2012年07月08日
深い森の物語3
ミーサンはゆっくりと、後部座席を振り返った。
そこにいたのは、雨露に濡れてテラテラと光る、一匹のしいたけだった。
《こんばんは、見ての通り私はしいたけです。
何ヶ月ぶりかの雨でこんなに潤っちゃって》
しいたけはそう言うと、嬉しそうにしっとり膨らんでいる傘を揺らして
見せた。
ミーサンは驚きとともに、しいたけの姿に目が離せなかった。
《美味しそう…確かトランクにバーベキューセットが・・》
そんなことをミーサンが思っていたのを、知ってか知らないでか
しいたけの顔は、ふいに悲しげな様子に変わった。
《今日はあなたに会えて良かった。
私には他に仲間がいるんですが、あなたに是非会っていただきたいん
です。私と一緒に、来ていただけないですか?》
しいたけのすがるような声に、ミーサンは思わず頷いた。
《ありがとう。では付いてきて下さい。》
つづく
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