デジタルカメラに至る現代までの流れをみて、
自分が思うことを話してみます。
1848年、
日本にダゲレオタイプのカメラオブスキュラ第1号が輸入されました。
国内では、それをもとにダゲレオタイプの製法が研究され、
1857年には、撮影に成功します。
フランスで発明された写真術はオランダを経由して
10年そこそこで日本に伝わり定着していきました。
幕末から明治維新の頃、
庶民にとって写真機は「魔法の小箱」であり
「写真を撮られると魂を取られる」などといわれましたが、
文明開化が進むにつれて
ハイカラなものとして庶民にもてはやされるようになりました。
写真師たちは、時代の花形職業になり、流行を築き上げ、
また、正確な記録を残し、文明開化の推進役も務めました。
1862年に紹介された湿式コロディオン法は、
野外撮影には手間と労力がかかりましが、
1883年に日本に伝わった乾式法は、
湿式法より操作が楽で多少の経験で誰でも写真館が開けるようになりました。
写真機の改良もされ小型軽量安価のものが
1903年小西本店(現コニカ)からでて、
これに伴ない、アマチュア写真家も登場してきますが、
一部の上流階級の人たちが楽しむ高尚な趣味に留まっています。
1928年国産初のロールフィルムが登場し、
1955年ネガカラーフィルムが登場します。
そして、1989年までに、
カメラの普及率が87%に達し、大衆化としてのカメラが定着します。
そして単に定着するだけに留まらず、便利さへの追求もされました。
レンズ付きフィルムカメラの登場により
手ぶらで旅先に行っても現地の売店でそれを購入すれば、
写真が撮れるようになりました。
また、デジタルカメラの小型軽量低価格化の実現や、
携帯電話の普及からカメラ付き携帯も登場して、カメラも多様になりました。
環境的、経済的、効率的問題から考慮すると、
フィルム化からデジタル化へのシフトは止める事ができず、
フィルム写真もアンティークな工芸品の1つと数えられることでしょう。
日常的にはデジタル写真が一般化してます。
さて、環境破壊の問題は今や避ける事ができません。
フィルム写真の場合は、使う枚数分だけフィルムが必要で
それをつくる材料や撮影後の処理に使う化学薬品、写真印画紙、
使用後、破棄した後に残るゴミの処理など環境への問題があります。
デジタルであれば、画像は基本的に0、1の情報であるので、
保存する媒体によってかなりの物的資源の利用を抑えることができるし、
現像などの化学処理も必要ないので環境にもやさしいと言えるかもしれません。
経済的にみてもフィルムの購入代と記録媒体の購入代は
長期的にみるとその差は大きいでしょう。
デジタル写真であれば、フィルム現像代金はかからないのも経済的理由の1つです。
効率的な面からしてもデジタル写真は有効です。
撮ったその場で画像を確認することができ、必要なければその場で消去できます。
画像は、プリントにせずデータのままPCに取り込むことができ、
編集加工も容易にできます。
インターネットを使えば遠く離れた知人にも即座に送ることができます。
容量が続く限り何枚もコピー可能です。
デジタル写真は、フィルム写真では容易におこなえなかったことが誰にでも手軽に出来ます。
芸術的観点からみると、
フィルムの画質にこだわっている写真家にとってはフィルムの存在は大きいです。
しかし、画質の問題が完全に解決したとしたら、
こだわりとして残るのは、モノか情報かの違いになっていきます。
それは、芸術工芸品としての写真か、記録・伝達・共有としての情報か、
の違いでもあるのです。
最近はフィルム写真をスキャナーで読み込んでデジタル化することもしているが、
そういったことをせず純粋にフィルム写真、印画紙などアナログ的に表現する場合、
デジタル写真に比べその表現範囲は狭いです。
アナログつまりフィルム写真であれば発表の場は、画廊などの展示会場が必要であり、
それにかかる時間、費用に比べ実際に鑑賞してくれる人の数は少ないです。
デジタル化であれば、インターネット上でサイトを開設することも可能だし、
容易に画像の掲載もできます。
そこまでに掛かる時間、費用的コストは、アナログ的表現の比ではないです。
それにデジタル写真を閲覧する人は、知人や周辺の人達だけでなく、
世界中の不特定多数の人に同時に見せる事もできるし、
その画像を見た人がいつでも好きな時にダウンロードすることもできます。
瞬時にして多くの人にその画像を共有することができます。
フィルムに映った画像(ネガ)は1つですが、
デジタルの場合は、コピーによって同じものが幾つも出来ます。
自分自身の写真を全て失っても、何処かで誰かがコピーを持っているかもしれません。
デジタル画像は、フィルムとは別の表現方法を持っています。
それを使い分ける芸術的視点が、特に写真家には求められていると思います。
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