祖母の年金を頼りに都会の隙き間に隠れたような家に集まった家族の物語である.
祖母, 父親のオサム, 母親のノブヨ, その妹のアキ, 子どもは祥太. 後にオサムが街で拾ってきたユリが加わる (ユリは実の親から虐待を受けていることが物語内でほのめかされている).
前半は家族それぞれのエピソードが断片的に短く描かれる.
それを観るのが結構きつい:
・彼らに血の繋がりは無い. みんな何かから逃れて集まってきたような. 背景に虐待や, 肉体的・精神的暴力, 犯罪がちらつく.
・家族の生活は笑いが絶えない. こういう楽しい様子への違和感 (これはもはや失われた家族の風景ではないか) といくらかの羨望.
・犯罪で結び付いていることや祖母が高齢であることなどから, この家族に近い将来に訪れるであろう確実な破局の予感.
・子どもに万引きをさせていること. オサムの指示でもやり, 子どもだけでも (最初は祥太だけだが後にはユリも) やる. 子どもが罪を犯すのを見るのは非常に辛い.
そういう要素のためか, 逆に世の中から弾き出され, 逃げ出した彼らに感情移入してしまった.
自分とは別の世界の話と言って, 俯瞰して彼らを眺めることができない.
後半になってある事件をきっかけに家族の存在が見つかってしまい, 全員が警察の取り調べを受けることになる.
前半に描かれた断片の裏側にあったものが明かされていく.
ユリは本当の親の元に戻される.
祥太は施設に入る.
その他の家族もバラバラになって新しいそれぞれの生活が始まる.
落ち着くべきところに落ち着いたという風になっている.
けれどもこの結末は自分が望むものとは異なっていた. こういう結末になってほしくなかった.
彼らは, 元の虐待や暴力に晒される世界, そして再び犯罪を行ってしまうかも知れない世界の中に戻っていくことになるではないか.
家族に感情移入していた自分は, どうにかして彼らみんなが幸福な結末に辿り着いてほしいと願っていた.
彼らが行くところはここじゃない. そう感じてしまっていた.
しかしこの物語の中にあるどんな要素を持ってきても, 自分が望むそういう別の結末を組み立てることは不可能だ.
考えれば考えるほど, そういう幸福な結末がどうやっても否定されるよう緻密に物語が組み立てられていて, これを強引に引っくり返そうとすれば却って物語が台無しになってしまう.
この緻密さ, 細かなところの丁寧な作り込みがすごい.
物語の必然的な流れとして, あるべきものがあるべきところに収まる結論になっていて, どうにもこれを受け入れざるを得ない.
でも彼らはどこに行けばいいのか, 本当の行き場所が無いではないかという感情が残ってしまう.
この結末に自分を納得させようと思えば, 家族の各々のこれからの成長を信じるしかない.
血の繋がりの無い家族として隠れるように身を寄せ合って暮らしていた経験や思い出が, その支えになってくれることを願うしかない.
この家族を他人事ではないと感じた自分に, それを信じて願う心の強さを持てるだろうか.
そう問いかけられている思いだ.
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