2021年09月16日
未婚化の原因は「女性余り」と云う壮大な勘違い
未婚化の原因は「女性余り」と云う壮大な勘違い
東洋経済オンライン 9/16(木) 9:01配信
写真 takeuchi masato PIXTA 9-16-30
文章 天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 9-16-31
日本に於いて第2次世界大戦以降で最も多く子供が生まれたのは、現在の70代前半の世代です。1947年から1949年に生まれた彼等は〔団塊の世代〕とも呼ばれ、年間約270万人も出生して居たのです。
処が昨年2020年の出生数は84万人で、270万人の僅か31%に過ぎません。詰まり、70代前半の祖父母世代の頃は9クラス在った小学校で在れば、今や何と3クラス、もし当時3クラス在った小学校で在れば今や1クラスと云うのが令和時代の日本の姿です。
団塊世代の夫婦の子供達で、現在はアラフィフで在る1971年から1974年に生まれた〔団塊ジュニア〕も年間約200万人生まれて居ました。半世紀前に生まれたアラフィフ人口の約4割しか赤ちゃんが生まれ無い・・・当然ながら、日本の人口の未来は極めて危機的と云えるでしょう。
この〔半世紀で出生数半減〕とホボ同率で減少して居るのが、実は〔初婚同士の結婚数〕です。1970年から新型コロナ禍前の2019年迄の約半世紀で、出生数は45%水準に迄減少しましたが、初婚同士の婚姻数も48%水準に迄大きく減少して居ます。判り易い迄に日本の出生数減少(人口減少)は未婚化に起因して居るのです。
人口総数は「女性余り」だから女性は焦るべき?
未婚化の話をするとイメージで「女性が高学歴化して社会進出して結婚し無く為った」「行き遅れは産期の在る女性だけの話」等と、未だに「何時の時代の話でしょうか」と云う話を持ち出す婚活当事者・結婚支援者等が必ず居られます。
しかし統計的に解説する為らば、日本は〔男性未婚化大国〕です。未婚化、と云う為らば圧倒的に男性の話と云えます。
確かに人口の総数だけを見てしまうと、男性は女性の95%水準の人口と為りますので「男性の方が女性よりも少ないのだから女性余りなのだ」と言いたく為るでしょう。しかし、総数で全てを語ろうとすると統計的に正確な事象の解釈が出来無く為ってしまい、物事の真相を見失い易く為りますので注意が必要です。
未婚化と云った時に、小学生や後期高齢者の結婚をイメージする方は流石に居ないと思います。結婚と云うと、法的に結婚が可能と為る10代後半から、ソロソロ老後を意識し始める初老期(凡そ50歳前後)前迄の年齢での結婚をイメージする方が一般的ではないでしょうか。
驚く方も多いかも知れませんが、総数でコソ女性の方が男性よりも多く為るものの、50代前半の年齢迄は男性人口の方が女性人口よりも常に多い状況なのです。生物学的な解説は此処では最低限に留めますが、ヒトと云う動物は男児が女児よりも5%(1:1.05の比率で)多く生まれて来ます。これは医療が介在し無い自然の状態に於いては、女児よりも男児の方が乳児死亡率等が高い為です。
子孫を残す大人に為る迄に〔自然淘汰〕に依って男児の方が女児より多く死亡してしまう為、成人時に男女が同数程度に為る様に5%男児が多く生まれて来る仕組みがヒトと云う動物の出生に内蔵されて居るのです。正に自然界の神秘と云えるでしょう。
10代後半〜40代の合計で70万人の違い
処が、医療先進国ではこの自然淘汰が人工的に抑止される為、結果的に成人しても男性の方が女性よりも多く為ってしまうのです。日本もこの例外では無く、2015年の国勢調査確定値から筆者が計算した結果では、男性人口が女性人口に比べて、
⊡ 10代後半 16万2,444人 男性が多い
⊡ 20代 22万6,479人 男性が多い
⊡ 30代 17万0,863人 男性が多い
⊡ 40代 14万2,768人 男性が多い
⊡ 10代後半〜40代での合計 70万2,554人 男性が多い
と為り、正に結婚活動を行う主たる期間全てに於いて、男性人口が女性人口を超過して居る状況が発生してしまって居る事が判ります。一部の結婚相談所等に於いて「男性の方が結婚したいと思って居無いからで、それ自体は問題無いのでは?」と云った意見も聞きますがこれは印象論と云えます。
統計的には、生涯を通して観れば男女で結婚する意志の割合に大きな差は無く(2015年国立社会保障・人口問題研究所調査) 単に男性の方が結婚したいと強く思う時期が女性と比べて可成り遅れる為に、20代・30代の年齢で相談所に来るのは圧倒的に女性の方が多く為り、相談員には男性の方が一見焦って居無い様に見えてしまうだけ、と云う事が指摘出来ます。
筆者が九州の結婚支援者向けに「エリアの年齢別の男女の未婚者数」に付いて講演をした際
「男性の方は既に結婚して居て、結婚出来無い女性ばかりが婚活イベントに来るのだと勘違いして居ました! 女性余りだと思って居たんです。男性はソモソモ婚活の土俵に上がら無いで婚期を逃して居るのに、産期も無いので何時かは結婚出来ると思って居るとは・・・」
と愕然(がくぜん)とされて居ました。ソモソモ結婚したいしたく無いに関わらず、絶対数で女性不足で在ると云う事を男性の結婚希望者や結婚支援者は好く理解して置いて頂きたいと思います。
人口総数で見ると女性が多いワケ
そんなに男性が余って居るのに、総数では女性が多いのか・・・と云う点に付いて確認して置きましょう。
本当に、女性は男性よりも長生きですね。50代からは男性の方が女性よりも早くお亡く為りに為って行く様子が伺えます。そして80代以降とも為ると、正に〔お婆ちゃんだらけ〕と云った様相です。
そう云う意味では、女性は男性よりも〔長生きリスク〕に備えて置か無ければ為りません。只、2015年の国勢調査結果から計算した〔50歳時点で結婚歴の無い人口割合〕は男性は4人に1人ですが、女性は7人に1人ですので、長生きリスクに関して、子孫が面倒を看て呉れる可能性は男性より可成り高く為ります。
問題は男性の未婚化に依る〔おひとり様〕問題です。男性の孤独死は女性の孤独死の3倍から4倍に上る・・・との孤独死物件の清掃対応業者の現場記事や、男性の孤独死に関する著書や発信を目にして居る方は少なからず居るのではないでしょうか。
統計情報としては、2020年11月に公表された一般社団法人日本少額短期保険協会のレポート「第5回 孤独死現状レポート」が在り、孤独死の男女比は8:2(サンプル数4,448人)と男性の孤独死が圧倒的と為って居ます。又、65歳以上の高齢者の孤独死は約5割、死亡平均年齢は60歳辺りと為って居り「孤独死は高齢者の話でしょう」とは言え無い状況と為って来て居ます。
男性の孤独死研究は専門外ですのでこれ以上は述べませんが、男性の未婚化が齎(もたら)す孤独死・介護離職・介護トラブルは今後、未婚化割合の高さから更に社会問題化して行くと思います。
統計的に「キリギリス婚活」は成功しない
残念ながら全国の結婚支援の現場の方からも、婚活当事者の健康や親の健康問題が発生し始めてからの「ソロソロ結婚したい」「子供も欲しい」と云った、マルで童話「アリとキリギリス」のキリギリスの様な男性の結婚行動(介護婚活 親又は自らの介護目的の婚活)を問題視する声が多数筆者の処にも届いて居ます。
筆者の過去記事でも何度もお伝えして居ますが、男女で結婚適齢期(結婚が成立し易い時期)に差はホボ在りません。初婚同士のカップルの結婚ピーク年齢は、男性27歳・女性26歳です。
初婚同士の結婚の7割が男性32歳迄・女性29歳迄で発生します。統計的に見て、アリとキリギリスの「キリギリス婚活」は成功し無いのです。もし、介護婚活に近い不安を持ちつつ過ごして居る場合は、1日も早くそして自分の身体のケアや親の介護に関して「お互い様」と思って貰える年齢のお相手との結婚を急いで頂きたいと思います。
天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー 9-16-32
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