2020年01月18日
【太平洋戦争以前】アメリカの対日戦争計画「オレンジ計画」と「レインボー5」
Man On a Mission システム運用屋が、日々のアレコレや情報処理技術者試験の攻略を記録して行くITブログ・・・と云うのも昔の話。今や歴史メインで偶に軍事。別に詳しく無いので過大な期待は禁物 歴史 2017-07-23
【太平洋戦争以前】 アメリカの対日戦争計画 「オレンジ計画」と「レインボー5」
本日の記事は、太平洋戦争以前にアメリカが策定して居た対日戦争計画「オレンジ」に付いて。序に、そのオレンジプランと云うかカラープランの後に策定された「レインボー」に付いても少々触れたいと思います。
「対日戦争計画」と聞くと、マルでアメリカが日本相手の戦争を始め様として居た様に聞こえますが、オレンジは飽く迄も「日本と戦争する羽目に為った場合」に備えて研究・立案して居たものであり、実際に対日開戦しようとして居た訳ではありません。オレンジは「カラープラン」と呼ばれた戦争計画の一つです。
カラープランは、アメリカが交戦可能性の有る国を「仮想敵国」として立案した戦争計画*1で、夫々の国に対して色別の符号を用いて居ました。オレンジが日本を「仮想敵」として立案されたプランですが、他にもブラック=ドイツ、レッド=イギリス、クリムゾン=カナダ、グリーン=メキシコ、イエロー=中国、ゴールド=フランス等々、キリが無いのでこの辺で辞めときますが、多数の国を対象として居り、日本だけを特別敵視して居た訳ではありません。
昔々、一部の一寸アレ気な人達が「日本はアメリカの戦争プログラムに嵌められて戦争に引き擦り込まれた、そのプログラムをオレンジプランと云う!」的な妄言を好く吐いてましたが、そう云うものでは無い訳です。マア、最近はそんな認識の人は余り居ないと思うのですが・・・多分・・・そうで有って欲しい・・・そうで有って欲しかった。
「仮想敵」と云う言葉の誤解
オレンジプランの内容に触れる前に少し前置きを。前節で、アレな人達がオレンジプランに付いて妙な認識をして居る旨書きましたが、これは「仮想敵国=敵と考えて居る国」と云う単純な捉え方をして居る事が原因の一つじゃないかと思っています。意図的に扇動して居る人はどうか知りませんが。
国防や作戦・軍備等の計画立案に当たっては、「敵」の戦力や戦略・戦術等が或る程度具体的に為らないと有効性のある計画を立てる事は困難です。その為「仮想敵」を設定します。
「仮想敵」は、大抵、自国に脅威を及ぼす可能性の高い国・勢力を優先的に選定しますが、必ずしも政治・外交上の敵対・緊張は前提とされず、友好的な関係に有ろうが同盟国で有ろうが、僅かでも交戦可能性の或る国家・勢力で有れば「仮想敵」として設定し得ます。
又「仮想敵」は一つでは無く、通常、複数の「仮想敵」が設定されます。安全保障上、多種の事態を想定して置くのは当たり前の事なので。交戦可能性や脅威度による重み付けによって、実際の戦略や軍備等への反映度合いは異なって来るでしょうが。
そんな訳で「仮想敵」と云う言葉に振り回されると、どいツもこいツも皆敵と云うことに為ってしまいます。現実に「仮想敵国」と云う言葉に報道や国民が振り回され、無駄に緊張が高まった事もありました。実際には「敵」と「仮想敵」の間には大きな隔たりが有る訳ですね。
オレンジプラン
サテ、ここからオレンジプランの話を。カラープランは多数の国を対象として居ましたが、交戦可能性の低い国に付いては形式的な紙上計画に留まります。「オレンジ計画」の著者、エドワード・ミラーによると、オレンジプランが最初に作成されたのは1904年との事ですが、オレンジプランもこの当時は裏付けに乏しい紙上計画に過ぎ無かった様です。
しかしながら、日露戦争(1904〜1905年)後、日米間の緊張の高まりにより、オレンジプランの重要性が増す事と為りました。その為、陸海軍のプランナー達は、本腰を入れてオレンジプランの立案に取り組むことと為ります。
尚、カラープランで他に本格的な計画立案が行なわれて居たのは、レッド(イギリス)ブラック(ドイツ)位です。 「日本だけを特別敵視して居た訳では無い」と書きましたが、イギリス、ドイツと並んで、割と本格的な戦争計画が練られては居た訳ですね。
因みに、20世紀初頭に於いて、最も重要視されて居たのはブラック(ドイツ)です。ドイツは当時、英海軍に次ぐ世界第2位の戦艦19隻を保有して居り、第5位の日本(7隻)を大きく引き離して居ました。その為、20世紀初頭に置いては米海軍の主力は大西洋に常駐して居り、太平洋には旧式装甲巡洋艦数隻から為るアジア艦隊がフィリピンに配備されて居ただけでした。
オレンジプランの内容
オレンジプランはその時々の情勢によって変化して居ますが、想定された戦争推移に付いては初期計画から余り変わって居ません。戦争推移は以下三段階に分けられます。
1. 日本軍の奇襲と攻勢
2. 消耗戦とアメリカ軍の反攻
3. 日本封鎖
上記を見れば判る通り、オレンジプランは日本の先制攻撃が前提と為って居ます。以下、各段階に付いての説明を。
第一段階では、日本軍によるフィリピン・グアムへの先制攻撃が想定されて居ます。但し、この先制攻撃に対するフィリピン・グアムの防衛に付いては、明確に定まっては居ません。
フィリピン・グアムが失陥し無い様、一定規模の陸海軍を平時より配備して防衛する案や、日本の先制攻撃に対し間髪入れず全艦隊をもって即時反攻を行う等の案がありましたが、両者共コストやリスクを考慮すると現実的とは言い難いものでした。結局の処フィリピン・グアムは一旦放棄されるであろう事が暗黙的に想定されて居た様です。
第二段階では、大西洋艦隊の回航による米海軍の反撃と為っています。太平洋と云う広大な戦域に於ける補給(兵站)が課題と為りましたが、これに付いては艦隊に随伴して兵站支援を行う「役務部隊」が発案され、1922年に実現する事と為ります。
尚、オレンジプランの研究初期に於いて、既に、広大な太平洋を戦域とする対日戦が長期的かつ無制限の総力戦に為り得ると予測されてたりします。
第三段階では、フィリピン・グアムを奪回したアメリカ艦隊が、これ等を前進根拠地として沖縄経由で日本本土に侵攻する事と為っています。尚、この際に日本海軍との艦隊決戦も予期されて居ますが、日本海軍撃滅は必須ではありません。
アメリカ海軍の目標は海上優勢(制海権)を獲得して海上封鎖を行い、物資の輸入遮断をもって経済産業を崩壊させ降伏に追い込む事とされて居ました。実際の太平洋戦争の推移では、真珠湾攻撃やアメリカによる南西太平洋での攻勢と云った相違は有ったものの、ホボオレンジプランの想定通りに為りました。オレンジプラン立案者達の見識を伺わせるものですが、この正確さがオレンジプラン陰謀論の一因でも有るのかも知れませんね。
オレンジからレインボーへ
サテ1939年6月、ドイツ及びイタリアの膨張政策を初めとする情勢の変化を受けて、アメリカ政府はカラープランに替わる戦争計画であるレインボープランを策定します。カラープランは、一国対一国の戦争を想定した割とシンプルな計画でしたが、これに対しレインボープランでは、当時の外交・同盟関係を前提とした計画と為って居ました。「レインボー」シリーズは番号を付された幾つかの計画から構成されて居ます。
⊡ レインボー1は、ドイツの南米大陸への侵攻への防衛計画で、陸軍の要求を反映したものです。
⊡ レインボー2は、アメリカと英仏の同盟を前提に、枢軸国側と太平洋・大西洋にて戦うものですが、欧州では一先ず防勢を取り太平洋方面での勝利を優先する計画でした。
⊡ レインボー3は、アメリカ単独による対日戦争で、オレンジプランの改定版と云えるものです。
⊡ レインボー4は、レインボー1の内容に加えて、日本による太平洋侵攻を想定して居ます。
⊡そしてレインボー5、これが実際に第二次世界大戦において統合戦略計画「ABC-1」として採用されたプランと為ります。内容はレインボー2と同じく、英仏同盟前提での太平洋・大西洋の二正面作戦ですが、こちらは欧州での勝利を優先するものでした。
レインボー5の採用は、ローズヴェルトとチャーチルのワシントンでの会談・アーカディア会議でドイツ打倒を最優先とする合意が為された為でもありますが、真珠湾攻撃により米太平洋艦隊が壊滅して居た事から、どの道太平洋戦線は防勢を取らざるを得無い、と云う事情もありました。
最後に
サテ、簡単ながらオレンジプランに付いて述べてみました。Webでは、パラレルワールドに迷い込んだのかと思っちゃう位、奇妙な「歴史観」が溢れているのですが、今回記事を書こうと思ったのも、偶々オレンジプラン陰謀論のサイトを見てしまったからだったりします。
以前、陰謀論の種は尽きまじなんて書きましたが、本当、色々とコジツケて呉れるものです。ソロソロ、落ち着いて来ても好いかと思うのですがね・・・等と不明瞭な事を言いつつ、今日の記事を終わります。
以上
【管理人のひとこと】
各国の軍隊は「仮想敵国」を色々想定して軍備を整えるのが常識です。メクラ滅法に武器と人員を揃え「戦え!」と号令しても軍隊は機能しません。「仮想敵国」を想定する事によって、最優先される危機に対処する様に、装備・組織・作戦運用が決定され予算化され日々の活動の根本と為ります。ですから、現在の自衛隊でも、想定可能なアラユル危機を考え、一番に優先され・予算的に可能な組織・装備を作り備えるのです。
恐らく我が国では、中国・北朝鮮・ロシア等が優先されるでしょうが、目に見える危機だけでは無く、アラユル事態を想定して図上演習を怠ら無いでしょう。その中には同盟国や友好国とて除外されません。詰まり、アラユル事態に対処すべき心構えは持って無くては緊急時に動け無いからです。ですから、例えアメリカや韓国に対しても情報収集は怠らずに行うのが国防の原則です。
その意味で、過去のアメリカのオレンジ計画も同じ根拠のもので、取り立てて論ずるのもナンですが、その計画が余りにも嵌った結果と為ったので「日露戦争後、真剣に日米戦争を想定して居た・・・」と結論されますが、それは当然の事なのです。対日部署は、アラユル情報を集め万全な対処の計画を作るのが任務なのですから。それは、アメリカ軍も旧日本軍でも同じ事でしょう。これを、アメリカは昔から日本を敵視し戦争を仕掛けたかった・・・と解するかどうかは個人の受け取り方次第です。
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