2012年08月12日
夜空の蛍
アキルノの世界
ミサは新宿で親友たちと飲んでいたが、5時を過ぎるとそろそろと帰り支度を始めた。
それを見た親友たちは、不審そうにミサを見た。
《ちょっとミサ、帰るつもりなの?今夜の主役はあなたなのに》
ミサはハイヒールを履き終わると、友達に向き直った。
《ごめんね、これからどうしても行かなくちゃならないところがあるんだ》
そう言うと友の手を引き寄せて、手を握った。
《今までありがとう。楽しかったよ》
友はポカンと口を開けてミサを見ていたが、ミサはそんなことは気にしなかった。
《バイバイ》
ミサは友の手を強く握って離すと、店の出口へと歩いていった。
アキルノに帰るのだ。
星が瞬く前に。
ミサは電車のつり革につかまりながら、徐々に薄暗くなってくる空を見ていた。
アキルノ駅に着くと、自宅近くの小さな丘を目指した。
駅前の商店街を抜け、住宅街を進んでいくと、畑が多くなってくる。
今はとうもろこしや茄子が、元気いっぱいに育っている。
ミサはそんな畑の中の小道を辿り、小高い丘に出た。
さっき通ってきた街の明かりが、ポツポツと見える。
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