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2024年03月30日

【短編小説】『月の慈愛に護られて』2 -最終話-

【MMD】Novel Tsuki no Jiai SamuneSmall1.png
【MMD】Novel Tsuki no Jiai CharacterSmall1.png

【第1話:月をよすがに】からの続き

<登場人物>
フェリシア
 主人公、肩書きは月の神

月下 燈織(つきした ひおり)
 10歳の少年
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第2話:月のぬくもり】



燈織
『お姉さん、あの月だよね?』
『人の姿になって来てくれたんでしょ?』


フェリシア
「…わかるの?」


燈織
『わかるよ。毎日見てるから。』


神や精霊が人の姿を借りて人間界へ、
なんて誰が信じるだろう。

なのに、燈織くんは
まるでそれが日常のように振る舞った。

よほど心が広いから?
それとも現実を諦め切ってしまったから…?

フェリシア
「…それって、やっぱり寂しいから?」


燈織
「…?寂しいって何?」
「門限までの時間潰し。」


フェリシア
「……(ズキッ)……。」




私の胸が張り裂けそうなくらい痛んだ。

「親から愛されない」

それが子どもにとって
どれだけ大きな傷になるだろう?


親の寵愛を受けるイージーモードな子、
親の愛情を知らないハードモードな子。
人生のスタートは残酷なまでに不公平だ。

私は燈織くんに何をしてあげられるだろう?

親さえ信じられず、
月だけを心のよりどころにする燈織くんに…。



ぎゅ

燈織
『…お姉さん?』
『どうして僕を抱きしめるの?』




私は人間への変身には自信があった。

「衛星対抗・人間変身コンテスト」では、
ライバルのガリレオ衛星を抑えて5連覇中だ。

体温も肌の質感も、
人間と見分けがつかないはず。

そんな私でも、
燈織くんに人間のあたたかさを
教えてあげられる自信がなかった。


10歳にして、
人間への諦めに満ちた燈織くんに…。



燈織
『…お姉さん…苦しいよ…。』


私は少しだけ、両腕の力を緩めた。
燈織くんは少し安心したようだ。

燈織
『…あったかい……。』


今の燈織くんの表情は見えなかったが、
私には彼の真一文字の唇が
ほどけていくのがわかった。

フェリシア
「…今まで…つらかったね…。」
「…寂しかったね……!」
「…もう大丈夫……!」
「…泣いていいよ…?」


人間に似せただけのぬくもりで申し訳ない。
燈織くんに届かなくてもいい、私のエゴでいい。

それでも私は…この子を救いたい…。

親からもらえないなら、私が代わりでいい。
少しでも、人のあたたかさという希望を伝えたい…!




燈織
『…(ポロ…ポロ…)……。』


私の肩に、燈織くんの涙が伝っていった。

2滴、3滴、やがて細い流れになり、
彼の身体の震えが高まっていった。

燈織
『…本当は…寂しかった…。』
『お父さんもお母さんも僕に無関心で…。』
『ずっとずっと悲しかった…!』


ぎゅう

燈織
『…う…うぅぅ……!』
『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!』


怒りも悲しみも、時が経てば薄れていく。

けれど、外へ出さない限り
決して「なかったこと」にはならない。

無意識にマヒさせて、感じないようにしただけ。
これ以上、心が壊れないように。


ーー


私の名前はフェリシア

本当は月そのものだが、
今回は月の神と名乗っておく。
肩書きは何でもいい。

私は地球を回りながら、
いろんな人間模様を見てきた。

喜び、争い、憎しみ、嫉妬、悲しみ…。

残念ながら、
喜びを見られる機会は1割に満たない。

けれど、私は人間の
1割未満の喜びを見るのが1番の幸せだ。



私は人間への変身には自信があった。

私は10年前の
「衛星対抗・人間変身コンテスト」で、
ライバルのガリレオ衛星に敗れて6連覇を逃した。

けれど、私は決して自信を失わなかった。

私の人間に似せたぬくもりでも、
とある少年に”人のあたたかさ”を伝えられたから。


燈織
『フェリシアさん!お久しぶりです!』


フェリシア
「お久しぶりって…毎晩見てるでしょ?」


燈織
『そうですけど、人の姿で会うのは久しぶりなので。』


あれから10年が経ち、
燈織くんは立派に成長した。

無表情の仮面はすっかり取れて、
今では屈託のない笑顔を見せてくれる。

燈織くんの両親は相変わらずだ。
それでも、彼はあの日の私との触れ合いで、
生きる希望が芽生えたと言ってくれた。




燈織
『今日もきれいですね。』


フェリシア
「(クスッ)…ありがと。」
「それ、他の女の子にも言ってないよね?(笑)」


燈織
『あはは、そんなわけないですよ(苦笑)』
『ところで、いいんですか?』


フェリシア
「何?」


燈織
『月の神様が、1人の人間とこんなに会って。』


フェリシア
「いいのいいの、特に決まりはないから。」


燈織
『星の交友関係って意外と緩いんですね…。』


フェリシア
「まぁね、星は寿命が長いし。」
「長く生きたらいろいろあるでしょ?」


燈織
『確かにいろいろありました…(苦笑)』
『……本当に、僕でいいんですか…?』


フェリシア
「今さら何よ?」


燈織
『僕はフェリシアさんを残して逝きますよ?』
『フェリシアさんにとって”たった数十年”で。』


フェリシア
「私がいいって言ったらいいの!」
「10年以上、ずーーーっと私を見てくれた子を…。」



「好きにならないわけないでしょ?!」




ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
『永遠を解く鏡』全2話

『500年後の邂逅』全4話

『雪の音色に包まれて』全4話


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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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