アフィリエイト広告を利用しています

2018年09月03日

数学: 基本の復習 (1) ── 引き戻し

読んでいる本 (†1) ではこのところずっと, $\mathscr{C}$ を小さな圏としたとき, 集合の圏 $\mathbf{Set}$ に値をとる関手の圏
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}(#1)}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Colim}{\mathrm{colim}}
\newcommand{\CommaCat}[2]{(#1 \downarrow #2)}
\newcommand{\Func}[2]{\mathrm{Func}(#1,#2)}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mb}[1]{\mathbf{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Nat}{\mathrm{Nat}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{\Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Sub}{\mathrm{Sub}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
\mathscr{E} = \Func{\Opp{\Ms{C}}}{\Mb{Set}} \quad (\text{†2})
\end{equation*} がトポスになることの証明を追っている.
†1: Michael Barr, Charles Wells, "Toposes, Triples and Theories"
†2: ここで $\Ms{E}$ の対象となる関手のソースの圏として $\Ms{C}$ ではなく逆圏 $\Opp{\Ms{C}}$ を指定している. だから, 考えている関手は共変関手 (covariant functor) ではなく反変関手 (contravariant functor) ということになる. どうしてこうするのかまだ実感できていないが, 本には応用上便利になるからであって $\Func{\Ms{C}}{\Mb{Set}}$ で共変関手による議論を進めても全く同様の結果が得られる, と書いてある. なお, 本書においては, 圏の間の写像 $F : \Ms{C} \rightarrow \Ms{D}$ で,
(i) $\Ms{C}$ の射 $f : A \rightarrow B$ に対して $Ff : FA \rightarrow FB$ は $\Ms{D}$ の射である;
(ii) 任意の対象 $A \in \Ob{\Ms{C}}$ に対して $F(\Id{A}) = \Id{FA}$ が成り立つ;
(iii) $\Ms{C}$ の射 $g : B \rightarrow C$ に対して $F(g \circ f) = F(g) \circ F(g)$ が成り立つ.
を満たすものを $\Ms{C}$ から $\Ms{D}$ への共変関手, または単に関手と定義する. その上で関手 (= 共変関手) $F : \Opp{\Ms{C}} \rightarrow \Ms{D}$ を $\Ms{C}$ から $\Ms{D}$ への反変関手と定義している.

その中で
\begin{equation*}
\Sub(\Colim\, D) = \lim \Sub(D)
\end{equation*} という命題が出てくる. ここで $D : \Ms{I} \rightarrow \Ms{E}$ は任意の $\Ms{E}$ 内の図式, $\Sub : \Ms{E} \rightarrow \Mb{Set}$ は部分対象関手である.
非常にきれいな結果だと思う.
この命題の証明を追いかける中で, 圏論の基礎的な部分, 特に集合の圏 $\Mb{Set}$ の性質に関わるいくつかの事柄を再確認した.
自分の理解が充分でなかったためである.

せっかくなので復習したことをまとめておく.

ここではまず引き戻しについて.

定義 (引き戻し). $\,$ 図式 $D$:
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
~ & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*} に対して, 対象 $P$ と 2 つの射 $p_1 : P \rightarrow A$, $p_2 : P \rightarrow B$ の組で次の条件 (i), (ii) を満たすものを図式 $D$ に対する引き戻し (またはファイバー積 (fiber product)) と呼ぶ.
(i)$\,$ 図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である;
(ii)$\,$ 対象 $T$ と 2 つの射 $h : P \rightarrow A$, $k : P \rightarrow B$ の組で図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{h} \ar[r]^{k} & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にするものに対して, 射 $(h, k) : T \rightarrow P$ で図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=22pt {
T \ar@/_/[dddr]_{h} \ar[dr]|{(h, k)} \ar@/^/[drrr]^{k} & ~ && ~ \\
~ & P \ar[dd]_{p_1} \ar[rr]^{p_2} && B \ar[dd]^{g} \\
~ & ~ & ~ & \\
~ & A \ar[rr]_{f} && C
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にするものが一意的に存在する.

集合の圏 $\Mb{Set}$ における引き戻しとは具体的にどのような集合になるのか.
少し考えると $\Mb{Set}$ における図式 $D$ に対しては, 次の集合 $P$ が引き戻しとなることがわかる.
\begin{align*}
P &= \left\{\, (x, y) \in A \times B \mid f(x) = g(y) \,\right\} \\
&= \bigcup_{z \in C}^{~}\, (f^{-1}(z) \times g^{-1}(z)) \\
&= \bigcup_{z \in C}\, (f^{-1}, g^{-1})(z).
\end{align*} ここで 2 行目 (または 3 行目) は各 $z \in C$ に対して定まる $A \times B$ の部分集合 $f^{-1}(z) \times g^{-1}(z)$ (または $(f^{-1}, g^{-1})(z)$) の $C$ 全体にわたる和集合である.

一般的には引き戻しは圏における極限の一種であり, 図式 $D$ に対して
\begin{equation*}
P = \lim\, D
\end{equation*} とも書かれる.

では, 圏における極限とは何だったろうか.

これについては別の文章で書く.
posted by 底彦 at 21:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8059845

この記事へのトラックバック
ファン
検索
<< 2024年12月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
最新コメント
眼科の定期検査 〜 散歩 by コトタマ (02/15)
眼科の定期検査 by 三文字寄れば文殊のヒフミヨ (09/21)
本を読んで過ごす by 底彦 (12/13)
本を読んで過ごす by ねこ (12/12)
数学の計算をする by 底彦 (12/04)
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
仕事(59)
社会復帰(22)
(44)
コンピューター(211)
(1462)
借金(8)
勉強(13)
(13)
数学(97)
運動(8)
日常生活(1407)
(204)
健康(38)
読書(21)
プロフィール

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ
にほんブログ村
にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村
にほんブログ村 IT技術ブログ プログラム・プログラマーへ
にほんブログ村