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2020年01月19日

「ユーラシア大陸」の復活が世界を大きく変える



 
 「ユーラシア大陸」の復活が世界を大きく変える

             〜東洋経済オンライン 1/19(日) 15:00配信〜


       1-19-10.jpg

      ユーラシアと 「スーパー大陸」が世界を支配しようとして居る

 〜アメリカにおける現代日本研究の第一人者が新境地を開いた。中国を軸にユーラシアの復活と国際秩序への影響の分析に挑んだ『スーパー大陸 ユーラーシア統合の地政学』は、イギリス・フィナンシャル・タイムズ紙の「2019年のベスト書籍(政治部門)」に選ばれた。著者のジョンズ・ホプキンス大学のケント・E・カルダー教授に聞いた〜

         1-19-9.jpg


 地域の再連結が起きて居る

 ・・・ユーラシアが「スーパー大陸」詰まり、決定的に世界を支配する大陸に為ると予見しています。.

 これまではアメリカの位置する北米大陸がスーパー大陸だった。1869年に大陸横断鉄道が完成し、アメリカは大西洋沿岸の限られた地域のみで機能していた国から、太平洋でも活動しうる国に変わった。続いて1914年にパナマ運河が開通したことで、アメリカは本格的に超大国への道を歩み始めた。
 同じように、新しいインフラによる地域の連結がユーラシアで起きている。シルクロードを現代に復活させる中国の「一帯一路」構想がまさにそれだ。世界人口の半数以上が住むユーラシアは、エネルギー的にも自立可能な大陸であり、その再連結は時代の基調といえる。.

 ・・・何がユーラシアの再連結を促したのでしょう。

 最大の要因は中国の高度成長だが、それはもっと大きなドラマの一部にすぎない。欧州、ロシア、東南アジアの政治・経済の変容、さらにインドやイランの動きなどすべてが関係している。転換点は3つある。まず1991年のソ連崩壊によって、中国の西側に巨大な空白が生まれた。
 ユーラシアの中心部、ハートランド(心臓地帯)への中国の勢力拡張が始まったのだ。中国は膨大なエネルギー需要を背景に中東との結び付きも深めた。これを19世紀にハートランドで帝国主義列強が覇を競った「グレートゲーム」の再来だとみる向きもあるが、今回は中国の力が圧倒的に強い。かつてのような勢力均衡の構図とは異なる。

 2つ目は2008年のリーマンショックだ。その後に中国の西方シフトには拍車がかかり、中国は四川省や甘粛省、新疆ウイグル自治区など西部地域のインフラ整備を大規模に進めた。
 最後が2014年のウクライナ危機だ。クリミア半島に侵攻したロシアに対して西側が制裁を加えたことで、欧州とロシアの関係は複雑化した。中東欧諸国は、ロシアとの関係を見直す一方で中国との関係を強化した。これにより生まれたのが、中東欧の16カ国と中国の首脳会談である「16プラス1」だ。

 アジアと欧州をつなぐインフラはこれまでシベリア鉄道しかなかったが、中国により鉄道網の整備が進んだ。さらに中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)のような新しいタイプの国際金融機関の登場により、欧州とアジアの関係がより近くなった。

 中ロは平等ではなく上下の関係

 ・・・中ロの接近もユーラシアの再連結を後押ししています。

 ウクライナ危機で孤立したロシアは中国との関係緊密化に動き始めた。ただし中ロは平等ではなく上下の関係だ。西側との関係の悪化や経済的な補完関係、対米戦略の一致などで結び付いているが、ソ連崩壊時は中国と同水準だったロシアのGDPは、今や中国の6分の1しかない。ロシアは中国に軍事技術面でも協力しており、この不平等なタッグは世界の戦略環境に大きな影響を及ぼしている。
 日本には日ロの緊密化で中国とのバランスを取ろうと考えている人もいるようだが、効果があるか疑問だ。ロシアは弱すぎるからだ。

 ・・・ユーラシアの台頭は国際秩序をどう変えますか? 

 第2次世界大戦後にアメリカ主導で作られたブレトンウッズ体制など現行の国際秩序は、ルールをベースにしたものだ。これに対して中国が目指すのは、多国間のルールによらず、2国間の交渉で国際問題を解決するという仕組みだ。
 中国はお互いの内政には干渉せず、ウィンウィンの関係で多元的な秩序を作ろうという方向に進んでいる。その先にあるのは、緩やかな地域覇権からなる分権化された国際社会だろう。

 ・・・内向きになるアメリカは、中国に圧倒されるしかないのでしょうか。

 そうは思わない。アメリカには中国に勝るものが3つある。食料、エネルギー、そしてテクノロジーだ。人口が多く、輸入に依存する中国の食料問題はアメリカより厳しい。その傾向はますます強まるかもしれない。エネルギーも同じで、経済発展に伴い輸入が増える。2030年までに中国は石油消費量の7〜8割を輸入するようになる見通しだ。一方でアメリカではシェールガスの生産が増えその輸出国になる。

 日本は部分的に一帯一路に協力すべき

 テクノロジーについては、中国に特定の分野で競争力があるのは間違いない。ビッグデータの収集や利用に中国の体制は有利かもしれないが、全体としてはテクノロジーでのアメリカの優位は続くだろう。アメリカにはシリコンバレーのような、テクノロジー開発に資金を融通するためのエコシステムが確立されている。知的財産が保護されていることもプラスだ。
 これら3つに加えて、人口動態の違いもある。アメリカは移民が流入するため若年人口が増えていく。中国は逆で、2030年代以降に高齢化が深刻になる。ユーラシアのスーパー大陸化は中国に追い風だが、中国が第2次大戦後のアメリカのような圧倒的に強い力を持つとは思わない。

 ・・・スーパー大陸を背景にする中国に、日本はどう向き合うべきでしょうか。

 習近平国家主席が近く訪日する一方、アメリカのトランプ政権の外交方針は予想しにくい。こういう状況下で日本は中国との関係を安定させる必要がある。その意味で、日本は部分的に一帯一路に協力する必要があるだろう。しかし、長期的にみれば日中の国益はかなり異なることを忘れてはいけない。
 ユーラシアの再連結は中国に有利になるので注意したほうがいい。日本にとって大事なのは、スーパー大陸を中国一極ではない多元的な構造にすることだ。

 日本とEUとの協力も重要だ。アメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から撤退したタイミングで日本とEUのEPA(経済連携協定)が結ばれたのはよかった。日本は一帯一路とは別の枠組みで、バルト諸国や中央アジアなどに関与するとよい。そのためにEUと連携するのも選択肢の1つだ。


        西村 豪太 東洋経済記者    以上










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