2021年10月21日
「離婚して呉れ無いんですか?」 夫の愛人からの抗議
「離婚して呉れ無いんですか?」
3歳下のイケメン夫を誑(たぶら)かす 不倫相手からの「宣戦布告」
亀山 早苗 フリーライター 1960年東京生まれ 明治大学文学部卒 女性誌等で活躍中 女性の生き方を中心に、恋愛・結婚・性の問題に取り組み、且つ社会状況を的確に分析する筆力に定評がある。
著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『不倫の恋で苦しむ女たち』『「妻とはできない」こと』『「夫とはできない」こと』『男と女−セックスをめぐる5つの心理』『「最後の恋」に彷徨う男たち』『婚外恋愛』『人はなぜ不倫をするのか』等が在る
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不倫をして居る当事者達は「お互いに好きだから別れられ無い」と言う。だが、その事実を配偶者が知ったら苦しむのは当然の事だ。
中には「夫はATMだから、お金さえ入れて来れば好い」と言う妻も居る。〔仮面夫婦〕をお互いに認識して居て「恋愛はアウトソーシングで」と黙認し在って居る夫婦も居る・・・コンな「酷い女」が居たナンて・・・
「私は〔サレ妻〕では在りません」 ノッケから強い口調でそう言うのは近藤理彩さん(44歳・仮名 以下同)だ。「こんな酷い女が居る事を世に知らしめたい」と理彩さんから連絡を貰ったのが数ヶ月前。何度か会い、メールの遣り取りをしながら話を聞いて来た。
彼女が言いたいのは「不倫する夫」の事では無く「結婚して居ると判って居ながら夫と別れ無い女」の事なのだ。
理彩さんが、3歳年下の拓人さんと結婚したのは29歳の時だった。
「私は大学院を出て、それ為りの企業に勤めて居ます。拓人は高卒の職人さん。会社がリフォームした時に彼が出入りして居て、暑い時期だったので冷たいお茶を差し入れした事が在ったんです。それから顔を合わせる度に挨拶したり、時には世間話をしたりする様に為って。
工事が終わると云う日に彼から名刺を貰いました。手書きで携帯番号も書いて在った。笑顔の素敵な人だったし、兎に角仕事が丁寧。実直な人柄にも惹かれました」
丁度その時、理彩さんは社内の先輩との3年に渉る不倫関係で泥沼に居た。子供の居無かった先輩は「離婚する」と言い続けて居たが、実際には子供が生まれた事が判ったのだ。
「余りのショックで・・・先輩は『偶々出来ちゃったんだ』と言い訳をしましたが、それは奥さんに対しても失礼な言い方。もう別れ様と思ったのに、誘われるとノコノコ行ってしまう自分にも腹が立って居ました。そんな時に実直そうな拓人に出会った。私から彼の携帯に連絡をして付き合い始めました」
幸せ一杯だった新婚生活
1年後、2人は結婚を決めたが、理彩さんの両親は大反対だった。大学院迄出た娘を、職人と結婚させる訳にはいか無いと言い出したのだ。親の古い価値観に理彩さんは反発した。
「うちの親は世間体ばかり気にするんです。元々そう云うのが嫌だったし、職業差別・学歴差別に対しても情け無いと思いました。彼には言え無かったけど、薄々判って居たと思います。
私は私で、彼は年下だし自分の容姿にコンプレックスも在ったので、結婚を躊躇う気持ちは在りました。だけど彼が『一生、理彩だけを見て居るから』と言って呉れたので踏ん切りが着いたんです」
親の意向に背き結婚式も挙げず婚姻届だけ提出した。拓人さんの両親は早くに亡くなって居り、彼は親戚で在る「親方」の下で中学生の時から生活して居たのだと云う。
「中学を出て直ぐ修業しても好かったんだけど、親方が高校だけは出て置けと言って呉れたそうです。2人で挨拶に行きましたが、親方は凄く喜んで呉れました」
31歳の時に長男、2年後に長女が生まれると、理彩さんの両親も徐々に態度を軟化させて行った。娘を大事にして呉れる拓人さんに心を許して行く両親を見て、理彩さんは嬉しかったし夫に改めて感謝の気持ちを抱いたそうだ。
「父が倒れた時も、拓人は時間を見付けてはお見舞いに行って呉れました。私より頻繁に行って居た。車で行くから、帰りは母を送って呉れて。退院の時も彼が車を出して呉れて助かったと母が言って居ました。それを機に両親が拓人の大ファンに為ったんです」
理彩さんは生後1年経たずに保育園に子供を預けて仕事復帰して居る。
「正直言って、子供が居るのに彼の収入では食べて行けません。拓人は『オレが甲斐性無いから』と言って居たけど、私が彼と一緒に為ったのは食べさせて貰いたいからでは無い。彼と云う人間と一緒に居たかったから。それに私は元々専業主婦に為る積りナンて在りませんでした。仕事は私の自己実現の場だったんです」
不倫相手から突然の電話が・・・
拓人さんには、何時か独立すると云う夢が在った。親方もそれは判って居て「後5年頑張って呉れれば独立も出来る」と結婚した時に声を掛けて呉れて居た。「只、拓人は気が弱いからナア」と親方は笑って居た。苦労して居るのに何処かオットリして居て、気の好いタイプなのだ。
「私は弟と妹が居る長女なので、何時でも何処でも仕切るタイプ。拓人はそんな私に甘えたかったのかなと思って居ました」
夫婦仲は好いと自認して居た。子供が出来ると夫は子供以上に理彩さんに甘える様に為って行った。それでも「どんな彼も受け入れる」と彼女は決めて居た。年上で、容姿にもコンプレックスの在る自分と結婚して呉れたからだそうだ。
だが3年前、夫婦関係は一変した。或る日突然「拓人さんと離婚して呉れ無いんですか?」と云う電話が、理彩さんの携帯に掛って来たからだ。
「夫が浮気するかも知れないと、ズッと不安でした。イケメンだし優しいし、モテても不思議は無い。だけど『オレが愛するのは理彩だけ』と常に言って呉れるから信じて居ました。私は女っポクも乃至華奢な感じでも無い。ズッとバスケットボールを遣って居たので筋肉質ナンですよね。
でも拓人は『オレもバスケ大好き』と言う。私のコンプレックスを否定する訳でも寄り添う訳でも無く話をスルリと転換する。だから私は、彼は私のコンプレックスを気に留めて居無いんだ、と好い様に解釈して居ました」
愛するのは理彩だけ。その言葉を信じるしか無かったのだ。それなのに・・・
「彼女に『会って話しましょう』と言いました。夫が悪い訳は無い、女の方から言い寄ったんだと思って居たから、ガツンと言って遣れば引き下がるだろうと思って居たんです」
しかし、そんな理彩さんの目論見は外れ「酷い女」との長い付き合いが始まる事に為る。
不倫相手はビックリする程美人だった
電話が来たその日、近くに住む母に子供を頼み、理彩さんは仕事が終わってから自らが指定した喫茶店へ赴いた。夫には連絡し無かったと云う。店に入ると直ぐ彼女の携帯が鳴った。
「奥の席にいまーすとノンビリした声が聞こえて奥へ行くと、若い女性が座って居ました。処がコノ彼女がビックリする程美人で・・・彼女を見る為り私のコンプレックスが肥大して行きました」
理彩さんが名刺を出すと、受け取った彼女は薄く笑った。
「コンな時にも名刺を出すんだ・・・と彼女は呆れた様に言いました。『学歴や会社名が無いと生きて行け無い女だって、拓人が言って居たけど本当なのネ』と。拓人がそんな事を言う筈は無いと思いながらも、その言葉に気圧されて黙って座りました。私は妻なんだ、正式な妻は私ナンだと自分を励まして居た様な気がします」
彼女は「茉莉子と言います」と会釈した。最も理彩さんから見ると「会釈では無く、顎をシャクッタだけ」だったと云う。
「次に聞いた彼女の言葉にビックリしたんです『私、拓人と6年も付き合ってるんですよ』って。その時点で彼女は29歳。夫より一回りも年下です。しかも6年と云う事は、結婚生活の半分近くを彼女と付き合って居た事に為る。混乱しましたね。
すると彼女、ヘラヘラと笑って『ネ、ビックリしたでしょ?』って。ナンだこの女と思いました。妻の前で愛人はもうチョット申し訳無さそうな態度をするものじゃ無いのと感じて居ると『済まなソウな顔をシロッて思ってるでしょ?』と言い当てられて。兎に角頭に血が上って如何しようも在りませんでした」
茉莉子さんは「妻が離婚して呉れ無いって拓人が言うんだけど、私は拓人から離婚を切り出して無いと思ってるの。そんな事言える人じゃ無いもんね」とサモ拓人さんの心理を判って居ると言いた気に話した。だがそれが又図星なのだ。だから理彩さんの怒りは強まるばかり。
「兎に角、婚姻届を出して正式な妻と云う立場に居るのは私なんですよ。貴女、その事を判って無いわネ、と言うのが精一杯。すると彼女『慰謝料、請求します?』って。『請求されたら、それ、拓人に払って貰うわ。私、彼にお金貸してるしね』ともう爆弾発言の連続。
流石に如何対応したら好いか判ら無く為って『盗人猛々しいって貴女の事ね』と言うと『ステレオタイプだけど、この泥棒猫って言います?』とニヤニヤして居る。
コンな煮ても焼いても食え無い女と、如何して夫が付き合って居るのか判ら無くて、取り敢えず席を立ちました。すると彼女の甘ったるい様な太々(ふてぶて)しい様な声が後ろから『ネエ、離婚、してよね』と追い掛けて来ました」
思わず相手の頬を平手打ちに・・・
余りに腹が立って居たので、理彩さんは外に出ると直ぐ夫に電話を掛けた。処が繋がら無い。理彩さんは暫くソコに佇んで居た。自分が如何したら好いか判ら無かったのだと云う。
「その時、茉莉子が喫茶店から出て来たんですよ。体にフィットするワンピースを着てヒールを履いて居た。喫茶店で向かい合って居る時は判ら無かったけど、スラリと背も高くて肌も髪も艶やか。人が振り返る程の容姿なんです。私を見て、アラ? と云う顔をしたので、近づいて彼女の頬を思い切り平手打ちしました」
そんな事をする積りは無かったのだと云う。だが自分より15歳も年下の、誰が見ても「きれい」だと思う様な女に太刀打ち出来無いと感じた時、遂手が出てしまったのだそうだ。
「彼女は一瞬、頬に手を当てて私をキッと睨みました。でも次の瞬間、何事も無かったかの様に向こうへ歩き出したんです。周りの人達が立ち止まって見て居ました。私も呆然と見送るしか無かった」
如何やら夫の浮気相手は手強い・・・それが理彩さんの第一印象だった。ハタと現実に返った理彩さん。未だ夕飯には間に合うと判断、実家に子供達を迎えに行った。
「うちで食べて行けば好いのにと言う母に、今日は家で食べたいのと言って急いで夕食の支度をしました。その日は夫が早めに帰れると言って居たから。予定通り夫が何事も無かったかの様に帰宅、料理を手伝って呉れて、珍しく平日に家族が揃って食事をしたんです」
子供達が寝静まった頃、理彩さんが寝室で「茉莉子って云う女の事だけど」と呟くと、夫は「え、何?」と一瞬目が泳いだ。
「今日、会ったのよ。茉莉子さんに」 夫は行き成り黙り込んだ。茉莉子さんは夫に「奥さんと会った」と伝えて居無いのだろうと理彩さんは推測した。妙な沈黙が続く。耐えられ無く為ったのは理彩さんだった。更に言葉を吐こうとした時、夫が「判った」と言った。
「変わった女だっただろって。アイツ、オレと付き合って居るって言って無かった? とも言いました。付き合って無いからと夫は私を押し倒して来ました。チャンと話そうと言うと『好く知ら無いんだよね、彼女のこと』と言い出して。その日は夫に丸め込まれてしまいました」
夫は逃げの一手を打つ積りだと理彩さんは感じた。少なくとも家庭を壊す気は無いらしい。それなら彼女と一対一で対決するしか無い。
「弁護士に頼んで内容証明でも送って貰おうかと思ったんですが、如何も茉莉子と云う女は、そう云う常識が通じ無い様な気がして。先ずは彼女が如何云う人なのかを探るのが先だと思いました」
貴方はドッチと一緒に居たいの?
夫が寝入った後に携帯を見た。茉莉子さんとの遣り取りが殆ど残って居ない。危機管理の為に削除して居るのだろう。仕方無く探偵事務所を頼んだ。
「1週間後にモウ判りました。彼女は或る事業の経営者だったんです。アノ物言いから、ロクでも無い女だと決め着けて居たけど、小規模ながら割りとチャンとした会社だった事にビックリ(笑)
シングルマザーで子供は3歳と聞いて、拓人の子かも知れ無いと・・・実母と3人暮らしで、拓人は1週間でソコに1度行って居ました。自宅とは別に会社の近くにワンルームのマンションも在るらしく、拓人はソコにも1回行って居た。恐らくソコで男女関係を結んで居たんでしょう」
サテ如何しようと、理彩さんは考えた。兎に角夫と別れて貰いたい。脅しが通用し無いなら、真摯に頼むしか無いのかも知れ無い。
「彼女に連絡をして再度会いました。先ずは子供の事を尋ねたんです。拓人の子なのかと。すると『私の子よ』って。『父親に付いて言う積りは無い』と言われました。それならそれで好い。『私と子供達から拓人を奪わ無いで欲しい』と頭を下げました。すると彼女『拓人に聞いてみようよ』と彼と呼び出したんです。私が居ると逃げちゃうかも知れ無いから、私はその喫茶店の別の席に居る事にして。
何も知ら無い拓人が、30分後にノコノコ遣って来て、茉莉子と向き合った処で私が拓人の横に座りました。ギョッとしてましたね。『拓人、私と奥さんとドッチと一緒に居たいの? 私だって6年も待ってるんだから』と茉莉子が言うと黙ってしまって」
「ドチラも選べ無いと云う事なのか?」と茉莉子さんが尋ねると、拓人さんは頷いた。「離婚して結婚して呉れるって言ったジャン」と云う茉莉子さんの言葉に、拓人さんは「ごめん」と呟いた。
「そんな事じゃ無いかと思っては居たけどサ、しょうが無いわネ」と言う茉莉子を見て、私より彼女の方が拓人を判って居るのかも知れ無いと思いました。だけど私だって引き下がれ無い。
「貴方は私の夫で子供達の父親ナンだから、モット確りしてよ。この人とは別れるって言って!」と言うと、茉莉子が「理彩さん、この人はそう云う言い方をしても動か無いわよ」と鼻先で嗤う。屈辱でしたネ。そんな茉莉子を拓人は愛おしそうに見て居る。後からそう言ったら拓人は『普通に見てたダケ』と言い訳して居ましたが・・・
膠着状態は何何時迄続くのか
その日から、理彩さんと茉莉子さんの「彼を巡る恋の鞘当て」が続いて居る。只、理彩さんは仕事が多忙で、ナカナカ拓人さんの胃袋を掴む事が出来無い。意外な事に茉莉子さんは料理が得意で、拓人さんは食べたいものが在ると茉莉子さんの家に行く様だ。
「子供に会いたい時は自宅に帰る。只、茉莉子の子は恐らく拓人の子だと思うんです。認知し無くて好いのかと聞いたら『彼女が望んで居ない』って。拓人も茉莉子も変人だと思う。茉莉子は時々私の携帯に電話を掛けて来て『拓人、今、帰ったわヨー』って言うんです。『貴女、早く手を引き為さいよ』と私が言うと『ダッて来ちゃうんだもの。余程私の身体と料理が美味しいのネ』と。
その度に私はキーッと為るけど、何を言っても茉莉子は変わら無い。拓人にも言って遣るんですが、最近、彼は半分開き直って居るのか、そう云う事を伝えても笑ってるんですよ」
理彩さんと拓人さんの間にも性的関係は失われて居ない。それが又「悔しい」と理彩さんは言うが、奇妙な三角関係は露わに為った3年前から微妙なバランスの元に固定化して仕舞った様だ。
「別れさせ様と思って、彼女の会社宛てに『此処の社長は不倫して居る』とメールして遣ろうとも思ったんですが、彼女自身が社長で、しかも株式公開して居る会社でも無いので、余り意味が無い。社会的ダメージを与え様が無いんです。
彼も職人だから、不倫ナンて云うのは彼のプライバシーで、それを私が公表しても何も変えられ無い。イッソもう二度と子供には会わせ無いと告げて離婚する事も考えましたが、子供達は拓人の事が大好きなんですよ。為す術が無い」
一度、彼女は茉莉子さんに「このママで好いの?」と聞いた事が在る。茉莉子さんの答えは「拓人が決める事だから」だった。
「私はソコ迄達観出来ないんですよ。『夫シェアって云うのも面白いじゃ無い』と茉莉子は言いますが、そこ迄変人にも為れ無い(笑) 拓人の事が大好きな両親にも相談出来無いし・・・」
拓人さんがドチラかに決めるか、2人の女のドチラカが別れを切り出すか。事態が変わるのはその二つの方法しか無いのかも知れない。
「私は正妻ナンだからと思って居たけど、婚姻届が拓人の居場所を私の元だと保証して呉れる訳では無い。妻の座は強いナンて嘘ですよ。結婚って、一体何なんでしょう」
日常生活に追われながら、フトした時に考え込んでしまうと云う理彩さん。一時は疲弊して5キロも痩せたが、今はスッカリ元に戻った。
「同じ事をズッとクヨクヨ考えて居られ無いのが、人間の強さなんでしょうかね。自分も含めて、人間って愚かだなと痛感して居ます」
この3人の関係、もう暫く膠着状態が続きそうだ。
亀山 早苗 フリーライター
〜管理人のひとこと〜
神でも仏でも・・・海を渡ってアッラーでもモハメットでもキリストでさえも、この問題を円満に解決出来る方は居られまい。何とも・・・漫画にも為らぬ、如何にも為ら無い問題だ。元に戻せば好いのかと考えれば、それでは両方の家庭が破壊してしまう、余りに犠牲者が多い。だから下手に触られ無い事情だ。
悪いのは旦那なのだからと、彼を責めて鞭で叩いても「痛い!」と泣き叫ぶだけで一つも解決しない。心配しても始まら無い、放って置くしか無いのだ。亀山 早苗さんには為るべくこの問題から離れて欲しい・・・今言えるのはそれだけだ。
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