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2021年11月11日

余り歓迎され無いバラマキ エコノミストが猛批判



 自公の出来レース「18歳以下の子供に10万円」が如何にマヤカシか!

 6人のエコノミストが猛批判する理由



 11-11-1.gif 11/10(水) 20:20配信 11-11-1


 11-11-2.jpg

 コロナ禍の経済対策の為の18歳以下の子供への10万円相当の給付が2021年11月10日、岸田文雄首相と公明党の山口那津男代表のトップ会談で決まった。11-11-2


 「バラマキ」批判を受け、焦点だった「所得制限」を設けるか如何かに付いては「年収960万円」で決着した。しかし「これはマヤカシだ。何の経済効果も生まれ無い」と多くのエコノミストは激しく批判する。一体如何云う事か。


 「年収960万円」制限が「1800万円」でも貰えるカラクリ

 11月10日昼前、首相官邸で行われた岸田文雄首相と山口那津男・公明党代表の会談は40分で終わった。18歳以下を対象とする10万円相当の給付の実施に当たって、年収960万円の「所得制限」を設ける事で合意したのだった。
 「親の収入で子供が分断される事が在っては為ら無い」と、アレ程所得制限に反対して居た山口代表が、アッサリ主張を撤回した。一方、公明党の主張の「丸飲み」に依る「バラマキ批判」だけは避けたかった岸田文雄首相は面目を保った形だ。

 主要メディアの報道をまとめると、会談は40分だったが、実質10数分で終わり、後は雑談に終始し「着地点在りきの出来レース」だった様だ。合意内容は、18歳以下を対象に現金5万円と、子育て関連の支出等に使い道を限定したクーポン5万円相当の、合わせて10万円相当の給付を実施すると云うもの。

 ポイントは、自民党が持ち掛けた「年収960万円の所得制限」だが、実質的に殆どの子育て世帯をカバーする内容だ。
 国税庁の「民間給与実態統計調査」(2019年)に依れば、平均年収は436万円(男性540万円・女性236万円)で、1,000万円を超える給与所得者は全体の4.8%と極一部に過ぎ無い。所得制限が年収960万円以下で在れば、事実上、0〜18歳の子供が居る世帯の殆ど給付金を受け取れる事に為る。しかも「年収960万円」と云う条件は「世帯」の収入では無く「世帯主」の収入だ。

 仮に共働き世帯で夫(世帯主)が年収950万円・妻が900万円と合計1,850万円の収入が在る世帯でも受け取る事が出来るのだ。だから、山口代表が記者会見で「所得制限を設けても、対象の殆どをカバー出来、目的を達成出来ると判断しました」と豪語したのも無理は無かった。
 こうした自民党と公明党が合意した「現金給付」に、エコノミス達からは「まやかしだ」と云う批判が巻き起こって居る。

 「子育て世帯とそれ以外の世帯を明確に分断して居る」


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 「親を分断させ無い」と言いながら「国民を分断した」と批判される山口那津男・公明党代表(公式サイトより)11-11-3


 ヤフーニュースのヤフコメ欄では、エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏が、こう批判した。

 「所得制限が960万円以下で在れば0〜18歳の子供が居る殆どの世帯が給付金を受け取れるので、子供の居る世帯への一律給付とホボ同じだ。結局、今回の給付金制度では、困窮度合いは考慮せず子育て世帯には現金やクーポンを給付して、それ以外の世帯や独身者には給付はし無い事に為り(公明党の山口代表が)『親の収入に依って子供を分断するのは好く無い』と言いながら、子育て世帯とそれ以外の世帯を明確に分断して居る事に為る。
 又、現金とクーポンに分けて支給するのも給付手続きを煩雑にするだけで非効率だ。クーポンは全額使うから消費喚起効果が大きく、現金は貯蓄にも回るので消費喚起効果は小さいと思われ勝ちだが、実際にはクーポンを使った分、元々使う予定だったお金が貯蓄に回る事に為るので、現金給付でもクーポン配布でも消費喚起効果に大きな違いは無い。現金とクーポンに分けても政策効果は18歳に一律現金10万円を支給するのと同じだ」


 明治大学公共政策大学院専任教授で社会福祉研究者の岡部卓氏も、こう指摘した。

 「今回の合意は、名目上『所得制限』を課して居るが、殆どの有子世帯に給付が行き渡る事に為る為事実上一律給付と云って好い(但し、18歳以上の者・子供の居ない者・一定所得以上と云われて居る者は排除して居る)
 結果的に、殆ど全ての所得階層に18歳以下の子供を持つ有子世帯に薄く一時的給付と為って居る。しかし、十分な給付水準とは云えず、コロナ対策としての経済対策として(福祉対策としても)制度設計上(目的・対象・水準・政策効果等)からしてその体(てい)を為さ無い不十分なものと為って居る」


 経済対策を11月中旬にまとめる予定の岸田文雄首相に取って、公明党に所得制限を飲ませるか如何かは「今後の指導力を見せ着ける上で正念場だった」と指摘するのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。
 その意味では「形づくり」に成功した訳だ。熊野英生氏は「18歳以下10万円給付への所得制限〜年内経済対策で問われる岸田政権の矜持〜」(11月8日付)で、先ずこう述べて居る。

 「岸田首相に取っては、この問題は因縁が在る。2020年春に岸田首相が自民党政調会長だった時、(現金給付は)当初所得制限を設けて1世帯30万円にすると決定して居たのに、土壇場で公明党が国民全員に1人10万円を唱えて、決定がヒックリ返った事件で在る。
 現在は、経済環境は大幅に改善して居る。今、所得制限を付け無いで、18歳以下の子供が居る世帯全てに給付金を配る必然性は無い。経済対策として考えると、給付金が消費支出に回ってコソ景気刺激に為るが、子育て世帯は貯蓄率が高い。
 2020年の家計調査(勤労者世帯)では、未婚の子供が居る夫婦世帯の貯蓄率は41.2%で在る。子供の居ない夫婦世帯の貯蓄率34.9%よりも6.3%も高い=図表参照。何故、18歳以下の子供が居る世帯を選んで、優先的に給付金を配るのか。子育て世帯の中でも経済的に苦しい世帯に絞る事が、何故正しく無いのかは好く理由が判ら無い」



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       図表 子育て世代は貯蓄率が高い(第一生命経済研究所作成)11-11-4


 そして、熊野英生氏は「岸田政権は正念場を迎えた。首相のリーダーシップを発揮して、責任を持って必要度の高い政策を取捨選択して欲しい」として、子育て世代の問題なら母子家庭を救う事に全力を傾けるべきだと、こう結んだ。

 「気に為るのは、母子家庭への対応だ。2019年の厚生労働省の調査では、18歳未満の児童が居る世帯の6.5%は一人親で在る。特に、母子家庭は貧困世帯が多い。母子家庭に対しては、給付金のみ為らず、様々な形での貧困を抜け出す支援を追加しても好い。全ての子育て世帯を一様に支援するのでは無く、母子家庭にはより手厚いバックアップが検討されても好い」

 「子育て世代は将来の増税に備えて貯蓄する」

 実質的に18歳以下の子供のホボ全員に「10万円の給付」が決まったが、経済効果は在るのだろうか。「又バラマキに終わり、貯蓄に吸収されそうだ」と指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。

 「子供への給付金の経済効果とその課題」(11月8日付)では、先ず「個人消費を7,680億円押し上げる経済効果が在る」としながら、こう指摘して居る。

 「総務省統計局に依ると、0歳から18歳迄の人口は1,923万人程度と推定される。仮に18歳以下の子供に1人10万円を支給する場合、予算は1兆9,200億円と為り、個人消費を7,692億円押し上げる計算と為る。これは、年間のGDPを0.36%、個人消費を0.67%押し上げる効果を持つ」

 処が、給付方法に問題が在り「試算」通りには行か無いと云うのだ。

 「給付金はコロナ対策の一環との位置付けであるが、子供が居る世帯は、コロナ禍で所得が減少した世帯ばかりでは無い。新型コロナウイルスが追い風と為り、寧ろ所得が増えて居る世帯も少なく無い。(バラマキの給付では)大きな打撃を受けて居る世帯を集中的に救済する事には為らず、又、新型コロナで拡大した所得格差を縮小させる事にも為ら無い。
 子供が居る世帯は概して生活弱者で在るとの認識が在るのかも知れ無いが、それはコロナ対策では無く、既存の社会保障制度で対応すべき問題だ。そして、セーフティーネットで十分に対応出来ない分に付いてのみ、一時的なコロナ対策として給付制度の導入を検討する、と云うのが本来の在り方ではないか」 


 と、木内氏は指摘するのだった。こうした事から、給付金が実際の消費に回る割合は低く、貯蓄に回る可能性が高いと云う。

 「給付金の経済効果も、期待した程大きくは為ら無い可能性が考えられる。給付金の様に一時的な所得は、月例給の様に経常的な所得と比べて貯蓄に回る比率が高く為る。給付金は、新型コロナで所得が大きく減った個人・世帯に対象を絞ったものとするのが適切だ」

 と、矢張り「バラマキ」を批判するのだった。

 「子供を持つ世帯の多くは将来の増税を心配して、給付金は貯蓄に吸収されるから、何ら経済効果は無い」と厳しく批判するのは、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。

 「岸田首相の経済対策とリカードの中立命題」(11月8日付)で、英国の経済学者、デビッド・リカード(編集部注:1772年〜1823年、自由貿易を擁護する理論を唱えた)の「学説」を引用し、こう述べて居る。

 「リカードは、財政政策に付いて、次の様な考え方を提唱しました。政府が景気刺激の為に減税し、減税分を国債発行で賄うとした場合、家計が将来の国債償還時の増税を予想すれば、家計は現在の減税分を消費に回す事無く将来の増税に備えて貯蓄するので、減税は何ら景気を刺激する効果を持た無いと云うものです。
 これは一般に『リカードの中立命題』と云われて居ます。今回は、減税では無く現金給付ですが、岸田首相は今の非常時には政策の財源として国債を思い切って使うべきだと述べて居ます。
 一方、財政赤字に付いて、10年程度は消費税率を引き上げる事は無いが、財政再建の旗は降ろしてはいけ無いとの立場です。従って、10年後以降の増税を予想する家計が多い程現金給付の政策効果は低下する恐れが在ります」


 詰まり、岸田首相の姿勢を見る限り、10年後以降の増税を予想する人が多く「リカード理論」に依って給付金が貯蓄に回る可能性は高く為るから、政策効果は期待出来無いと云う訳だ。市川雅浩氏は、こう結んで居る。

 「(2020年の全国民一律10万円の支給も)少なくとも7割が貯蓄に回ったとの調査も観られました。現金給付は、飽く迄一時的な生活支援で在り、景気全体を持続的に強く押し上げる政策では在りません。
 衆院選では与党が勝利しましたが、日経平均株価は依然3万円台を回復して居らず、岸田首相の経済対策に就いて海外投資家等市場の評価は、現時点で余り高く無いと考えられます。評価を高めるには、中長期的に日本の経済や企業業績を展望した際、十分な成長と拡大が期待出来る様な、具体的で分かり易い構造改革や規制緩和の提示が必要と思われます」


 「一時金の10万円」より「毎月の1万円」を


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        本当の子育て支援に為って居るか(写真はイメージ) 11-11-5


 一方「一時金のバラマキ」より「毎月コンスタントに1万円ずつ」の給付をした方が効果的ではないか、と提言するのは、経済評論家で楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏だ。経済ニュースサイト「ダイヤモンド・オンライン」(11月10日付)の「18歳以下に10万円相当給付、所得制限もクーポンも頭が悪過ぎる理由」の中で、自民党と公明党の「妥協」をこう厳しく批判して居る。

 「『18歳以下に一律で10万円の現金を給付』するとされて居た政策案が、自民・公明両党の幹事長会談を経て変容した。5万円分は教育関連に使途を限定したクーポンに姿を変えてしまったのだ。この『クーポン』と、自民党が主張して居る『所得制限』の導入が、如何に不公平で非効率で頭が悪過ぎるかをお伝えしたい。
 お金持ちにも現金を給付するのは可笑しいと云う議論は、その部分だけを見ると正しい様に思える。しかし再分配の効果は『給付』と『負担』の『差額』で見るべきだ。手続きを考えると、給付を一定にして迅速に行い負担面で在る税制を変化させて『差額』をコントロールする方が圧倒的に効率的だ。
 両方を調整するのは制度が複雑に為るし、時間とお金の両面で非効率的だ。所得ないし資産の面で富裕な国民に追加的な負担を求めたら好い。負担が増えた国民と、差額で使えるお金が増えた国民とが居て『再分配』が実現する」


 そして、山崎元氏は「18歳以下に一律現金10万円」のバラマキ案のダメなところ」をこう説明する。

 (1)『18歳以下の子供』と云う支給対象選定が公平で無い事
 (2) 継続的な効果が無い一時金で在る事

 ・・・例えば『大学生の子供が居る母子家庭』の様な家には支援が無い。ソモソモ非正規で働いて低所得で在ると云った理由で、子供を持つ余裕が無い人も居る筈だ。そこで、こう提案するのだった。

 「『1回だけの10万円』の様な給付は、受給者に取って安心感が乏しいし、従って前回(編集部注 安倍政権時の全国民一律10万円給付)と同様に支出を促す効果も乏しい筈だ。『子供の未来』等と言うなら、継続的な支援を考えるべきだ。対案としては『毎月1万円』の様な給付が考えられる。
 例えば国民年金の保険料を全額一般会計負担(税負担)にすると、低所得な現役世代には苦しい毎月1万6610円の支払いが無く為って『手取り収入』が将来に渉って増える事が予想出来る」


 福田和郎


 〜管理人のひとこと〜

 政府が国民に現金を給付する・・・これは全く一時的なので在り臨時ボーナスの様な感覚で受け取る。そして、コレが全て消費されれば全てに社会の還元された形と為りその分の所得が向上する。しかし、多くの人達が将来不安を感じ貯蓄に回すとすると、社会的な波及効果は無く為ってしまう。政府が国民の貯蓄を増やすだけで終わってしまう。
 が、将来的には貯蓄から何らかの消費が生まれるかも知れ無い。詰まり、今現在の景気浮上には何ら影響され無い事に為る。これが、単なるバラマキと云われるものだ。
 生活困窮者に焦点を絞って現金給付する・・・その全てが消費に回るかどうかは判らぬが、何れ有難く使われる事は間違い無い・・・何も子供が居なくても生活困窮者の生活支援に使われる事にこそ意義が在るのでは無かろうか・・・













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