アフィリエイト広告を利用しています
ファン
検索
<< 2022年02月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28          
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
ヨリちゃんさんの画像
ヨリちゃん
プロフィール

広告

posted by fanblog

2020年03月30日

江上剛の「福島第1原発を見て来た」【怒れるガバナンス】




 





 江上剛の 「福島第1原発を見て来た」【怒れるガバナンス】

           〜時事通信 作家・江上 剛 3/29(日) 10:04配信〜


           33010.jpg
 
 今、日本国内、そして世界が新型コロナウイルスと云う、見え無い恐怖に怯えて居る。見え無い存在に対し、人間は必要以上に恐怖を覚える。見えて居れば、具体的な対策を講じる事が出来るのだが、見え無い存在に対してはそうはいか無い。一方、恐怖が人間の行動に制約を加える事で、人間は今日迄、生き延びる事が出来たのかも知れない。

        3303.jpg

 過つて原発事故処理の拠点と為ったJヴィレッジ。訪れた時は丁度、サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)候補の強化合宿が行われて居た。写真左は、指示を出す高倉麻子監督 2020年2月19日 福島県楢葉町【時事通信社】

 風評被害

 処で、今迄日本を見え無い恐怖に陥れたのは、コロナ等のウイルスだけでは無い。2011年3月11日の東日本大震災における巨大津波が引き起こした、東京電力福島第1原発事故による放射性物質放出もそうだ。
 私は東京在住だが、近所のコンビニエンスストア・自動販売機からペットボトル入りの水が全て消えた。放射能被害を恐れた人々がパニックを起こしたのだ。今年2月18〜19日の2日間、私は東電のスタッフに案内されて、福島第1原発の廃炉状況などを見学して来た。今、廃炉の現場はどう為って居るのだろうか。東電の社員や廃炉作業に携わる人々の思いは、如何なるものだろうか。

 2月18日、常磐本線いわき駅に到着。放射能の風評被害と闘いながら、高付加価値農業に取り組む広野町振興公社に立ち寄る。此処では、バナナを栽培して居る。ナカナカ採算ベースに乗ら無いのが悩みだ。これ等の地域復興事業は、東電の福島復興本社が販売活動等で支援して居る。
 復興本社の担当者によると、イベント等を行うと、福島の農産物は好く売れるのだが、スーパー等の恒常的な流通ルートには風評被害の為に流れ無い。それが最大の悩みだ。中国、韓国の福島産品忌避は問題だが、日本国内での風評被害はもっと大きな問題だ。

 事実と記憶と記録

         3304.jpg

    福島第1原発事故の対応拠点だったJヴィレッジ内に建てられた仮設住宅 2011年9月6日 福島県楢葉町【時事通信社】

 宿泊はサッカー施設「Jヴィレッジ」原発事故の際、警戒区域の半径20キロ圏から外れて居た為、此処を拠点に原発事故処理に当たった事で有名に為った。今では、元のサッカーコートに戻り、往時を忍事は出来ない。コートではサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)候補が練習して居た。
 2月19日、イヨイヨ廃炉作業の見学に行く。先ず訪れたのは、富岡町にある東京電力廃炉資料館。資料館の担当者が真剣な思いと資料館の役割を説明して呉れた。

 「事故の事実と記憶と記録。これをキチンと残し、それ等を踏まえた私ドモの反省と教訓を決して忘れる事無く社会にお伝えする。これは単に私ドモの責任の一つと捉えて居ます」
 「30年・40年の長きに渉る廃炉事業の全容をお伝えする事で、皆さんの不安を少しでも払拭(ふっしょく)する」
 「あの巨大津波は事前の予想が困難だったと云う理由で、今回の事故を天災と片付けては為ら無いと考えて居ます。当社は事前の備えに依って防ぐべき事故を防ぐ事が出来ませんでした。この事実に正面から向き合い、私達東京電力は深く反省致します」


 思わず身が引き締まるが、その説明の中で、事故を防ぐ機会が6回程在ったのだが、安全に対する過信や利益重視等から対策を講じ無かったとの説明には、正直に言って驚いた。東電の旧経営陣が事故を予測出来無かった、と裁判で主張して居た記憶が有るからだ。資料館の担当者の説明は、旧経営陣と立場を異にする様な気がした。

 「責任は経営者に」
 
 「私達と云う表現で東電の責任を強調されて居ますが、事故の本当の責任は誰に有ると思いますか」と私は聞いた。担当者は即座に「経営者だと思います」と回答した。
 私は、その言葉に廃炉や復興現場で働く東電社員の覚悟を思い知った。事故は天災では無い人災なのだ。だから、二度と起こさ無い様に取り組む事が出来るのだ。

 電源喪失・注水作業・ベント(排気操作)等の様子がスクリーン上で細部に渉って説明される。

 《3月11日14時46分地震が発生。出力運転中であった1号機・2号機・3号機は設計通り原子炉自動停止。地震により、発電所の外部からの電気を受電出来無く為ったが、非常用電源に切り替える事が出来、原子炉の冷却が維持された。地震発生からおよそ50分後、15メートルもの巨大な津波が発電所を襲った》
 
 刻々と変わる事故状況に、私の胸は締め付けられる様に緊張し始める。津波で非常用電源を喪失した原子炉の高温化を防ぐ為、懸命の注水作業が行われる。しかし《12日15時36分、1号機原子炉建屋で水素爆発が発生》テレビで見た、原発が爆発すると云う信じられ無い光景が蘇る。

             3305.jpg

       東京電力福島第1原発の吉田昌郎所長[代表撮影](2013年7月9日死去)【時事通信社】

 使命感だけで

 高い放射線量の中、消防車等で海水注水が進められる。何とか原子炉を冷却し無ければ為ら無い。処が《3号機原子炉建屋で水素爆発》《4号機原子炉建屋で水素爆発》 実際に事故処理作業に当たった人がスクリーンに映し出され、彼等が当時の状況を語る。後世の東電社員が事故当時の事を追体験する為に、彼等の肉声を残したのだ。事故処理に必要な人材は此処に残る・・・との指示が吉田昌郎所長から出る。

 「誰一人NOと言う人は居なくて、皆残って作業を続けたいと云う思いが有りました。アノ数字のレベルから言うと、相当危ないと云うのは皆認識して居たんですけど、多分、それを誰も感じる事無く、恐らく、使命感だけで皆残る、俺が遣ら無きゃどうするんだと」
 「そんな意向でですね、皆率先して、自分から残って呉れたんだと思います。今、思い起こせば、色んな準備不足はヤッパリ有ったと思います。当時、発電をしてナンボの部隊だと、ズウっと考えて居りましたので」
 「文字や画像だけでは伝わら無いものが結構有りまして、我々は、体験者として・語り部として、暫らく遣って行か無いといけ無いと思います」

 
 事故を知ら無い若い東電社員に、彼等の体験が血肉と為って伝われば好いと切に思った。

 ヒーローで無く加害者

 映画「Fukushima 50」が公開された。原発事故の時、決死の覚悟で現場で働いた東電社員達の姿を描いたものだ。担当者に依ると、東電は映画には一切、協力して居ないと云う。その思いは、自分達はヒーローでは無く、事故を起こした加害者なのだと云う意識からだろう。
 実際、これから事故の責任を抱えながら、何十年も続く廃炉作業、そして、事故を起こした自分達の失敗を語り継がねば為ら無い事を想像すると、私は東電が無間地獄に落ちてしまったのではないかと感じた。しかし、絶対に手を緩める事無く、継続して貰いたい。東電社員の覚悟が試されるだろう。

 廃炉のスケジュールは、困難を極めて居る。原子炉の安定化を保ちつつ、燃料やデブリと云う燃料が溶けた物を取り出さねば為ら無い。溜り続ける汚染水を何とかしなくては為ら無い。

 「事故当時の1号機です」写真が映し出される。当時を思い出し、胸が痛む。

       3306.jpg

 福島第1原発の1号機原子炉建屋(中央)左は水素爆発を免れた2号機原子炉建屋 2011年4月11日 [東京電力提供]【時事通信社】

 汚染水対策

 「1号機は、使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けて、建屋内のガレキ撤去作業を継続。今後は、大型カバーを設置し、カバー内で撤去作業を進めます。燃料デブリ取り出しに向けては、原子炉格納容器内の調査を進めて居ます」
 「2号機は、1号機の水素爆発の衝撃により、原子炉建屋上部側面のパネルが開きました。水素が外部へ排出された為水素爆発は免れました。現在はパネルを閉じ、使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けて、より安全かつ安心な工法に決定し、準備作業を進めて居ます」
 「又、新たな津波が襲来した場合に備えて、防潮堤工事等を進めて居ます。構内の地表は、放射性物質の飛散抑制や放射線量を低減する為に、フェーシング工事に取り組み、殆どのエリアで完了しました」
 「汚染水対策も進んで居ます。汚染水は、破損した建屋の屋根から入り込む雨水と建屋に流れ込む地下水が、放射性物質に触れる事で発生します。その為、雨水が地面に染み込む事を防ぐフェーシングや、建屋周辺の井戸からの地下水汲み上げ、更には、建屋を囲む様に土の中に氷の壁を作り、流れ込む地下水の量を減らして居ます」
 「海へと向かう地下水は、沿岸に造った鋼鉄製の壁で塞ぎ止め、溢れない様、海際の井戸で汲み上げる事で、港湾内の環境はより安全な状態を保てる様に為って居ます。発電所の周辺海域では、様々な箇所でサンプリングを実施しており、放射性物質の濃度は、国の基準を下回る数値で安定して居ます」




 





 今に為って

 映像を見ながら丁寧な説明が続く。私が一番関心が有るのは汚染水問題だ。実は、3月に朝日新聞出版から「トロイの木馬」を出版した。汚染水を巡って、詐欺師が国家転覆を図り暗躍する物語だ。何故、こんな小説を書いたのか。それは風評被害に対する怒りからだ。
 事故当初、政府は汚染水から放射性物質のトリチウムが取り除け無い等とは説明し無かった。それなのに、今に為って、他国の原発でも、トリチウムを含んだ汚染水を海に流して居る為、福島原発の汚染水も海に流す事を検討すると言い始めた。しかし、風評被害や地元の反対を受け放出時期は未定だと云う。

 学者は安全だと言うが、誰もそんな事を信じて居ない。〔放出時期未定〕は、それに依る問題に対して、責任を取る覚悟が無いのを印象付けたからだ。
 汚染水は、東電も苦労して居る。地下水が、燃料デブリ等放射性汚染物質に触れる事で、汚染水に為る。現在970基のタンクが設置されて居るが、2022年にはタンクが一杯に為ってしまう。汚染水は喫緊の問題なのだ。

         3307.jpg

 陸上自衛隊の消防車による福島第1原発3号機(左手前)への放水 2011年3月18日 [陸上自衛隊中央特殊武器防護隊提供]【時事通信社】

 四つの対策
 
 「地下水の抑制が、この汚染水の抑制にも繋がると云う事で、大きな対策を四つ実施して居ります。先ずは、建物の手前で井戸を掘り、地下水を汲み上げて居ます。この汲み上げた水は、東電で水質の検査を実施して居ます」
 「世界保健機関・WHOの水質、飲料水の水質ガイドラインと云う国際的な基準が有ります。その基準より、トリチウムは6分の1・セシウムは10分の1と云う非常に厳しい目標値を設定しております。この目標値を満たした水に付いては全て、現在も海洋へ放出して居ます」
 「二つ目が、建物の直近で地下水を汲み上げてしまう『サブドレン』と云うものです。1号機から4号機の周囲45カ所、このサブドレンが在ります。汲み上げた水は、汚染源に近い事から一部浄化設備を通します。浄化設備を通した水を、東電と第三者機関で検査して、運用目標値以下の水は海へ放出して居ます」
 「三つ目が遮水壁です。凍土壁と云う言い方もして居ました。1号機から4号機の周囲1.5キロ、グルッと直径50センチ程の太い配管を2本張り巡らして居ます。その直下に1メートル間隔で地下30メートル迄細い配管を埋設して居ます」
 「その中にマイナス30度の冷媒を流し込み地中で土を固めてしまう。丁度アイスキャンディーを反対にした様な、そう云ったイメージです。そうする事で、陸側から来る地下水を一度此処でブロックして、海側へ迂回(うかい)させます」

 
 凍土壁に付いては、上手く機能して居ないと云う情報のみを記憶して居たので、私は「上手く機能したんですか」と聞いた。 回答は「機能して居る」とキッパリ。

 「四つ目が、ビデオの中で出て来たフェーシングと云われる舗装工事です。爆発し燃料デブリが有るこの大熊町のエリアで、全面的にフェーシング工事を実施しました」







 自然との闘い

 「それと、もう一つ。先程申しました燃料デブリですが、水で冷やす必要性があります。新たな水を外部から注水すると汚染水が増える一方なので、地下から入って来る水を流用する事で、地下水の発生を抑制して居ます」
 「汚染水と為った水は、人体に影響の有るセシウムとかストロンチウムを、セシウム吸着装置と云う装置で取り除きます。取り除いた後の水を淡水化装置に落とします」
 「現在福島第1には、処理前の水と合わせて118万トン程、水を保管して居ます。この水を処理する技術は世界的に未だ確立して居ません。ですので、浄化装置『アルプス』を通した水は風評被害も考慮して、コチラ大熊町のエリアにタンクを設置し保管して居ます」


 コレだけ対策を講じても、汚染水は未だに1日170立方メートル発生して居る。以前は400立方メートル以上の汚染水が発生して居た。今後は100立方メートル以下に迄抑え込む努力が為されて居る。自然との闘いが続く。

 「現在、この処理水の扱いに付いては、大きく三つの方針が示されて居ます。大気放出・海洋放出・又は大気放出と海洋放出の両方です」
 「今後、政府が地元の方々との意見調整を行い、最終的な処理方針が決定されます。それを東電が受けて、再度、地元の方々と話し合いをさせて頂いて、丁寧に対応して行きます」
 「今は、常時4000人以上の方々に廃炉作業に協力頂いて居ます。(中略)作業員の被ばく量ですが、昨年の11月単月の平均値は1人当たり0.31ミリシーベルトと云う値です」
 「被ばく量は国の基準があり、単年度で50ミリシーベルト、又は5年間で100ミリシーベルト。厳しめにすると、5年間で100ミリシーベルト単年度は20ミリシーベルトと云う値に為ります。この20ミリシーベルトを東電の管理値として居ます」


        3308.jpg

 東京電力福島第1原発事故で放射能に汚染された土地の除染作業で出た廃棄物を保管する仮置場 フレコンバッグと呼ばれる黒い袋に詰められて居る 2016年1月28日 福島県南相馬市原町区【時事通信社】

 大量の黒い袋

 廃炉資料館を出発して福島第1原発に向かう。広野町等、早期に避難解除に為ったエリアは、9割の人が帰還し新しい住民等も増え人口増に為ったのだが、富岡町の様に最近避難解除されたエリアは、1割程度しか住民が帰還して居ない。
 その為、学校には生徒が少なく、東電の社員が生徒達と一緒に体育の授業を行う等の支援をして居ると云う。

 「富岡町のこの区間は、車のみの通行と云う事で、オートバイや自転車、或いは徒歩での通行が禁止されて居ます。又、車に付いても、窓ガラスを閉める等対策が推奨されて居ます」
 
 「未だ線量が高いんですか」
 「一部、未だ高いエリアがあります」  
 「しかし、福島第1原発が普通に作業出来る線量なのに、どうしてソンなに高いんですか」  
 「福島第1原発の中は、東電が作業するに当たり、作業者の安全確保と云う処から除染を終了して居ます。しかし、発電所の外の除染に付いては、国等にお任せして居る状態です。その為、未だ除染が進んで居ないエリアが非常に数多くあります」

 道路沿いには、廃虚と為った大型店が点在して居る。侘しさを感じる。除染作業で出た廃棄物を入れた大量の黒い袋「フレコンバッグ」群が見える。

 「福島県内各地には、この様な一時保管場所が約720カ所程有ると伺って居ります。2023年の3月迄には、福島第1周辺で建設しております中間貯蔵施設に全て運び入れられると伺って居ります」

       3309.jpg

 東京電力福島第1原発の敷地内の放射能汚染水を貯めるタンク 2019年1月30日 福島県大熊町[代表撮影]【時事通信社】

 汚染水のタンク群

 大熊町に入る。福島第1原発は、大熊町と双葉町に跨って居る帰還困難区域だ。無人の家が続く。住居はそのママ残り周囲を雑草が覆って居る。悲しい景色だ。

 「民家の入り口にバリケードが張られて居ます。このバリケードが張られた家に付いては、年間30回と云う回数限定で戻られ、荷物等の整理をされて居ます」

 除染作業を行って居る様子が見える。表土を20〜30センチ程剥ぎ取り、新しい土を入れ直す。剥ぎ取った土はフレコンバッグに入れ、福島第1原発の近くで建設して居る中間貯蔵施設に運び入れる。

 「この大熊町の中屋敷地区と大川原地区は、昨年の4月10日避難指示が解除されました。大川原地区は昨年、事故以降初めて稲作が行われました。秋には稲の収穫も終えて国の検査に出されて居ます。合格したお米に付きましては、これから県内外のイベントに使われると伺って居ます」

 タンク群が見えて来る。汚染水のタンクだ。福島第1原発に到着。グレーの建物が新事務本館。東電社員の執務スペースで1000人程が働く。と、此処迄書いて来て、規定の分量を超えてしまいました。残念ですが、この先は次の機会にご報告したいと思います。


         時事通信社「金融財政ビジネス」2020年3月23日号より

             33011.jpg

 江上 剛(えがみ・ごう) 早大政経学部卒 1977年 旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行 総会屋事件の際、広報部次長として混乱収拾に尽力 その後「非情銀行」で作家デビュー 近作に「人生に七味あり」(徳間書店)等 兵庫県出身










  「彼等はヒーローに為れ無いジレンマを背負って居る」
 
 「Fukushima 50」若松節朗 バツ1「いちえふ」竜田一人 対談


              〜Movie Walker 3/29(日) 20:30配信〜


        33013.jpg

            「Fukushima 50」をめぐる特別対談、後半も白熱!

 〜国内興行ランキングで2週連続1位と為り、その後もランキング上位をキープして話題を呼んで居る映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ) 東日本大震災時の福島第一原発事故を描く本作では、死を覚悟して現場に残った作業員達の真実が描かれ、大いに反響を呼んで居る。
 ソコで、本作のメガホンを執った若松節朗監督と、事故後に福島第一原発(イチエフ)で作業員として働いた体験談を綴った漫画「いちえふ 〜福島第一原子力発電所案内記〜」の竜田一人の対談を実施、互いの作品に付いてタップリと意見交換をして貰った。今回はその後編をお届けする〜


 「Fukushima 50」のタイトルは、事故の対処に当たった作業員達が世界のメディアからFukushima 50・フクシマフィフティと呼ばれた事にちなむ。主演の佐藤浩市を初め、渡辺謙・吉岡秀隆・緒形直人・火野正平・平田満・萩原聖人・佐野史郎・安田成美と云った演技派俳優達が挙って参加し話題と為って居る。
 又、第34回MANGA OPENの大賞を受賞した「いちえふ 〜福島第一原子力発電所案内記〜」は、東日本大震災を機に会社を辞め、福島第一原子力発電所で作業員として従事した竜田自身の経験を元に、克明なタッチで描くルポルタージュ漫画と為って居る。


               33014.jpg

 「廃炉作業はこの先も続くから、彼等はヒーローには為れ無い」若松監督

 ・・・実際にイチエフで働いて居た竜田さんには「Fukushima 50」の登場人物はどう映りましたか?

 竜田 事故の時、どう云う人達が頑張って呉れて居たのかが好く判りました。作業員にしても渡辺謙が演じた吉田所長にしても、結局は普通の人間なので、そう云う人達が必死に頑張って居た事が伝われば好いなと思いました。世界中からFukushima 50とヒーローみたいに言われて居るけど、実は普通のおじさん達なので。
 若松 確かに、映画を観た人達の中には「ヒーローの様に描かれて居る」と云う人達も居ます。原発問題が全て収まって居るのならヒーローと言い切って好いのかも知れないけど、この先もズッと続いて行く。だから、彼等はヒーローには為れ無いんです。
 竜田 確かに、その辺りのジレンマに付いても考えて欲しいですね。

 ・・・竜田さんは、震災後にイチエフで働き始められましたが、実際に働いてる方は、殆ど地元の方だそうですね。

           33016.jpg

 竜田 地元の方々は、臭いかも知れないけど「俺達が何とかして遣る」ミタイな使命感が有るんだと思います。又、原発にお世話に為ったから、最後迄看取って遣ろうと云う人も居れば、単純にお金が稼げるから行くと云う人も居ます。だからイチエフは、世間で言われて居る程地元で嫌われて居る存在では無いです。その辺りの空気感の違いは、自分で行ってみて初めて判りました。
 若松 アソコで働く人が居なければ事故後の処理も出来無いし、廃炉の作業をして行く人も必要に為りますし、その人達のお世話をする人も居なければいけ無い。これからも大変ですよね。

 「アソコは未だ危険なんだと云うイメージを払拭して行きたい」竜田

 ・・・終盤、佐藤さん演じる伊崎が、帰還困難区域と為って居る富岡町で満開の桜を観るシーンが非常に印象的でした。「原発は明るい未来のエネルギー」と云う看板もカメラが確りと捉えて居ます。

 若松 実は、シナリオでは中盤に描かれて居たんですが、あのシーンは一番最後に出したいと思ったので、僕の意地でそうしました。
 竜田 でも・・・車が走って居るルートが実際とは違いますよね?現地を知って居るとワープして居るのが判っちゃうので(苦笑)
 若松 それはゴメンなさい!でも、映画的には伊崎があのルートを通って来た事に意味があったので・・・
 竜田 重箱の隅を突く様で申し訳ありません。勿論、演出的に考えるとアレしか無かったとは思いました。更にもう1つ・・・好いですか。映画の通り、アノ時点では桜を見て居る見物客が居ないんですが、その後、アノ桜並木のエリアが部分的に解除されて行って、今はお花見が出来る様に為って居ます。双葉町の一部や大熊町の一部が避難解除に成り、夜ノ森駅も解除に為って、3月14日は常磐線が通りました。

 若松 そうでしたか!とは言え、全部は解除に為って居ない訳ですよね。
 竜田 そうナンです。未だ全部では無いけど、映画で描かれて居るよりも更に長い範囲で花見が出来る様に為ったので、ドンドン伝えて行かないとダメだなと。そうじゃ無いと、アソコは未だ危険なんだと云うイメージだけが残ってしまう。
 僕が漫画の中で描いた楢葉のコスモス畑の場所にも商業施設が出来ました。もう1回田んぼに為れば好いなと思って居たんですが、今は新しい病院や復興住宅・スーパー等、色んなものが出来て来ました。長らく積まれて居た汚染土もドンドン片付けられて居ます。

 「風評被害を防ぐ為の漫画を、是非描いて欲しい」(若松監督)

 ・・・地元では、少しズツでも復興が進んで居ると云う事ですね。

33017.jpg

 若松 そう云う情報を得られるだけでも印象が随分変わりますね。原発のタンクの水を海に流すかどうかと云う問題はどう為って居るんですか?
 竜田 実は大前提として、今溜まって居る水全部が一度に流れたとしても、環境にも生物にも影響は無いと云う報告が上がって来て居ます。では何故漁師さん達が反対して居るかと云うと、タンクの水を流すと風評被害が起きると心配して居るからです。只一方、ドンドン溜め続けて行く事に依っても「未だ、アンナに危険なものが一杯有る」と云う事自体が風評に為って行くので、どうにかしなければ為りません。
 若松 何故、国が現状をキチンと説明出来ないんだろう?
 竜田 最終的には、責任有る立場の人間が石を投げられる覚悟で「私が責任を取るから遣りましょう」と言うしか無いでしょう。東電も漁師さん達も「流してください」とは言え無いから。誰かが泥を被るしか無いんです。

 ・・・可成りハードルが高そうですね。

 竜田 風評被害が起こると云うけど、実は今迄も水の放出は実施して居るんですが、ソコ迄騒ぎには為ら無かった。勿論タンクの水を流すと為ると、多少は騒ぎに為ると思いますが、計画的に情報公開をしながら遣って行けば、風評被害を防ぐ事も可能な筈です。それは、ズッとこの事象を追って来た人なら判る事だと思います。
 若松 ソレを漫画で描く事は出来ませんか?
 竜田 何とか漫画にしたいんですが、この話を描いてもエンタテインメントに為ら無いんです。
 若松 勿論、全部を真面目に描くのでは無く、途中に貴方の歌等も入れたりして。

 ・・・竜田さん、被災地で弾き語りもされて居ますし、漫画にも登場して居ますよね。

 若松 コレは誰でも出来る事では無いので。竜田さんの漫画は判り易いので是非描いて欲しいです。コレは竜田さんに与えられた使命ですよ!
 竜田「そう言われると辛いですが、頑張ります(苦笑)


      Movie Walker・取材・文 山崎 伸子    以上



 



 








この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9739631
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。