2015年03月13日
561. 中村文則・西加奈子・又吉直樹B お笑いと小説・火花 「ボクらの時代」
「でもね、お笑いも好きでさ」と中村さん。「頭の中ってややこしいのね、回路がややこしいんだけど、笑いは瞬間的に来てさ、そこを通り越して、気がつくと笑ってるっていうのがある」
「ウソが無いよね」と西さん。
「それがすごい救いで、辛いときとかお笑いのDVDとか、すごい役立っている」と中村さん。
ここで西さんが爆弾(?)発言。
「又吉さんはテレビで拝見してると、これは長所でもあんねんね、圧倒的に見てるよね…」(笑)
バラエティ番組でひな壇に座っているとき、又吉さんは他の芸人さんと比べてあまり(ほとんど)発言しない、ということを指しているようです。
「ウチが又吉さんばかり見ているからかもしれへんねけど…」と西さん。授業参観でわが子の様子を見守る、母親の心境でしょうか?「もっと手を挙げんかい!」
番組の中で又吉さんのリアクションはワンテンポ遅いと西さんは指摘。「遅くて、手探り感、すごいし…」
「ちょっとややこしいんですけど」と又吉さん。「『今、人間なら、今このとき、どう反応するのが普通なのか』ということを1回考えんと…。それと本来の自分の反応とのズレがあるから…」(笑)
ああ、すごく太宰的な発言。この3人は本当に気脈が通じあっていますね…。
又吉直樹のテンション
次は中村さんからの指摘です。
「テンション低いよね…。」(笑)「笑うときってある?」
声を押し殺して笑い転げる西さん…。爆笑しないところにデリカシーが感じられます。
「ありますあります」と又吉さん。「めっちゃ面白いと思ってて、いろんなこと…」
「分かりづらい」と中村さん。(笑)
又吉さんは子どものころ、国語の授業での音読が面白いと感じていたそうで。
「ずっと笑ってしまって…。真面目に読めないんですよ…。なぜ笑うかというと、文章がやっぱりキレイだから、次に何が起こってもおもろいんですよ・・・。読めば読むほど、『次、こうなるかも?』の緊張感がおもろくて、『こうしたら、おもろくなる』というのがずっとあるから…」
「真面目なのが面白かったのね?バアって笑かす人が面白いんではなくて…」と西さん。
「どっちも好きなんですよ…」と又吉さん。「子どものころから好きなのは顔ですね」
又吉さんの親戚に「わしはいつでも屁がこける」というおじさんがいたそうです。
「子どもとしたら、聞きたくもないし、子どもやからオナラガ好きやとおじさんは思ってるんですよ」と又吉さん。「『あ、ほんま?聞きたい』って子どもって言うんですよ」
「気をつかって…」と西さん。(笑)
「『おかしいな?』って言って…。『いつもは出るんだけど…』って言って。そのおじさん、頑張ってる顔ですよね…。徐々に困っていって…。おじさん困って、体勢変えながらの顔とかって、めっちゃおもろくて…」(笑)
「バカにしてるんじゃなくて、人が好きなんやな?」と西さん。「『人間やなあ…』と思うことが好きなんじゃない?」
「そうですね…、グッと来るんですね、笑えるし…」と又吉さん。
「そういう複雑なものに魅かれるのって、小説家に行く人もいるよね」と中村さん。
「そうやな…」と西さん。
「それがお笑いに行ったってことだな…」と中村さん。
声が大きくて元気、という、いわゆる「お笑いの人」とは異なる感性・立ち位置でやってきた又吉さん。それはいわばお笑い界の「隙間」ですから、うまくヒットした又吉さんは大成功。そしてついに小説も書きはじめました。
文芸誌デビュー
「文芸誌デビューしたから作家だよね…」と中村さん。
「ほんまやあ、読みましたよ…」と西さん。「私、泣きました」
又吉さんの書いた小説「火花」が掲載された文芸誌は破格の売れ行き。天才芸人の輝きと挫折が描かれています。
「作者は読者の成れの果て、ということを…。本当にそうじゃない?自分が何をどのように読んできたかが出るやん?」と西さん。「もう、抗いがたく…」
「うん、出る」と中村さん。
「で、又吉さんって、一切小説を批判的に読んでこなかったんやな、っていうのを思った。あれだけ読んでたら、もうメソッドとか分かってるやん?ある程度の枠とか、『小説ってこうやったらいい』とかさ…」
又吉さんに対してお母さん的な視線を持ってしまう西さん。又吉さんの小説もドキドキしながら読んだようで…。
「で、すごくドキドキしてて、『教科書っぽい小説やったら、どうしようか?』って…」
教科書っぽい小説、って言い得て妙ですね。
「おれも最初はドキドキしたよ」と中村さん。
「『そんな訳ない』って思いつつも、それで読んでたら、まあ、なんて素直な真摯な、『この人、一切そんな目で小説を読んできはれへんかったんや』って、まずそこで泣けてきて…」(笑)「だってなんぼでも批判できるやん?『ほんとに素直に小説を読んできてくださったんやな』って…」
「めちゃくちゃ困った顔してるよ、今」と中村さんが又吉さんのことを…。(笑)
敬愛する作家2人に褒められて嬉しくないはずないですよね。
小説とお笑い
「小説って、他の文章とぜんぜん違いますね、他の文章と」と又吉さん。
かなり集中的に書けた、と思っても、3枚くらいしか書けていない、ということがあるそうです。エッセイなら20〜30枚かけているはずなのに…。
そして、お笑いの現場から小説執筆にはすぐに入れるのに、小説を書いていてお笑いにはすぐに切り替えられないという又吉さん。
「(お笑いの)途中では絶対に書かんようにして、書いた後は寝て仕事に行くようにしました」
中村さんは集中すると、書いた記憶が無くなるそうです。お腹だけが空いているという…。当初の構想と違っていても、無意識のひらめきの中で生まれたものを信じるという中村さん。起床後2時間経った頃が一番脳が働くので、その時間帯に集中的に書くのだとか。
西さんは逆に、いつでもどこでも執筆できるようにしている、と。執筆のスタイルは三者三様ですね。
それでは今日はこの辺で。
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