2012年08月20日
夜空の蛍6
明くる日、学校ではシーちゃんがお星様になった話で持ちきりだった。
たかちゃんもタンクトップも、インディも、みんな大騒ぎだ。
まさみんせんせは、とっても名誉なことと、繰り返しシーちゃんを褒め称えた。
隣の席で、靴下をつくろっているシンちゃんにミサは聞いてみた。
《ねえ、シンちゃん、シーちゃんがいなくなって寂しくないの?》
シンちゃんは、驚いた顔でミサを見た。
《ミサちゃん、何を言ってるの?寂しいなんてことないけど》
シンちゃんの真っ直ぐな視線を受けながら、思わず頷いた。
《うん、そうだよね》
ミサは、シーちゃんのいた机を、その日何度も振り返った。
夜になって一番星が出る頃、ミサは裏山の麓までとぼとぼと歩いて行った。
昨日は雨が降ったから、あぜ道はカエルの合唱だ。
麓の小高い丘まで登ると、ミサはその場で体育座りをして夜空を見上げた。
シーちゃん星を探すと、直ぐに見つかった。
どの星や惑星よりも輝き、まばゆいばかりに光を放っている。
ミサはシーちゃんの名前を叫んだが、シーちゃん星はピカピカと輝いているだけだった。
ミサは何度も何度も何度もシーちゃんの名前を叫んだが、返事は帰ってこなかった。
手をぐるぐる回して見せた。
近くにあった小石を拾って投げた。ジャンプしてみたりキックしてみたりした。
夜の濃度が深くなると、シーちゃん星の美しさは信じられないほどだった。
もう一度シーちゃんを呼んでみたが、もう掠れ声しか出なかった。
横切った☆しましま☆な野良猫が、ミサを一瞥すると、何事もなかったように草むらに
消えた。
《シーちゃん、ホントにこのまんまなの?》
満点の星空の下、ミサは立ち尽くした。
つづく
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