2019年06月20日
ソーシャルレンディングの法規制と実名化、今後の課題(論説の紹介と所感)
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ソーシャルレンディングに関する論説
貸付型ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」のコンプライアンス担当をされている弁護
士の尾氏より、雑誌をいただきました。
雑誌といっても名前は「金融法務事情」。1953年に創刊された金融法務の専門誌です。
正直なところ畑違いで、最初に表紙を見たときの感想は「あ、これ理解できないやつだ」だったのですが、
尾氏の論説は融資型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)に関するもの。
法務はまるで素人の私ですが、ソーシャルレンディングを取り巻く規制やその変遷、現状や将来に関する課
題認識や感想なら何とかなります。
こんな時は、ブログを書いていて良かったと思いました。
ブログを書いていなければ、ごく狭い範囲とは言え金融法務の専門誌の内容を一部でも理解することはでき
なかったでしょうし、そもそもこの雑誌をいただくこともなかったでしょう。
情報発信すること、また情報発信のために勉強することは、本当に糧になります。
論説の内容です
金融法務の専門家の方が執筆された論説に対し、私がどうこう言うのもおこがましいとは思うのですが、ど
こでも手に入るような雑誌ではないため、内容を簡単に説明したいと思います。
タイトルは「転換期を迎えた融資型クラウドファンディング −規制の展開とこれからの課題」です。
まずは、融資型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング、SL)の現状です。
・融資型クラウドファンディング(CF)は2005年、イギリスでサービスが開始された
・日本での2017年の調達総額は1,500億円を超え、資金調達の一手段として普及しつつある
・個人投資家の資産運用先としても拡大可能性がある一方、金融庁処分などの問題もある
これまでのSLでは、個人投資家による出資が貸金業に該当することを回避するため、借手を匿名化・複数化
することが実務的な対応でした。
しかし一方でこの匿名化・複数化を悪用した問題が発生したのもまた事実。
こういった状況の中、2019年の3月に案件の匿名化・複数化が見直されました。今回の論説は、これをSLの
転換点と捉え、規制の内容を概観し今後の課題を示したものとなります。
匿名化・複数化の解除と実務対応
上記の通り、2019年の3月に匿名化・複数化は事実上解除された(正確には、金融庁からの匿名化・複数化
の要請が見直しになった)わけですが、そこに至る道筋は以下のようになっていました。
・2018年6月15日、政府が匿名化・複数化と並行した新たな方策の検討・措置を閣議決定
(措置の実施まで2018年度中に行う)
・2018年12月7日、証券取引等監視委員会は投資家がより適切な判断を行えるようにするため、SLの
情報展開や説明内容の拡充など、必要な措置をとる必要があると意見の申し立てを行った
・2019年3月18日、金融庁から借手が法人である場合において、案件の匿名化・複数化によらず投資家が
貸金業に該当することを回避するための要件が提示された
貸金業に該当することを回避できる要件とは、以下ようなものとなります。
匿名化が解除された後、実名化案件を募集している事業者については共通のルールとなります。
特にBについては重要なルールとなりますので、投資家は確実にこれを認識し守らなければいけません。
(Bを守らないと、最悪は貸金業法の無登録営業とみなされます。その場合の罰則は「10年以下の懲役も
しくは3,000万円以下の罰金、または両方」とそうとう重いものになります)
@投資者が貸付に関して権利を有さないことの確認(貸付は事業者のみが行う)
A貸付条件は事業者が決定すること
B借手と投資家は、互いに接触してはならないこと。また、その場合のペナルティの明示
また、情報提供を行うために求められる実務対応としては、以下のようなものがあげらるとあります。
これらの内容をまじめに、きちんと行ってる事業者が信用できる事業者であり、長い目で見て投資をするべ
き事業者であるのは当然のことでしょう。
・借手の属性の公開(業種や事業内容、事業者との利害関係など)
・貸付条件の公開
・貸付債権の管理方法
・リスク要因、万一の場合の回収方針や体制(回収の具体的プロセス)
・借手の属性に応じた名称や所在地の公表、公開しない場合はその理由
そして私の見る限り、「Funds」はこれらの実務対応について問題なく情報公開を行っていると思います。
初めて登録した事業者の最初の案件に、100万円の高額をいきなり投資したのはそういう理由もあります。
・Funds(ファンズ)の会員登録方法を解説
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今後の課題
尾弁護士はソーシャルレンディングの法規制に関して、今後は以下のような課題が検討されるべきという
私見を述べられています。
@金銭信託による分別管理を通して、SL事業者の倒産から投資家の資金を隔離する制度の導入
(現在は規制の関係上、信託銀行への金銭信託はできず、銀行預金となっている)
Aファンド管理補佐人の導入
(ファンドリスクに備えて、債権回収業務の補佐を行う第三者を契約によって組み込んでおく)
B分配金を利子所得にして、源泉分離課税(総合課税にならない方式)とする
(現状は雑所得で総合課税。ちなみにイギリスでは、SLはNISAのような取り扱いになっている)
@については、例えばSL事業者が他の事業を行っていて、その事業がうまくいかないことで倒産の可能性が
あるような場合でない限り、現状の銀行預金で大きな問題はないのでは? とも思います。
(私の知識が不足しており、何か落とし穴のある意見なのかもしれませんが)
Aについて、これは一般化すればソーシャルレンディングにとっては朗報でしょう。
第三者と契約することでコストがかさみ、結果としてファンドの利率が低下するということになる可能性は
ありますが、投資家の権利を守るための仕組みが増えるのは良いことだと思います。
最後にBについてですが、これも実現すれば良いニュースだと思います。
FXもかつて総合課税から分離課税になったことで大きく盛り上がった過去があります。SLについてもそう
なれば、業界の盛り上がりに火をつける可能性はあるのではないでしょうか。
尾弁護士の論説通り、匿名化・複数化の解除はソーシャルレンディングにとって大きな転機です。
この転換点を超えて、ソーシャルレンディング(クラウドファンディングも含む)のさまざまなルールや投
資家を守る制度が整備され、着実なインカムゲイン投資として発展していくことを望みます。
そのために私も、投資家とブロガーの二つの立場で微力ながら関与していきたいと思っています。
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posted by SALLOW at 10:40
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