2020年01月03日
知の巨人が「欧州では有り得無い」と嘆息した事
知の巨人が「欧州では有り得無い」と嘆息した事
〜プレジデントオンライン 1/3(金) 11:16配信〜
「日本アカデメイア」が東京都内で開催したシンポジウム「東京会議」 写真提供 日本アカデメイア
〜10年後の日本はドンな国に為って居るか。「ヨーロッパ最高の知性」と称されるジャック・アタリ氏は、産官学の各界が連携する「日本アカデメイア」主催のシンポジウム「東京会議」出席の為に来日し「日本の今後は『女性の地位』がカギを握る」と話した。「知の巨人」の提言をダイジェストでお届けする(第3回/全5回)〜
世界的な課題を解決する6つの方法とは
「東京会議」開催に向けてアタリ氏は、世界の諸問題解決に向けた具体的方策を提言した。1つは既存する国際協定の維持。そしてもう1つは新たな機構の構築だ。
1.既存の国際協定を維持する 即ち、気候に関してはパリ協定・貿易に関しては世界貿易機関・WTO・労働に関しては国際労働機関・ILO・国際紛争に関しては国連総会及び安全保障理事会・核軍縮に関しては既存の条約を保持する。
2.新たな問題に対処する為の新たなフォーラム又は機構を構築する
a.経済協力開発機構・OECDにおいて脱税防止の為のプラットフォームを構築しGAFAへの国際課税を体系化する
b.人工知能開発(特に兵器に関わるもの)を制限する為の憲章を導入する
c.遺伝子操作の開発を制限する為の憲章を導入する
d.CO2排出への国際課税を導入する
e.アラユル人、特に未だ国民登録の無い10億人の人々を対象として「世界市民パスポート」を交付する
f.アラユル場所で、児童の権利、女性の権利、あらゆるマイノリティーの権利を保護する
既存の国際機関は、生き乍ら得無ければ為りません。但し現実に合わせて調整する事も可能だと思います。例えばオープンに議論して国連安保理の構成を変える。安保理は、何時までも今の様な構成では居られ無いと思います。インド、アフリカ、ラテンアメリカ諸国が安保理の常任理事国に入って居ないことは、正当性に欠けます。制度を強化し無ければいけません。
今年、大阪で20カ国・地域(G20)サミットが開催されました。G20も常設の事務局を作る事が賢明です。G20を1つの場として、何が決定されたか、制度的な記憶を持ち、フォローアップをする。議長国の変更はあっても好いのですが、事務局を持つ事がG20を生かす1つの遣り方だと思います。GAFAや炭素への課税に付いては、今は只議論されて居るだけです。
10億人の無名の人達に身分の保障を
・・・この提言の中で、特に目を引くのが国民登録の無い10億人の人々を対象とした「世界市民パスポート」の交付だ。アタリ氏の持論でもある「世界市民パスポート」とはどの様なものなのか。
私は「世界市民のパスポート」を提言しています。今、多くの人達が無名のママ死んでいます。難民として酷い状況から海を越えて逃げて来る間に、誰にも知られぬまま亡くなります。もし一人ひとりが世界市民として国連の人権宣言と国連憲章に基づいた条件で明記されたパスポートを持っていれば、ドンな人でも必ず何等かの権利を有する筈です。
10億の人達には身分の保障が全く無いので、この人達に名前、写真、そして威厳をパスポートによって与える事は非常に大事です。
我々(世界)は一つの小さな村なのです。気候変動に対して壁は作れません。或る1国だけの為に効率的な気候変動の政策等は有り得ません。これは世界の問題です。中国の川に行ってみてください。そこには沢山のプラスチックが捨てられています。更にブラジルやオーストラリアでの大規模火災もあります。これ等は全て局地的では無く、世界的な問題です。それに我々はグローバルな形で対面していか無ければ為りません。
私のコンセプトは「合理的な利他主義」です。我々は自己利益に基づいて居るのは事実ですが、我々が利他主義に為る事は我々の自己利益に為るのです。ポピュリストが自己中心だと云うのは好いですが、1番利己的なのは利他主義に為る事です。本当にハッピーに為るには、他者がハッピーに為る事です。
例えば製品を売る時には、お客様がハッピーであってコソ、貴方の利益に叶うのです。お客さまがハッピーであれば、貴方自身がハッピーに為るのです。それがポピュリズムに対する最も大事なイデオロギー的な戦いです。
日本は世界で最も「次世代への準備」が遅れて居る
・・・シンポジウムの中でアタリ氏は日本に対してもメッセージを発した。親日家でもあるアタリ氏だが、日本の現状に付いての受け止めは厳しい。
1970年代、アメリカの社会学者であるエズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と云う有名な本がありました。彼はその中で、これから何十年も日本が世界においてナンバーワンに為ると言ったのですが、そうは為りませんでした。
私の財団「ポジティブプラネット」では、人口、汚職の度合い、報道の自由と云った47のパラメーターを用いて、全てのOECD諸国のポジティビティを測定し、その結果を公表して国のランク付けを行っています。夫々の国が次世代の為にチャンと準備して居るかどうかを測定しているのです。
このデータで上位を占めるのはスカンディナビア諸国です。アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ニュージーランドも上位に入っています。フランスは38カ国中20位です。真ん中位です。最下位の4国がトルコ、イタリア、ギリシャそして日本です。「次世代に備える」と云う点では、世界の中で日本は最下位です。
私は何も日本が悪いと云う事を言いたい訳では無く、それを取り上げて検討し、改善出来ると日本に言って頂きたいのです。10年後に私が日本に来た時に、日本が1位に為って居るのを楽しみにしています。
今後の課題は「女性」の一言に尽きる
・・・日本が10年後「次世代に備えた」国に為るにはどうしたら好いか。アタリ氏は、敢て挑戦的な提言をした。大半の参加者が男性の会場を見回しながら、ユックリと語り始める。
日本の将来に付いてですが、敢て挑戦的なお答えをします。日本は私に取っては親しみに満ちた国ですが、一言だけ選ぶとすれば、女性の地位(向上)にあります。
そもそもヨーロッパのシンポジウムで女性の登壇者が居ないと云う事は有り得ません。女性にもっと力を与えれば力を発揮出来ます。女性が更なる社会の発展に貢献するでしょう。法制度を整備すれば、出生率も上がり社会も豊かに為ります。日本の今後に関して私からは只この一言「女性」です。
女性に関して何をしたら好いのか。私は国内政治には関与したくは無いですが、1つだけ例を言いましょう。矢張りクオータ制・人数割当制を導入すべきだと思います。実は、私はクオータ制に反対していました。しかし、一過性、一時的なクオータ制は有っても好いと思います。
クオータ制を導入して、例えば今後、10年間は強制的に半分は女性にし無ければいけ無いと云う事にしてみる訳です。上場会社のボード・取締役の半分も、10年間は女性にし無ければいけ無い。そして10年経ったら、女性の地位は十分に向上してクオータ制等忘れても好いと云う事にすることが出来ると思います。ヨーロッパでもそう云う事が行われて居て、今では随分変わって居ます。
ひとつの課題を他国と協力して解決して行く
私だけでは無く、色々な事が言われ無ければいけ無いだろうと思います。例えば女性が働き易い条件の整備は大変大きな政策問題だと思います。兎に角日本の人口動態をドラスチックに変え様と思えば、その様な事が必要だと思います。
それから、マルチラテラリズム・多国間主義は鍵だと思います。それが世界の生存の為の条件だと思います。
これは何度も繰り返して言わ無いといけません。GAFAやCO2への課税等、色々な分野で遣って行く必要があります。グローバルな考え方を色々な処に援用して行くのです。これに関しては、日本は他の国と同じ様に大きな役割を果たせると思います。それをする事が日本の国益に適うと思います。
ジャック・アタリJacques Attalli 経済学者 1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業。フランス・ミッテラン仏大統領特別補佐官、欧州復興開発銀行の初代総裁などを歴任。ソ連の崩壊、金融危機、テロの脅威、トランプ米大統領の誕生などを的中させた。『2030年 ジャック・アタリの未来予測』(プレジデント社)など著書多数。
経済学者 ジャック・アタリ 構成 プレジデントオンライン編集部 以上
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