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2024年07月15日

秘密機関  感想

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このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所!
というのを紹介していくブログです
自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


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秘密機関
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冒険活劇度               ★★★

ミステリーかどうか悩む度        ★★★

少なくとも推理物ではないかも度     ★★☆

無人島に持っていきたい度        ☆☆☆

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ネタバレ無しの紹介
あらすじ.png



この作品はアガサの

作品発表順で行くと

『スタイルズ荘の怪事件』の

次の作品です。

ミステリーの第2弾かと

期待してしまいますが、

この『秘密機関』は

ミステリーや推理というよりは

冒険とスパイの物語ですから、

ちょっと雰囲気が違います。


文章の雰囲気が若々しいです。

ポアロは出てきませんし、

若いトミーとタペンスの物語です。


『茶色い服の男』の時にも思いましたがアガサは若い女性がイキイキと冒険に出る話が好きなようです。アガサは本当はスパイ物や冒険物が書きたかったのでしょうか?


しかし、この後に発表される

『ビック4』という作品で

無理やり

ポアロに冒険をさせているような

作品がありますが、

その作品は全くびっくりするほど

読みづらかった作品でした。

(ハッキリ言って私は眠くなります)

しかし、その『ビッグ4』に

比べればこの『秘密機関』は

若い男女のコンビが冒険をする物語で、

読み応えがあります。

戦後のお金はない

仕事もない、

でも若さと知恵と行動力は

誰にも負けない、

そんな前向きな2人が主人公です。

そしてこの2人が

ユニークな相性で

書かれていて、

お互いの足りないところを

補い合ってとても大きな事件を

解決して行くのです。

あり得ないことの連続です。


しかし、それも戦争の後の

混乱期を書いていると思えば

同情も出来ます。

戦後のイギリス、

お金がない職のない若者は

溢れていました。

生きる希望、

まだ若いんだから何でも

挑戦しなさいよと

アガサは元気づけていたのかも

しれません。

ハラハラドキドキの冒険の

物語になっています。

onoimitu.png


ネタバレ無しのあらすじ


いきなり船が沈むシーンから

始まります。

悲劇の”タイタニック”を

思い起こさせる始まりですが、

沈む原因は氷山ではなく

戦争の影響の”魚雷”にやられた

というのがあまりにも

ひどい始まりです。

船の乗客は順番に

救助ボートに乗るのを待っていますが、

ジェントルマンの国では

女性や子どもからボートに乗れるので

女性が助かる可能性が高い。

それを痛いほど分かっている

男のスパイが、


『私が助からなかったら

アメリカ大使館へこれを届けて欲しい』と

機密文書をある

女性に託すのです。



まさに生きるか死ぬかの

瀬戸際の頼み事ですし

頼まれた女性も命がけです。

そんなシリアスなシーンからの

始まりなのです。


そして、場面は変わり、

戦後のイギリスの町中で

失業中の若い男女

トミーとタペンスが出会い、

なにかしらで2人で生きていくすべを

話し合っている時に、

ある男から声を掛けられます。

怪しげな仕事を依頼され、

タペンスが口からでまかせに

女性名”ジェーン・フィン”と

名乗ったところ、

何故か相手は怒り出し、

大金を渡すのです。

仕事の依頼はよく分からず

完全に受けていないと言うのに。

詳しい仕事の話をしようとした

次の日、その怪しげな

事務所と男は消えてしまいます。


そんな状況で

ジェーン・フェンとは誰か?

何者か?

調査を始め、

自ら危険な人捜しの

冒険に飛び込んでいく

トミーとタペンスなのでした。

感想ネタなし.png


簡単に言うと、

2人の男女トミーとタペンスの

探偵物語といったところです。

素人探偵がよくもまあ、

死なずにいられるなあという

危険とハプニングの連続です。


文章も若いです。

きっと楽しい冒険に

ワクワクしながらアガサは

書いているんだと思いました。

トミーとタペンス、

この2人の恋模様も描かれますし

『ABC鉄道案内』も出てきて、

アガサファンで『ABC殺人事件』を

読んだことが在る人は

”あれ?!”と思うでしょう。

期待しないで読むと

楽しめる一冊かもしれません。



私は 冒険作品より

ポアロやマープルのミステリーが

好きですから

無人島には持って行かない

本ではありますが、

結婚についてのアガサの

興味深い考察もありますので

それを読むだけでも

面白い作品だと思います。


尚、

アガサはこの若い2人を

後に『おしどり探偵』という

短編集で活躍を書いています。

かわいい2人の

ユニークな会話や

アガサの遊び心満載の

じゃれ合いを楽しむ方には

こちらもおすすめします!

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蛇足ですが

男女ペアで事件解決の

お話は、他にもあって

『なぜ、エバンスに頼まなかったのか?』

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という作品の

ボビィとフランキーがいますが、

こちらは最初から

ミステリーの要素が強いですし、

貧乏な青年と伯爵令嬢の2人の

コンビの物語にもなっています。

私はこちらの方が

推理要素が多い作品なのですが、

完全に好みの問題ですので

ご了承ください。






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ホロー荘の殺人 感想


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ホロー荘の殺人

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個性的な登場人物がいる度 ★★★

トリックの複雑度 ★☆☆

ポアロの活躍度 ★☆☆

アガサの芸術家に対する
秀逸な表現 ★★★

無人島に持っていきたい度 ★☆☆

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ネタばれ無しの紹介
感想ネタなし.png

この作品は一見単純に見えます。

明らかに最初に犯人が分かるからです。

(しかしそういう単純な

話ではもちろんありません)

なにせ私がこの作品を

最初に読んだのが

中学生でしたから


『なんて単純な話だろう、

ポアロが出る幕もない!』

などと思ったものです。

今思えば、

人生経験も少ない時の

浅はかな幼さ故なのですが。

それと同時に

物語を引っ張る女性

”ヘンリエッタ”という

芸術家が出てくるのですが

その女性のようになりたいと

あこがれを抱きました。

彼女に自立と

愛する人に媚びない強さ

(当時はそう思いました)

を感じたからです。


この作品には

魅力的で個性的な女性5人が

てきます。

幼い私はどんな

大人の女性になろうかと

思ったときにサンプルが

この本に出てくる、

と感じていました。


あこがれのヘンリエッタと

対照的な女性”ガーダ”には

イライラしましたし、

ホロー荘の女主人の”ルーシー”には

まさかこんな支離滅裂な人

いるかしら?と思ったし

(でも、社会に出たら、

意外といました(^_^;))


親近感を覚えるのが”ミッジ”

絶対に共感できない”ヴェロニカ”

これだけで、充分かき回せそうな

設定です。

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さて話が少しずれましたね!

そもそもこの作品は

読んでその名の通り

『ホロー荘』で起こる殺人の話

なのですが、『ホロー荘』

というのは富裕層の持つ

邸宅の名前です。



そこに仲良し親族が

集まるのが年中行事に

なっているわけです。

それだけでは殺人の臭いは

しませんね?



殺人事件が起こるまでに

実に本編の3分の1

読み終わらなければなりません。

全ては殺人が起こるまでの

入念な舞台装置を

設置するためなんですが、

その間に男女のドロドロな

ドラマがありまして

今から思えば中学生には

刺激が強いですね!

パワハラはあるし浮気はするし!

(詳しくは言いませんが)

ホロー荘.jpg


浮気しまくる男は

一生治らないんでしょうね

(子どもの私はこの作品で

男って簡単に浮気するなあと

学びました←人によるだろうけど)




すっかり整えられた舞台で、

起こる殺人(に見える情景)

をポアロは目撃して

推理が始まるのですが、

それまでに読者は

前の日に何がこのホロー荘で

起こったかは分かっています。

それでも次の日の

あまりにも急展開な殺人の情景を

ポアロの目線で一緒に

知らされるので読者は

これは殺人が

起こったという合図なんだろうか?

どうなんだろうか?

なんて混乱すると思います。


そこが新鮮です。



この作品を推理小説とするには

あまりにも読者に対して

証拠が少なすぎる気がするので、

トリックの複雑度は

私的に★少なめです。



共感出来ない自分がいるので、

無人島に持っていきたい度も

少なめですが、

アガサの”脚本”の上手さには

うなります。


アガサの脚本の

素晴らしさがよく分かる

作品です


それと


アガサの芸術家に対する

リスペクトを感じる作品でもあります。

他の作品『5匹の子豚』でも

芸術家に対しての

リスペクトを感じることが

出来ます。

そちらも読んでみられては

いかがでしょうか


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春にして君を離れ 感想





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春にして君を離れ

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もしかしたらあなたを変える一冊かもしれない度  ★★★
これは傑作だ!度                  ★★☆
年齢を選ぶかもしれない作品度           ★★☆
探偵らしさ                    ☆☆☆
無人島に持って行きたい度             ★☆☆ 



ネタバレなしの紹介

この作品には有名な名探偵は出てきません
いわゆる推理小説ではありません

この作品は覚悟して読まなければなりません。
読み終わった後にあなたを変えるかもしれないからです。
もしくは、全く響かないかもしれない。


なぜなら、そういう私が最初にこの小説を読んだときは”なんて退屈な話だろう”と思ったのです。
しかし時間とともに深い感動に変わった作品です

読んだのは小学校のころでしたから無理もないかもしれません。アガサクリスティーの推理小説にハマりだしたころで、ポアロやマープルなどと同じ推理小説と疑わずに読んで、探偵も殺人も出てこないのですから幼い私は『?』となった作品です。


あらすじは、ありふれた主婦が主人公の物語。優しい夫、子どもにも恵まれて幸せに暮らすジョーンの人生のある一角を描いています。結婚した娘の病気を知りバクダッドに看病に出かけたジョーンはその帰りに古い友人と出会い、さらに宿泊所に留まることによって何かが彼女に起こるのです。

女として、母として光り輝く昼間にいたと思っていたのに気がつけば闇が迫っているかのようなぞわっとする感覚。
最後まで読まなくては彼女の真実にはたどり着けません。

これがサスペンスだと気づくには時間がかかりました。小学生の自分には気づけなかったのです。
再度私が読んだときは、いい大人になってからでしたが、その”意味”に気づいたとき、この小説の価値が一気に代わりました。その時の衝撃は面白いほどでした。


ネタバレギリギリの内容

私にとってこの本の中で印象的なのは夕暮れの”二人”のシーンでした。ここの描写は、素晴らしいです。こんな文章を書きたいと、ある意味憧れにしている文章のひとつです。
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後は、思い出の中の恩師たちが思い出されて、ジョーンをゆさぶるところも巧妙です。すべては最初に出てくる旧友との再会がそうさせるという無理のない流れです。それまでは本当に何ごとも順調な幸せなジョーン。

そして、バクダッドの宿泊所で起こった唐突な出来事がすべてを変えます。しかし、それだけでは終わりません。


最後に列車の中で出会う女性が自分には不気味なのです。一見、ただの通りすがりの乗客にしか過ぎない人物のように描かれていますし、ある決意をもったジョーンの救いのようにも思いますが、果たして救いだったのでしょうか?
はたしてなんのためにアガサはこの女性に会わせたのだろう、もし出会わなければ、、、ジョーンの運命も大きく変わったかもしれないのです。
それくらい最後に出会う女性の存在が私には異質に思います。

最後まで読んで、ようやく主人公のジョーンが、やはり誰よりも幸せな女性、でもそうではない側面があると言うことを読んだ自分自身が感じずにいられないのです。

是非一度は読んでいただいて、どう感じるのか?感じないのか?とても考えさせられる作品です。

なので自分が無人島に持っていくには、ちょっと難しい本だなと思うので★は低めです
でも、ファンとしてはとても読んでいただきたい一冊ではあります


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2024年07月14日

娘は娘






このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
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自分の独断と偏見で★を付けていますが完全好みの問題なので、皆様とは違う価値観かもしれません。
ご容赦願います


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娘は娘


探偵モノではないが気になる一冊度    ★★☆
娘を持つ人が読んでおきたい度      ★★★
成長するって時間がかかる度       ★★★
アガサの男女感がわかる度        ★★☆
アガサはこういう本もいい度       ★★☆
無人島に持っていきたい度        ☆☆☆

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アガサクリスティーと言えば『ポアロ』や『ミスマープル』など探偵が出てくるミステリーが有名でしょう!
しかしこの作品は探偵モノではありません


私も、アガサが推理もの以外の小説を書いていることは、かなりの探偵小説を読んでから知りました
アガサの別の名のメアリ・ウエストマコットで書かれた探偵もの以外の作品です


なので、アガサクリスティーの探偵作品のファンには戸惑いの一冊かもしれません。
しかし『春にして君を離れ』を読んでその世界を理解した後の私には読みたいなという気にさせました。
(詳しくは『春にして君を離れ』のところをご覧ください)


簡単にいうなら人間ドラマです
例えるなら日本のドラマで言うなら『渡る世間は鬼ばかり』の親子版という感じでしょうか
(ざっくり言うと)

最初は深い愛をもつ典型的な母に焦点があります
娘の幸せだけを願う母、盲目的かと思えるほどに娘に服従し、娘は自分ではそうとは分からず母に依存している関係です


娘の身体が大きくなるにつれ、しかし心はまだ身体に追いつかないアンバランスな状態も良く書かれています。
ひとつ思うのは、母親もこういう大人になりかけの娘を育てるのは初めての事だということ。母親自身が無事に大人になったという経験はありますが、娘が大人になるということは全く別の話なのだとこの作品を読んで分かりました。
まず母がシングルマザーであり、新しい恋に生きようとする可能性、自由があるということ
この母親に新しい恋人が出来る設定もよくあるようで、現実にはとても難しい問題があることもある程度想像がつくでしょう
この作品では娘が子どもであることの武器を総動員して母の幸せを阻止するのです

子どもの気持ちは『お母さんの為を思って』なのであるから、一番始末が悪い
『あんな男と結婚したらお母さんは不幸になる』と、母の恋人の欠点だけをことさら大きく宣伝し娘自ら思い込み母の恋人は敵であるから、全力で攻撃をしまくるのである
ある意味それは正しい


なぜなら、完璧な人などいないから、娘が”この人のここはダメだと思う”は正しいのである
一方、母は大人であるから人は誰も完璧ではないことを知っている。
恋をするとは結婚するとは、夫婦になるということは
完璧な人同士だから幸せになるとは限らないということも知っている
結局は娘の幼さ故、母の愛を独占したいためということも分かりながら、母親は自分の幸せを”娘の為に”苦しくてたまらないのに手放すのである

そういうわけで。。。。
結果的には、相手の幸せを願ったはずなのにそれが相手の幸せにならない愚かさを実に巧妙に書いています
何が言いたいかというと、この作品には人生の滑稽さと未熟さと犠牲の醜さを書いていると言えるのではないだろうか
傍から見たら、冷静に判断できるが(この作品を読んだ後の自分というのもあるが)
もし、当事者であったなら、きっと自分も”何かに負けて”この母のように、犠牲の愚かさ”を選択するのであろうとも思った
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小説の中の母は恋人と娘の二択を迫られて、娘のことを取る構図となっているが、結局はこの母は、その時どっちを選んでも悩み苦しい結果になっただろうとは思う。そういう人であろうから。
小説のように娘を選んだ母の立場で物を言うなら、他人から観た自分も意識したり、娘に恩を売る気持ちがあったかもしれない。
でも『誰かの為の犠牲』と自分が思っている限り自分の幸せもない(なかなかそれに気がつかないけど)

これが他人なら違う感想もあるかもしれないが、母娘なので、他の人間関係よりは干渉せざるえないことも『娘は娘』の題に表されているかもしれない。(ちなみに『母と息子』だとこうはならない、絶対に違う。)
作品の後半はそんな母娘の対決になるのですが、そこが唯一謎解きのようにスカッとさせます


そんなわけで、読み応えある一冊ではありますが、私が無人島にもって行くには湿っぽいし、無人島に行ってまで親子関係の謎解きはもうイイかな、と思うので、持っていきたい気持ちはありません(ばっさり)でも、良い作品ですよ!


親子を取り巻く人物がほんとうに面白い。腐れ縁的な悪友もそう、ばあや的なお手伝いさんもすばらしい。
読む人の立場によって感想も違ってくるであろうと思います
でも、声を大にして言いたいですが、ミステリーとしての謎解きはなくとも小説としてとても良い小説です!



posted by agata5 at 14:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘は娘

青色列車の秘密  感想







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青色列車の秘密

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ブルートレインでの殺人とルビー盗難事件

ネタバレなしのあらすじ

アメリカの大富豪ルーファス・ヴァン・アルディンの娘ルスが青色列車の中で殺される。ルスは大富豪からもらった大きなルビーを持っていたがそれも消えてなくなる。実はルスは以前、ろくでもない男ローシェと付き合っており、父のルーファスは強引にローシェと別れさせていた過去があったのだが、なんとルーファスに内緒でローシェに会いに行く不倫旅行の途中で殺されたようなのだ。当然容疑者となるがローシェにはアリバイがある。そしてルスは現夫デリクと離婚協議中であり、デリクは離婚しないまま妻が死ねば莫大な遺産が手に入るので、殺す動機がある。
偶然ルスと青色列車に乗り合わせていたポアロは、探偵を高齢のために引退しているが父ルーファスに頼まれ事件解決に乗り出すのだった。

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ネタバレ少しあり感想

この作品は映像作品になるべくして書かれたと思えるアガサ作品の一つだと思います。青色列車、ブルートレインの響き、旅路、大富豪、宝石、恋愛、不倫、親子関係、美男美女そしてミステリーとてんこ盛りの内容なのです。

大富豪は娘ルスをとことん甘やかしており、そのあげく、ろくでもない男ローシェにハマり、父ルーファスがやっと別れさせたのにそれでも関係を続けてるというあきれるほど男を見る目がないにもわがまま娘なのであります。その後で結婚したデリクとも当然上手くいくはずがないのです。

しかもその夫デリクは一文無しの甲斐性無し。あまり上品と言えない女性と不倫中で、今離婚されたら絶体絶命なのです。本当にルスは男運がありません。しかし、ルスは不倫に向かう列車の中で、一人の女性キャザリン・グレイと逢い、気持ちを落ち着かせます。その矢先にルスは殺されてしまうので、そのつながりからキャザリン・グレイはポアロとともに事件解決の相棒となります。

この作品にはヘイスティングズは出てきませんのでこの女性がヘイスティングズの代わりになっているのです。(おそらく作品の順番からしてヘイスティングズはアフリカで新婚生活を送っています)苦労の長年の奉公生活の末に莫大な遺産を手にしているキャザリンには、感情移入が出来るように工夫がされています。遺産を手に入れてから、初めて自分のためにドレスを選ぶシーンは、彼女の賢さ、上品さなどがにじみ出ていて、読者に”よかったね!”と思わせています。この辺アガサは上手いと思います。


この作品で私が気になるのはポアロの”完璧ぶり”です。読者の知らないところでポアロが動いており、ポアロの過去の栄光と人脈で事件が解決したと言っても良いので、ちょっと謎解きとしたらどうかなと思うのです。でも、最初の事件が起こるまでの段階で、全ての主要な登場人物の生い立ちや背景を上手く書いているのでアガサは読者にフェアであろうとしているのが分かります。謎解きが好きな方は油断せずに読んでくださいね!


後はこの作品は男と女のミステリーと言っても良く、察しの良い読者はお分かりかと思いますが、キャザリン・グレイの恋愛とからめて謎解きが進んで行きます。とても面白い作品です。ただ、私はポアロ作品でもっと好きな作品があるので、★は少なめです。


ちなみに、ミスマープルの住んでいるセントメアリーミード村が出てきますので(ミスマープルは出てきませんが)マープル好きな方はニヤッとするでしょう。

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2024年07月12日

カリブ海の秘密 感想






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マープルのかっこよさ   ★★☆
マープルの足を痛める度  ★★★
ちょっとずるい推理度   ★★★
無人島にもって行きたい度 ★★☆

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ネタバレあまり無しの紹介

アガサクリスティーの作品の中のミスマープルシリーズ
大人気の安楽椅子探偵ミスマープルの長編です
探偵といっても見た目はどこにでもいるようなおばあさんですから周りはその見た目に油断してしまいます
いつも村にいるはずのミスマープルが今回は海外にお出かけをしているところが特別な作品です!
セントメアリー村に住むマープルが甥のデズモンドの好意で南の島へ療養に行くことになるのですが、アガサクリスティーはミスマープルにご褒美のつもりで南の島へ行って欲しかったかもしれません。
お金持ちのリゾート地、カリブ海が舞台でミスマープルが活躍するわけなのでときめかないわけがありませんね

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物語は、『人殺しの写真をごらんになりますかな?』といわれてその写真を見せようとしたパルグレイヴ少佐の死から始まります。高齢であること、高血圧だったなどから、病死とかたづけられるのですが、ミスマープルだけは疑問を抱きます。人殺しの写真を見せようとした時に、ミスマープルの肩越しにそっくりな”誰か”を見つけ、マープルにその写真をみせることなく慌てて写真を隠した姿を思い出すからです。

いつものセントメアリー村ならば、親しい警部も警察関係者もいて、協力してくれる人もいるマープルですが、ここは西インド諸島、マープルを知ってる人はいません。カリブ海のホテルに滞在する全ての人が怪しく見える中で、ミスマープルはただ一人調査を始めるのです。
最初は自分の”どこかしら身体の調子が悪い老人”に見えるであろう特性を生かし、人の良いお医者さんを巻き込むところから始めるのも面白いです。
最後には、世界的にお金持ちで有名な、しかし身体が不自由で口うるさい傲慢な年寄りのラフィール氏まで味方につけるという所も面白いです。一人の老婦人でしかないはずのマープルに味方がどんどん増えて行くのです。
(ラフィール氏を気に入ったのか、アガサはまたマープルの長編『復讐の女神』にも登場させてます)

そして余談ですがミスマープルはよく、足を痛めます!
お年寄りの特権と言って良いでしょう(ポジティブに言っています)
マープルもお年なので仕方ないと言えば仕方ないのですがファンとしてはキタキタ!と思います。

推理やトリックについて読者に対してずるいな!と思うところもあるので★は少なめです
読者をだましてるわけではないのですが、語らない事実は存在しないのと同じなので、そこの所をどう捉えるかという所です。
クライマックスはやはり最後の犯人が分かるところですが、この時のマープルの描写がまさに女神様のようで素晴らしいです。

あまりにも印象的なのでアガサはこのマープルが書きたかったので、この作品を書いたのでは?と思ったくらいです。
ラストにこんな粋な演出を用意してるなんて憎いなと思います。
アガサは本当にマープルが好きなんだなと思います。
ぜひ、そこの所も楽しん読んで欲しいと思います。








スタイルズ荘の怪事件 感想


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スタイルズ荘の怪事件

犯人が一転二転三転する度       ★★★
アガサの才能は最初からすごい度    ★★☆
ポアロつかみはOK 度          ★★★
ヘイティングスおちゃめ度       ★★★
無人島に持っていきたい度       ★☆☆

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アガサの記念すべき推理小説一作目です。

アガサ自身が長く付き合うことになる名探偵ポアロがここでで登場します。
ポアロの語り部で相棒のヘイスティングズももちろん出てきます。
ヘイスティングズはポアロの友人であります。
この2人の性格と年の離れた関係性がこの作品を面白くしています。
トリックも、この当時の時代だから成立すると言うこともありますが、看護師の経験があるアガサならではの知識があってこそのしっかりとした小説になってます。

ネタバレなしの紹介

”スタイルズ地方の地主の
奉仕活動家女主人殺人事件”

傷病兵として休暇中のヘイスティングズが旧友の勧めで旧友の実家のあるスタイルズ荘に招かれ、ゆっくりすごそうかと思った矢先に継母の女主人が毒殺されてしまいます。
その犯人探しになりますが、家族も誰もが遺産を巡って動機があって怪しいのです。

読み進めていくと、一転二転して新しい事実がでてくるし遺言状は何枚も出てくるし、誰かが誰かをかばっているのかややこしい状況も出てきて、怪しい人ばかりでいったい誰が犯人か全く分からないのです。

後妻業ならぬ、後夫業的な若い夫もあやしいし、不倫もあり、ワイドショーのネタ満載です。
殺された女主人にお世話になったことがあるポアロもたまたまスタイルズ地方を訪れており、必然的に事件解決に乗り出す事になります。

ヘイスティングズの独り言にヒントがあるのですが基本ポアロの推理のすごさを助長させるだけだったりします。その独り言を分かった今でも私にはさっぱり推理できませんからアガサのすごいところはつまりはアガサ自身がすごい名探偵だというところですね。(今更ですが)
ヘイスティングズの惚れっぽいところとか何回も同シリーズを既に読んでる私は知っているので、改めて第一話のこの『スタイルズ荘の怪事件』を最初からヘイスティングズはこんなに惚れっぽいんだ、若いなあってニヤってするところもあります。
アガサはポアロを一回切りの登場で、続き物を書く気はなかったと聞いたことがありますが、この作品で意外にも人気になってしまい必然的に書き続けることになる記念すべき作品です。

私的には登場人物、特に殺された女主人に自分は共感を持てないし魅力を感じないので(失礼ですね)作品的にはあんまり好きな作品ではないんです。しかし、最後の大どんでん返しに読者は驚くと思いますし、記念すべきポアロの初挑戦推理小説ですから読んでおいて損はありません。。
私が無人島に持っていく本としては、他のポアロ作品の方が私は大好きすぎるので★少なめですが、でも、あくまでも個人的な好みの理由なので面白い推理小説のひとつであることに違いはありません。

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検察側の証人(情婦)

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検察側の証人(情婦)の感想







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このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
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検察側の証人(情婦)

アガサのエンターテインメント度 ★★★

超有名作品           ★★★ 
           
誰も思いつかないミステリー   ★★★

後味の複雑な両面の味わい    ★★★

無人島に持っていきたい度    ★★☆

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ネタバレしてます!

ネタバレを望まない方は、

これより下を読まないでくださいね!


この作品は

短編集のところでも

紹介しましたが、

アガサを知るなら

これも読んでない

なんてことあり得ない、

というくらいに有名な

戯曲作品です。

別名『情婦』とも言われます。

初演から

”絶対に

エンディングは誰にも

話さないで”

と観客に約束させてた

というくらいに

すべての謎が

エンディングにあります。 

まあ、ここでは

この後その謎をばらしますけどね!

ある富豪の老女が

惨殺される事件が起き、

直前に交際したとされる

若い男ヴォールが容疑者として

裁判にかけられます。

彼の弁護士いわく、

ハンサムでスポーツマンで

しかし裕福ではない

ヴォールが

お金以外の理由で

老女になんの下心もなしに

親切にするだろうか?

しかも、彼は自分に

妻がいることを老女に

隠していたし、

その老女は遺産相続人を

ヴォールに指定している。

その老女が死ねば

莫大な財産は

彼のものになる

という動機が出来ているのである。

真っ黒黒である!

アリバイもない、

動機はある、

その弁護を引きうけた

弁護士メイハーンは

負けを確信している。

ヴォールは、

殺人の時間には

家に帰っていた事を

妻ロメインが

証人になってくれる

というので、

弁護士は会いに行くのである。

ところが唯一彼の

アリバイ証言をした妻

ロメインに会いに行ったとき、

彼女は言う

『私が、

9時には夫が家にいたと

申したら、

無罪になるのでしょうか?

その他に無罪放免になる

可能性のある証言を

される方はいるのでしょうか』と。

彼はしぶしぶ『誰もいません』という。

そこから彼女は、

夫であるヴォールへの

激しい憎しみを告白し

『あの人が罪に問われて

縛り首になるのを見たいのだ』と

驚くことを言う。

それを聞いた弁護士は、

妻ロメインが夫を

有罪にするために

証言をでっちあげてると確信し、

それを崩すために妻の身辺を

探るのである。

すると次々と嘘が分かり、

結果ヴォールは無罪と

なるのである。

弁護士の汗と涙の結晶!

弁護士万歳!

とよろこんでいると、

実はそれこそが嘘であり、

夫ヴォールを助けるために

すべては妻ロメインが

仕掛けた嘘の痕跡の

数々だったのである。

献身的な妻が

証言したアリバイなど

なんの役にも立たないと

判断したロメインは、

わざと夫を憎んでいる

芝居をし、

夫のアリバイを逆に証明するのである。

まんまと、

だまされる弁護士、

そして裁判所と民衆、警察。

しかし驚くべきことは更にある。

その妻が付いた嘘は

彼の無罪を信じるが故と

思うではないですか!

違うんです!

ここまでで終われば、

献身的な妻の美しい話で

終わるはずなのに!

『誰よりもヴォールの

無実を信じてるから、

このような事をしたのですね?』

と弁護士がロメインに

聞いた後の一言が

『誰よりも私が彼が

犯人だと分かっているからです』

と言い放つので、さらに驚かせるのです。

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BBCドラマでは、その辺をもっとどす黒く描き、戦後の暗い影をひきずり(BBCドラマはわりとそうですね)ハッピーには終わりません。後味が悪いったらありゃしない!(個人的感想)でも美しく、おどろおどろしい世界観は観るべき価値があります。アガサの作品を普通にタダでは終わらせない感じです。

一度はこの情婦役のロメインを演じたいと思う女優さんが少なくないかも、と思わせるほど怪しい魅力です。原作は夫を愛するが故の賢い情婦、ある意味けなげ、と読み取れなくもない。実際最初読んだとき、そう感じ取れました。しかし、BBCドラマでは悪女色を強めています。実際、殺人犯を無罪にしてしまう話ですからね、倫理的には賛成しかねます。エンターテイメントとしては最高ですが。しかしそれを含め、素晴らしい作品だと思います。

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ABC殺人事件 感想


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ABC殺人事件 感想

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アガサの代表作度      ★★★
ABC本の名前の有名度    ★★★
アガサの人を観察する度   ★★★
コレを読んでおけば
世間話が出来るぞ度     ★★★
無人島に持っていきたい度  ★★☆


ABC殺人事件と言えばアガサクリスティーの代表作の一つです。
その印象的な題名は一度聞いたら忘れる事はないでしょう。
日本で言えば”あいうえお”殺人事件みたいな感じでしょうか

殺人現場に残されるABCの本から『ABC殺人事件』と言われるのですが、この本は”鉄道案内のガイドブック”で親切にABCのアルファベット順で地域と駅、時間や金額、近くのホテルや観光場所など詳しく載っていて大変便利だったようです

ミステリー好きであれば、話のネタにも一回は読んでおきたいアガサの超有名作品です

あらすじ

『ABC』と名乗る犯人からの殺害予告がポアロの元に届き、予告通りの日にちと場所、しかも最初の事件がAの付く町でAの頭文字の人が殺されてしまいます。その事件が解決しないまま次の殺人予告がまた届き、今度はBの付く町で、Bの頭文字の人が殺されてしまうのです。そしてまたCの町の殺人予告がポアロの元に届く、という連続殺人事件となっています。
殺人現場には『鉄道案内ABC』のガイドブックが必ず置かれているという状況から『ABC殺人事件』と言われるのですがこのセンセーショナルで残忍な事件をポアロがヘイスティングズと解決する作品です


abcgaido.png



ネタバレなしの紹介

難事件を解決し名探偵として名をあげてきたポアロのもとに殺人予告の手紙が届きます。差出人はタイプライターで打たれた『ABC』とだけ。内容は”Aのつく町で21日に殺人が起こるから警戒せよ、うぬぼれた探偵ポアロよ”(簡単に言うと)と、かなりポアロを煽る感じなのです。この手紙だけでは、いたずらなのかもしれないし、わかりません。事件はそんな奇妙な始まりです

ポアロは探偵も引退していて夢だったカボチャ作りに夢中だったはずなのですが、実のところは、事件の依頼がチラホラあり完全に引退まではしていなかったようです。それどころか難事件を解決してきた自分の灰色の脳細胞を持て余し気味でした。そこへ南アフリカから旧友のヘイスティングズが帰ってきたので(ヘイスティングズは南アフリカに妻を残して来ているので期間は限られているのですが)昔のエキサイティングな事件の事などがよみがえったのでしょう。

”なにか気の利いた事件”をまた二人で解決しよう!と持ちかけます(なんて物騒な話なんでしょう!)その直後に『ABC』の殺人予告の手紙がポアロ宛に届くので、びっくりです。

しかも、ご丁寧に殺人の場所と日にちまで書いてあるのです。ポアロも随分軽く見られてしまってたようです!(これは犯人の思惑があったのですが)

私はポアロがヘイスティングズに”また何か2人で事件を解決したい”的な事を言った直後の殺人予告の手紙だったので、てっきりヘイスティングズの何かの伏線か、関係があるのかと思ってしまいましたが、実際はそういうわけではなく、たまたまだったようです(すみません、私の考えすぎでした)

最初のポアロと旧友のヘイスティングズの再会は、ポアロファンならニヤニヤするくらいの会話の応酬ですし、直接事件とは関係ないところですが最終回の作品と呼ばれる『カーテン』への伏線もうっすら入っています。『カーテン』を読んでいる方なら、”あ、この会話は!”と気付かれるかと思います

いつもは語り部としてヘイスティングズの目を通して事件を追うのですが、今回の『ABC殺人事件』はある理由から他の視点でも描かれます。
これは最後まで読み終わって、ようやくそういうことか!と思います(言いたいけどネタバレなので言いません)ポアロ宛に殺人予告が届くこと、しかし防げずに殺人は次々と起こるので犯人の狙いはポアロに恨みがあると考えるのが話の流れではないでしょうか?

散々推理小説を読んできた私は、そう考えもしますが、話はそんな単純ではありませんでした。予告があるのにもかかわらずポアロが手も足も出ず殺人が起こってしまう失態の連続ですし難事件と言っても良いと思います。

ミスリードもありますし素直に読んでいる読者は犯人が誰かさっぱり分からないと思います!
犯人捜しは難しかったです

トリックとしては偶然に頼りすぎているので私にとって無人島に持っていくリストには最優先に入れる本ではありませんが、ABC順に殺人が起こるという前代未聞のアイデアはさすがだなと言うしかありません。

最後のポアロの謎解きのシーンはいつもながら大どんでん返しでスカッとします。事件は悲惨ですがハッピーエンドと言っても良いでしょう。(複雑ですが)

そして私のこの作品の大好きなところをあげるとミステリーでありながら
@戦争反対の意思、戦争の後遺症の悲惨さ、
A弱者への暖かいまなざしを感じられるところ、があります(それを感じられるシーンは少ないけど印象に残ります)もちろん魅力はそれだけではありませんので是非まだの方は読んでいただきたいと思います

映像化も沢山されている『ABC殺人事件』、BBCドラマも映像化をされていますがこのABC殺人事件のドラマ化に関してはとても面白い解釈と表現がされていました

こちらも機会があれば、原作を読んだ後でですが鑑賞をおすすめします(原作を読んでなくても面白いと思いますが、原作を読んでいた方がドラマの面白さは増えるかなと私は思いました)


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アガサクリスティーを無人島で読む(アガサクリスティー紹介ブログ) 

agasa.png








このブログの説明をします


このブログは
アガサクリスティーが好きすぎて
無人島になにを持って行きたいかと聞かれたら
「アガサクリスティーの本」と答えるくらいの熱量があります
この本のこの作品のココが好き
または
この本のこういう所が見所
というのを紹介していきたいと思います

以前は他のブログで書いていました
一旦こちらに移ります
(他でも書いています)
よろしくお願い致します

20240711_013833.jpg

無人島に持っていくなら何を持っていく?
よくある質問でしょう
私は『アガサクリスティーのミステリー』と答えます
ほとんどの人は生き抜くための実用的なサバイバルの教科書をもって行くと答えるでしょうが
それは もちろんそれも大事です 

しかし 人は実用書に書いてある事のみで生きるにあらず
ワクワクや不思議な事やミステリーに胸をときめかすそういう心が絶望の淵から自分を這い上がらせることもあると
自分は信じていて、自分にとってその一つが『アガサクリスティーのミステリー』なのです
結末が分かっている推理小説も何度も読み返したくなるほどのストーリー、登場人物の魅力にあふれていて、
自分にとっては、いつ終わるとも分からない無人島生活において退屈することの無い本であろうと思われるのです
それくらい好きだ―っと叫ぶだけのここはそういうブログです

独断と偏見で自分が無人島に持っていくなら、限られた荷物の中でどれを選ぶか?
という基準で★印を付けてます(3つが満点)
★が多いほど、私が無人島に持っていきたいくらい大好きな本だという意味です。
小学生の時からアガサクリスティーを何度となく読んできた私の独断と偏見ですので意見が違う方もいると思いますが
ご容赦願います。

アガサクリスティー作品一覧

アガサクリスティー短編集及び番外編はこちら

本.jpg

そして誰もいなくなった


写真そして誰.png

一番始めに
アガサと無人島なら、思い出されるのは
「そして誰もいなくなった」でしょう

アガサの代表作度  ★★★
読んで良かった度  ★★★
無人島に持って行く度★★★

アガサクリスティーの代表作の一つと言っていいですね。
謎を解くというよりは、最後のどんでん返しに読者は驚き魅力にハマるのです。
この作品が発表されてから、これと似たような作品が何度も発表され、オマージュされてきたかわかりません。
この小説は映画化もされてますし、結末も有名なのでいまさら隠す必要もないかもしれません。
でもこれから読む人はいくらでもいる(かもしれない)ということを踏まえて、いつも新しい驚きを持って欲しいと思いますのであえてここではネタバレはしません。

ネタバレなしの紹介

この作品は、無人島に招待された10人の男女がインディアンの子守唄になぞらえて死んでいくミステリーです。
可愛らしいはずのインディアンの人形がまた異様に不気味で、人形が消えると誰かが同時に消えていくようになっているのです。誰が?何のために?

無人島という、隔離された世界で他に助けも呼べばない状態で、一人一人死んでいくのです。
生き残っている人も誰も信じられない恐怖で追い詰められていき発狂寸前です。
ラストは、読者を驚かす仕掛けが待っています。

自分はこれを読んだとき、あんまりな話だなと思ったのです。
もちろん文句なしに面白かったですよ!
この仕掛けを考えたアガサクリスティーはさすがだ!と思いましたし天才だと思いました。
最高傑作と言われてる理由も分かります。
でも、内容的になんだかむなしいなあ、、、、って思ったのです。
完全なる自分の趣味です。
無人島に男女10人滞在できるほどの屋敷は(大きな立派な館)あるんですが、バカンス!っいう感じはまったくなく、ちっとも楽しそうじゃないし(あたりまえっちゃ当たり前、仲良し10人組のパーティーじゃないんです、ほぼ他人同士)それぞれが秘密を抱えてることが前提で、どよ〜〜〜んとした灰色な雰囲気が漂うんです。
それがミステリーだといわれたら、全く文句はありません。
でも、なんていうか怖い方が勝つホラー作品というか、
そう、ミステリーというよりこの作品は自分にとってはホラーでした!
怖い話がお好みの方は是非、お勧めします!

最後まで犯人は分からないまま、読者を引っ張っていく力強い文章力が魅力です。
そして題名が『そして誰もいなくなった』なんてちょっとしゃれてる題名というのも、この作品の価値があると思ってます。他の題名だったら、ここまで有名になったかと言われたらどうかなと思います。

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蛇足ですが、作家の赤川次郎さんが、このアガサクリスティーの『そして誰もいなくなった』をリスペクトしていて、
”自分はこういう作品を書きたい”とそう思って小説を書いてきたと知った時、驚いた自分です。
ユーモアミステリーのイメージがある作家の赤川次郎さんですが、『夜』という作品を読んだときとても怖いホラーだったので、そのことを思い出しました。


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著書一覧(発行順)

1  スタイルズ荘の怪事件
2  秘密機関
3  ゴルフ場殺人事件
4  茶色の服の男
5  チムニーズ館の秘密
6  アクロイド殺し
7  ビッグ4
8  青列車の秘密
9  七つの時計
10 牧師館の殺人
11 シタフォードの秘密
12 邪悪の家
13 エッジウェア卿の死
14 オリエント急行の殺人
15 なぜ、エヴァンスに頼まなかったのか
16 三幕の殺人
17 雲をつかむ死
18 ABC殺人事件
19 メソポタミアの殺人
20 ひらいたトランプ
21 もの言えぬ証人
22 ナイルに死す
23 死との約束
24 ポアロのクリスマス
25 殺人は容易だ
26 そして誰もいなくなった
27 杉の柩
28 愛国殺人
29 白昼の悪魔
30 NかMか
31 書斎の死体
32 五匹の子豚
33 動く指
32 ゼロ時間へ
33 死が最後にやってくる
34 忘れられぬ死
35 ホロー荘の殺人
36 満潮に乗って
37 ねじれた家
38 予告殺人
39 バクダッドの秘密
40 マギンティ夫人は死んだ
41 魔術の殺
42 葬儀を終えて
43 ポケットにライ麦を
44 死への旅
45 ヒッコリーロードの殺人
46 死者のあやまち
47 パディントン発4時50分
48 無実はさいなむ
49 鳩のなかの猫
50 蒼ざめた馬
51 鏡は横にひび割れて
52 複数の時計
53 カリブ海の秘密
54 パートラム・ホテルにて
55 第三の女
56 終わりなき世に生まれつく
57 親指のうずき
58 ハロウィーン・パーティー
59 フランクフルトへの乗客
60 復讐の女神
61 象は忘れない
62 運命の裏木戸
63 カーテン
64 スリーピング・マーダー





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