2012年08月23日
夜空の蛍7
ミサはファンブー村とは反対の東の方向に走り出した。
マウス村は、四角い箱がたくさん積まれてある村だ。
昔ミサが小さい頃、一度だけお父さんに連れられて来たことがある。
字を入れるて、カチッと押すと、四角い箱の中に絵が出てくる仕組みになっている。
お父さんは《すごく便利な村なんだぞ》と教えてくれた。
神様は、この四角い箱の中にいるはずなのだ。
ミサは、走りに走った。心臓が激しく鼓動を打って、息ができない。
苦しい。でも休んでなんかいられない。
ミサはとうとうマウス村の入口にたどり着いた。
マウス村は、ぐるっと一周塀に囲まれ、塀の上には鉄条網まで取り付けてあった。
両門にはウィルスバスターと書かれた御札が貼ってあった。
その横には狐の石像が、ぴーんと空を向いた姿勢で座っていた。
ミサは門をくぐろうとすると、どこからともなく黒い影が現れた。
《どこに行かれるのです?》
黒い影はミサに聞いた。抑揚のない声だった。
《神様のところです。じかだんぱんに行くの》
ミサは顔のない黒い影に訴えた。
《神様にじかだんぱんですか。あなた、ファンプー村のミサさん?》
びっくりして黒い影を見たが、顔がないので影が何を考えているのか、なんにも分からない。
《そうです。》
つづく
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