2020年01月04日
「都合の悪い真実を隠す」お手盛り安倍長期政権がもたらした数々の弊害
「都合の悪い真実を隠す」お手盛り 安倍長期政権がもたらした数々の弊害
〜文春オンライン 望月 衣塑子 1/3(金) 6:00配信〜
〜第1次内閣を含めた安倍晋三首相の通算在職期間は、2019年11月に桂太郎内閣を超えて憲政史上最長と為り、同年末には第2次内閣発足から数えて8年目に突入する。自ら「得意分野」と語る外交を振り返ると〜
安倍首相の「得意分野」と云う外交では、1年毎に首相が交代して居た頃に比べれば、国際的なプレゼンスも交渉力も高い筈だが、拉致問題や領土問題で結果を出せて居ない処か、対米追従の結果、農畜産と防衛分野で大きな負担を国民に強いて居るのが実態だ。
私は武器輸出解禁と米国製兵器の「爆買い」を取材して来た。日本の2019年度の防衛予算は5兆2500億円を突破し、これには総額1757億円超と言われるイージス・アショア等のミサイル防衛システムの購入費が含まれて居る。
対米交渉はトランプ大統領に押し込まれて居る。2019年9月の日米貿易協定交渉では、日本が米国から購入する牛肉・豚肉の関税に付いて、TPP・環太平洋パートナーシップ並みまで引き下げる事で合意したが、日本が求めていた自動車関係の関税撤廃は棚上げされ、再交渉の時期すら明記され無かった。安倍首相は会談後、「自動車関係の追加関税を課さ無い趣旨を確認した」と成果を強調した。だがそれは、1年前に武器の爆買いで一度阻止した筈だ。
自動車関税でカードを切らされた日本
2018年9月、国連総会後の会見でトランプ大統領は「貿易赤字はモウ嫌だと日本に言ったら、日本は凄い量の武器を買う事に為った」と述べ、その後、貿易格差是正の為、F35AB戦闘機計147機に総額1兆5000億円が費やされる事が判った。
官邸周辺を取材すると、乗用車の輸入関税を2.5%から25%へ引き上げる事を検討して居たホワイトハウスを思い留まらせる為に切った「カード」だと云う。詰まり、自動車関税で日本は2枚もカードを切らされたのだ。完全に負けである。
2019年のG7で約束したトウモロコシの爆買いも然(しか)り。安倍首相は「害虫対策の観点で輸入が必要」と説明したが、輸入量は害虫被害を大きく超える。
外務省の力が低下している安倍政権
他の外交でも成果が無い。トップ会談を重ねたロシアとは、平和条約・領土問題交渉が進まず、2019年度の外交青書からは、北方四島に絡み「日本に帰属する」の記述が消えてしまった。
北朝鮮とは、交渉の糸口すら見えず、拉致問題の解決の見通しは立た無い。徴用工訴訟の大法院判決を切っ掛けに輸出管理強化に至った日韓関係も1965年の国交正常化後で最悪だ。首相官邸に権限が集中した結果、外務省の力が相対的に低下し、国会議員や民間のチャンネルは細り、交渉の弾力性を失って居る。
9月に国家安全保障局長が、外務省出身の谷内正太郎氏から警察庁出身の北村滋・前内閣情報官に交代した事で、この傾向は更に強まるだろう。
目立つ強弁と責任転嫁
一方、内政に目を向けると長期政権の歪(ひず)みと硬直化が現れて居る。カジノ法案、改正水道法案、外国人労働者受け入れ拡大に向けた入管法改正法案等が相次いで強行採決され、国会軽視も甚だしい。これでは憲法改正で野党が協議に応じる筈も無く、今や「改憲ヤルヤル詐欺」と揶揄される始末だ。
政権で目立つのが強弁と責任転嫁だ。入管法改正法案の委員会採決では、朝日・毎日・東京の各紙が「採決強行」と見出しで報じたが、菅義偉官房長官は「強行採決なんか遣って居ない」と言い張った。
衆参で僅か計約35時間の審議だったにも関わらずだ。辺野古沖埋め立てでも、明らかに赤土混じりの土砂が目の前で投入されて居るが、土砂の性状検査の結果は示さ無いまま「適切」と主張した。
官僚への責任転嫁は更に見苦しい。森友学園問題を巡り、安倍首相が国会で「私や妻が関係して居れば、首相も国会議員も辞める」と啖呵を切ると、財務省が辻褄合わせの為決裁文書を改竄し自殺者も出た。処が、安倍首相は「確りと調査し、膿(うみ)を出し切り、組織を立て直す」と財務省に全責任を押し着けた。膿の原因が誰なのかは明らかだ。
加計学園の獣医学部設置問題では「総理のご意向」発言があったと記した文部科学省の文書を「怪文書」と決め着け、防衛大臣が「無い」と答弁したイラク派遣自衛隊日報は存在が隠されて居た。
「アベノミクス」に「老後2000万問題」まで
「アベノミクス」はどうか。GDPの成長率、実質賃金、物価上昇率の何れも低調で失敗は明らかだ。それ処か、景気動向や賃金の指標と為る毎月勤労統計の不正が発覚し、政府の統計に対する国民の信頼が損なわれて居る。
直近では「95歳迄に夫婦で2000万円不足する可能性がある」と試算した金融審議会の市場ワーキング・グループの報告書が批判を浴びると、麻生太郎金融担当大臣は受理を拒否。不手際があったとして金融庁長官が陳謝させられた。
安倍首相は「対案も無いまま、只不安を煽る様な無責任な議論は決して在っては為ら無い」と批判したが、諮問機関の報告書は、政策を議論する為の重要な材料だ。もし政策に失敗したとしても、その原因を分析して改善策を打つのが政治だ。だが、客観的データから目を背ける事は、改善の切っ掛けを失う事に為り二重の罪だ。
お手盛り成果の限界
首相の権力基盤は、麻生財務相と菅官房長官、二階俊博自民党幹事長がキーマンで、誰か1人でも代わることが有ればパワーバランスが崩れ政権は衰退する。責任転嫁も強弁も改竄も誤魔化しも、政権に都合の悪い真実を国民の目から隠すと云う目的と動機が共通して居る。
7月の参院選。安倍首相は福島市での第一声で「アノ時代に逆戻りする訳にはいか無い」と民主党政権を引き合いに出した。民主党政権は1200日。その後の安倍政権は倍以上だ。今更「あの頃よりもマシ」とアピールせざるを得無い事が、お手盛り成果の限界を示して居る。目を逸らされては為らない。
望月 衣塑子 文春ムック 文藝春秋オピニオン 2020年の論点100 以上
【関連記事】安倍総理の分身「官邸官僚」が霞が関を牛耳る 省庁幹部680人の人事を握って居る
〜PRESIDENT 文藝春秋前社長 松井 清人 2019年9月13日号〜
絶大な権力を振るう、従来の「官僚」像とは異なる存在
「今井チャンは何て頭が好いんだ。頭の中を見てみたい」安倍総理にそう言わしめた今井尚哉政務秘書官は、経済産業省出身。自他ともに認める「総理の分身」だ。
前川喜平文科省事務次官(当時)に「総理が自分の口からは言え無いから、私が代わって言う」と、加計学園の獣医学部新設を迫ったとされる和泉洋人首相補佐官(国土交通省出身)「総理の影」が官房長官なら、補佐官は「影の影」か。
森 功『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』(文藝春秋)
警察庁出身の杉田和博内閣官房副長官は「総理の守護神」同じ警察官僚・北村滋内閣情報官との杉田・北村ラインで政権のインテリジェンスを一手に握って来たと云う。
出身省庁を離れて居るが、官邸を根城に絶大な権力を振るう、従来の「官僚」像とは異なる存在が「官邸官僚」で有ると著者は書く。彼等は決して古巣の役所のトップを走って来た訳では無いが、宰相の絶大な信を得て思いのママ権勢を振るって居る。裏を返せば、その権勢は首相の威光が無ければ成り立た無い。「忖度」「総理のご意向」の原点はソコにあると指摘するのだ。
問題はその官邸官僚達が、総理や当人達が思って居る程の結果を出せて居ない事だ。今井政務秘書官が力を入れたトルコ、英国への原発輸出は、伊藤忠、三菱重工、日立が白旗を掲げホボ全滅。同じく今井発案の「経済成長年3%」「出生率1.8」「介護離職ゼロ」を目指す新三本の矢は画餅に帰して居る。
対ロシア、対中国、北朝鮮問題と、外交政策にも首を突っ込むが、成果を上げる処か、数々のスタンドプレーで、外務省との間に深刻な亀裂を生んでしまった。
忖度による様々な不正が明るみに出て来る
それでも霞が関が反旗を翻さ無いのは、安倍政権が新設した「内閣人事局」が、1府12省庁の幹部680人の人事を握って居るからだ。2017年8月、杉田官房副長官が内閣人事局長の座に就いた時、官邸による官僚支配が確立したと云う。霞が関のバランスは崩れ、忖度による様々な不正が明るみに出て来る。
その象徴が、森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんだ。主犯は元理財局長の佐川宣寿。安倍本人や昭恵夫人の関わりを初め、十四の関連文書の中で政権に都合の悪い300カ所を削除し、書き換えた重大犯罪なのに、佐川は何の刑事罰にも問われず、退職金迄手にして財務省を去った。
陰に見え隠れするのが「官邸の守護神」殊(こと)、黒川弘務法務事務次官。法務省に在って長く安倍政権を支えて来た。検察まで忖度とは思いたく無いが、正に「政治判断による捜査終結」と云う以外に言葉が見当たら無い。
安倍官邸に正面から向き合い「あるものはある」と書く気骨のあるライターが居る。森功は間違い無く、今では数少ないその1人だ。
森 功氏
松井 清人(まつい・きよんど) 文藝春秋前社長 1950年生まれ。東京教育大学アメリカ文学科卒業後 文藝春秋入社 『諸君!』『週刊文春』『文藝春秋』編集長等を経て文藝春秋社長 2018年退任 著書に『異端者たちが時代をつくる』がある
以上
【編集部お勧めの関連記事】 安倍首相が怯える山本太郎の発想と爆発力
〜PRESIDENT Online プレジデントオンライン編集部〜
「1強」が、足った2議席の新政党に怯えて居る
参院選が終わってからも、永田町の話題は山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」が独占して居る。山本氏は、相変わらず歯切れ好く破天荒な発信を続けて居る。「れいわ」から当選した重度障害者の2人の為に国会は突貫工事でバリアフリー化を進める。
安倍晋三首相は、早ければ今秋にも衆院解散する選択肢を持って居たのだが、今は「来年の五輪後」に傾いて来た。これは「れいわ」の実力を慎重に見定めようと云う判断によるものだと云う。「1強」が、足った2議席の新政党に怯えて居ているのか。
「総理大臣を目指す」とテレビ番組で明言
25日朝、山本氏は、テレビ朝日の「モーニングショー」に出演した。参院選挙期間中は政党要件の壁に阻まれ、テレビでの露出は殆ど無かった山本氏。冒頭は「『放送禁止物体』としてこれ迄生きて来たので、今日、地上波で呼ばれるナンてビックリです」とお道化て見せた。しかしコメンテーターの玉川徹氏から「総理大臣を目指すのですか」と聞かれると「そう云う事に為ります。本気じゃ無かったら(れいわを)旗揚げし無いですよ」と神妙な顔で語った。
参院選で「れいわ」が2議席獲得したとは言え、山本氏自身は議員バッジを失った。「首相を目指す」と言っても普通なら誰も見向きもし無いだろうがが、今の彼の口から出る言葉は「大風呂敷」には聞こえ無い。
小泉進次郎氏でも進められ無かった国会改革に動き
山本氏の発言以外でも「れいわ」は注目を集める。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦さんと、重度障害者の木村英子さんの当選を受け、与野党は参院議院運営委員会を開き国会の改修や、代理投票を認める等の改革方針を確認した。
「日本で一番改革が遅れて居る所」と揶揄される事が多い国会。単にバリアフリー化が進んでいないだけで無く、ペーパーレスなど民間企業なら当たり前の改革が手付かずの部分が多い。自民党の小泉進次郎衆院議員らが、妊娠中や出産直後の議員が「遠隔投票」出来る改革などに取り組み「平成のうちに」実現しようとしたが、実現には至ら無かったことは記憶に新しい。
にも関わらず「れいわ」の2人が当選した事で、これ迄崩され無かったバリアーがアッと云う間に崩された。障害が有る当事者が議席を得た事のインパクトと、山本氏の存在感の賜物だろう。
「当分、衆院の選挙は無い」と森元首相が暴露
山本氏は政見放送で「(重度障害者の擁立を)発表した際、コンな声が届きました。『障害者を利用する積りか』。この言葉に対して私は言います。上等です、障害者を利用して障害者施策を変えようじゃないか」と訴えて居る。選挙が終わってから、僅か数日で山本氏は公約を実現した事に為る。
「当分、衆院の選挙は無いと安倍首相は言って居る」東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は24日、都内で開かれた五輪関係の会合で、こう語った。
現職衆院議員である組織委副会長の遠藤利明氏に「選挙は未だ先だから五輪に向けた仕事に専念して欲しい」と云う意図での発言だったが、会場に居た人達は前段の「当分衆院選は無い」と云う部分に驚き、ざわついた。
森氏は安倍氏の「元上司」に当たる。森氏が首相の時、安倍氏を官房副長官に抜てきした事もある。引退したとは言え、生臭い政界情報好きの森氏に対し、安倍氏は報告を怠ら無い。その森氏の発言だけに、多くの人は「ガセネタでは無い」と受け取った。
「太郎」への警戒で解散戦略は変更に
元々、参院選に合わせて衆院解散し衆参同日選に持ち込む事を考えて居た安倍氏は、同日選を見送った後も、今秋に衆院解散する「時間差同日選」を軸に政治日程を組み立てて居た。しかし選挙結果を踏まえて「五輪後の20年秋以降」に軸足を移した様だ。理由は2つある。
1つ目は、参院で自民、公明、日本維新の会による「改憲勢力」で、改憲に向けた国会発議に必要な「3分の2」を割り込んだ事。足り無いのは「4」なので、今後野党に揺さ振りを掛ける事で回復は不可能では無いが、その前に衆院選を行って衆院の方も「3分の2」割れに為ると、憲法改正への動きが事実上ゲームオーバーに為ってしまう。だから、衆院選は「3分の2」回復後にしたい。
もう1つの理由が、正に山本太郎氏の存在だ。参院選で「れいわ」が獲得したのは僅か2議席だが、安倍氏はその存在感を過小評価して居ない。特に都市部での爆発力には脅威を感じる。
例えば東京都では、比例代表で「れいわ」は45万8151票獲得した。これは日本維新の会の47万9908票とホボ同じ。社民党は勿論、国民民主党よりも多い。最早主要政党と言って好い。
今の勢いのママ衆院選に突入したら「れいわ」は、無党派の若者層から大量得票して多くの議席を獲得する。その場合、最近の選挙では若者層の支持が高い自民党に対する影響は甚大だ。
山本氏のスキャンダルをジックリ待つ作戦へ
「れいわ」の躍進を受けて今、日本新党と云う1990年代に存在した政党が再注目される。細川護熙氏が立ち上げた日本新党は緒戦と為る1992年の参院選で4議席確保。翌年の衆院選では35議席獲得して注目を集めた。そして同年8月、党代表の細川護熙氏は非自民連立政権の首相の座に駆け上がる。
「れいわ」は「令和の日本新党」に為るのではないか。自民党は警戒して居る。この辺りの経緯は「山本太郎の『政権奪取宣言』に中身はあるか」を参照頂きたい。但し安倍氏は、山本氏の事を過大評価もしていない。今が旬の政治家である事は確かだが、今がピークである事も見切って居る。
多くの人も同意するだろうが、山本氏は攻めには強いが守りは弱いタイプ。それをカバーする組織も無い。時間が経てば、スキャンダルが噴出したり、党内で内輪もめが起きたりするに違い無いと踏んで居る。又、山本氏のスタンドプレーで野党共闘がボロボロに為る事も考えられる。
それだけに、衆院選は暫く先送りして「れいわ」の自壊を待つと云う作戦に出たと云う事なのだろう。勿論、衆院解散を先送りする事で「れいわ」が更に大きく為り、来年には手が着けられ無い様な勢力に為って居る可能性もあるが、安倍首相はそうは見て居ないと云う事だろう。
幽霊の 正体見たり 枯れ尾花
「れいわ」は今、政界を揺るがす幽霊だ。それが実体を伴う政権を狙う勢力に成長して行くのか。それとも、枯れ尾花で終わるのか。
【編集部お勧めの関連記事その2】山本太郎の政権奪取宣言に中身は有るか 「次の衆院選には100人を立てる」
〜PRESIDENT Online プレジデントオンライン編集部〜
今回の参院選で唯一の勝者と為った「れいわ新選組」
今回の参院選は、勝者無き戦いだった。自民党は3年前より獲得議席を僅かに増やしたが、安倍晋三首相が執念を燃やす改憲の発議に必要な参院での「3分の2」を失った。野党・立憲民主党は議席を伸ばしたとは言え、17議席では野党第1党の迫力には欠ける。
そんな中で唯一の勝者を挙げるとすれば、山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」だろう。当初、泡沫政党扱いをされて居たがが比例代表で2議席を獲得した。今後、更なる飛躍を遂げる事はあるのだろうか。
「小泉フィーバー」や「民主党政権」を超える盛り上がり
「お早うございます、元気やな。もう直ぐ(電車の)始発が出ますよ皆さん」
参院選の大勢が判明した7月22日午前4時半過ぎ、山本氏は底抜けに明るい笑顔で記者団に声を掛けた。公職選挙法等で政党要件を持た無い「れいわ」は、新聞、テレビ等では「その他大勢」を意味する「諸派」扱いをされ、殆ど報道され無かった。新聞、テレビだけを情報源にして居た人は、存在すら知ら無かったかも市れない。
しかしツイッター等のSNSを介して「れいわ現象」は急速に広がった。選挙戦最終日の20日夕刻から東京・新宿駅西口で行われた街頭演説は、SNSで知って集まった人で埋め尽くされ異様な盛り上がりと為った。
長年、選挙取材をして来た全国紙記者は「1989年の参院選での社会党・土井たか子委員長『郵政選挙』と言われた2005年衆院選での小泉純一郎首相、2009年の民主党ブーム等よりも遥かに大きなウネリだった」と証言する。それ位の「事件」だったと云う。
「消費税廃止」に焦点を絞った訴えが奏功
知名度も無く、マスコミにも無視される中での2議席獲得は大健闘ではある。但し、街頭の熱狂は、モッと議席を獲得するのではないかと予感させるものだった。比例区に「特定枠」として2人を擁立した為、3議席以上獲得し無ければ当選出来ない立場に身を置いて居た山本氏も議席は得られ無かった。そう云う意味では「嬉しさも中位」の結果だった。
それでも山本氏は「10人擁立して10人通せ無かったのは私の力不足。私自身も議席を得られ無かったのは残念な事だ。しかし、一切後悔は無い」と前を向いた。次に繋がる結果だったと受け止めて居るのだろう。
何故「れいわ」の声は国民に届いたのか。これは山本氏の存在感と演説に尽きる。元俳優だけにトーク力の高さは国会質問等で実証済みだったが、今回の選挙戦では「消費税廃止」に焦点を絞った訴えが分かり易かった。他の野党の訴えが「10%に上げるのは反対」等と回り諄(くど)かったのとは対照的だった。
次の選挙では「100人位候補者を立てないといけ無い」
中でも最も歯切れ好かったのが「政権を獲る」と宣言したことだ。今回の参院選で国会に足掛かりを作り、来る衆院選等を通じて国会で多数派を形成すると断じて居る。その実現性はサテ置き、兎に角聞く者に響いた。安倍1強と言われる現状に不満を持って居た人達の受け皿と為ったのだ。
山本氏は22日未明の会見で「私達は無視出来ない存在に為って居る。次期衆院選には100人位候補者を立てないといけ無いだろう。メンバーも揃えて皆さんの力を借りながら政権を取りに行く気迫で行きたい。「自身も候補者として出るしか無いのでは無いか」と自ら衆院選に出馬する考えも明らかにした。
「れいわ」がイメージするのは、細川護熙氏が代表を務めた日本新党ではないか。日本新党は1992年の参院選で国政初挑戦し4議席を獲得。そして翌年の衆院選では35人の当選者を出し、その流れで同年8月、細川氏は首相の座に上り詰める。正にホップ、ステップ、ジャンプ。ゼロからスタートして1年で政権政党に上り詰めた日本新党の再来を「れいわ」は目指す事に為る。
今の政治状況を観ると早ければ年内に衆院選があると云う予測もある。遅くとも2021年秋の衆院任期満了迄には必ず有る。山本氏も日本新党の事は頭の中に在る筈だ。
同じ選挙区に野党が乱立すれば、共倒れに為るだけ
但し山本氏と「れいわ」の前途がバラ色と云う訳では無い。先ず難しいのは、野党の枠組みの中での立場だ。山本氏は「最も厄介な抵抗勢力」を自任するだけに安易な妥協は出来無いだろう。この為立憲民主、国民民主等の野党の中には、山本氏の発言を「人気取りのスタンドプレー」と見る向きもある。
共闘関係が築け無ければ、同じ選挙区に野党が乱立して共倒れに為る。そう為れば共通の敵である自民党を利するだけだ。一方、野党内には「れいわ」との連携に期待を抱く向きもある。そこで野党共闘を優先して、山本氏が参院選で発言して居た事と違う事を口にし始めたとしたらどう為るか。参院選で山本氏の訴えに熱狂した人達は一気に冷めるだろう。
「100人と云う数字には野党共闘も入って来る」
山本氏は22日未明の会見では次の様に述べ、野党共闘に含みを持たせた。
「消費税廃止は譲ら無い。しかし、他党が減税と云う事で舵を切る為らば、話し合いの余地は有る。一番は、この国に生きる人々の為に、本気で仕事をする気があるかってこと。そう為った上で一緒に為れる方とは一緒に遣って行く。政権を捕る為らば、衆院選には100人位候補者を立てないといけ無い。この数字には野党共闘も入って来るので、立てる場所立て無い場所も話し合いで出るだろう」
社会党の土井氏、民主党の鳩山由紀夫氏、希望の党の小池百合子氏・・・野党側からは新党や新しい指導者が次々に誕生して時代を作ったが、人気のピークは長続きしなかった。2017年の衆院選でブームを起こした立憲民主党の枝野幸男代表も、今回の参院選では集客力に陰りが見られた。
それらの原因は、選挙では歯切れの好い事が言えても、現実の政治はそう簡単では無いからだ。過去の新党と同じ轍を踏ま無い為には、どうすれば好いのか。山本氏が支持を拡大する為には、他の野党との連携を意識しながら「最も厄介な抵抗勢力」で有り続ける必要がある。山本氏の道のりは険しい。
以上
【管理人のひとこと】
今回の記事の内容(巻頭)は、全て今までのTV・新聞等のメディアで多くの国民が周知の筈だ。しかし、指摘された個々の問題を振り返ると「一体、この男は何をしているのだ!」と腹の虫が収まら無く為る・・・そして、更に彼の言動全てに「嫌な感じダ、無知蒙昧の〇〇野郎!」とのヤジをお返ししたく為る。〇〇の中にはお好きな文字を入れて頂きたい。
国会の予算委員会等には、決まって野党の質問にヤジって茶化すのが得意だが「貴方に野党をヤジる権限も資格も無い。見苦しい! 静かに拝聴しなさい!」と委員長がキツク注意すべきだろう。臆面も無く平気で嘘を言い、誤魔化しを何度も何度も続ける・・・「一体、この男は何をしているのだ!」と二度目の怒りが沸き起こる。
安倍氏が何一つもの成果を残せ無かったのは、贔屓目に見て、半分は彼自身の能力の無さだが、後半分は「ご時世」と「運」に巡り合わさ無かった「身に着いた不幸」が災いして居る様だ。折角の長期政権が、日本をズルズルと不幸のドン底に道連れにする・・・7年から8年もの政権に就いたら可成りの事が成し遂げられたのだが誠に残念だ。
彼を選んだのは、消極的で在っても多くの国民に責任の一端は有る。国民自ら選択したのだから、彼に引導を渡すのも国民の責任だ。その責任を令和2年に果たすべく、取り敢えずは新たな歳を祝おうではないか。
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