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2015年10月07日

1次関数に近い増加率をもつ関数

≫ [Amazon数学書籍] 層・圏・トポス―現代的集合像を求めて

1次関数に近い増加率をもつ関数


 32-1xの2乗をx-logxsinxで割る.gif
 いきなり複雑な関数に見えますが、その特徴を丁寧に見ていきましょう。2次関数 y = x 2 を x で割ると y = x 2 / x = x となり1次関数となります。「当たり前だ!」と思われるかもしれませんが、今回のテーマは 1次関数に近い増加率をもつ (つまり x が 1 増えれば y もおよそ 1 増えるような)関数です。上のグラフを見てください。波打ってはいますが、直線 y = x にほぼ沿うようなグラフです。(5, 5), (10, 10), (15, 15)の近辺を通りますね。これは x 2 を割る分母が x より少しだけ小さい関数にしてあるからです。 sinx の部分は +1 から −1 を往復するだけで平均すれば 0 ですから、大局的には増加率に影響しません。問題は logx の部分です。実は前回の「 x vs logx 」が伏線になっています。 x と logx を比べた時に、x ≒ 0 の辺りでは logx が優勢で、x が大きくなると x のほうが効きが強くなっていくという説明をしました。上のグラフは x が十分に大きい所では(増加率に関しては)1次関数のようにふるまうと考えられます。もう少し範囲を拡大してみましょう。

32-2xの2乗をx-logxsinxで割る.gif

 ギザギザの1次関数のようになっていますね。あるいは1次関数に巻きついた蛇のようにも見えます。この関数を少しずつ変形してみましょう。分母の logx にかかる部分を sinx + cos(√2x) とすると・・・・・・

32-3xの2乗をx-logx(sinx+cos√2x)で割る.gif

 このように三角関数の変数 x にかかる係数を円周率以外の無理数にすると周期が崩れます。以前にも同じようなことをやりましたね。もう少しいじってみましょう。 cos(√2x) ⇒ cos(√13x) と変形します。

32-4xの2乗をx-logx(sinx+cos√11x)で割る.gif

 とても不規則に見えますが、それでも (10, 10), (20, 20), (30, 30) の近くを通過していることに注目してください。あくまでも "1次関数的" であることに変わりはないのです。

 次に y = x 2 を x の1次式を含む数式で割って1次関数的なグラフを調べてみます。最初は x - sinx で割って、 0 < x の領域で関数を定義します。「さっきより簡単な関数になってるよ」と思われるかもしれませんが、はたしてどうでしょうか。

33 x^2dx-sinx.gif

 3 < x あたりからは確かに "1次関数的" なのですが、原点付近では明らかに異なる振る舞いをしていますね。もちろんこれは非常に小さい値で割っていることに起因します。もう少し具体的に計算して実感してみましょう。 x = 0.1 としてみると、

 分子 = 0.1 2 = 0.01
 分母 = 0.1 − sin(0.1) = 0.1 − 0.099833417 = 0.000166583

 明らかにその原因は sin の値にありますね。小さい値に対して sinx ≒ x という近似式が成り立つことは理数系の方にとっては常識だと思いますが(実際には少しだけ sinx < x となることも覚えておいてください)、それを使うと、分母 ≒ x − x と考えてもいいわけです。つまり原点に近づくと分母はほぼ 0 のような形になって(分子よりも早く 0 に収束して)、関数の値を急増させていきます。
 さらに細かい解析を試みます。上のグラフは sinx ≒ x が成り立つ領域と1次関数的に振る舞う領域の間に遷移帯が存在します。それは2次関数として振る舞う領域で、分母 ≒ 1 のあたりにあるはずです。グラフでいえば最初の谷に近いところですね。その中心点を見つけるには x − sinx = 1 という方程式を数値的に解いてみればいいのです。 y = x − sinx −1 のグラフを描いて、x 軸と交わる点を探します。精度を高めるためには x の刻み幅凅 をできるだけ小さくする必要があります。ここでは凅 = 0.001 という精度で解を求めてみます。一昔前は、こういう簡単なことをやるにもいちいちプログラムを書く必要がありました。 Excel は本当に便利です。

33x-sinx-1.gif

 上図は y = x − sinx −1 の x = 1.9 付近を拡大したグラフです。ここから y = 0 となる点は x = 1.935 と求めることができます。出力された数値データを丁寧に見ると x = 1.936 というさらに高い精度の解を得られます。この点を中心としてごく狭い範囲で2次関数のように振る舞うわけです。
 

Excel 2013 を軽くする方法

 前回約束した通り、Excel 2013 を軽くする方法です。今回の操作を行えば劇的に改善するはずです。以下は Windows 7 での手順ですので、OS によって若干の違いがあるとは思いますが、そのへんは適当に調整してください。
1. 「スタート」ボタンをクリックします。
2. 右下のプログラムとファイルの検索と書かれたボックスに regedit と入力して検索アイコンをクリックします。
3. レジストリエディタの起動アイコンが表示されるのでクリックします。
4. 左側の画面をスクロールすると "HKEY_CURRENT_USER" というフォルダがあるはずなので、それを開きます。
5. その中から "Office" という項目があるはずなので、探して開きます。
6. さらに "15.0" ⇒ "Common" ⇒ "Graphics" と順に開くと右側の画面に "DisableAnimations" という項目があると思います。もしかすると最初はなかったかもしれません。もしなければ右側の画面で右クリックして DWORD 値を新しく追加して名前を "DisableAnimations" としてください。
7. "DisableAnimations" を右クリックして「修正」を選択し、値のデータを "1" と入力します。
8. Excel を起動してみてください。あの変な重さが解消されているはずです。
 まあともかく、Excel 2013 はこのように設定変更をしないと使い物にならないぐらい重いです。軽くなったら思う存分 Excel で数学できます。皆さんもぜひ自分で色々なグラフを描いてみてください。

ノーベル物理学賞です!

 日本人がまた物理学でノーベル賞をとりましたね! 日本の基礎研究の水準の高さが証明されたことは本当に嬉しいです。物理学ではどの分野にも理論と実験があります。実験で得られたデータで理論を組み立てられ、組み立てられた理論の予想をまた実験で確認するという繰り返しで物理学は進歩します。今回受賞された梶田さんは素粒子物理学の実験に真摯に取り組んできた人です。そして検出されるニュートリノが理論で予想される値よりも少ないという観測データを得たことが、ニュートリノ振動という大発見につながったのだと語っておられました。
 理論の予測と一致していたときよりも、異なっていたときのほうが学問の世界は活気づきます。理論を研究する人は理論を修正したり、新しい理論を組み立てるという大仕事に挑戦できるからです。
 私は学生時代に理論物理学を学んでいましたので、やはり毎年、誰が物理学賞を受賞するのだろうかと気になってしまいますね。今回もニュースを見て「おー、やったー!」と思わず両手を上げて喜んでしまいました。
 このブログを読んでくださっている読者の皆さんも理数系の人が大半だと思います。理数系のどの分野に進むにしても(あるいは経済学のような分野であっても)、数学は思考の根幹を築く大切な学問です。ただがむしゃらに問題を解くだけでなく、一歩引いて肩の力を抜いて、「うーん。問題は解けたけど、このグラフの構造はどうなっているのだろう?」と、少し違った角度から数学を眺めてみてください。そうすると今まで見えなかった景色が見えてきたりします。
   
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