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2024年07月19日

葬儀を終えて  感想

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このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います

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葬儀を終えて

百合.png


斬新な切り口のミステリー度  ★★★
人物のユニークな描写度    ★★★
遺産相続への興味惹かれる度  ★★☆
犯人への共感度        ★☆☆
無人島に持っていきたい度   ★☆☆

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感想(2件)





ネタばれなしの紹介

お葬式が終わるところからこの作品は始まります。
亡くなったのは薬で財をもうけたお金持ちのリチャードです。
唯一の子どもは先に亡くなっているので、遺産は兄弟姉妹、親戚などリチャードが残した遺言書にならって分けることになります。

何も不審な点がなかったリチャードの死ですが
葬儀に出席した妹コーラの
『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』の一言ですべてがひっくり返ります。

コーラは昔から天真爛漫な性格で言って良いことと悪いことの区別がつかない所があり、皆が隠したがる秘密を言い当てるような所も多分にあったため、葬儀に集まった皆はその言葉の真意を計り知れないまま家路につくことになります。

そしてその言葉を言い放ったコーラは家に帰った後、誰かの手によって惨殺されるのです。

コーラがあきらかに他殺であることにより、コーラが言い残した『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』の戯れ言がクローズアップされてきます。

葬儀に居合わせ、そのコーラの一言を聞いた全員に疑いかかかるのも無理はありません。
もしくは全然関係のない殺人なのか?
遺産相続の泥沼な争いもからめて、殺人の動機は誰にでも充分にあるのです。
ポアロは遺産管理者の一人に依頼されて真相を探ることになります。

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感想(0件)



ネタバレちょっとありの感想

遺産相続のドタバタ、険悪さなどはミステリーにはよくありがちですが
アガサクリスティーの小説に出てくると本当にワクワクなんです。
ですから楽しんで読める、と言うのもあるのかもしれません。
そういう意味で私は楽しめました。(ひどい感想ですね、完全に他人事ですから)

後はコーラという人の人物描写が絶妙です。
最初の被害者であるコーラの描写が一番重要だからです。
コーラが『だって、リチャードは殺されたんでしょう?』と言ったのでなければ、ここまで事件にならず問題にならなかったでしょう。しかし、このコーラは残念ながら兄弟姉妹親戚共に好かれてはいない、疎遠な関係であることを冒頭にアガサは上手に書き示しています。
本当に上手い書き方だな、と思います。
それによって読み手も真実はどうだったのかと好奇心が止まらなくなります。

犯人は私にとっては意外ではなかったのですが、動機が全く分からなかった作品です。
人によっては、犯人に対して全く共感をしないでしょう。
しかし、私は同情はしないけど、共感はちょっと出来ました。
動機に対してではなくて、コーラ(に似てるタイプと接する)に対しての感情も心の奥底にあったのかなと、ちょっと感じたりしたのです。

そして一点、この作品の中に、他の作品の重要なシュチュエーションを彷彿とさせる場面が出てきます。コレは私だけが感じることかもしれませんが”多分コレはアノ作品のアノ場面にしてるな”と思う部分があります。ネタバレのなる可能性があるので、ここでは言いたいけど言いません。
ヒントはこの作品以降に書かれる作品の中にあります。
読まれる方は、そこの所も感じながら読んでみるのも面白いかもしれません。




2024年07月18日

鳩のなかの猫  感想






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鳩のなかの猫

女学校.png



アガサクリスティーの視野の広さ度  ★★★
学校経営の面白さ度         ★★★
教育とは何か            ★★★
ただのミステリーではありません度  ★★★
とにかく女は膝は大事なのね度    ★☆☆
無人島に持っていきたい度      ★★☆

鳩のなかの猫 (ハヤカワ文庫) [ アガサ・クリスティ ]

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感想(7件)




ネタバレなしの紹介

この作品の中心はメドウバンクという有名お金持ち女学校です。イギリスの学校は全寮制というのはハリーポッターで有名ですが、そんな全寮制の学校が舞台の作品です。

そういうと、学園モノで学園ミステリーなのか?と簡単にくくりたくなりますが、そう簡単な作品ではありません。
なぜなら、冒頭に革命テロなど血なまぐさいシーンがいきなり出てくるからで革命的な方向と女学校を絡めとてもスリリングな作品になっています。これは誤解されないように言うのは難しいけれど男子校が舞台では又違う話になってしまうでしょう。

私が面白い、と思ったのはミステリー自体も独特で新鮮ですが女学校の考え方を校長先生であるバルストロードが痛快に理想をもって経営している所でした。

今まで学校を”経営”としての観点から考えたことがなかったのでとても新鮮に感じたし、学生時代に戻ってこの学校で学んでみたいと思う校風がありました。
言い方が難しいけれど、花嫁学校ではありません。
この言い方はもう古いですよね、でもこの時代はまだこの考え方があった頃だと思います。現代に学ぶべき学校の本質を突いているので読んでいてワクワクします。ミステリーなのに、その背景の女学校自体がもう面白いのです。

そんな女学校で起こってしまう殺人事件は、学校長を悩ませます。普通なら殺人事件が起こった学校などとんでもないことでつぶれてもおかしくない所ですが、肝がすわっているこのバルストロード校長は考え方が斬新で世間をよく知っていてピンチをチャンスに変える考え方が出来る人に書かれています。この人の魅力にポアロも協力を惜しまないであろう、と想像出来ます。

大人になりきらない女性の、ちょうど微妙な時期を上手く書いています。イギリスの少女は、アジアの女性よりも幼い、と表現しそこが推理の重要な事柄でもあります。多分アジアの女性の方が結婚してしまう時期が早かった頃の名残なのかなと思いますし、とてもその表現はアジア圏でも生活したことがあるアガサならではの表現かなとも思います。

大部分が女学校が舞台ですから、それに伴い、女学生や女性教師いろんな女性の生き方が出てきます。戦後の影響もあり女スパイの話も出てきます。アガサの時代は戦争の背景が色濃く、リアルに女性の仕事としてあったんだろうなと思うのです。
作り話でなく、戦争とはそういうものなのかと考えさせられます。

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感想(1件)




ネタバレちょっとありの紹介

この作品は有名女学校で起こる連続殺事件です。

なぜか室内競技場(体育館のようなものでしょう)で殺人が起こることが事件のカギになります。そして、そこへ唯一の男と言って良いのですが男前の庭師が入り込みます。年配の庭師であれば問題はないのですが、女性の園に男前の若い男の庭師というのは怪しさ満点です。この作品の映像化の時は是非ともキャスティングに力を入れていただきたく思います。(これはアガサが映像化の時にお楽しみがあった方がいいと思った為ではなかろうかと思いましたが)

最大のヒントとしたら以前にアガサが書いた『茶色い服の男』のトリックが出てきます。でもそれが分かったからと言って、このミステリーの面白さは変わりませんので、興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか。

そして肝心のポアロなのですが、この作品においてはポアロは後半からしかでてきません。ほぼ、女性が主人公と言ってもいいくらい、魅力的な女性陣が出てきます。
アガサの脳みそは”女性脳””男性脳”の区別を超えているのかもしれません。女性の身体の一部(膝)に非常に関心があるようで、その表現は他の作品でも出てきます。

ポアロが登場すると驚きの展開とともに一気に解決となります。ここの展開の仕方は非常に面白いなと思います。

殺人事件は陰惨ですし、その後の状況も楽観的なモノではありません。それでも精一杯のハッピーエンドを用意しています。ここはアガサの上手いところかなと思います。

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2024年07月17日

ビッグ4  感想

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ビッグ4

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感想(12件)





ポアロと
ヘイスティングズの友情度 ★★★

他のポアロの
探偵小説にはない感じ度  ★★★

あくまで個人的に
あわない度     ★★★

別の探偵の話なら
良いかもしれない  ★★★

無人島に持っていきたい度 ☆☆☆

45ビッグ.png



本当にこれを

アガサが描いたのだろうか?

ポアロが主人公なのに?

というくらい

他の作品とテイストが

違います!


この作品は

アガサの名前を

爆発的に(と私は思ってます)

世に知らしめた名作(迷作)の

『アクロイド殺し』を

発表したすぐ後の作品なのです。


それにしては、

この作品は

面白くなかったなあ(失礼な)

と思っている作品なので

好きな方はすみません
bikgi.png

推理小説界を

騒然とさせた

すぐ後の作品なので、

期待も大きかったと思います。

ポアロの作品としては、

最初の

『スタイルズ荘の怪事件』を

発表した後の作品なのですが、

ミステリーより本当は

こういうスパイを追う的な

作品を書きたかったのでしょうか?

間に発表された

『ゴルフ場殺人事件』は

また違うテイストなので

戸惑います(個人的な好みですみません)


個人的な感想なので、

申し訳ないですが、

アガサ好きの自分が

この作品は途中で

眠気が襲うくらいに、

読み終わるのに苦労しました。

(ひどい)

数年たって

また再度読みました。

最初読んだときは

自分も幼かったですからね!

しかし、

やはり再度チャレンジしても

読むのにつらいという

感情がひしひしと。


そして今回、

また読み直しましたが

やっぱり全然進まない。


プロローグから

頭に入らないので、

困りました。


他の探偵が

主人公ならば

面白かったかもしれません。

敢えて言うなら

ポアロにデンジャラスな冒険と

活劇をさせたかった、

そういうことなのだろうと

理解します。


あらすじとしたら

東洋のギャングの

ビッグ4の存在を追う話です。


本当にポアロらしくない、

灰色の頭脳を使う

ポアロらしくないんです!

(個人的見解)


ちゃんと読めば、

その奥にある面白さに

気付くのかもしれませんが

これは今後の私の課題です!

(しかし全然読む気が

しないので大問題)

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感想(0件)




ネタバレなしの紹介

ヘイスティングズは

長年ポアロから

離れた暮らしを堪能し

残りの人生を久しぶりに

旧友のポアロのもとで

過ごそうと思いたち、

感動の再開をします。



しかし再開した途端

その矢先に

怪しげな男が飛び込み

息も絶え絶え倒れ込みます。

しかし

ある策略によって

ポアロたちがその男から

目を離した途端に

その男は死を遂げる


そこからは

ポアロが

謎のギャング

ビッグ4を追い詰め、

逆に追い詰められ、


という冒険が始まるのです。



読者を裏切る仕掛けもあります



なによりポアロが

大変にアクティブで

あっちこっち行きます


中国系のマフィア的な

”ビッグ4”の首領

リー・チャン・エンなる

人物を追い詰めるのです




ポアロと

ヘイスティングズとの

友情の証みたいなエピソードも

満載だから

それも書きたかったのかなと

思わないでもないです。

でも

とにかく

いつものポアロの推理小説とは

一味違うテイストな

作品だと言うことは

お伝えしたいです。

(個人的意見です)

こういうポアロの一面も

あるんだなと思える

作品ではあります。



無人島に

持って聞きたい度の

★がゼロなのは、

ギャングとの

冒険活劇なので

無人島では真逆な感じで

すごく疲れるかなって

いうのと

作品が好みじゃないと言い切れる

私の好みの問題です。

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ゴルフ場殺人事件  感想





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ゴルフ場殺人事件

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1ゴルフ場事件.png


アガサの若々しい作品       ★★★
ヘイスティングズの惚れっぽさ度  ★★★
ポアロの推理が冴えてる度     ★★☆
警察を出し抜く度         ★★★
無人島に持っていきたい度     ★★☆

ゴルフ場殺人事件 (クリスティー文庫 エルキュール・ポアロ 0) [ アガサ・クリスティー ]

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ネタバレなしの紹介

このお話は、ポアロの第2弾になります
『スタイルズ荘の殺人』でポアロが鮮烈デビューをした次の作品なので、アガサの文章も若々しさに溢れています。

あらすじ

あるとき富豪のルノール氏から南米の仕事上のトラブルで脅迫を受けているとポアロは依頼を受け、この男の家にいくのですが、そのルノール氏の家に行くとすでにその富豪は死んでしまっていたという不本意な始まりです。

しかもゴルフ場のバンカーの穴に入っているという状態で見つかるので”ゴルフ場殺人事件”なのです
家で縛られて生き残っていたエロイーズ夫人の話によると南米からの不審者が2人訪問し、ルノール氏は連れ出されてしまい殺されてしまったらしいのです。

当然事件解明に乗り出すポアロなのですが、よそから来た探偵のポアロを良く思っていない地元警察と確執が生まれます。
ポアロ対地元刑事のジロー刑事との推理合戦もこの小説を面白くさせています。

しかし、そもそも、このお話の最初が
”シンデレラ”と名乗る魅力的な女性が登場し、ヘイスティングズと出会うところからお話が始まるので、なんてロマンチックな恋愛ドラマが始まるんだろうという感じなのです。(もちろんこの女性も事件に大いに関係してきます)

ポアロと訪れたルノアール宅のとなりの美女にも好意を抱きますし、なんてヘイスティングズは惚れっぽいんだろうと思います。なので読み始めた私は戸惑いました。

それくらいヘイスティングズが恋に墜ちる描写が若い感性で書かれていて、あまりに惚れっぽくて推理小説になるんだろうかと心配するくらいです。

恋するが故、事件を引っかき回すしポアロの邪魔もしまくります。中学生の初恋じゃあるまいし一体何歳の設定なのかと思うんですが恋愛に歳は関係ないですね。しかし初恋物語かと勘違いしそうです。
でもちゃんと推理小説になっています。

ネタバレちょっとあり

この作品の面白いところは、南米から来たと思われる人物が犯人らしく単純に思われるけども、そう単純ではないところです。複雑に丁寧に過去に起こった事件との絡みを旨く組み合わせているところです。コレはちょっと難しいなと思う事件です。

そしてエロイーズ夫人とおとなりのドーブルーユ夫人が事件のカギですがどちらも強い特徴があります。
男を愛し、そしてお金を愛する女性。両方欲しいのが人間なんでしょうけどもなかなか割り切れるモノではないと思うのです。

結局は愛の為に罪を犯し自分の欲望のために犯罪に手を染めるのですが、どっちがどっちとは言えませんが、どちらの女性も強いです。それだけは言っておきます。

ポアロの推理は冴えています。ただ時代的に可能な犯罪なだけで、現代では通用しない犯罪かなと思います。その辺は推理小説と割り切って楽しみたいと思います。

ところでゴルフ場で死体が見つかっただけで、特にゴルフをするシーンとかでてきません。
そもそもポアロはゴルフが嫌いなんじゃないでしょうか?(言い過ぎかも)ゴルフに関して全く関心ある描写がありません。ヘイスティングズはたしなむようですが。

そしてアガサの小説は題名が凝っているイメージがあると思うのですが、この『ゴルフ場殺人事件』は『そして誰もいなくなった』『ABC殺人事件』に比べれば題名の印象は残らないですね。それが残念と言えばそこだけ残念な作品です。

この小説のヘイスティングズの描き方を見て、アガサはこの段階ではまだ名探偵ポアロを主人公にシリーズ化にするつもりはなかったんじゃないかと思います。

ゴルフ場.png

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2024年07月16日

アクロイド殺し 感想





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アクロイド殺し
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アガサはアイデアマン度   ★★★
読んでおいた方が得度    ★★★
映像化が難しい度      ★☆☆
無人島に持っていきたい度  ☆☆☆

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感想(0件)





この作品はご存じの方が多いかもしれませんね
この超有名な作品はミステリー好きなら絶対読んでおいた方が良いと思う作品です
私が説明するまでもなく超有名な作品かなと思うわけですが
まだ読んだことも見たことも、噂も聞いた事がないという方が逆にうらやましいです

これから新鮮な驚きが待っているのですから!

読み終わると”絶対読んだ方がいい”と言う意味が分かると思います

このトリックを思いついたアガサは自信満々でノリノリでこの作品を書いただろうと想像出来ます

ポアロものでは初期の方の本になります
ヘイスティングズが結婚して南米に行っているので代わりに、今回は語り部としてシェパード医師が常にポアロと行動を共にして私たち読者に逐一報告してくれる形になっていますが、既にポアロは引退してカボチャ作りに精を出している設定なのも面白い始まりだなと思います


ネタバレ無しの紹介

アクロイド殺しと言う題名ですからもちろん地元の名士”アクロイド”が殺される話ですが、小説の始まりはまだアクロイドは生きています。

ポアロが同じ村にいるというのに殺されてしまうアクロイドがお気の毒でもありますが、そうじゃないと小説にはなりませんから仕方ないですね


しかし、読み終わって犯人が分かった私には、犯人に何の同情も出来ないので、ポアロに真相を突き止められてなかったとしても、(その村にポアロがいなかったとしても)犯人はろくな人生でなかったかもしれないと思ったりもします。

とにかくアクロイドが殺され、犯人捜しが始まり、カボチャを作って引退しているポアロがただの隣人じゃないことが分かり、シェパード医師と事件を追うのですが、もう既にこの時点で読者はアガサの罠に半分かかっているようなものです。

最初から心して読んで行ってください、としか私には言えないです!

シェパード医師のお姉様キャロラインが良いキャラクターです。この人がいるからこそ、更にこの作品が面白くなったと言って良いでしょう。

私はこの作品を読んだときちょっとだけ「ABC殺人事件」を思い出しました。話の内容は全く違いますが、なんとなくアイデアがリンクしています。ヒントは”水曜日の男”です!
それではこれから読む方はどうぞ楽しんで下さいますように

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茶色の服の男 感想


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茶色い服の男

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アガサの作品の中で一番アクティブな女性が出てくる度 ★★★
勇気がもらえる度                  ★★★
冒険を忘れた人に読んで欲しい度           ★★☆
ミステリー度                    ★☆☆
無人島に持っていきたい度              ★☆☆

豪華客船.png


ネタばれなしの紹介

この作品は、探偵物ではありません。
ポアロもマープルもアガサクリスティーの作品で有名な探偵が出てきません。

たった一人の女の子が冒険を繰り広げる物語です。
言うなれば、冒険活劇というジャンルに近いかもしれません。
そういうとミステリーでは無いように思いますが、それが絶妙に推理小説となり得るギリギリのところで書いてある作品なのです。

偶然にあるショッキングな列車事故(と言っておきます)に遭遇しそれが殺人と絡むことで始まることになりますが、そもそも主人公のアンが、若き女性でたった一人の身内の父親が亡くなったことから始まります。

父親が死んで天涯孤独でしょんぼりしてるかと思うとそうではありません。自由になったとばかり孤独な少女が一人で羽ばたくのです。少しばかり残してくれた遺産を手に向こう見ずで自信家で、、、自分の若さを肯定しているこの少女には驚くほど行動力だけがあります。
逆に言えば、一人の少女に行動力を起こさせる事に矛盾を感じさせない工夫をアガサクリスティーはしていますし、そのアイデアは一体どこから思い付くのだろうと思います。

それにしても『茶色の服の男』という題名は、私には本の中身を考えると随分”らしくない”題名だなと思います。

アガサクリスティーと言えば、『そして誰もいなくなった』や『ABC殺人事件』『カーテン』などちょっと凝った感じの題名を付け、読んだ後に”ああ、そうか”と思う物が多いのですが、この『茶色の服の男』は、本の中身のアクティブさ冒険活劇の様子を考えると思ったよりおとなしい題だなあと今でも思います。

実際、この題名のせいで私はアガサの作品の中でも随分遅くに読むことになりました。茶色の服の男って言われても、全然ときめかない題名だなあと今でも思います。
あくまでも私の感性なので、申し訳ありません。でも、読んでみると内容は素晴らしくアグレッシブで冒険、スリル、恋愛、ゴージャスな内容でした。

『茶色の服の男』なんてたいしたことないのでは?と思ってた私はまんまと裏切られました。

映画化してみたら面白い作品だなと思いますね。

主人公の女の子がとてもチャーミングに書かれているので足が奇麗な女優さんに是非演じていただきたい、なんて思います。(何故足が奇麗と言うのかは、是非本を読んでいただきたいと思います)

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もっともアガサは自分の作品が映画化されることがあまり好きではなかったと聞いていますが。
そして 女の子というのはどうして危険な男に惹かれてしまうのでしょうか
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アガサは恋にのめり込む若さも危険も充分に書き分けていて、冒険シーンもさることながら本当に若々しい作品となっています

そしてこの作品は後にポアロの推理小説のヒントとなる事柄というか仕掛けが出てくるそうなのですが、アガサファンでポアロファンならその作品がどれかというのはすぐ分かるでしょう!

自慢じゃないですが、私はすぐに分かりました!

皆様も、どの作品がそうなのか、そんな推理にも挑戦して読んでみてはいかがでしょうか


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2024年07月15日

秘密機関  感想

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秘密機関
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冒険活劇度               ★★★

ミステリーかどうか悩む度        ★★★

少なくとも推理物ではないかも度     ★★☆

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ネタバレ無しの紹介
あらすじ.png



この作品はアガサの

作品発表順で行くと

『スタイルズ荘の怪事件』の

次の作品です。

ミステリーの第2弾かと

期待してしまいますが、

この『秘密機関』は

ミステリーや推理というよりは

冒険とスパイの物語ですから、

ちょっと雰囲気が違います。


文章の雰囲気が若々しいです。

ポアロは出てきませんし、

若いトミーとタペンスの物語です。


『茶色い服の男』の時にも思いましたがアガサは若い女性がイキイキと冒険に出る話が好きなようです。アガサは本当はスパイ物や冒険物が書きたかったのでしょうか?


しかし、この後に発表される

『ビック4』という作品で

無理やり

ポアロに冒険をさせているような

作品がありますが、

その作品は全くびっくりするほど

読みづらかった作品でした。

(ハッキリ言って私は眠くなります)

しかし、その『ビッグ4』に

比べればこの『秘密機関』は

若い男女のコンビが冒険をする物語で、

読み応えがあります。

戦後のお金はない

仕事もない、

でも若さと知恵と行動力は

誰にも負けない、

そんな前向きな2人が主人公です。

そしてこの2人が

ユニークな相性で

書かれていて、

お互いの足りないところを

補い合ってとても大きな事件を

解決して行くのです。

あり得ないことの連続です。


しかし、それも戦争の後の

混乱期を書いていると思えば

同情も出来ます。

戦後のイギリス、

お金がない職のない若者は

溢れていました。

生きる希望、

まだ若いんだから何でも

挑戦しなさいよと

アガサは元気づけていたのかも

しれません。

ハラハラドキドキの冒険の

物語になっています。

onoimitu.png


ネタバレ無しのあらすじ


いきなり船が沈むシーンから

始まります。

悲劇の”タイタニック”を

思い起こさせる始まりですが、

沈む原因は氷山ではなく

戦争の影響の”魚雷”にやられた

というのがあまりにも

ひどい始まりです。

船の乗客は順番に

救助ボートに乗るのを待っていますが、

ジェントルマンの国では

女性や子どもからボートに乗れるので

女性が助かる可能性が高い。

それを痛いほど分かっている

男のスパイが、


『私が助からなかったら

アメリカ大使館へこれを届けて欲しい』と

機密文書をある

女性に託すのです。



まさに生きるか死ぬかの

瀬戸際の頼み事ですし

頼まれた女性も命がけです。

そんなシリアスなシーンからの

始まりなのです。


そして、場面は変わり、

戦後のイギリスの町中で

失業中の若い男女

トミーとタペンスが出会い、

なにかしらで2人で生きていくすべを

話し合っている時に、

ある男から声を掛けられます。

怪しげな仕事を依頼され、

タペンスが口からでまかせに

女性名”ジェーン・フィン”と

名乗ったところ、

何故か相手は怒り出し、

大金を渡すのです。

仕事の依頼はよく分からず

完全に受けていないと言うのに。

詳しい仕事の話をしようとした

次の日、その怪しげな

事務所と男は消えてしまいます。


そんな状況で

ジェーン・フェンとは誰か?

何者か?

調査を始め、

自ら危険な人捜しの

冒険に飛び込んでいく

トミーとタペンスなのでした。

感想ネタなし.png


簡単に言うと、

2人の男女トミーとタペンスの

探偵物語といったところです。

素人探偵がよくもまあ、

死なずにいられるなあという

危険とハプニングの連続です。


文章も若いです。

きっと楽しい冒険に

ワクワクしながらアガサは

書いているんだと思いました。

トミーとタペンス、

この2人の恋模様も描かれますし

『ABC鉄道案内』も出てきて、

アガサファンで『ABC殺人事件』を

読んだことが在る人は

”あれ?!”と思うでしょう。

期待しないで読むと

楽しめる一冊かもしれません。



私は 冒険作品より

ポアロやマープルのミステリーが

好きですから

無人島には持って行かない

本ではありますが、

結婚についてのアガサの

興味深い考察もありますので

それを読むだけでも

面白い作品だと思います。


尚、

アガサはこの若い2人を

後に『おしどり探偵』という

短編集で活躍を書いています。

かわいい2人の

ユニークな会話や

アガサの遊び心満載の

じゃれ合いを楽しむ方には

こちらもおすすめします!

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蛇足ですが

男女ペアで事件解決の

お話は、他にもあって

『なぜ、エバンスに頼まなかったのか?』

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という作品の

ボビィとフランキーがいますが、

こちらは最初から

ミステリーの要素が強いですし、

貧乏な青年と伯爵令嬢の2人の

コンビの物語にもなっています。

私はこちらの方が

推理要素が多い作品なのですが、

完全に好みの問題ですので

ご了承ください。






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ホロー荘の殺人 感想


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ホロー荘の殺人

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個性的な登場人物がいる度 ★★★

トリックの複雑度 ★☆☆

ポアロの活躍度 ★☆☆

アガサの芸術家に対する
秀逸な表現 ★★★

無人島に持っていきたい度 ★☆☆

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ネタばれ無しの紹介
感想ネタなし.png

この作品は一見単純に見えます。

明らかに最初に犯人が分かるからです。

(しかしそういう単純な

話ではもちろんありません)

なにせ私がこの作品を

最初に読んだのが

中学生でしたから


『なんて単純な話だろう、

ポアロが出る幕もない!』

などと思ったものです。

今思えば、

人生経験も少ない時の

浅はかな幼さ故なのですが。

それと同時に

物語を引っ張る女性

”ヘンリエッタ”という

芸術家が出てくるのですが

その女性のようになりたいと

あこがれを抱きました。

彼女に自立と

愛する人に媚びない強さ

(当時はそう思いました)

を感じたからです。


この作品には

魅力的で個性的な女性5人が

てきます。

幼い私はどんな

大人の女性になろうかと

思ったときにサンプルが

この本に出てくる、

と感じていました。


あこがれのヘンリエッタと

対照的な女性”ガーダ”には

イライラしましたし、

ホロー荘の女主人の”ルーシー”には

まさかこんな支離滅裂な人

いるかしら?と思ったし

(でも、社会に出たら、

意外といました(^_^;))


親近感を覚えるのが”ミッジ”

絶対に共感できない”ヴェロニカ”

これだけで、充分かき回せそうな

設定です。

28527470_s.jpg




さて話が少しずれましたね!

そもそもこの作品は

読んでその名の通り

『ホロー荘』で起こる殺人の話

なのですが、『ホロー荘』

というのは富裕層の持つ

邸宅の名前です。



そこに仲良し親族が

集まるのが年中行事に

なっているわけです。

それだけでは殺人の臭いは

しませんね?



殺人事件が起こるまでに

実に本編の3分の1

読み終わらなければなりません。

全ては殺人が起こるまでの

入念な舞台装置を

設置するためなんですが、

その間に男女のドロドロな

ドラマがありまして

今から思えば中学生には

刺激が強いですね!

パワハラはあるし浮気はするし!

(詳しくは言いませんが)

ホロー荘.jpg


浮気しまくる男は

一生治らないんでしょうね

(子どもの私はこの作品で

男って簡単に浮気するなあと

学びました←人によるだろうけど)




すっかり整えられた舞台で、

起こる殺人(に見える情景)

をポアロは目撃して

推理が始まるのですが、

それまでに読者は

前の日に何がこのホロー荘で

起こったかは分かっています。

それでも次の日の

あまりにも急展開な殺人の情景を

ポアロの目線で一緒に

知らされるので読者は

これは殺人が

起こったという合図なんだろうか?

どうなんだろうか?

なんて混乱すると思います。


そこが新鮮です。



この作品を推理小説とするには

あまりにも読者に対して

証拠が少なすぎる気がするので、

トリックの複雑度は

私的に★少なめです。



共感出来ない自分がいるので、

無人島に持っていきたい度も

少なめですが、

アガサの”脚本”の上手さには

うなります。


アガサの脚本の

素晴らしさがよく分かる

作品です


それと


アガサの芸術家に対する

リスペクトを感じる作品でもあります。

他の作品『5匹の子豚』でも

芸術家に対しての

リスペクトを感じることが

出来ます。

そちらも読んでみられては

いかがでしょうか


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春にして君を離れ 感想





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春にして君を離れ

harunishite.png


もしかしたらあなたを変える一冊かもしれない度  ★★★
これは傑作だ!度                  ★★☆
年齢を選ぶかもしれない作品度           ★★☆
探偵らしさ                    ☆☆☆
無人島に持って行きたい度             ★☆☆ 



ネタバレなしの紹介

この作品には有名な名探偵は出てきません
いわゆる推理小説ではありません

この作品は覚悟して読まなければなりません。
読み終わった後にあなたを変えるかもしれないからです。
もしくは、全く響かないかもしれない。


なぜなら、そういう私が最初にこの小説を読んだときは”なんて退屈な話だろう”と思ったのです。
しかし時間とともに深い感動に変わった作品です

読んだのは小学校のころでしたから無理もないかもしれません。アガサクリスティーの推理小説にハマりだしたころで、ポアロやマープルなどと同じ推理小説と疑わずに読んで、探偵も殺人も出てこないのですから幼い私は『?』となった作品です。


あらすじは、ありふれた主婦が主人公の物語。優しい夫、子どもにも恵まれて幸せに暮らすジョーンの人生のある一角を描いています。結婚した娘の病気を知りバクダッドに看病に出かけたジョーンはその帰りに古い友人と出会い、さらに宿泊所に留まることによって何かが彼女に起こるのです。

女として、母として光り輝く昼間にいたと思っていたのに気がつけば闇が迫っているかのようなぞわっとする感覚。
最後まで読まなくては彼女の真実にはたどり着けません。

これがサスペンスだと気づくには時間がかかりました。小学生の自分には気づけなかったのです。
再度私が読んだときは、いい大人になってからでしたが、その”意味”に気づいたとき、この小説の価値が一気に代わりました。その時の衝撃は面白いほどでした。


ネタバレギリギリの内容

私にとってこの本の中で印象的なのは夕暮れの”二人”のシーンでした。ここの描写は、素晴らしいです。こんな文章を書きたいと、ある意味憧れにしている文章のひとつです。
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後は、思い出の中の恩師たちが思い出されて、ジョーンをゆさぶるところも巧妙です。すべては最初に出てくる旧友との再会がそうさせるという無理のない流れです。それまでは本当に何ごとも順調な幸せなジョーン。

そして、バクダッドの宿泊所で起こった唐突な出来事がすべてを変えます。しかし、それだけでは終わりません。


最後に列車の中で出会う女性が自分には不気味なのです。一見、ただの通りすがりの乗客にしか過ぎない人物のように描かれていますし、ある決意をもったジョーンの救いのようにも思いますが、果たして救いだったのでしょうか?
はたしてなんのためにアガサはこの女性に会わせたのだろう、もし出会わなければ、、、ジョーンの運命も大きく変わったかもしれないのです。
それくらい最後に出会う女性の存在が私には異質に思います。

最後まで読んで、ようやく主人公のジョーンが、やはり誰よりも幸せな女性、でもそうではない側面があると言うことを読んだ自分自身が感じずにいられないのです。

是非一度は読んでいただいて、どう感じるのか?感じないのか?とても考えさせられる作品です。

なので自分が無人島に持っていくには、ちょっと難しい本だなと思うので★は低めです
でも、ファンとしてはとても読んでいただきたい一冊ではあります


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2024年07月14日

娘は娘






このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
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自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


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娘は娘


探偵モノではないが気になる一冊度    ★★☆
娘を持つ人が読んでおきたい度      ★★★
成長するって時間がかかる度       ★★★
アガサの男女感がわかる度        ★★☆
アガサはこういう本もいい度       ★★☆
無人島に持っていきたい度        ☆☆☆

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アガサクリスティーと言えば『ポアロ』や『ミスマープル』など探偵が出てくるミステリーが有名でしょう!
しかしこの作品は探偵モノではありません


私も、アガサが推理もの以外の小説を書いていることは、かなりの探偵小説を読んでから知りました
アガサの別の名のメアリ・ウエストマコットで書かれた探偵もの以外の作品です


なので、アガサクリスティーの探偵作品のファンには戸惑いの一冊かもしれません。
しかし『春にして君を離れ』を読んでその世界を理解した後の私には読みたいなという気にさせました。
(詳しくは『春にして君を離れ』のところをご覧ください)


簡単にいうなら人間ドラマです
例えるなら日本のドラマで言うなら『渡る世間は鬼ばかり』の親子版という感じでしょうか
(ざっくり言うと)

最初は深い愛をもつ典型的な母に焦点があります
娘の幸せだけを願う母、盲目的かと思えるほどに娘に服従し、娘は自分ではそうとは分からず母に依存している関係です


娘の身体が大きくなるにつれ、しかし心はまだ身体に追いつかないアンバランスな状態も良く書かれています。
ひとつ思うのは、母親もこういう大人になりかけの娘を育てるのは初めての事だということ。母親自身が無事に大人になったという経験はありますが、娘が大人になるということは全く別の話なのだとこの作品を読んで分かりました。
まず母がシングルマザーであり、新しい恋に生きようとする可能性、自由があるということ
この母親に新しい恋人が出来る設定もよくあるようで、現実にはとても難しい問題があることもある程度想像がつくでしょう
この作品では娘が子どもであることの武器を総動員して母の幸せを阻止するのです

子どもの気持ちは『お母さんの為を思って』なのであるから、一番始末が悪い
『あんな男と結婚したらお母さんは不幸になる』と、母の恋人の欠点だけをことさら大きく宣伝し娘自ら思い込み母の恋人は敵であるから、全力で攻撃をしまくるのである
ある意味それは正しい


なぜなら、完璧な人などいないから、娘が”この人のここはダメだと思う”は正しいのである
一方、母は大人であるから人は誰も完璧ではないことを知っている。
恋をするとは結婚するとは、夫婦になるということは
完璧な人同士だから幸せになるとは限らないということも知っている
結局は娘の幼さ故、母の愛を独占したいためということも分かりながら、母親は自分の幸せを”娘の為に”苦しくてたまらないのに手放すのである

そういうわけで。。。。
結果的には、相手の幸せを願ったはずなのにそれが相手の幸せにならない愚かさを実に巧妙に書いています
何が言いたいかというと、この作品には人生の滑稽さと未熟さと犠牲の醜さを書いていると言えるのではないだろうか
傍から見たら、冷静に判断できるが(この作品を読んだ後の自分というのもあるが)
もし、当事者であったなら、きっと自分も”何かに負けて”この母のように、犠牲の愚かさ”を選択するのであろうとも思った
娘は娘1.png


小説の中の母は恋人と娘の二択を迫られて、娘のことを取る構図となっているが、結局はこの母は、その時どっちを選んでも悩み苦しい結果になっただろうとは思う。そういう人であろうから。
小説のように娘を選んだ母の立場で物を言うなら、他人から観た自分も意識したり、娘に恩を売る気持ちがあったかもしれない。
でも『誰かの為の犠牲』と自分が思っている限り自分の幸せもない(なかなかそれに気がつかないけど)

これが他人なら違う感想もあるかもしれないが、母娘なので、他の人間関係よりは干渉せざるえないことも『娘は娘』の題に表されているかもしれない。(ちなみに『母と息子』だとこうはならない、絶対に違う。)
作品の後半はそんな母娘の対決になるのですが、そこが唯一謎解きのようにスカッとさせます


そんなわけで、読み応えある一冊ではありますが、私が無人島にもって行くには湿っぽいし、無人島に行ってまで親子関係の謎解きはもうイイかな、と思うので、持っていきたい気持ちはありません(ばっさり)でも、良い作品ですよ!


親子を取り巻く人物がほんとうに面白い。腐れ縁的な悪友もそう、ばあや的なお手伝いさんもすばらしい。
読む人の立場によって感想も違ってくるであろうと思います
でも、声を大にして言いたいですが、ミステリーとしての謎解きはなくとも小説としてとても良い小説です!



posted by agata5 at 14:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘は娘
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