2018年06月05日
世界の1/4を支配したモンゴル帝国
世界の4分の1を支配していた!?
モンゴル帝国とチンギス・ハンの歴史
・世界の4分の1を支配して居た？
・万里の長城をどうやって突破したの？
・実は源義経？
・子孫が1600万人居るって本当？
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数々の伝説を残し、世界最強最大の帝国であるモンゴル帝国の礎を築いたチンギス・ハン。ナポレオンと並ぶ”戦いの天才”であったと称された史上最強の征服者は、どの様にしてそこまで強い国を作り上げたのでしょうか。その生い立ちと生涯を追い掛けながら、モンゴル帝国の強さの秘密に迫ります。
モンゴル帝国とは こんなに凄い国だった！
モンゴル高原に現れたチンギス・ハンが遊牧民を統合し1206年に築いた帝国です。初めは、大陸の北東部の遊牧民族の部族連合でしたが、チンギス・ハンは自身の弟や僚友、統括した各部族の王達と共に強力な軍事態勢を敷き、その勢力を東西へと伸ばして行きます。
モンゴル帝国は一人の皇帝が統治する国では無く、チンギス・ハンの腹心達が夫々分かれて集団を作って居ました。それが帝国の躍進の原動力と為り、ユーラシア大陸全土に広がって行く事に為ったのです。
その勢力はユーラシア大陸全体に及んで居て、華北は勿論の事、東ヨーロッパやトルコ、シリア、アフガニスタン、チベット、ミャンマー、朝鮮半島に至るまで、地上の陸地の4分の1を占めて居たと考えられて居ます。
モンゴル帝国の傘下に入った領土面積は最盛期の1279年には3300万平方キロメートルに。人口は1億人を超えて居ました。19〜20世紀初頭の大英帝国には及びませんが、13世紀と云う時代や領地が全て陸続きである事等を考えれば、”史上最大”の称号は文句無しと言えるでしょう。
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チンギス・ハン自身はこうした領土拡大の途中、1227年に遠征先で亡くなって居ますが、その意思は息子や孫達に受け継がれて行きます。
彼等は既に与えられて居た土地に夫々王国を築いて行き、モンゴル帝国はチンギス・ハンの子供や孫達が治める国々による連合国家と為って行くのです。チンギス・ハンが没してから半世紀近くの間、彼の子孫達は、大陸の北東部を中心に各地に広がり、様々な文化圏に及んで行きました。
モンゴル帝国と元王朝の違いは？
モンゴル帝国と元の違いを知るには、その過程を見て行く必要があります。先ず、チンギス・ハンの次男のチャガタイが治めて居た中央アジア付近はチャガタイ・ハン国に、その北部には三男オゴタイが興したオゴタイ・ハン国。更に、西側には長男ジョチとその次男バトゥが統治して居たとされるジョチ・ウルス（又の名をキプチャク・ハン）が広がり、孫の一人であるフラグは西方のイスラム圏迄勢力を伸ばし、中東全域にイル・ハン国を打ち立てます。ユーラシア大陸全域がチンギス・ハンの子孫が建てた国によって統治される様に為りました。
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幾ら連合国家とは云っても一人の皇帝が統治するには広過ぎます。国が大きく為るに連れ、チンギス・ハンの子孫同士で争いに為る事もありました。そんな中、第5代皇帝として即位したのがチンギス・ハンの孫、フビライ・ハン。
フビライはより強い国を目指して、大陸の北東部、詰り中国の支配に力を入れて行きます。広大なユーラシア大陸に住む漢民族達を統治する為、都を大都（北京）に移し、国号を「元」と改めました。
モンゴル帝国と元の違いを説明するのはけっこう難しい
元は、領土としてはモンゴル帝国の内の一部に当たりますが、皇帝が治めて居た国の中枢部分の呼び名を漢民族風に改めたもの。国を強くする為侵略を続け、広く為り過ぎて、様々な文化圏の領地を納め無ければ為ら無く為ったモンゴル帝国。それでも中心は大陸の東側であり、中国を支配する事が一番の目的だったのでしょう。
13世紀後半の地図を見ると、チャガタイ・ハンやオゴタイ・ハン、イル・ハン、キプチャク・ハンと並んで元が存在して居た様な構図に為って居ます。
しかし、元がモンゴル帝国の一部と云う訳でも無く、かと云って元が他のハンを支配して居た訳でも無く、モンゴル帝国＝元と云う訳でも無い。もしフビライが、皇帝が統治する領地を「元」と中国風の呼び名にせず、〇〇ハンと名付けて居たら様子が変わって居たかも知れません。しかし恐らく、漢民族を支配する為には名を改める必要があったのでしょう。
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ですが、かと云ってイスラム圏やトルコの方まで急に全部漢民族風の国号にする訳にも行か無かった筈。そこで、結果的にモンゴル帝国と云うフワッとした連合体制が生まれたのだと考えられています。余りに領土を広げ過ぎた為、「モンゴル帝国と元はどう違うの？」と、後の世の人々（私たち）を悩ます要因を作ってしまったのです。
北方騎馬民族は何故強い？キーワードは”機動力”
この後で、チンギス・ハンの生い立ちを追い掛けて参りますが、その前に、何故モンゴル帝国がこの様に領土を広げる事が出来たのか考えてみましょう。
中国大陸の北部・西部には、紀元前4世紀頃には既に遊牧民族が数多く存在して居たと考えられており、歴代中国王朝は何れも彼等の存在に脅威を感じて居ました。万里の長城が長年に渡って補修・延長され続けて来たのも、北方の遊牧民族から町や交易ルートを守る為だったと考えられて居ます。
モンゴル帝国が建国・繁栄した12世紀〜13世紀と云う時代を考えれば、北方騎馬民族の強さの理由はズバリ機動力でしょう。彼等の生活に馬は不可欠。只馬を扱うだけでは無く、乗り熟し広大な土地を短時間に駆ける事が出来、狩猟を行って居た為馬上からの弓の照射能力も優れて居たと考えられて居ます。
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都市部で編成される軍隊が騎兵技術を身に着ける為には調練が必要ですが、騎馬民族なら子供の頃から身に着いて居る事。騎馬は彼等に取って生きる為に必要な技術です、馬は身体の一部と言っても好い、その技量の差は歴然です。
歩兵が中心の軍隊では移動にも時間が掛かりますし、複雑な作戦や戦況に合わせた臨機応変な対応はほぼ不可能。しかし騎馬なら素早い移動も可能で、相手の出方によって柔軟な戦術が可能と為ります。勿論大軍による大規模遠征も、歩兵中心の軍隊に比べれば容易です。
遊牧生活が彼倮を強くした
北方騎馬民族の強さの理由、機動力の他にもう一つ挙げるなら、彼等の生活が定住では無く遊牧であった事に着目すべきでしょう。
町や集落、農耕を行わ無い彼等に取って、安定した生活を行う為に”略奪”は不可欠でした。より強い力を持ち、周辺の集落を攻撃して物を奪う。逆に、こちらが襲われる事もある。身を守る為に砦を築くのではありません。攻撃こそ最大の防御、更に強い力を多くの仲間を必要としたのです。
勿論、北方騎馬民族が常に戦いに勝って居た訳ではありません。城塞を攻め切れず敗退した事も多々あった様です。しかし彼等の戦いは、守る為では無く生きる為、戦いを止める事はありませんでした。類稀な機動力、大義では無く生きる為に戦う事が当たり前の生活、何度も何度も勝つ迄戦い続ける姿勢。しかし、それなら、モンゴル帝国以外にも、北方騎馬民族国が誕生して居ても可笑しくありません。
匈奴、スキタイ、突厥、契丹等、強い力を持った北方民族は沢山ありましたが、その中で、モンゴル帝国はどうしてこんなにも突出して強かったのでしょうか。
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モンゴル帝国は優れた軍事国家だった
そこで登場するのがチンギス・ハンです。彼は騎馬民族の強さに、国家としての要素を取り入れて行きました。強過ぎる遊牧民族は力が全て。略奪を繰り返して力を増すと、一部の者に権力が集中し弱い部族を抱き込んで大軍に為りますが動きが鈍く為り、騎馬民族としての機能が失われて衰退すると云う事が繰り返されて居ました。
又、なまじ武力がある為、一度内紛が起きると収集が着か無く為りそのまま潰し合って消滅してしまう事も。
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武力があるだけでは生き残って行け無い事を、チンギス・ハンは悟って居たのかも知れません。チンギス・ハンは比較的早い段階から、大軍を一つに束ねて無駄無く統率出来る方法を見出して居ました。投石機や火薬を使った武器等、新しい攻撃方法の模索・研究にも余念が無かった様です。諜報活動の様な事も頻繁に行って居たのだとか。
彼は非常に寛容な人柄であったとも伝わって居ます。古い体質やプライドに囚われず、新しい事にドンドン挑戦して行く事が出来たのかも知れません。
この様にしてモンゴル帝国は、それ迄の遊牧民族が成し得無かった東西文明地域の征服、果ては史上最大の大帝国へと発展して行きました。遊牧騎馬民族としての強さ、荒々しさはそのままに、近代的な軍事国家の体を整えて行ったチンギス・ハン。しかし、その道則は決して順風満帆とは言え無い、大変厳しいものでした。
チンギス・ハンの名前問題
「草原の覇王」「蒼き狼」チンギス・ハンの生い立ちを追い掛ける前に、名前の書き方に着いての謎に触れて置きたいと思います。
チンギス・ハンの名前には様々な呼び方が。チンギス・カン、カーン、ハン、ジンギス･カンと表記する事もあり混乱を来す事も。果たしてどれが正解なんでしょう？又、何故こんなに様々な読み方があるのでしょうか。ハンとは、トルコ・モンゴル系の遊牧民族の「王」や「部族長」を表す言葉。モンゴル語では「カ」と「ハ」の中間位の発音に為るのだそうです。これが更に複数の部側を束ねる様なもっと強い王や長とも為ると「ハーン」「カーン」と伸ばす様に。モンゴル語のカタカナ表記は非常に難しいとの事で、この辺りが混乱の要因に為って居る様です。
又、中国語や戦前の日本では”成吉思汗”と漢字で表記する事もありました。これを中国語で読むと「チンギス・ハン」現在では、チンギス・カンと読むケースが多く為って来て居る様ですが「ハンと読んだ方がシックリ来る」と云う方も多いのではないでしょうか。もうひとつ「ジンギス･カン」と云う読み方はと云うと、こちらはアラビア文字表記が元に為って居ます。
12世紀から13世紀に掛けて、中央アジアのみ為らずヨーロッパや中東までユーラシア大陸全土に渡ってその名を轟かせたチンギス・ハン。様々な言語・文化圏の文献に名を残して居るが故に、その名前の読み方も標記も様々。それ程偉大であり脅威でもあったのでしょう。
チンギス・ハンの生い立ち
苦難の連続だった幼少期
12世紀の初め頃の中国大陸は、宋と云う国が傾いて弱体しつつ南へ逃れ、代わりに金（きん）と云う国が華北を統一して王朝を打ち立てて居ました。金は元々は女真（じょしん）と云う満州民族で、漢民族以外の民族による、所謂「征服王朝」と言われた国。
領土は大陸の北東部に広がって居り、西には西夏、南には南宋、そして北部の広大なモンゴル高原には、モンゴルやタタール、オングート、メルキット等多くの遊牧民族が暮らして居ました。
遊牧民族達は皆力が強かった為争いが絶えず、その為金は北方民族に滅ぼされる事無く何とか均衡を保って居たものと思われます。
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そんな中、モンゴル族の部族長イエスゲイの元に男子が誕生します。名はテムジン。後のチンギス・ハンです。テムジンは幼い頃から野山を駆け回り伸び伸びと成長して行きました。しかし或る時、イエスゲイがタタール族に毒を飲まされ殺されてしまいます。族長を失うと、仲間達は他の強い部族へと移って行ってしまい部族はバラバラに。
テムジンは敵対する部族に捕えられ、殺されそうに為った事もありました。しかしテムジンは諦めず、母や弟達を支え続けたのです。
部族統一を誓った青年期
苦労の甲斐あって再び、テムジンの元に多くの人々が集まって来る様に為りました。テムジンはボルテと云う妻を娶り、リーダーとして益々力を伸ばして行きます。そんなテムジンに再び試練が。敵対するメルキット族の襲来を受け、妻ボルテを奪われてしまうのです。
テムジンは父イエスゲイと同盟関係にあったケレイト族の族長を頼り、旧友ジャムハ達と共にメルキット族に攻め込みボルテを取り戻します。ここで敵をせん滅する処を、テムジンは皆殺しにはせず傘下に引き入れたり隷民として抱え込んで行きました。
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恨み恨まれ殺し合うだけでは何も残ら無い。父の死から、テムジンはそんな事を学んだのかも知れません。テムジンの大らかな振る舞いは遊牧民達から有能な指導者として認められる様に為り、他の部族の元に身を寄せて居た者達も次々とテムジンに従う様に為ります。モンゴル族はテムジンの元で一つにまとまり、大きな部族へと成長して行きました。
しかし、旧友達の中には、この様なテムジンの振る舞いを理解しない者も居た様です。特に、強い者だけが生き残るべきと冷酷非道なリーダーであり続けたジャムハとの間には徐々に溝が出来ていました。
ライバル征服と友との決別
ジャムハはテムジンと敵対する部族と同盟を組み、旧友であった筈の二人は次第に対立して行きます。二人は何度も戦いを繰り返しました。勝敗に着いては文献によって異なるのですが、ジャムハの方が若干優勢だった様です。しかし、冷酷で残虐なジャムハは次第に人望を失い、彼の元を離れてテムジンに味方する者が後を絶た無かったとも伝わって居ます。テムジンはジャムハと抗争を続けつつ、モンゴル高原の部族の統一を推し進めて行きました。
1205年 モンゴル高原はほぼテムジンの手中に入り、残る大勢力は西方のナイマンだけ。この時、テムジンに追われたジャムハはナイマン族と合流して居ました。テムジンはモンゴル高原統一の為激しい戦いの末、ジャムハとナイマン族を打ち破ります。ジャムハはテムジンの元へ戻る事を拒み、処刑を望んだのだそうです。
こうしてテムジンは多くの犠牲を払いながらも、モンゴル高原を一つにまとめ上げて行きました。かつて、部族間の争いから父を毒殺された青年は、部族同士の争いを無くすべく、モンゴルの王へと成長して行ったのです。
次につづく
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