ペルル嬢(53)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant−−−−−−−−−−−【53】−−−−−−−−−−−−−−−−−
Quelle drôle de créature, vraiment ! Comment ne
l' avais- je jamais mieux observée ? Elle se coiffait
d' une façon grotesque, avec de petits frisons vieil-
lots tout à fait farces; et, sous cette chevelure à
la Vierge conservée, on voyait un grand front cal-
me, coupé par deux rides profondes, deux rides de
longues tristesses, puis deux yeux bleus, larges et
doux, si timides, si craintifs, si humbles, deux
beaux yeux restés si naïfs, pleins d' étonnement de
fillette, de sensations jeunes et aussi de chagrins
qui avaient passé dedans, en les attendrissant, sans
les troubler.
.−−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−−
何と奇妙な人間だろう、まったく! どうして今まで
こんなに注意深く彼女を観察しなかったのだろう?
彼女は髪は自分で、年寄りじみた小さな巻き毛を作って
全く、いたずらのような奇妙なやりかたで結っていまし
た.そしてこの聖母マリア様風に仕上げた若々しい髪の
下に、大きくて物静かな額が見えていました.それは
ふたすじの深いしわで切り込まれていた.積年の辛い
日々を物語るようなしわだ.それからふたつの青い目.
大きくて、穏やかな目だ.その目は余りにも内気で、気
遅れして、控えめで、いつも小娘のもつ驚きで、そして
若々しい興奮で、そしてまた悲しみでいっぱいだった.
それらは、その目の中を曇らせることなく、ほろりと
させて通り過ぎてゆくのでした.
−−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−−−−
drôle:(形) おかしい、滑稽な、変な、奇妙な
créature:(f) 被造物、人間
se coiffait:(半過去3単) < se coiffer 自分の髪を結う
coiffer:(他) 髪を結う、髪をセットする
grotesque:(形) 珍妙な、奇妙な、異様な、グロテスクな
frisons:(m) (髪の)カール、ウェーブ
vieillot(te):(形) @ 年寄りじみた、A古ぼけた、古臭い
tout à fait:まったく、完全に
farce:(f) いたずら、愚弄,笑劇
chevelure:(f) (豊かな)髪 [髪の総称]
Vierge:(f) 聖母マリア、乙女座、処女宮
vierge:(f) 処女、生娘、
conservé(e):(形) @ よく保存された、持ちのいい;
A 若々しい
calme:[カルム](形) 静かな、穏やかな
coupé:(形) 切られた、刈られた
ride:(f) 皴(シワ)
profond(e):(形) 深い
longues tristesses:(pl) 積年の様々な辛い出来事
tristesse (f) は複数で「悲しい出来事」
timide:(形) 内気な、おとなしい、おずおずした
craintif(ve):(形) 臆病な、おどおどした
humble:[アンブル](形) 謙虚な、控えめな
naïf(ve):[ナイーフ(ヴ)](形) 無邪気な、純朴な、
あどけない、天真爛漫な、人を疑わない
étonnement:(m) 驚き
fillette:(f) 小娘、少女、若い女;
fille (少女) + ette (縮小辞):縮小辞というのは
名詞を可愛らしくする語尾
fille (娘) →fillette (娘っ子)
sensation:[サンサスィオン](f) @ 感覚、感じ; A 興奮、
センセーション
chagrin:(m) 悲しみ、苦痛
attendrir:(他) やさしい気もちにする、ほろりとさせる
感動させる
en les attendrissant:(ジェロンディフ) ほろりとさせて
les は青い二つの目
troubler:(他) 妨げる、邪魔する、濁らせる
−−−−−−−−≪学習した感想≫−−−−−−−−−−−−−−−−−
2つ目の文は長いので、文の途中で、適当に切りました.
100年以上も昔の人間は、気が長かったのだと思います.
書く方も、読むほうも、気長に果てしなく続く文につき
合っていたということですね.2時間半でいける東京・
大阪間を2週間以上かけて徒歩旅行していた時代の人間
は全長1m以上の長い文章も平気だったのでしょう.
足腰が丈夫だった以上に、脳みそも元気だったという
ことでしょうか.