2017年06月12日
漫画『将棋めし』1巻の感想とあらすじ
『将棋めし』1巻の感想。
将棋めし
著者:松本 渚
掲載:月刊コミックフラッパー
1巻発売日:2017年1月23日
一見地味にも見える将棋の対局風景。だが、その実将棋は頭脳スポーツと称される通り、長時間座り続けながら思考を巡らせ続けることには、見た目では分からないほど膨大な体力を必要とする。それも幾通りの中から最善手を選び続けるとなればなおのこと。それ故、棋士たちにとって「食事」とは、勝つめの、戦い抜くための重要なエネルギー源であり、めしで勝負が決まる≠ニ言っても過言ではない。
そんな過酷なプロ将棋の世界で、女性の身でありながらプロ棋士として戦う峠なゆた(とうげ なゆた)・六段。勝てばタイトルホルダーとなる玉座戦最終局を迎え、長期戦になると見越した彼女の頭にあったのは・・・・「夕食どうしよかな」。
ライバルたちとの対局はもちろんのこと、選ぶ食事にも美学と礼節をもって全力で向き合うなゆたは、今日も勝負に勝つための最高の将棋めしを追い求めていく。
将棋の世界でプロ棋士として日々戦っている1人の女性をはじめ、目の前の一局にかける棋士たちの真剣勝負を描くと同時に、対局の合間に彼女たちがエネルギー補給をするために選ぶ食事≠ノついて描いた話。
将棋×めし漫画。本作のキャッチコピーは「ノーカロリーノー将棋!」。対局の勝敗にも直結しかねない対局の合間に摂取する「食事」に焦点を当てた作品です。
作者は以前『盤上の詰みと罰』という将棋漫画も描かれていた、自身も将棋愛好家の女性漫画家・松本渚(まつもと なぎさ)さん。将棋監修には棋士・広瀬彰人八段が担当。
最近、将棋界で史上5人目の中学生棋士として注目された藤井聡太四段が、連勝記録を更新し続けていることで話題を集めていますね。彼の活躍に影響を受けて将棋を始める人も増加傾向にあるので、弱いけど将棋ファンの私としても本当に嬉しい限り。
さらに、将棋がメディアによく取り上げられるようになったことで、将棋ファンの間ではかねてから見所のひとつでもあった、対局の合間に摂る「おやつ」や「食事」も注目されています。そして、漫画界では空前の「グルメ漫画ブーム」とくれば・・・。
そんな将棋とグルメをコラボさせた作品が今回紹介させていただく『将棋めし』。『3月のライオン』など多くの将棋漫画でも対局中の食事やおやつの描写はありますが、この作品はそこにメインスポットを当てられている内容で、将棋にあまり馴染みない人でも楽しめるようになっています。
将棋に限らず、囲碁やチェスなどの頭脳スポーツと呼ばれるボードゲームは、大きな動きを見せない静かな対局風景から、地味な競技にも捉われがちですが、見た目に反して脳が消費するカロリーやエネルギーは膨大。それ故、棋士たちにとってエネルギー補給になる休憩時間での食事は、対局の勝敗にも密接に関わる重要な要素。タイトル戦では減少した糖質を補うため、対局中に午前と午後におやつタイムまであります。
ちなみに、主にタイトル戦のような注目度の高い対局では、午前中のおやつ、昼食、午後のおやつのメニューはほぼ例外なく公表されています。
この『将棋めし』はその棋士たちの食事に注目した作品でして、タイトルそのまんまの内容。ただ、グルメばかりに偏っているわけではなく、ディープ過ぎるほどではないですけど結構しっかりした将棋漫画でもあります。
それから、あらすじに書いた「玉座戦」の通り、将棋を知ってる方ならお分かりかもしれませんが、作中で行われているタイトル戦は実際には存在しません。本来は「王座戦」なので架空のタイトル戦ですね。ただ、「名人戦」だけは同じのようです。
主人公はプロ棋士の女性・峠なゆた(とうげ なゆた)。「女流棋士」ではなく「プロ棋士」の女性です。
女性のプロ棋士は実際の将棋界では未だ1人も存在しません。この辺りを詳しく説明しだすと長くなってしまうので簡単にさせてもらいますと、決して制度として認められていないのではなく、単純に棋力の差が男女で大きいため、対局でお金が貰える四段の壁を破った女性がいないということです。
しかもこの主人公・なゆた、女性棋士というだけでも将棋漫画としては面白い設定ですが、なんと「玉座」というタイトルホルダーでもあります。一見、関西弁を話す食い意地張った巨乳なお姉ちゃんにしか見えませんが、その実かなりすごい人物だったりします。そのあたりのとんでも設定をさらっとストーリー上に織り交ぜていたので、むしろありえない感も薄れて上手い流れだったなと思います。
真剣な対局もなかなか見応えありましたが、当然この作品で重きを置いている棋士が食べるめし≠ェ、最大の見所。
勝負にかける棋士たちが対局中に食べるグルメは、カレーやウナギ、カツ丼や寿司など、特に珍しいものが出てくるわけではありません。少々お高めではありますけど。
それも、この先を戦い抜くためのエネルギー補給としてだけではなく、メニューを決める際にはゲンを担いだり、ライバルの棋士たちと何を食べるかで意地を張り合ったりと、食事を将棋や目の前の対局と絡ませているところは面白いですね。
なゆたが非常に表情豊かなキャラクターなのは、これがグルメ漫画でもあるからなのかもしれませんね。食事シーンでは色んな表情を見せますけど過度な表現にはなっていないところは作品と合っていて、ほどよい演出で美味しさを魅せるやり方は良かったと思います。
将棋もグルメも楽しめる漫画『将棋めし』の紹介でした。将棋に詳しくない人でも、楽しみながら必要な知識は得られるようになっていますし、食事やおやつは実際にあったエピソードを元にされているようなので、将棋ファンにも嬉しい内容だったと思います。まあ、人によっては中途半端に感じる人もいるかと思われますけどね。
それと、登場人物たちが織り成す人間ドラマもなかなか面白いです。性別を越えて良い関係を築いている同期のライバルや兄弟弟子や、同じ世界で戦っている父親など。特に良かったのは可愛いファンの女の子との交流と、ある1人の女流棋士とのふれあいですね。全体的には明るい雰囲気ですけど良いバランスでシリアスも組み込まれています。
色々な要素を取り込み過ぎな気もしなくはないですが、その割りには破綻もなく良くまとまっていて、むしろ将棋漫画としては読みやすい作品として出来上がっていました。どこまでネタが続くか心配ですけど長く続いて欲しいですね。
【eBookJapan】 将棋めし
↑無料で試し読みできます
将棋めし
著者:松本 渚
掲載:月刊コミックフラッパー
1巻発売日:2017年1月23日
あらすじ・概要
一見地味にも見える将棋の対局風景。だが、その実将棋は頭脳スポーツと称される通り、長時間座り続けながら思考を巡らせ続けることには、見た目では分からないほど膨大な体力を必要とする。それも幾通りの中から最善手を選び続けるとなればなおのこと。それ故、棋士たちにとって「食事」とは、勝つめの、戦い抜くための重要なエネルギー源であり、めしで勝負が決まる≠ニ言っても過言ではない。
そんな過酷なプロ将棋の世界で、女性の身でありながらプロ棋士として戦う峠なゆた(とうげ なゆた)・六段。勝てばタイトルホルダーとなる玉座戦最終局を迎え、長期戦になると見越した彼女の頭にあったのは・・・・「夕食どうしよかな」。
ライバルたちとの対局はもちろんのこと、選ぶ食事にも美学と礼節をもって全力で向き合うなゆたは、今日も勝負に勝つための最高の将棋めしを追い求めていく。
将棋の世界でプロ棋士として日々戦っている1人の女性をはじめ、目の前の一局にかける棋士たちの真剣勝負を描くと同時に、対局の合間に彼女たちがエネルギー補給をするために選ぶ食事≠ノついて描いた話。
将棋×めし漫画。本作のキャッチコピーは「ノーカロリーノー将棋!」。対局の勝敗にも直結しかねない対局の合間に摂取する「食事」に焦点を当てた作品です。
作者は以前『盤上の詰みと罰』という将棋漫画も描かれていた、自身も将棋愛好家の女性漫画家・松本渚(まつもと なぎさ)さん。将棋監修には棋士・広瀬彰人八段が担当。
感想
最近、将棋界で史上5人目の中学生棋士として注目された藤井聡太四段が、連勝記録を更新し続けていることで話題を集めていますね。彼の活躍に影響を受けて将棋を始める人も増加傾向にあるので、弱いけど将棋ファンの私としても本当に嬉しい限り。
さらに、将棋がメディアによく取り上げられるようになったことで、将棋ファンの間ではかねてから見所のひとつでもあった、対局の合間に摂る「おやつ」や「食事」も注目されています。そして、漫画界では空前の「グルメ漫画ブーム」とくれば・・・。
そんな将棋とグルメをコラボさせた作品が今回紹介させていただく『将棋めし』。『3月のライオン』など多くの将棋漫画でも対局中の食事やおやつの描写はありますが、この作品はそこにメインスポットを当てられている内容で、将棋にあまり馴染みない人でも楽しめるようになっています。
将棋に限らず、囲碁やチェスなどの頭脳スポーツと呼ばれるボードゲームは、大きな動きを見せない静かな対局風景から、地味な競技にも捉われがちですが、見た目に反して脳が消費するカロリーやエネルギーは膨大。それ故、棋士たちにとってエネルギー補給になる休憩時間での食事は、対局の勝敗にも密接に関わる重要な要素。タイトル戦では減少した糖質を補うため、対局中に午前と午後におやつタイムまであります。
ちなみに、主にタイトル戦のような注目度の高い対局では、午前中のおやつ、昼食、午後のおやつのメニューはほぼ例外なく公表されています。
この『将棋めし』はその棋士たちの食事に注目した作品でして、タイトルそのまんまの内容。ただ、グルメばかりに偏っているわけではなく、ディープ過ぎるほどではないですけど結構しっかりした将棋漫画でもあります。
それから、あらすじに書いた「玉座戦」の通り、将棋を知ってる方ならお分かりかもしれませんが、作中で行われているタイトル戦は実際には存在しません。本来は「王座戦」なので架空のタイトル戦ですね。ただ、「名人戦」だけは同じのようです。
主人公はプロ棋士の女性・峠なゆた(とうげ なゆた)。「女流棋士」ではなく「プロ棋士」の女性です。
女性のプロ棋士は実際の将棋界では未だ1人も存在しません。この辺りを詳しく説明しだすと長くなってしまうので簡単にさせてもらいますと、決して制度として認められていないのではなく、単純に棋力の差が男女で大きいため、対局でお金が貰える四段の壁を破った女性がいないということです。
しかもこの主人公・なゆた、女性棋士というだけでも将棋漫画としては面白い設定ですが、なんと「玉座」というタイトルホルダーでもあります。一見、関西弁を話す食い意地張った巨乳なお姉ちゃんにしか見えませんが、その実かなりすごい人物だったりします。そのあたりのとんでも設定をさらっとストーリー上に織り交ぜていたので、むしろありえない感も薄れて上手い流れだったなと思います。
真剣な対局もなかなか見応えありましたが、当然この作品で重きを置いている棋士が食べるめし≠ェ、最大の見所。
勝負にかける棋士たちが対局中に食べるグルメは、カレーやウナギ、カツ丼や寿司など、特に珍しいものが出てくるわけではありません。少々お高めではありますけど。
それも、この先を戦い抜くためのエネルギー補給としてだけではなく、メニューを決める際にはゲンを担いだり、ライバルの棋士たちと何を食べるかで意地を張り合ったりと、食事を将棋や目の前の対局と絡ませているところは面白いですね。
なゆたが非常に表情豊かなキャラクターなのは、これがグルメ漫画でもあるからなのかもしれませんね。食事シーンでは色んな表情を見せますけど過度な表現にはなっていないところは作品と合っていて、ほどよい演出で美味しさを魅せるやり方は良かったと思います。
将棋もグルメも楽しめる漫画『将棋めし』の紹介でした。将棋に詳しくない人でも、楽しみながら必要な知識は得られるようになっていますし、食事やおやつは実際にあったエピソードを元にされているようなので、将棋ファンにも嬉しい内容だったと思います。まあ、人によっては中途半端に感じる人もいるかと思われますけどね。
それと、登場人物たちが織り成す人間ドラマもなかなか面白いです。性別を越えて良い関係を築いている同期のライバルや兄弟弟子や、同じ世界で戦っている父親など。特に良かったのは可愛いファンの女の子との交流と、ある1人の女流棋士とのふれあいですね。全体的には明るい雰囲気ですけど良いバランスでシリアスも組み込まれています。
色々な要素を取り込み過ぎな気もしなくはないですが、その割りには破綻もなく良くまとまっていて、むしろ将棋漫画としては読みやすい作品として出来上がっていました。どこまでネタが続くか心配ですけど長く続いて欲しいですね。
【eBookJapan】 将棋めし
↑無料で試し読みできます
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