス形式の漫画はないかと探してみたところ、見つけたのが今回紹介させていただく『踏切少女』です。踏切というテーマが珍しかったので思わず手に取ってしまいました。
踏切で足止めされる女の子たちをはじめとした様々な登場人物達の、待ち時間に起こるそれぞれの「ドラマ」をオムニバス形式で描かれたショートストーリー。
ざっくり説明するとこんな感じです。「オール踏切!!!」という謳い文句に偽りナシの内容でして、どのエピソードも舞台は全て踏切。あまりにもニッチ過ぎるテーマだったのでちょっと不安もありましたが、あくまでこれは踏切という舞台を活かした、女の子たちを中心とした「ドラマ」を描いた作品。そして、表紙を見ていただければおわかりの通り、美少女萌え要素も加味されているので必ずしも鉄道ファン向けというわけではありません。もちろん踏切の作画も結構ちゃんとしてるので、その手の趣味をお持ちの方にも持って来いの漫画だとは思います。
コメディや下ネタ、オカルトチックな話もありますが、全体の雰囲気からすると青春ストーリーに分類できそうです。
着眼点は面白いですけど、正直最初は踏切“のみ”という設定を知ってかなり舐めてました。あんなところでどうやって面白いドラマ作るの?どうやって広げるの?そもそも続けられるの?なんて疑問ばかり。まあ、その辺り気になってこの漫画を手に取ってる時点で負けてるわけですけど。
手持ちぶたさで退屈だったり、急いでるときは少しイライラしちゃったり、状況によってはちょっと気まずくなったりしたこともありますが、基本的には特に何が起こるわけでもないただ通り過ぎるだけの場所。
しかし、蓋を開けてみたらこれがなかなか面白い。構成が意外としっかり練られていて、話のバリエーションも豊かで飽きることなく読み進められました。
1話完結しているものと、連続性のあるエピソードの複合。いつも時間通りに踏切を待っているイケイケ風な女子高生と、そんな彼女にドキドキさせられている坊主頭の男子の話。女子小学生が体験するちょっと怖いオカルト話や、中二病の疑いある語弊力が乏しいポエマー女子高生の話など。あと、私が特に気に入った2つのエピソードも紹介します。
学校の先輩と後輩、2人の女子高生が女同士で織り成す、タイトル「二人の青春」。先輩が踏切を待つ時間も「青春」にようと持ち掛け、それすなわち「恋愛」と握り拳を作るも、今ここにいるのは2人の女の子。女同士じゃ恋愛できないと笑い話にしようとしたところ、大人しかった後輩ちゃんがカッと表情を変え「女同士でも恋愛できます!」となにやら力強く叫びだしました。「あ、これは・・・」と読みながらニヤリとしていたところ、電車が通り過ぎる瞬間にさらなる告白が。
それから、タイトル「先生といっしょ」。これが一番笑ったかも。ガタイのいいコワモテだけどとってもシャイな男性教師が、踏切で学校の生徒を見つけてどう話し掛けるかで葛藤する話。そして、優等生っぽいけど実はドSなその女子高生が、そんな挙動不審な先生の様子に笑いを堪えながら心の中でキツイツッコミを入れるという。
どれも面白いですけどこの2つは特に続きが読みたいと思ってしまいましたね。
踏切という舞台装置を上手く活用していました。ちょっとした待ち時間が必要なら何かの行列に並んでる時間や、信号を待つ時間、バスを待つ時間などでも良さそうですが、これは踏切だからこそ良い話。
電車が通り過ぎる瞬間に発生する強風や轟音によって青春の甘酸っぱさを演出。それから、踏切を隔てた向こう側に得体の知れない何かを伺わせ、列車が通過する間の見えなくなる瞬間を使って恐怖を演出。遮断機が降りるときのカンカンという警報音も良い味を出していましたね。
踏切だからこその要素を上手く話の中で活かした見せ方は見事です。
ということで、踏切のみを舞台に据え、そこで起こるドラマを描いた漫画『踏切時間』1巻の紹介でした。テーマが斬新なだけではなく、読んでみるとしっかり作り込まれていたのでとても面白かったです。
ちなみに、作中で登場した踏切は実在している場所が描かれているようです。お気づきになった方もおられるかもしれませんが、表紙イラストで描かれているのは某有名国民漫画に出てきた外国人にも人気の踏切。場所も明記されてますので、聖地巡礼みたいな楽しみもあるかと。もちろん迷惑行為はご法度で。
私は踏切でドラマチックな出来事なんてなかったんですが、それでも読んでると高校時代のことを思い出しちゃったりなんかして、心地よい読後感を味わうことができました。
もっと読みたいと思わせてくれる漫画、とても良かったです。あと、なんか太ももの印象が強かったような気がしなくもないです。
【eBookJapan】 踏切時間
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踏切時間
著者:里好
掲載:月刊のアクション
1巻発売日:2016年12月12日
あらすじ・概要
鉄道と道路が交差する場所に設けられている「踏切」。人や車、列車の安全な運行を確保するためには、なくてはならない大切な設備。
そして、カンカンという警報音が鳴り響き、遮断機が降りきったその瞬間、列車が通過して再び上がるまでの待ち時間、そこは様々な人たちによってドラマが繰り広げられる劇場と化す。女の子同士の甘酸っぱい会話、生徒を見つけて声を掛けようか迷うシャイなコワモテ教師、小学生が遭遇した怪談話など、踏切待ち時間で起こる数々の出来事。
踏切、そこは足止めされる人たちがちょっとだけ青春を織り成す場所。行けば何かがある、何かが起こるかも――。
踏切で足止めされる様々な人たちが、列車が通り過ぎるまでの待ち時間の中で、青春したり、怪談したり、ドキドキしちゃうなど、ちょっとした出来事を描いたショートストーリー集。
オムニバス日常ショート。帯での謳い文句は「オール踏切!!!!!!!」。月間漫画雑誌「月刊アクション」の2016年7月号にて連載開始。
作者は『ディス魔トピア』や『うぃずりず』などで知られる漫画家・漫画原作者の里好(さと よしみ)先生。
感想
大好きな漫画はジャンルに拘らず何でも読んでるつもりでしたが、その中でことオムニバス形式の漫画に関しては、これまで数えるほどしか読んでいなかったことにふと気づきました。このブログで紹介している作品も、おそらく『にじいろコンプレックス』と『AIの遺電子』ぐらいですね。
どちらかというと、ひとつのストーリーをじっくり楽しめる作品の方が好きだからという理由が大きいかなと。その点で、上にタイトル名をあげた2作品は、オムニバスでも?がりを持たせているので普通に楽しめてます。別に嫌いというわけではないんですけどね。尚月地先生の『廃墟少女』なんかはおすすめしたい作品でもありますから。
まあそんなこんなで、何か面白そうなオムニバス形式の漫画はないかと探してみたところ、見つけたのが今回紹介させていただく『踏切少女』です。踏切というテーマが珍しかったので思わず手に取ってしまいました。
踏切で足止めされる女の子たちをはじめとした様々な登場人物達の、待ち時間に起こるそれぞれの「ドラマ」をオムニバス形式で描かれたショートストーリー。
ざっくり説明するとこんな感じです。「オール踏切!!!」という謳い文句に偽りナシの内容でして、どのエピソードも舞台は全て踏切。あまりにもニッチ過ぎるテーマだったのでちょっと不安もありましたが、あくまでこれは踏切という舞台を活かした、女の子たちを中心とした「ドラマ」を描いた作品。そして、表紙を見ていただければおわかりの通り、美少女萌え要素も加味されているので必ずしも鉄道ファン向けというわけではありません。もちろん踏切の作画も結構ちゃんとしてるので、その手の趣味をお持ちの方にも持って来いの漫画だとは思います。
コメディや下ネタ、オカルトチックな話もありますが、全体の雰囲気からすると青春ストーリーに分類できそうです。
着眼点は面白いですけど、正直最初は踏切“のみ”という設定を知ってかなり舐めてました。あんなところでどうやって面白いドラマ作るの?どうやって広げるの?そもそも続けられるの?なんて疑問ばかり。まあ、その辺り気になってこの漫画を手に取ってる時点で負けてるわけですけど。
手持ちぶたさで退屈だったり、急いでるときは少しイライラしちゃったり、状況によってはちょっと気まずくなったりしたこともありますが、基本的には特に何が起こるわけでもないただ通り過ぎるだけの場所。
しかし、蓋を開けてみたらこれがなかなか面白い。構成が意外としっかり練られていて、話のバリエーションも豊かで飽きることなく読み進められました。
1話完結しているものと、連続性のあるエピソードの複合。いつも時間通りに踏切を待っているイケイケ風な女子高生と、そんな彼女にドキドキさせられている坊主頭の男子の話。女子小学生が体験するちょっと怖いオカルト話や、中二病の疑いある語弊力が乏しいポエマー女子高生の話など。あと、私が特に気に入った2つのエピソードも紹介します。
学校の先輩と後輩、2人の女子高生が女同士で織り成す、タイトル「二人の青春」。先輩が踏切を待つ時間も「青春」にようと持ち掛け、それすなわち「恋愛」と握り拳を作るも、今ここにいるのは2人の女の子。女同士じゃ恋愛できないと笑い話にしようとしたところ、大人しかった後輩ちゃんがカッと表情を変え「女同士でも恋愛できます!」となにやら力強く叫びだしました。「あ、これは・・・」と読みながらニヤリとしていたところ、電車が通り過ぎる瞬間にさらなる告白が。
それから、タイトル「先生といっしょ」。これが一番笑ったかも。ガタイのいいコワモテだけどとってもシャイな男性教師が、踏切で学校の生徒を見つけてどう話し掛けるかで葛藤する話。そして、優等生っぽいけど実はドSなその女子高生が、そんな挙動不審な先生の様子に笑いを堪えながら心の中でキツイツッコミを入れるという。
どれも面白いですけどこの2つは特に続きが読みたいと思ってしまいましたね。
踏切という舞台装置を上手く活用していました。ちょっとした待ち時間が必要なら何かの行列に並んでる時間や、信号を待つ時間、バスを待つ時間などでも良さそうですが、これは踏切だからこそ良い話。
電車が通り過ぎる瞬間に発生する強風や轟音によって青春の甘酸っぱさを演出。それから、踏切を隔てた向こう側に得体の知れない何かを伺わせ、列車が通過する間の見えなくなる瞬間を使って恐怖を演出。遮断機が降りるときのカンカンという警報音も良い味を出していましたね。
踏切だからこその要素を上手く話の中で活かした見せ方は見事です。
ということで、踏切のみを舞台に据え、そこで起こるドラマを描いた漫画『踏切時間』1巻の紹介でした。テーマが斬新なだけではなく、読んでみるとしっかり作り込まれていたのでとても面白かったです。
ちなみに、作中で登場した踏切は実在している場所が描かれているようです。お気づきになった方もおられるかもしれませんが、表紙イラストで描かれているのは某有名国民漫画に出てきた外国人にも人気の踏切。場所も明記されてますので、聖地巡礼みたいな楽しみもあるかと。もちろん迷惑行為はご法度で。
私は踏切でドラマチックな出来事なんてなかったんですが、それでも読んでると高校時代のことを思い出しちゃったりなんかして、心地よい読後感を味わうことができました。
もっと読みたいと思わせてくれる漫画、とても良かったです。あと、なんか太ももの印象が強かったような気がしなくもないです。
踏切時間(1) (アクションコミックス(月刊アクション)) | ||||
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