2017年09月25日
猫の冒険 その27
ちび黒猫は、気が付くとまた独りでした。
ポツンと独りテーブルの上に置かれています。
さて、ここで視点を変えて、
ちょっとこの話の全体を俯瞰してみましょう。
ここにはちび猫の他に見えない登場人物がいます。
ちび猫と同じ空間を共有している他の物体、生き物など、
そこには、ちび猫と同じ役割としての物体が登場します。
同じ空間には黒子としてぬいぐるみを操る影の存在も
意識させています。そして、
それらを俯瞰してこの話をつくっている作者の私がいて、
それをご覧になっている読者の皆さんがいるわけです。
この幾層にも重なった世界でこの話は進行しています。
しかし、ちび黒猫にはそんな事情は知る由もありません。
今の人間は
このちび黒猫に重なる立場にいるようには思いませんか?
ちび黒猫は、前に何処に居たのか
思い出せないでいます。
もともとこの場所に居たのか、
それとも違う場所に居たのか、
あやふやなのです。
私たちは、
自分に前世が在ると思いますか?
前世の記憶が在りますか?
ちび黒猫は、正にそれと同じ感覚を味わっているのです。
ぬいぐるみにとって時間とは何でしょうか?
確かに時間の経過によって
布の劣化は避けられないので、
時間はせいぜいその程度でしか想像もつかない。
ちび黒猫は独りで居ますが、
目の前に何やら大きな物体が見えます。
これは一体全体何なのか、勿論
ちび黒猫は知る由もありません。
これは、リンゴです。
我々は直ぐにわかります。
何で直ぐにわかるのでしょうか?
過去に見てそれが何だか知っているからでしょう。
ちび黒猫はぬいぐるみであるにも関わらず
実にいろいろなことを知っているのです。
しかし、その知識が誰によって
授けられたのか分からないのです。
ちび黒猫は自分がぬいぐるみであることを知りません。
つまり、そこが問題点であり、出発点でもあるのです。
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