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2019年11月07日

 エッセイ 学術的クリトリスの話



 

 エッセイ 学術的クリトリスの話
  
                〜Chihiro@Chichisoze〜


       11-7-8.jpg

 日常的に外国人に接して居ると、教科書を使って勉強して居るだけではナカナカ覚えられ無い、生活の中で使う単語や表現に出会う事がある。そう云う表現の中で、私が一番好きなのは冷蔵庫の「野菜室bac à légumes」だ。どうしてそんな話の流れに為ったのかはもう忘れてしまったけれど、当時まだ付き合い始めたばかりだったフランス人の夫が教えて呉れた。日本語では「室」と言うけれど、フランス語では「桶 bac」なのだ。
 そして、その夫とこの度離婚する事に為った。出会ってから7年、結婚してから4年が経って居た。奇妙なユーモアの持ち主の夫は、私達の付き合いを振り返って「最初の7年は好かったね」と言った。私は泣いた。もう自分でも結婚生活を続ける意志は無いのに、それでも悲しかった。

 大学の指導教官に言われた事を思い出す。研究を辞めて就職をしようとして居た時だったと思う。「何をしても茨の道だから好きな事を遣りなさい」と言われた。結婚生活を続けても別れても、どちらを選んでも茨の道だろう。だったら、夫々が遣りたい事を遣れる方が、お互いの為の様な気がして居る。

 サア、湿っポク為ってしまったけれど、気を取り直して読書日記だ。今回でこの連載も4回目。4回目と言えばソロソロマンネリが心配だ。何度も反芻して居る内に、自分で思い付いた事なのか人の言った事なのか、段々わから無く為って来るフレーズと云うのがある。
 私の場合、それは「人生に大切な事は全て映画『スクリーム2』のトレイラーから学んだ」と云うものだ。私はこのフレーズを、絶対に過つて何処かで目にした事があるのだけど、何処だったのかどうしても思い出せない。
 そのトレイラーの中では確か、映画マニアの男の子がホラー映画の法則に付いて話して居て、マンネリに為ったらエロ要素を追加、とか何とか言って居た*。

 そうだ、エロだ。そう云う訳で、今回はマンネリ打開策として、エロと云うかセックス方面に大きく舵を切って、ムッシューとマダムがニャニャニャ・・・みたいな話をしようと思う。 とは言え、ムッシューの出番は余り無い。何故なら、今回取り上げたいのはクリトリスの話だから!!ニャニャニャ!!

 



 1、ジャン=クロード・ピカール『クリトリスの途方も無い物語』(Jean-Claude Piquard, La fabuleuse histoire du clitoris, H&O, 2012)

 ジャン=クロード・ピカールは、フランスの性科学者。学生時代に医学教育でクリトリスが全く扱われて居無い事に気が付いた事が切っ掛けで、クリトリスの歴史を研究する様に為った。本書ではその研究成果が、多数の図版を引用しながら一般向けに判り易くまとめられて居る。
 最近まで私は、最新の科学でクリトリスがどう論じられて居るかなんて考えた事も無かったし、歴史的にクリトリスの意味付けが変わって来た事も全然知ら無かった。考えてみれば、クリトリスに付いて学校でキチンと習った事も無かった気がする。しかも、その事を特に疑問にも思って居なかった。

 学校の性教育では、卵巣がどうとか子宮がどうとか生殖に関する知識は教えられる。でも、生殖に直接関係が無いクリトリスは、快楽に付いての話を抜きに語る事が出来無くて、だからタブー感が強いのだろう、キチンと教えられた覚えが無い。
 皆が平等に正確な知識にアクセス出来る様にするには、教育の枠組みで扱う以外に方法が無いのに、クリトリスと云うか女性の外性器に関しては全然それを遣って居ないのだ。こうした状況は、フランスでも余り変わら無い様で、本書では第1章でその事を示す象徴的な研究が紹介されて居る。

 2009年、アニー・ソティヴェと云うアーティストが「10代前半の若者の性に関する知識・表象・実践の現状」と云う調査を発表した。(ピカールのウェブ・サイトで公開されている)ソティヴェは若者のセクシャリティに付いて調査する為に、或る中学校の生徒に性器の絵を描かせ、各部の名前を選ばせるアンケート調査を行った。

 調査は13歳の学年6クラスと14歳の学年6クラスの合計12クラス、316人を対象にして無記名で行われた。1校のみでの実施だが、同僚の助けを借りて他校で行った場合でも結果は同じだったと云う。
 その結果、男性器については男女共、80%の生徒が「正しく」或は「十分に正しく」描く事が出来たのに対し、女性の外性器に関しては、正しく描けたのは男子の28%、女子の16%に過ぎ無かった。男子のおよそ4人に1人、女子は6人に1人の割合だ。

 14歳の女子が描いた女性器と男性器・・・女性器のキャプションは上から「膣、処女膜、大陰唇、尿道口、小陰唇、クリトリス」とあり、自分が描いたデッサンと対応する部位を線で繋いで示す様に為って居る。男性器のキャプションは上から「睾丸、ペニス、亀頭、尿道口」14歳女子による女性器と男性器・・・女性器は描けて居ない。

 正しく描けた例・・・フランス語では、大陰唇は「grandes lèvres大きい唇」小陰唇は「petites lèvres小さい唇」と云うのだが、全く知識の無い生徒は文字通り唇の絵を描いて居る。 13歳女子は唇の絵を描いて居る。
 クリトリスの場所を正しく描く事が出来たのは、13歳女子の5%14歳女子の18%だけだった。又「貴女にはクリトリスがありますか」と云う質問に対し、62%の女子(13歳で49%14歳で76%)が「ある」と言い、30%が無回答8%は「無い」と答えて居る。更に「クリトリスの機能は何ですか」と云う質問に対し、女性が快感を得る為の器官だと正しく答えられたのは13歳女子の16%14歳女子の35%だった。

 このアンケートは最後に自由記述欄があり「恥ずかしい」とか「ゲエッ」と云う感想に交じって、生徒達のもっと知りたいと云う気持ちが見て取れたと云う。「こう云う事に付いては話さ無いけど、興味がある。でも何も知ら無い」等。
 ピカールはこの章を出発点にして、クリトリスに関する情報が正しく行き渡って居らず、隠されて居るのは何故なのかを解明する為に、2章以降で古代から現代までのクリトリスの歴史を辿って行く。 そして、その歴史の部分をとても可愛いアニメーションにマトメたのが、次に紹介するロリ・マレパール=トラヴェルシーの『クリトリス』だ。

 



 2、ロリ・マレパール=トラヴェルシー『クリトリス』(Lori Malépart-Traversy, Clitoris)

 ロリ・マレパール=トラヴェルシーはカナダのモントリオール出身の女性アニメーション作家。上記『クリトリスの途方もない物語』を読み、2016年に『クリトリス』と云うドキュメンタリーアニメーションを発表した。この作品は兎に角可愛くてスタイリッシュなのだけど、クリトリス関係の知識がとても好くまとめられて居る。ビデオはフランス語で英語の字幕付き。 ザッと訳すと、こんな様な内容。

 ・・・女性はラッキー。だって、女性には人体の中で唯一快楽の為だけに存在する器官「クリトリス」があるから。
 目で見る事の出来る小さな先端部分は、実はクリトリスの亀頭。氷山の様に、一番大きな部分は体内に隠れて居て、長さ10pの2本の根が両側に伸びて居る。女性が膣オーガズムに達する事が出来るのは、この根のお蔭。クリトリスは小さなペニスみたいなもので、興奮すると充血して大きく為る。でも、ペニスより擽(くすが)ったがり。
 クリトリスは、男性達に何度も発見され再発見されて来た。古代には知られて居たのに、イタリアの外科医レアルド・コロンボが正式にクリトリスを発見したのは1559年に為ってから。その2年後には、別の男が自分こそクリトリスの発見者だと主張する。その後、クリトリスはシバシバ忘れられ、本の中でも間違って描かれて来た。

 多くの男性がクリトリスと女性のオーガズムに付いて議論した。古代ギリシアと中世ではオーガズムは妊娠の為に推奨されて居た。19世紀までカトリック教会は、オーガズムを感じる事で性的緊張を解(ほぐ)す様、女性達に勧めてさえ居た。けれど19世紀に為ると、医者達がオーガズムはヒステリー等女性の病気の原因に為ると主張し、クリトリスは全く役に立た無い器官であると決め着けた。
 その後、クリトリスの宿敵フロイトが膣オーガズムと云うコンセプトを発明する。そして、成熟した女性は男性器の挿入によってオーガズムに達さ無くては為ら無いと宣言した。こうしてクリトリスの暗黒時代が始まる。今日でもクリトリスは日陰の存在だ。クリトリスへの愛撫はシバシバ単なる前戯と見做される。クリトリスは愛されたいだけなのに。それに、折角快楽の為だけにあるのだから使ってみたらどう?・・・

 
 最近、こんな風にクリトリスが見直されて、一寸したブームに為って居る。それはヤッパリフェミニズムの大きな流れの中で、男性の快楽中心の従来のセックスのあり方が見直される様に為った事と関係があると思う。
 クリトリスは男性のペニスが無くても女性が快楽を得られる器官で、それ故、家父長制の中では存在を無視されて来たし、フロイト以降、クリトリス・オーガズムは膣オーガズムに比べて未熟なものと見做されて来た。そうした事への批判がポップカルチャーやアートを通じて表現されて居るのが、最近の状況なのかなと思う。

 



 3、アレクサンドラ・ユバン、カロリーヌ・ミシェル『クリトリス革命』(Alexandra Hubin, Caroline Miche, Entre mes lèvres, mon clitoris : Confidence d'un organe mystérieux, Groupe Eyrolles, 2018)

 そして最近、要約日本語で読めるクリトリスに付いての本が出版された。『クリトリス革命』(永田千奈訳、太田出版)だ。クリトリス革命 ジェンダー先進国フランスから学ぶ「わたし」の生き方 - 太田出版

 全ての女性に捧げる・・・ 真のジェンダーフリーはココから始まる この小さな器官をもっと知れば幸せを掴める! 喜び、幸せ、愛。クリトリスは女性に秘められたも...アレクサ…www.ohtabooks.com

 フランス語の本で、フランス語版の装画は『クリトリス』のアニメを作ったマレパール=トラヴェルシーが担当して居る。 著者は、性科学者アレクサンドラ・ユバンとフリーランスジャーナリストのカロリーヌ・ミシェルと二人の女性。
 クリトリスに纏わる最近の研究成果や実践的なアドバイスを紹介して居る。性の話題は人によって捉え方も違うし、常にとてもセンシティブなものだけど、友達に語り掛ける様な語り口で、しかも真摯に書かれているので、誰にでも読み易い本じゃないかと思う。女性誌のセックス特集を読んだ思い出みたいな、女性の一寸恥ずかしい共通体験が肯定的に描かれて居るのも好かった。

 類書とは違って、歴史や事実の記述だけで無く、どうやってポジティブに自分の性と向き合うかに付いても、可なりのページが割かれているのが特徴だ。実践的なアドバイスもあるけれど、ハウツー本では無いので余りに生々しい記述や、変な図解は無く、どちらかと云うと心構えが中心。

 勿論、クリトリスに関する近年の研究成果も詳しく、判り易く紹介されて居る。特に第2章「クリトリスの復活」では、
 1953年の『キンゼイ報告』(膣よりもクリトリスの方が敏感と発表)から、
 マスターズ&ジョンソンの研究(女性のオーガズムは全てクリトリス由来と特定)
 アン・コート「膣オーガズムの神話」(1968年 マスターズ&ジョンソンの研究結果をフェミニズムの視点から再解釈。女性の快楽が軽んじられて来たことを批判)
 シェア・ハイト『ハイト・リポート』(1976年3000人の女性のデータに基づき、クリトリスこそ女性の快楽の中心と結論付ける)
 ヘレン・オコネルのMRI画像(1998年クリトリスの解剖学的構造を解明)
 オディール・ビュイッソンとピエール・フォルデスのエコー画像(2008年オコネルの発見を確認)

 に至るまで、20世紀後半以降の重要な発見がコンパクトにまとめられていて必読だ。日本語で読める本なのでぜひ読んで観て欲しい。

 



 性の話題は好き嫌いもあるだろうけど、クリトリスに付いては余りにも知られて居ない事が多いので、今回取り上げてみた。コッソリ読んで貰えたら嬉しい。 ウヒッヒツ(恥)!・・・


                以上


 



 





 



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