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2020年01月21日

「合流」よりも選挙対策 野党共闘が成果挙げた現実が示すこと




  「合流」よりも選挙対策 

   野党共闘が成果挙げた現実が示すこと


      〜47NEWS ジャーナリスト・尾中香尚里 1/21(火) 16:12配信〜

     1-21-4.jpg
   
 党首会談に臨む(左から)国民民主党の平野幹事長・玉木代表、立憲民主党の枝野代表・福山幹事長 17日午後 国会

 通常国会が20日召集された。全く収まる気配を見せ無い「桜を見る会」問題、統合型リゾート(IR)事業を巡る汚職事件等、安倍政権の足元を揺るがす問題が山積する中での国会だが、その国会召集迄の実現を目指し艇た立憲民主・国民民主両党の「合流」は結局実現し無かった。

 野党のパフォーマンスは格段に向上

 立憲民主党の枝野幸男代表は、国会召集日の20日迄に「合流」の可否を決める様要請。国民民主党は20日の両院議員総会で対応を協議したが、結論を出せぬママ「協議継続」の方針を確認するに留まり、玉木雄一郎代表も「(協議は)一旦小休止に為るのかも知れ無い」と認めざるを得無かった。
 「矢張り野党はダメだ」とお決まりの台詞を吐く必要は無い。この間の野党の全体状況は、議員数が増えて居る訳でも無いのに、2017年の前回衆院選直後の状況より格段に向上して居る。政党間の駆け引きに右往左往するより、国会の「表」の場での与野党攻防を追う方が遥かに生産的だ。

       1-21-3.jpg

 2020年1月10日の会談後、取材に応じる国民民主党の玉木代表(左)と立憲民主党の枝野代表 国会

 とは云え今回の「合流」問題は、2017年衆院選以降の野党状況の変化が伺えて興味深い面もあった。国会の論戦本格化を前に一度振り返って置きたい。

 ▽「政治は時間の関数」

 言う迄も無く現在の構図は、早期「合流」を求める立憲・枝野氏に対し、慎重な協議を求める国民・玉木氏と云う形だ。
 だが、ホンの半年程前迄、この構図は寧ろ逆だった。単独での党勢拡大を目指す枝野氏が、国民民主党を含む外野からの「野党はマトマレ」圧力を受けて居た。何時の間にか攻守が逆転して居る。その理由を考えると、枝野氏がこれ迄度々口にして来た「政治は時間の関数」と云う言葉が思い浮かぶ。

 「政治は時間の関数」は、枝野氏が若手議員だった頃、台湾の李登輝総統(当時)から聞いた言葉だ。「政治は時間の変化に応じて変わって行くべきものであり、過つて正しかった政治・政策が今も正しいとは限らず、今、正しい政治・政策が、将来に渉って絶対的に正しい訳では無い」と云う意味だと、枝野氏は解釈して居る。

 サテ「合流」問題である。枝野氏は元々政党間の合従連衡に否定的だったが、2017年の「希望の党騒動」で民進党(当時)のリベラル派議員が排除されたのを機に立憲民主党を結党した経緯も加わり、当初から単独での党勢拡大を志向した。立憲を野党の中核政党に育てて主導権を握り、その上で他の野党との連立で政権を取る構想だ。
 しかし、結党直後の2017年衆院選で立憲が獲得した議席は僅か55。野党第1党としては過去最少だった。国政選挙だけで議員を増やし政権交代を実現するには、一般的には相当の年月が掛かる。「桜を見る会」を初めとする安倍政権の体たらくを見れば、野党第1党がそんな悠長な態度を取る事は許され無い。

 又、衆院の小選挙区制は、政治の潮目が変わると極端な選挙結果を生み兼ね無い。民主党政権が誕生した2009年衆院選の一つ前の選挙は、小泉政権下で民主党が惨敗した「郵政選挙」(2005年)だった。予想以上の早さで立憲に政権が転がり込んだ時、民主党政権の様に政権運営に失敗する訳にはいか無い。
 だから枝野氏は、元民進党の仲間で政治理念や政策も近く、新人の多い立憲に比べ経験値の高い国民民主党の議員と、何処かの段階で「共に戦う」事を想定し、タイミングを観ていたと思われる。立憲への入党を望む国民民主党議員の声は、少なからず枝野氏の耳に入って居た筈だ。そこで「時間の関数」である。言い換えれば「急いては事を仕損じる」だろうか。

 ▽満を持しての動き

 枝野氏は一度、時間の関数を間違えて失敗して居る。結党間も無い2017年11月、民進党の党籍を持つ地方議員に対し、年内に立憲に入党するか否かを決断する様促す発言をしたのだ。1年余り後に迫って居た統一地方選の候補者擁立に向け、立憲からの出馬を希望する新人等との調整が必要な為だったが、発言は「上から目線だ」と批判された。
 この頃、衆院の「民進系」勢力は、立憲、希望の党(後の国民民主党)、ドチラからも立候補し無かった議員による「無所属の会」の三つが拮抗し、参院は、後に国民民主党と為る民進党が圧倒的に多かった。 コンなな状況で立憲への結集を呼び掛けても反発を呼ぶだけだ。立憲が主導権を握れる迄時を稼ぐ必要があった。

 昨夏の参院選。立憲は議席をホボ倍増させ、伸び悩んだ国民民主との差を広げた。立憲は衆参両院で、勢力として頭一つ抜け出した。野党内で主導的立場を得たこの時点で、枝野氏は先ず国民民主・社民の両党に「会派を共にする事」を呼び掛けた。国民民主は元々立憲に「野党はマトマレ」と迫る立場だったのだから、拒み様も無い。
 そして秋の臨時国会「桜を見る会」の追及を初め、共同会派に加わって居ない共産党も含めた野党が「ONE TEAM」として力を発揮した。

 2020年度からの大学入学共通テストにおける英語民間試験や国語と数学の記述式問題の導入を延期させる等の成果も勝ち取り、各党間の信頼感も醸成された。立憲の所属議員やコアな支持者の中には、枝野氏以上に他党との合従連衡に忌避感を持つ声も在ったが、野党各党が協力を積み重ね成果を出す中で、空気が多少和らぎ始めた。
 ここ迄来て枝野氏は、満を辞して国民民主党と社民党に対し、同時に「立憲民主党に加わって欲しい」と呼び掛けた。

 ▽変わった構図
 
 枝野氏は「合流と云う言葉は使って居ない」と主張するが、外見的には政党を一つにする動きではある。「結党時と言って居る事が違う。枝野氏は変節した」との声もある。だが、枝野氏は2年以上の時を稼いで手順を踏んだ。
 立憲が野党の主導権を握り、更に野党間の協力が進んで「合流」反対勢力の反発が薄らいだのを見計らい、初めて行動を起こしたのだ。衆院選の候補者擁立作業を考えれば、これ以上は待て無かったのだろう。

 参院選と臨時国会を経て、野党の「合流」に関する構図は「国民民主が立憲を突き上げる」から「立憲が国民民主に呼び掛ける」に移った。今後「対等合併」が俎上に上る事は、極めて難しく為った。現時点では「立憲の主体性を維持したママ他党議員に加わって頂く」形でしか「合流」は有り得ない。
 枝野氏は「結党以来の理念を失って居ない」と主張出来る状況を確保しつつ、結果として「合流」を実現する為に、慎重に「時間の関数」を使ったのだと思う。

 一方の玉木氏は恐らく、最終局面で合流「協議」を再び「国民民主が立憲を突き上げる」形に戻す事を狙ったのではないか。玉木氏は枝野氏との党首会談で「党名は立憲民主党以外とする」等、およそ立憲側が呑め無い提案をした。
 枝野氏の側は「呼び掛けに対する玉木氏の答えを待つ」と云うスタンスであり、恐らく党名や政策を「協議」して居る意識も無かっただろう。玉木氏がそれを承知して居なかった筈が無い。「合流を破談にしたのは枝野氏」と云う構図を作り、その後も更に協議継続を求める事で「突き上げ」の構図を取り戻そうとして居る様に、外見的には見える。

 ▽急ぐべきは選挙対策

 しかし、国会では今も野党各党が連日の様に合同ヒアリングを重ねて居る。野党が一つの政治勢力として現実に国会で機能して居る今、最早「合流」にどれ程の意味があるのだろう。それより急ぐべきは選挙対策、即ち衆院小選挙区で野党候補を1人に絞る事だ。
 付け加えると、政党の「合流」は比例代表の名簿を一つにする効果を生むが、比例代表は小選挙区と違い死票が殆ど発生し無い為、政党が「合流」しても居なくても、野党全体の獲得議席は左程変わら無い。

 枝野氏は19日、千葉県酒々井町での講演で「別の党で最大限連携し、将来連立政権を組む。これで何の問題も無い」とアッサリと言った。「合流」でゴタ着いて居る暇があるなら、両党は夫々の主体性を保ちつつ協力し合い、安倍政権に確りと対峙する方向に切り替えて欲しい。


              1-21-5.jpg 

              尾中香尚里   以上













  【関連報道】決められ無い男・玉木雄一郎と、坂道オタク・枝野幸男 

  お粗末過ぎる野党党首会談


             〜文春オンライン 1/22(水) 6:00配信〜


           1-22-1.jpg

         玉木氏は「拙速は避けたい」と強調するばかり コピーライトマーク文藝春秋

 国会に集まった野党担当の記者は昼食抜きの空腹に苛立ちを隠せ無かった。1月10日、午前11時から始まった立憲民主党の枝野幸男代表(55)と国民民主党の玉木雄一郎代表(50)との党首会談。
 幹事長同士が両党合流で合意した上での会談だっただけに、野党担当記者は「永田町の常識では、党首会談は最後のセレモニー。短時間で終わると思って居た」だが、終わったのは午後2時前。3時間近くを費やした結果、合意に達し無かった。

 会談直後から情報戦が始まる。立憲の安住淳国会対策委員長は番記者と懇談。玉木氏の財務官僚時代の話を持ち出し「忘年会の幹事だったが和食か洋食か中華か決められず、幹事を降ろされた。決められ無い男だ。人間は変わらない」と揶揄。
 その上で、こう暴露した。「前日迄は大筋合意だったのにナア。玉木は党首会談前に合流反対派と話して居た。彼は、何時も直前に話を聞いた人間の意見に左右される」

 合流を水面化で工作して来た国民の小沢一郎氏は焦りを隠せ無かった。会談当日の夜、自らマスコミ各社を呼び込み「玉木代表は公党の代表。本人が嫌だと投げ出してはいけ無い。責任を全うし、最終の努力をして行くべき」と強調。「小沢氏は合流が上手く行けば復権の可能性があった。お膳立てをして遣った筈の玉木氏への怒りが滲み出ていた」(政治部デスク)

 枝野氏のリーダーシップにも疑問の声

 一方、枝野氏のリーダーシップにも疑問の声が挙がる。1月7日、記者から「党首会談の日程は決まったか」と問われた枝野氏は「その質問、違う。今日はモッと大事な事がある」
 キョトンとする記者に「まいやんの卒業でしょ」この日の朝、乃木坂46の白石麻衣がグループ卒業を発表した。枝野氏のアイドル好きを知る記者達も「このタイミングでそれかよ」と呆れ顔。立憲関係者は「冗談みたいな話をして好い時期では無い。全く重みも品格も無い」と嘆くしか無かった。

 合意見送り直後の1月11・12両日に行われた共同通信の世論調査では、内閣支持率は約7ポイント増で約49%に回復。野党第一党の立憲は逆に約4ポイント減の約7%に。「立憲と国民の合流を巡るゴタゴタが原因です。いつものお家芸と見られたんでしょう」(政治部記者)
 共産党の「桜を見る会」追及の成果で内閣支持率が下がった処に、IRを巡る政治とカネの疑惑も浮上し、政権の先行きを危ぶむ声も出て居た。合流が上手く行けば、年明け早々、政権を追い込む勢いが着いた筈なのに、残ったのはゴタゴタした内輪もめの印象だけ。一番ホッとして居るのは、安倍晋三首相だろう。


   「週刊文春」編集部 週刊文春 2020年1月23日号      以上












 【管理人のひとこと】

 人間が複数以上集まると、自然にグループ分けが出来て来る。昔小学生の時、教師の指示で、同じ教室の中に更に小さな「班」を作る様に云われた。「好き嫌い」は無しにしようと、前後左右や他の何らかの組み分けをして、掃除当番とか動物の世話とか何等かの「当番・使役」に対処するグループを作ったのだ。
 単なる組み分け程度だったので、班の仲間と別段親しくも為ら無かったし、格別な友情も生まれた訳でも無く、班が解散するとそのまま新たな班に溶け込んで行った。詰まり、人の本性に好き嫌いが在ってコソ、自然に友情が芽生え仲間と為り、数が増えて行きグループと為る・・・これが自然だろう。

 政党がその様な、お友達・同好会的な集まりだと云う訳では無いが、多分に人間としての好き嫌いは根底には存在する。誰が考えても、小池百合子氏に翻弄された「希望の党」の落ち武者・残党である国民民主と、除外されて発奮し結集した「立憲」が元の鞘に収まり「同じ党」に為るのは、誰かが許してもお天道様が許さ無い・・・と迄は云わないが、そう思う人は多い筈。
 党対党のグループ間の問題を議論する時、互いの事情・思惑・都合を挙げれば限(きり)が無い・・・そんな事は大人なのだから承知の筈。それを敢えて口に出すことで「破談」にしようとの玉木氏の思惑が前面に出た破談劇だった。
 それ程一緒に為りたい人が居るのなら、個人として堂々と党を移籍する・・・その様な制度を認めれば好い。裏切り者だとか身勝手だとか謗(そし)らずに、自分の政治的信条だと堂々と動いたら好い。

 枝野氏の頭に忘れ難くあるのは、ジリ貧と為った民進党の打開策を考えた責任者が、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの小池氏の甘い蜜の香りの「希望の党」へ参加し、次へのステップへ向かおうとした蟻の様に・・・失敗した悲劇だろう。確かに打開策を講ずるのが党の責任者なのだが、余りにも世間の風を読み過ぎ頼りにし過ぎだ。相手の根性を吟味せず、単なる世間の風聞を信じ込んでしまった人間の浅はかな行動だった。
 無暗に世間の風や他人を信じ込まず、トコトン苦境に晒されても歯を食い縛り耐え、更なる発奮を持てる人達と一緒に遣ろう・・・とするものだと想像する・・・これで好かったのだ枝野氏、頑張れ!








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