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2020年05月01日

危うし日本 中国に圧倒的差を着けられた教育




 危うし日本 中国に圧倒的差を着けられた教育

            〜JBpress 伊東 乾 5/1(金) 8:01配信〜



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             東京大学正門(撮影 川嶋諭)

 今回の「緊急事態宣言」何時迄続くのでしょうか。先ず以て、連休明け解除は無い様です。「1か月程度延長か?」と云った報道も流れ始めました。それが開けたら普通の生活に戻るのでしょうか? 残念ながら日本の教育に関しては、5月7日以降に平常の状態に戻る目算はホボありません。
 例えば、私の勤務する東京大学では、既に前期の授業を全て遠隔で行う事を決定して居ます。或いは東京藝術大学は今年1年間、合奏の授業は全て遠隔でのディスカッションやリポートで単位発給するとの通知を出したとの事です。
 小中高等の学校では、4月中の教育は自宅での自習プリント学習等で代替し、もし自習に不足が在っても5月以降、教室で補うから大丈夫と云った空気が少し前迄は有った様に耳にします。しかし、5月7日から普通通りの学校生活が戻ると期待するのはホボ不可能と言わざるを得ません。

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                  文 伊東 乾氏

 1学期、或いは前期はもう無理と諦める人も増え「9月入学説」等も流れ始めましたが、賞味期限2か月の風説と思います。7月には誰もそんな事言わ無く為るでしょう。東大を含め、一部にはカレンダー通りに進んで居る教育機関が有りますし、一部に9月にスタートする所が在っても、9月にコロナ収拾の目処等付いて居る訳が無いのは誰の目にも明らかだから。
 4月半ば以降「今から2週間の皆さんの行動が全てを決めます」と云ったセリフをメディアで目にしますが、単にミスリーディングと言うしか無い。ゴールデンウイークのウイルス蔓延を予防する必要が有るのは言うまでも有りません。しかし5月以降「1学期」に相当する時期に、学校を再開出来る見通しが立た無いのは3月時点で明確に予測の付いて居た事です。

 これから5月初頭の連休に、観光地に群がる日本人の残念な行動が観測され、そうした映像が報道される可能性が有るでしょう。しかし、それだから5月7日以降も学校を再開出来無く為った訳では決して無い事を予め指摘して置かねば為りません。

 ワザワザ検査数を減らして「行動変容」の効果が在った様に取り繕うのは、一つは休業させられて居る人達のガス抜き、それから「折角減って居るのだからGW中は出過ぎた真似をするな」と云う日本人の自粛・忖度メンタリティに訴え様とする代理店戦略と分別すべきです。
 自然科学的に落ち着いて考えれば、日本の現状は「真の感染者数」は鰻登りの一途としか判断されず、それに連れて死亡者も増えて居る筈です。しかし、それと認識されずに葬儀等が行われて居る事も在る筈で、ソコでも又、確実に人は新型コロナウイルスに罹患します。要するに、人の集まる所で、2020年5月の日本では感染者も死者も増え続けて居り、とても学校が再開出来る様な状況では在りません。

 日本を襲う「文化大革命」級教育崩壊

 世界は「テレ・エデュケーション」に大きく舵を切りつつあります。そんな中、日本は正味で「世界最低」の「テレ・エデュケーション」困難国で有る事がOECD・経済協力開発機構のリポートhttps://read.oecd-ilibrary.org/view/? ref=127_127063-iiwm328658&title=Learning-remotely-when-schools-close)で明確に示され、警鐘を鳴らされて居ます。

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 この報告は、OECDの教育評価事業「PISA」で重責を担う、星槎大学の北川達夫教授人差し指サインからご教示頂きました。私には40年来の幼馴染で、全幅の信頼を以て様々な情報をシェアしつつ対策を検討して居ます。

 そこで指摘されるのが「エデュケーション・ロス」教育の機会を失った世代の出現と、それに伴う社会経済の中長期的凋落・停滞・・・一言で云うと縮小・没落のリスクです。新型コロナウイルス感染症そのものも、それに伴う社会・経済恐慌「コロナ・ディプレッション」も恐るべきですが、並行して発生するこの教育破壊「エデュケーション・ロス」は、我が国では未だ全く広く認識されて居ません。そもそも教育現場が一番遅れて居ると、他ならぬOECDに指摘されて居ます。
 私の研究室では教育破壊がもたらす中長期的なGDP・国内総生産減少のシミュレーション等を進めて居ます。そのソースや、懸念される最悪のリスク等を記してみましょう。

 仮に学校教育が完全に無く為ってしまうと、何が起きるでしょう? 

 専門家が集まって議論した場で、H大学のI教授から、最大規模の影響として、中国で実施された「文化大革命」(1966-75)の例が指摘されました。「文化大革命」は、これに先立つ「大躍進」に失敗した毛沢東が、反対派を粛清する一種の「白色テロ」でした。その詳細に踏み込む紙幅は有りませんが「教育破壊」とその永続する影響に焦点を絞って検討してみましょう。

 「文革」期の中国では、通常の意味での学校教育はホボ完全に破壊され、子供達は教育を受ける機会を奪われました。学校の先生や大学教員等の知識人は「反革命修正主義者」等とレッテルを張られ、様々な形で弾圧を受け、命を落とす人も少なくありませんでした。学校は1966年から69年迄完全に機能停止、地域により差は在るものの1〜5年間授業が全く行われませんでした。
 1971年から再開された後も、毛沢東思想や階級闘争に関する授業や講義ばかりで、その後も毛沢東が死去する1976年迄真面な教育は施されませんでした。大学は5年間、大学院はマル12年間学生募集を行わず、海外との学術交流は断絶し、中国のサイエンスもテクノロジーも、国際水準から完全に脱落してしまいました。

 中国が文化大革命を完全に脱却するのは「4つの近代化」を掲げたケ小平体制が1978年以降「改革開放」を推進して以降の事で、教育制度は見掛け上、急速に元の中国に戻る様に見えました。しかし、その本質的な影響はボディーブローの様に延々と後を引き、上昇傾向を見せ始めるのは1990年代以降・・・本格的に経済成長が軌道に乗るのは2006年頃以降の事でした。
 2009年には日本と肩を並べ、2010年以降は日本を凌駕し、2010年代の第2ディケードでその国力は3倍程にも水を空けられて、現在のCOVIDパンデミックを迎えて居ます。1966年以降の時期に5〜10年間続いた教育破壊は、基本水準に復調するのに以後約15年、成長が本格的に再開するのに更に15年・・・詰り収束から30年、文化大革命そのものの発端からは実に40年の年月を要して居ます。

 これは国の栄枯盛衰ですが、モッと悲惨なのは個人の辿る歴史です。

 一般に中国で「文革世代」は1948〜57年生まれを指すとの事で、これは1966年時点で9〜18歳に相当します。この世代の人々が9歳⇒19歳、或いは18歳⇒28歳に相当する時期に教育を奪われた。その結果、最若年層で小学校高学年から高校卒業迄の中等教育、最高齢層では大学入学から大学院修了程度迄、中国全土の全人口規模で、高等教育が完全に失われてしまった事を意味します。
 文革の場合は影響が大き過ぎ、教育機会を失われた世代は十分に取り戻す事が出来ず、未来を子供達に託さざるを得ませんでした。

 1948〜57年生まれの「文革世代」が子供を設ける「解放」以降の時期は中国で「一人っ子政策」(1979〜2015)が敷かれたのと完全に重為って居ます。大きく見て1980年代以降に生まれた世代が大学を卒業する2003年以降に為って、完全為る「文革以降」の世代が社会で活躍し始める事に為ります。その結果2010年に日本は追い抜かれ、米中二大国対立と云う今日の基本構図が成立します。
 逆に云えば、教育を失う事は、下手をすれば半世紀近く国を失う事に等しい影響を及ぼし兼ねない、国家の一大事に他為りません。処が、今日の日本にはその様な危機感は殆ど無い事を指摘し無くては為りません。且つ2020年代、日本は間違い無く、一度は世界の教育から落ち零れてしまう危険性が非常に高い事を、先程リンクしたCOVID対策で行われたOECDの緊急リポートが警告して居ます。具体的に見てみましょう。

 遠隔教育世界最低レベルの日本

 2018年時点での、OECDが全世界で行って居る学力テストPISAの結果と、今年3月COVID危機に際して実施された緊急アンケート等から、COVID感染と蔓延が進む全世界で遠隔教育「テレ・エデュケーション」推進の必須不可欠性が、強く指摘されて居ます。子供が学校に集まれば、ソコが「クラスター」の発生源に為ります。必然的に、子供達が「3密」しない遠隔教育・・・テレ・エデュケーションが、感染予防と社会経済の収束に向けての全世界標準に為るのは誰の目にも明らかです。

 処が、こんな分かり切って居る事が、何故か日本だけでは如何にも受容されて居ない。北川達夫教授が紹介されるOECDのリポートで確認してみましょう。

 子供達が、学習に必要な落ち着いた静かな環境が確保されて居ると云う点では、日本は87%程度の達成度を保って居ます。これに対してインドネシアやフィリピン・タイ等では5〜6割程度の子供しか、勉強出来る環境を持って居ません。因みにOECD世界平均は91%程度で、日本はこの時点で既に下位国に属して居ます。
 学習の為にコンピューターにアクセス出来る子供の割合は、日本は60%程度に留まります。これに対し、世界平均は9割に手が届く水準で、日本はその3分の2程度・・・欧米先進国に遠く及びません。

 又、平均を上回る韓国は元より、平均以下のシンガポールや台湾、更にはウルグアイ、ヨルダン、コスタリカ、カザフスタンと云った国の水準に届いて居ません。マサに、日本では小中学生にはゲーム機を与え、学習にも活用出来るパーソナルコンピューターに触れさせ無いのが、当たり前の社会常識に為って居る事を示唆しています。皆さんの生活実感からは、如何でしょうか? 

 ここ迄は、全て「中の下」以下では有るけれど、未だ下がある成績でした。ここから先は、全OECD加盟国の中で、韓国や台湾等東アジア近隣諸国は元より、アラユル発展途上国・紛争後地域と比較してすら最低・・・本当の「ビリ」である日本の実情を確認してみましょう。

 OECD最下位 日本のデジタル教育

 教育にコンピューターやデジタル機器を活用する能力や、教育上のスキルを評価したOECDのスコアで、日本は世界最低の28%程度と云う、名実共に「世界最下位」にランキングされました。
 世界トップは90%を超える北京周辺の中国・・・文化大革命に懲りた「文革後以降世代」の教育への情熱が結実したものと言えるでしょう。韓国は80%超・台湾は70%超・・・世界標準は6割程度日本は28点

 今新型コロナウイルス感染症対策として「テレ・エデュケーション」と突然言われても、日本の教育機関、現場の先生の7割以上は、何を使ってどうしたら好いのか分から無いのが実情でしょう。デジタル技術も教育スキルも持って居ない、世界で最も準備が整って居ないとOECDの調査は指摘して居るのです。
 この結果と「4月中は紙のプリントを配って自習、5月に為ったら再開するだろうから、自習が少し遅れて居る子も教室で補って遣れば大丈夫」と云う、この島国の中だけで成立して居る不思議な「勘違い」とが、残念な一致を見せている。

 そして、そう云う状況に有る全国教育現場の実態も把握して居る政府としても、行き成り「向こう1年間、基本テレ・エデュケーション」等と伝える事が出来ずに居る。実際には対面授業は出来ません。遣るなら遠隔ですが、遠隔教育のテクノロジーもスキルも7割の学校の先生には基本的な準備が無い。
 それが直ちに7割程度の生徒への教育に影響を及ぼすと私は言いません。10割・・・全ての生徒に影響が不可避です。日本の教育破壊リスクは、決して「文化大革命」を対岸の火事と見做せる状況には無い。OECDリポートは更に警告します。

 日本の先生は デジタル化対応の時間が無い

 この休校で子供達との接点が無く為り、或る地方では学校の先生が給食をお弁当にして宅配したと云うニュースが報じられていました。美談として報道されて居る様に見えました。日本と云うのは、そう云う国柄なのでしょう。
 でもOECD調査はモッと冷静・客観的です。「全世界の先生が、遠隔学習、テレ・エデュケーション等にシフトするべく、勉強したり準備したりする時間が有るか」と云う調査で日本は世界最低。アラユル途上国や紛争後地域を含め、最低の10%程度と云う成績に為ってしまいました。

 世界最高は、矢張り例に依って中国の90%がテレ・エデュケーション対応の時間的な余裕を持って居ます。実際、武漢での爆発感染以降、中国ではテレワーク、テレ・エデュケーション化は国家存亡の危機に関わる大問題として認識されて居る。
 これは、今や世界最大の感染国と為ってしまった米国でも同様で、有れだけ階層社会の厳しい米国でも80%の先生が遠隔対応等に割く時間を確保して居ます。台湾が7割・世界平均は60%・隣の韓国は、この点では世界標準を下回って55%に留まって居ます。

 しかし、韓国では発表上、日本と変わら無い1万人程度の感染者をカウントして居ますが、死者は4月23日時点で200人程度、ソウルでは2人しか亡く為って居らず、医療崩壊も一切して居ません。それでも半数以上の先生がデジタル化対応して居る。
 さて、日本はと云うと・・・10%に留まって居ます。詰り、10人中9人の日本の先生は、テレ・エデュケーションにシフトしようと思っても、ソモソモ「忙しくて時間が無い」状況で、今マサに世界の趨勢に現在進行形で乗り遅れる真っ最中にある。これから数か月の間に、全世界に置いて行かれるのが目に見えて居る非常に残念な状況に有ります。

 でも、こんな事を強調しても、日本人の多くは余り反応して呉れません。処が、それがGDP・国内総生産の低下・お金の損と為ると突然目の色が変わる人が居る。とても残念な事ですが、それが現在のこの国の現実です。

 我が研究室がグローバルAI倫理コンソーシアムの国際協力の中で実際に手を動かして居る5つの柱の中に、教育崩壊に伴う経済の縮小・後退予測を選んだのは、日本が必ず迎えるで有ろう破壊的事態に、少しでも有効な対策を立てる為に他為りません。(つづく)


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 伊東 乾 博士 学術 東京大学 1965年 東京生まれ 1992年 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 修士課程修了 1995年 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程単位取得退学 1999年 東京大学大学院 総合文化研究科 超域文化科学専攻 博士課程修了 1999年 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 客員研究員 慶応義塾大学 兼任講師 2000年 東京大学大学院 情報学環 助教授 2007年 東京大学大学院 情報学環 准教授 以下の活動に邁進する・・・

 ヒトの聴覚とその脳認知に基づく新たな音楽創造の探求

 ヒト内耳内、蝸牛の能動的ダイナミクスを元に音楽音響・音声の特徴を抽出することで、従来「スペクトル楽派」以前の音楽が行き詰まっていた物理的倍音の重畳という限界を超え、線形・非線形双方の自在周波数要素を自在に組み合わせる、シニュソイダル・モデルによる認知的音像の分析と、それに基づく音楽作品を創造します。聴覚からもたらされる刺激は大脳新皮質連合野などでの高度な悟性発現の演算時間より素早く、ヒト情動を喚起し、反射的な行動に個人を駆り立てます。こうした特徴を前提とするメディア・マインドコントロールの予防と、その倫理の検討も並行しています。

 建築音響脳認知理論の拡張による時空間分析のフィールドワーク

 コンサートホールやオペラハウス、あるいは教会や寺院の中での音楽や音声の響きは時間的、空間的に様々な特徴を持っています。私たちは建築音響の脳認知理論を非線形化して、より細やかな音楽音声や音楽音響の解析に適するモデルに拡張し、これを用いて世界の様々な「時空間」をサンプリングするフィールドワークを進めています。ドイツのバイロイト祝祭劇場、アルゼンチンのテアトロ・コロン、日本の新国立劇場などのオペラハウス、カトリック長崎大司教区の木造教会群、本願寺様式の東西真宗寺院群、奈良・東大寺二月堂での修二会、四天王寺聖霊会、また東日本大震災被災地で廃絶の危機に瀕している伝統芸能などが現在進行中の主要なフィールドです。

 動学的音楽音響解析に基づく、新たな時空間上演の創成

 音楽音場解析に線形・非線形の様々な手法を用いることで、ひとつの儀礼や演奏の中に「音声言語がより明瞭に聴こえる音場」「より没入感の高い均一な音場」などを創り分けてゆくことができます。東西浄土真宗で蓮如以来と伝えられる講式やルター以来のプロテスタントのキリスト教儀礼、あるいはリヒャルト・ヴァーグナーの楽劇などを細かに調べて行くと、こうした知恵が研ぎ澄まされた耳と感覚で実現されていることがわかります。このような実効性ある根拠に基づいて、現在廃絶しつつある伝統儀礼の復元、新たな作品の創作、オペラの新しい時空間演出の創成などに取り組んで居ます。


                 以上





















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