2012年07月17日
深い森の物語10
《いただきま〜……こ、これは》
ミーコは、鍋の中を凝視ししていた。
鍋の中に所狭しと椎茸が煮込まれていたからである。
《私がしいたけ嫌いなのを知っているのに、どういうことなの?》
ミーコは目に怒りを讃えて静かに言った。
ミーサンはニッコリと微笑むと、椎茸を一つつまむとミーコの口元に
運んだ。
ミーコはしばらくミーサンと、つままれたしいたけを交互に見ていたが、
諦めたように首を振った。
そして目を固く閉じながら、しいたけのかけらを口に入れた。
その瞬間目は見開かれ恍惚の表情に変わった。
《うまい…》
ミーコは唸るように呟いた。
ミーコは、うまいうまいと言いながら、箸を休める事なく平らげて
いった。
ミーサンは微笑みを浮かべながら、そんな様子を見守っていた。
ミーコが嫌いな物を克服出来たことに喜びを感じていた。
あの時しいたけは別れ際、私たちを狩ってほしいと願い出たのだ。
《ミーサンなら、私達はいいのです…》
《ありがとう、しいたけ。あなたたちの生きるエネルギー、しっかりと受け
取ったよ。》
ミーサンとミーコは湯気の出ている鍋を囲みながら、互いに微笑
みあった。
おわりです
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