2021年11月02日
立憲民主党は 解党的出直しを図るべき
自民党を勝利させた立憲民主党は
敗北を認め 解党的出直しを図るべきだ
田中良紹 ジャーナリスト 11/1(月) 23:42
選挙結果が選挙前の予測とコレ程違った事は無い。選挙前の予測では、野党共闘の効果で立憲民主党と日本共産党が議席を増やし、自民党の候補者は多くの選挙区で1対1の接戦を強いられ、必ず議席を減らすと言われて来た。
その前提と為ったのは、前回2017年の総選挙での自民党の勝ち方に在る。安倍政権が仕掛けた「国難突破解散」に立ち塞がったのは、小池百合子東京都知事の作った希望の党で、ソコに旧民主党勢力が合流した事から、一時は政権交代が確実に起こると誰しもが思った。
処が希望の党に合流するに当たり、旧民主党政権で要職に在った者を「排除」する方針が示された事から、それに反発する勢力が枝野幸男を担いで立憲民主党を立ち上げ、野党が分裂し混乱した事で、安倍自民党は命拾いをした。
その為自民党の勝利は自力では無く、所謂「水ブクレ」状態に在ると見られて来たのだ。野党共闘が実現すれば「水ブクレ」は解消され、自民党の議席は必ず減ると云うのが事前の予測だった。
そこで焦点と為ったのは、自民党が何議席減らすかである。自民党が公示前の276議席から44議席減らせば、単独過半数の233議席を下回り岸田総理は求心力を失う。選挙で常に安定した議席を獲得する公明党との力関係が変化し、それが政権運営にも影響する。ソコで44と云う数字が今後の政治を占うカギと考えられた。
処が自民党は単独過半数の233処か、国会運営を自民党の思い通りに出来る絶対安定多数の261議席を獲得した。これを勝利と言わずして如何する。公明党と合わせると与党は294議席と為り、公示前の305議席より11議席減っただけだった。
それに反して野党共闘を行った野党第一党の立憲民主党と第二党の日本共産党は、議席を増やす処か減らした。立民は公示前より14議席も、共産は2議席減らした。候補者を1本化すれば勝てると踏んだ筈の選挙で負けたのだから話に為ら無い。
野党勢力で議席を増やしたのは日本維新の会が11議席から41議席と圧倒的で、国民民主党は8議席から11議席、れいわ新選組が1議席から3議席に夫々伸ばしただけに終わった。
この選挙に依る新たな勢力分布は、与党が294議席と全体の6割強、野党が171議席と3割強と為る。それを見て居ると、この国は「55年体制」の時代から与党と野党の勢力分布が変わって居居ない事に気付く。
「55年体制」は政権交代し無い事に特徴が在った。野党が権力奪取を狙わ無かったからである。詰まり野党第一党の社会党は過半数を超える候補者を選挙に擁立せず、代わりに憲法改正を発議させ無い3分の1を超える議席の獲得を狙った。
共産党は組織維持の為全選挙区に候補者を擁立して社会党と対立する。詰まり野党は常にバラバラだった。自民党を万年与党にしたのは社会党と共産党で、私はコレこそ自民党の「補完勢力」だと思って来た。自民党政権が最も腐心したのは野党からの攻撃では無く、米国からの軍事的要求に如何応えるかだった。
吉田茂が敷いた「軽武装・経済重視」路線とは、国民に護憲思想を広め、米国に軍事的要求をエスカレートさせ無い事で在る。
その為自民党は、野党に護憲運動を遣らせて憲法改正を発議させ無い3分の1の議席を与える。国民には学者やジャーナリスト等が護憲思想を教える。そして米国が軍事的要求をエスカレートさせれば、忽ち政権交代が起きて左派政権が出来ると米国に思わせた。
東西対立が在る限り米国は左派政権の誕生を認める訳に行か無い。日本の要求を受け入れ、日本は「軽武装・経済重視」路線で高度経済成長を実現した。一方で自民党内では派閥が夫々に総理候補を担ぎ、それ等が権力闘争を行う事で、疑似的な政権交代が繰り返えされた。
この時代の野党の議席は決して過半数を狙わず、3割強を占める事を狙って居たから、支持する国民もその程度だったと思う。だから政権交代は決して起こらず、国民は政治より経済に目を向け、高度経済成長に貢献し、またその恩恵に預かった。
処が冷戦が終わり、米国が敵として居たソ連が30年前に消滅すると「軽武装・経済重視」路線を続けるカラクリが効か無く為る。米国の軍事的要求は遠慮する事無くエスカレートし始め、日本はその要求を交わす事が出来無い。政権交代を狙わ無い野党の存在も必要無く為った。ソコから政権交代を狙う野党造りが始まる。
平成元年に始まる「政治改革」はその為だったと私は思う。しかしそれがナカナカ上手く行か無い。「55年体制」の自民党は公共事業を中心とする「大きな政府」を、社会党は福祉を中心とする「大きな政府」を主張し、ドチラも「大きな政府」の政策である事に変わりは無かった。
日本に初めて「小さな政府」の政策を紹介したのは小沢一郎である。ベストセラーと為った『日本改造計画』はその手引書だった。そして権力を握ると本当に「小さな政府」を実現したのは小泉純一郎だった。すると小沢は一転して「政治は国民の生活が第一」を主張し「大きな政府」の政策を掲げて小泉政治と対峙する。イヨイヨ米国と同じ様に「小さな政府」と「大きな政府」を軸に政権交代の仕組みが出来るかと私は思った。
2009年の民主党への政権交代は、それ迄の自民党支持者が民主党支持に動いた結果である。羽田孜や小沢一郎等自民党に所属して居た政治家に対する支持が民主党政権を誕生させた。政権交代を起こすには3割程度しかいない従来の野党支持者だけでは数が足りないのだ。
2009年の政権交代の時、農協以外の業界団体は皆民主党支持に回り、民主党は小選挙区で47.43%の票を獲得して政権を奪取した。処がイザ鳩山政権がスタートすると、様々な分野で稚拙な対応が目に付く。従来の自民党支持者はその稚拙さに呆れた。
その後の菅直人政権や野田佳彦政権も自民党を見て来た私の目には落第だ。そしてスタート時の期待感が大きかった反動で失望の度合いも酷く為る。それが私の民主党政権時代の記憶である。
処が前回総選挙の時、希望の党に対抗する為「枝野起て!」の掛け声が何処からとも無く上がり、東日本大震災の時に官房長官を務めた枝野幸男が立憲民主党を立ち上げる事に為事に為った。
枝野官房長官は福島の原発事故の時に毎日記者会見を遣って居たから、多くの国民の記憶に刻み付けられて居る人物だ。勿論、好感を持つ人も居るだろうが反対の人間も居るだろう。そして彼を見れば東日本大震災と原発事故の記憶が多くの国民の脳裏に蘇って来る。
私は「枝野起て!」と云う声は野党では無く、与党の方から上がって居る可能性を考えた。与党に取って野党を分断して置く事は権力維持の為の要諦である。枝野幸男に立憲民主党を作らせる事で、野党の中の分断を解消させ無くし、国民にはアノ事故の記憶を思い出させる為だ。
私の想像を酷を酷いと思う方が居るかも知れない。私もコンな事を想像したくは無いが、しかし私が見て来た自民党内権力闘争からすれば、決して在り得無い事で無い。
そしてそれを裏付ける様に安倍元総理は「民主党の枝野さん」とワザと間違えてみせ「悪夢の様な民主党政権時代」と云うフレーズを繰り返す。アノ東日本大震災の記憶を蘇らせ様として居るとしか思え無い。
私の目に枝野代表の言動は「55年体制」時の社会党の政治家と似たものを思い出させる。相手を一方的に攻撃する・強がりを言う・尖がって居て包容力を感じさせ無い・・・それでは3分の1の議席しか取れ無いだろうと私は思ってしまう。
今の政治に不満な国民は大勢居ると思う。しかし選挙に行か無い。今回の選挙も投票率は50%台の真ん中で過去3番目の低さだった。今の政治に不満だが、それを変える政治力が在る様に見え無いのが立憲民主党ではないか。
今回議席を4倍近くに伸ばした維新にはソレを感じさせる何かが在る。れいわにも国民にも僅かだが在る。しかし立民にはそれが無いのだ。それは個々の候補者では無い。政党の顔である執行部の面々に昔の民主党を思い出させる要素が在るからだ。
前にも紹介したが松本正生埼玉大学名誉教授の調査に依ると、自民党支持者の年代には余り偏りが無い。20代と30代が全体の19%、40代と50代で42%、60代と70代で38%を占めて居る。
これに対し、立憲民主党は20代と30代が全体の10%、40代と50代で30%、60代と70代では61%と、圧倒的に若者の支持が低く、高齢者に支持者が偏って居る。特に目に付くのは70代の支持者が35%と最も多いことだ。
恐らく立憲民主党は〔全共闘世代〕に支持されて居るだけで、若者には全く関心を持たれて居ない。全共闘世代は「55年体制」を知る世代でも在る。その時代の政権交代を狙わ無い野党の記憶を持った世代だ。その世代にしか支持されて居ないとしたら、立憲民主党は本物の野党には為り切れて居ないと云う事に云う事に為る。
又30代の支持が低いのは、政治に関心を持ち始めた頃に、民主党政権に対する期待と失望を味わった世代だからと云う見方も出来る。それ為らば民主党政権の中心に居た人物を代表として前面に立てて居る事は得策で無い。
今回の総選挙は立憲民主党に極めて厳しい評価を下した。それを強がりを言って無視すれば「55年体制」が再来する様なものだ。アノ時代の野党は早々に解体するしか無い。立憲民主党は敗北を認めて解党的出直しを図るべきだ。
田中良紹 ジャーナリスト
1961969年TBS入社 ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件・田中角栄・日米摩擦などを取材 89年 米国の政治専門テレビC−SPANの配給権を取得 日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案 98年CS放送で「国会TV」を開局 07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰
■オンライン「田中塾」の次回日時:10月30日(土)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きで、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。現在令和4年12月迄の会員募集中です
〜管理人のひとこと〜
筆者・田中氏が指摘する通り、今回の選挙結果程予想と異なったものは無かった。自公が40〜50議席程減らし立民・共産はそれ以上の増加が望める・・・筈だった。大阪政党の維新等は今回の選挙で埋没してしまうだろう・・・と云うより話題にも上がら無かったのである。
これは飽く迄も私的な判断なのだが、殆どの情報は「れいわ新選組」の山本太郎氏のyoutubeを観て過ごしてしまった。立民には何らの興味も湧か 無かったのは何故だろう? 例えば消費税に対する考えも消極的で対案を出せない。現状認識もその他の経済政策も全てが甘い。
結果が如何為ろうと、山本太郎氏は財源は国債で贖い、中身も具体的で全方位的な政策で「国民救済」を訴える・・・暗唱出来る程何度も聞いた。一本筋の通った理路整然とした具体的提言だったのだ。
立民が世代交代を経て生き返るか如何かは、産みの親の枝野氏の現状認識と将来への見通し如何に懸かっている。敗北の原因を何処に求めるか・・・それは貴方の政治的資質に左右されるのだから。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11070612
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック