2012年07月12日
深い森の物語7
《よかったですね、みんな元気になって》
ミーサンは、艶々したみんなの横に腰掛けながら、満足げに言った。
その時、すぐ横を黒い何かが素早く横切った。
ミーサンは横切った物の方を見たが、そこには暗い森があるだけ
だった。
しかし、しいたけ達の目はおびえた色に変わり、上空の一点を凝視して
いる。
再びしいたけ達が見ている上空に目を向けると、そこには
しいたけこうもり※ が羽ばたきをしながら、見下ろしている
姿があった。
《来ないでー》
《食べないでー》
しいたけ達が必死に叫びだした。
ミーサンは魔法瓶のひもをしっかりと持つと、ぶんぶんとこうもりの方に
振り回して見せた。
こうもりはたじろぎ、その場を離れたが、すぐにこちらに戻ってきた。
そして、ミーサンがこれまでに聞いたことのない音を発したのだった。
反射的に両耳を塞いだが、空気が細かく震えているのが見える。
一瞬だったが、頭の奥に土足でねじりこむような、砂嵐のような音
だった。
《頭がおかしくなってしまいそう》
震える空気の中で、ミーサンはうずくまってあえぎながら、しいたけたち
を見た。
※しいたけこうもり しいたけを好んで食べるこうもりのこと。
つづく
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