2012年08月27日
夜空の蛍9
《そうかそうか、それは失礼こっきりさん♪》
ミサは黒い影に、もう帰ろうと頼んだ。
神様は慌てて言った。
《チビさん、今日は何の御用だの?何かあったのだろう?》
ミサは半信半疑のまま引き返すと、こっくりと頷いた。
《はい、昨日友達のシーちゃんがお星様になりました。とっても名誉なことだけど、
寂しいんです。前のシーちゃんに戻ってきてほしいの》
神様はミサをしばらく眺めて、何かを考えている様子だった。
そしてミサの肩に手を置いて、ゆっくりと言った。
《君はアキルノの子のようだな。何かの手違いでファンブー村に来たのだろうな。
それでシーちゃんを元に戻したいんだな?》
《そうです。戻してください。》
《そうさのう、お星様になることはファンブー村ではとても名誉なことだの。
しかしアキルノでは死んでしまうということなのだよ。》
《しんでしまう?》
神様は長いひげをツルリとなでて、ミサに微笑んだ。
《そう、ミサは初めて聞いた言葉だの。でも怖いことじゃあないんだよ。
シーちゃんを村に返すことは出来る。その代わりミサはアキルノに行くのだよ》
《アキルノ?》
ミサは黒い影と神様を交互に見た。
《アキルノってところに行くの?お父さんは?ファンブー村のみんなは?》
《立ち話は腰にこたえるでな》
神様はどっこいしょっと、白い箱の上に腰をかけた。
《心配するでない。アキルノにはみんなちゃーんとおる。ただちょっと違うだけなのだよ。
それはもう決まっていて、わしにも変えられないデスティニーじゃ》
つづく
【ohanashiの最新記事】
この記事へのコメント