2017年04月21日
漫画『映像研には手を出すな!』1巻の感想とあらすじ
『映像研には手を出すな!』1巻の感想。
映像研には手を出すな!
著者:大童 澄瞳
掲載:月刊!スピリッツ
1巻発売日:2017年1月12日
水上に建てられた校舎と、度重なる増改築によって複雑になった校内は、さながら校内ダンションとも呼ばれる芝浜高校。
この学校に入学した新入生の浅草みどりは、アニメを作りたいけど1人で行動するのが怖くて一歩を踏み出せずにいた。友人の金森さやかにアニ研見学へ付き添ってもらったみどりは、そこで使用人から逃げていた財閥令嬢の水崎ツバメと出会い、彼女もアニメーターを目指していることを知る。
意気投合したことみどりとツバメはアニメ製作の話題で盛り上がり、さらに有名人のツバメがアニメ製作すれば金になると踏んださやかの提案で、3人は「映像研」を立ち上げることになった。
みどりたちは「最強の世界」を作るため、3人で力を合わせてアニメ制作を始めるのだった。
入学した高校で出会ったアニメ製作をしたい異なるタイプの3人娘が、映像研究同好会を立ち上げ、アニメで目指す「最強の世界」を創り出すため奮闘する物語。
女子高生3人が同好会でアニメ製作に挑む青春冒険譚。スピリッツで1話を試し読みをしたときから、「こんな作品を待まってました」と声をあげたくなるぐらい気に入っていた作品です。著者はこの作品がデビュー作となる新人の大童澄瞳さん。
マンガやアニメ製作の現場を描いた作品はこれまでも多く生み出され、様々な切り口で描かれてきました。特にマンガ家を主人公にした作品は古くから親しまれてきたこともあって、藤子不二雄さんの『まんが道』、日本橋ヨヲコさんの『G戦場ヘヴンズドア』、他にも『バクオン』や『アオイホノオ』など、有名作品が次々と生まれています。個人的には『かくかくしかじか』がお気に入り。
アニメーション製作を描いた作品もここ数年で数を増やし、『アニウッド大通り』や『アニメタ!』、そしてアニメ放送された『SHIROBAKO』は多方面から高い評価を受けた作品ですね。
そんなアニメ製作について描かれた作品の中でも、今回紹介させていただく『映像研には手を出すな!』はまた違った独特な味わいがあり、特に設定画を見るのが好きな人にはたまらない内容になってます。
メインの高校1年生3人娘たちは性格も特技も役割も異なり、三者三様の特徴を持つキャラクターでみんな魅力的。
主人公的立ち位置にいるのは、幼いころから空想を膨らませては超絶練り込んだ設定画を描いてきた子で、背景絵が非常に上手い「設定命」の、浅草みどり。世界観を構築する作業を好み、「最強の世界」を作って大冒険することが夢。
2人目は、お金が行動原理の基本である守銭奴で、雄弁にモノを語る弁論家、金森さやか。クリエイターではありませんが、みどりとツバメをうまくまとめ、マネジメント能力にも優れてるプロデューサーみたいな子です。
3人目は、有名カリスマ読モでお金持ちの家庭で育った超お嬢様、水崎ツバメ。俳優にしたい親からは猛反発を受けていますが、実はアニメーター志望でみどりが苦手な人物画を得意としてます。
このタイプの異なる3人がひょんなことから出会い、協力してアニメ制作をしていくという話。ツバメの事情で既成の部であるアニメ研への入部は出来ないため、ならば自分たちで製作できる場を作ってしまえばいいと思い至り、さやかの活躍で「映像研究同好会」を立ち上げ、ボロボロでも部室を得たことで始動と相成りました。
入学した高校で同士と出会い、同好会を設立し、協調して目的のために奮闘する。この流れだけを見るとよくある王道な学園部活漫画ですが、唐突に挟まれる空想世界や設定画など、見せ方によってこれまでにない斬新な作品に仕上がっています。
王道なストーリー展開とアニメにおける設定、ストーリー、キャラクターなどの製作過程を進めていく現実世界の中で、その流れを切ることなく唐突に挟み込まれてくるのは、浅草みどりたちが頭の中で膨らませる空想世界。この表現がユニークで面白い。
例えば、ツバメが紙面に描かれたメカデザ設定画に加筆・修正を行っている作業風景を見ていたと思ったら、次の瞬間にはイメージされた空想世界が広がり、彼女はメカのエンジニアへと姿を変えています。現実世界でメカデザインの設定画を描くという行為を、空想世界では整備士がメカをメンテしている光景として描かれています。他にも、部室が宇宙船になったり、高校は未来都市になったり、メカに搭乗して空想世界を飛び回ったりと、誰か1人が空想を広げ、他2人が追体験するという表現方法。
この現実世界と空想世界の転換によって、彼女たちの頭の中にあるイメージを読者も共有しやすくなっていたと思います。
そしてこれまた唐突に差し込まれてくる見事な設定画の数々。見開きページで全体像から各部パーツまで細かな解説が成され、部品の素材や動きの構造までしっかり記してあるため、読者の想像までも掻き立てる工夫を凝らした演出になってます。
しかも、この設定資料のおかげで、空想世界の中で実際に可動する描写にも説得力があり、さらに先ほども述べたように読者の頭の中で実際に動いてるイメージを想像しやすくもなっています。練り込まれ過ぎた設定画にちょっとニヤけてしまいましたね。
好きな人はとことんドハマり出来る作品『映像研には手を出すな!』、非常に面白かったです。ストーリー、キャラクター、演出、マニア度、どれをとっても個人的に最高。
設定好きにはたまらない内容だからというだけではなく、メインキャラクターのバランスも面白くさせてる大きな要因かと。楽しいという感情がアニメ製作における行動原理の基礎になっている浅草みどりと水崎みどりに対し、ビジネスとして考えている金森さやか。クリエイターにばかり目が行きがちなジャンルで、そんなクリエイターたちの尻を叩くプロデューサーもメインに加えていることで、ストーリーに良いテンポが生まれていたと思います。どのキャラクターを好きになるかで見方も変わってくるでしょうね。
想像する楽しさ、構築していく楽しさが強く伝わってくる内容で、真っ白だった紙面に設定が記され、それを元に肉付けし、色づけが成され、世界に命が吹き込まれていく。空想世界に飛び込んでいく3人娘を見ていると、こちらまでワクワクさせてもらえる素晴らしい作品でした。まだ1巻ですけど強くおすすめさせていただきます。
【eBookJapan】 映像研には手を出すな!
↑無料で試し読みできます
映像研には手を出すな!
著者:大童 澄瞳
掲載:月刊!スピリッツ
1巻発売日:2017年1月12日
水上に建てられた校舎と、度重なる増改築によって複雑になった校内は、さながら校内ダンションとも呼ばれる芝浜高校。
この学校に入学した新入生の浅草みどりは、アニメを作りたいけど1人で行動するのが怖くて一歩を踏み出せずにいた。友人の金森さやかにアニ研見学へ付き添ってもらったみどりは、そこで使用人から逃げていた財閥令嬢の水崎ツバメと出会い、彼女もアニメーターを目指していることを知る。
意気投合したことみどりとツバメはアニメ製作の話題で盛り上がり、さらに有名人のツバメがアニメ製作すれば金になると踏んださやかの提案で、3人は「映像研」を立ち上げることになった。
みどりたちは「最強の世界」を作るため、3人で力を合わせてアニメ制作を始めるのだった。
入学した高校で出会ったアニメ製作をしたい異なるタイプの3人娘が、映像研究同好会を立ち上げ、アニメで目指す「最強の世界」を創り出すため奮闘する物語。
女子高生3人が同好会でアニメ製作に挑む青春冒険譚。スピリッツで1話を試し読みをしたときから、「こんな作品を待まってました」と声をあげたくなるぐらい気に入っていた作品です。著者はこの作品がデビュー作となる新人の大童澄瞳さん。
マンガやアニメ製作の現場を描いた作品はこれまでも多く生み出され、様々な切り口で描かれてきました。特にマンガ家を主人公にした作品は古くから親しまれてきたこともあって、藤子不二雄さんの『まんが道』、日本橋ヨヲコさんの『G戦場ヘヴンズドア』、他にも『バクオン』や『アオイホノオ』など、有名作品が次々と生まれています。個人的には『かくかくしかじか』がお気に入り。
アニメーション製作を描いた作品もここ数年で数を増やし、『アニウッド大通り』や『アニメタ!』、そしてアニメ放送された『SHIROBAKO』は多方面から高い評価を受けた作品ですね。
そんなアニメ製作について描かれた作品の中でも、今回紹介させていただく『映像研には手を出すな!』はまた違った独特な味わいがあり、特に設定画を見るのが好きな人にはたまらない内容になってます。
メインの高校1年生3人娘たちは性格も特技も役割も異なり、三者三様の特徴を持つキャラクターでみんな魅力的。
主人公的立ち位置にいるのは、幼いころから空想を膨らませては超絶練り込んだ設定画を描いてきた子で、背景絵が非常に上手い「設定命」の、浅草みどり。世界観を構築する作業を好み、「最強の世界」を作って大冒険することが夢。
2人目は、お金が行動原理の基本である守銭奴で、雄弁にモノを語る弁論家、金森さやか。クリエイターではありませんが、みどりとツバメをうまくまとめ、マネジメント能力にも優れてるプロデューサーみたいな子です。
3人目は、有名カリスマ読モでお金持ちの家庭で育った超お嬢様、水崎ツバメ。俳優にしたい親からは猛反発を受けていますが、実はアニメーター志望でみどりが苦手な人物画を得意としてます。
このタイプの異なる3人がひょんなことから出会い、協力してアニメ制作をしていくという話。ツバメの事情で既成の部であるアニメ研への入部は出来ないため、ならば自分たちで製作できる場を作ってしまえばいいと思い至り、さやかの活躍で「映像研究同好会」を立ち上げ、ボロボロでも部室を得たことで始動と相成りました。
入学した高校で同士と出会い、同好会を設立し、協調して目的のために奮闘する。この流れだけを見るとよくある王道な学園部活漫画ですが、唐突に挟まれる空想世界や設定画など、見せ方によってこれまでにない斬新な作品に仕上がっています。
王道なストーリー展開とアニメにおける設定、ストーリー、キャラクターなどの製作過程を進めていく現実世界の中で、その流れを切ることなく唐突に挟み込まれてくるのは、浅草みどりたちが頭の中で膨らませる空想世界。この表現がユニークで面白い。
例えば、ツバメが紙面に描かれたメカデザ設定画に加筆・修正を行っている作業風景を見ていたと思ったら、次の瞬間にはイメージされた空想世界が広がり、彼女はメカのエンジニアへと姿を変えています。現実世界でメカデザインの設定画を描くという行為を、空想世界では整備士がメカをメンテしている光景として描かれています。他にも、部室が宇宙船になったり、高校は未来都市になったり、メカに搭乗して空想世界を飛び回ったりと、誰か1人が空想を広げ、他2人が追体験するという表現方法。
この現実世界と空想世界の転換によって、彼女たちの頭の中にあるイメージを読者も共有しやすくなっていたと思います。
そしてこれまた唐突に差し込まれてくる見事な設定画の数々。見開きページで全体像から各部パーツまで細かな解説が成され、部品の素材や動きの構造までしっかり記してあるため、読者の想像までも掻き立てる工夫を凝らした演出になってます。
しかも、この設定資料のおかげで、空想世界の中で実際に可動する描写にも説得力があり、さらに先ほども述べたように読者の頭の中で実際に動いてるイメージを想像しやすくもなっています。練り込まれ過ぎた設定画にちょっとニヤけてしまいましたね。
好きな人はとことんドハマり出来る作品『映像研には手を出すな!』、非常に面白かったです。ストーリー、キャラクター、演出、マニア度、どれをとっても個人的に最高。
設定好きにはたまらない内容だからというだけではなく、メインキャラクターのバランスも面白くさせてる大きな要因かと。楽しいという感情がアニメ製作における行動原理の基礎になっている浅草みどりと水崎みどりに対し、ビジネスとして考えている金森さやか。クリエイターにばかり目が行きがちなジャンルで、そんなクリエイターたちの尻を叩くプロデューサーもメインに加えていることで、ストーリーに良いテンポが生まれていたと思います。どのキャラクターを好きになるかで見方も変わってくるでしょうね。
想像する楽しさ、構築していく楽しさが強く伝わってくる内容で、真っ白だった紙面に設定が記され、それを元に肉付けし、色づけが成され、世界に命が吹き込まれていく。空想世界に飛び込んでいく3人娘を見ていると、こちらまでワクワクさせてもらえる素晴らしい作品でした。まだ1巻ですけど強くおすすめさせていただきます。
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