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2024年03月17日

【短編小説】『永遠を解く鏡』1

【MMD】Novel Towa Kagami SamuneSmall1.png
【MMD】Novel Towa Kagami CharacterSmall1.png

<登場人物>
宇佐見 永逢(うさみ とわ)
 主人公(♀)、とある国の統治者の子孫

道永 鏡(みちなが きょう)
 数え年21歳(♂)
 永逢が住む村の青年
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話:永遠に生きる孤独】



むかしむかし、遥か東方に
神の子孫が治める国があった。

統治者は神の血縁者=現人神のみで、
そうでない者が皇位に就くことは許されなかった。

あるとき、
代々呪術に優れる高僧の勢力が
国の乱れに乗じて台頭した。

ついには時の女帝に取り入り、
皇位簒奪を企てる者が現れた。

朝廷軍VS高僧軍の壮絶な戦いの末、
反乱は鎮圧された。

が、高僧は今わの際に、
女帝の娘の1人に呪いをかけた。


「永遠の命」という呪いを。



ーーーーー



私は宇佐見 永逢
私を見た者はみな、私を「美しい」と讃える。

けれど、私はちっとも嬉しくない。
傲慢に聞こえるだろうが、許してほしい。

いくら外見を褒められても、
私の心は空虚なまま。
なぜって?

どれだけ親しくなった人も、
私を好いてくれた人も、

数十年もすれば
みんないなくなってしまうからだ…。



父さまも母さまも、兄さまも姉さまも、
老いや病でこの世を去っていった。

私だけ取り残されていく。
老いもせず、病にもかからず、
周囲が「美しい」と讃える姿のまま。

私の中身はいったい何歳なの?
数百年が経った頃、数えるのを止めた。

「なぜ”たった数十年で”大切な人がいなくなるの?」

私の時間の感覚は、完全にマヒしていた。


ーー


私だって女の子だ。
好きな男の人と親しくなりたい。

けれど、一緒にいられるのは
長くても「たった数十年」だ。

私は別れが怖い。
好きな人との今生の別れが怖い。
必ず取り残される悲しみが怖い。

だから私を好きにならないでほしい。
私を「美しい」と讃えないでほしい。

素敵な人たちよ、
あなた方は私と違って限りある命だ。
私と過ごすような使い方をしてほしくない。

私みたいな「化け物」と過ごすなんて…。



私は自己卑下にまみれるうちに、
人を好きになれなくなった。

私が引き受けたのは、
権力闘争の果ての呪い「永遠の命」

どうして私がその対象に
選ばれなければいけなかったの?

「限りある命で好きな人と恋がしたい」

私が現人神の娘の1人というだけで、
本来”享受できたはずの幸せ”を永遠に失った。




卑屈な私から、次第に人が離れていった。

まして好意を伝えてくる異性なんて
いるはずもなかった。

私は何もかもイヤになり、
数百年前に現人神の家を飛び出した。
今、ある村の外れでひっそり暮らしている。

もう私を知る人間は1人も生きていない。
天涯孤独だ、これからもずっと。
それでいい。

こんな私を好きになる人なんて
いるはずがない。

なのに…どうして……?


ーー



『永逢さん!』
『ずっとあなたのことが好きでした!』
『僕とお付き合いしていただけませんか?』


今しがた、私に想いを伝えてきた
酔狂な青年は道永 鏡

私が住んでいる村の好青年。
歳は数えで21だったかな?

鏡は村の女性からとても人気があった。

その気になれば、私なんかより
いくらでも素晴らしい相手を選べるはずだ。

実際、私は何度か
彼が村の美人から告白されているのを
見たことがあった。

なのに、なぜ鏡はこんな暗い女を好きになったの?
私は思わず彼に尋ねた。

永逢
「嬉しいけど…。」
「こういうことは初めてだから戸惑ってる。」
「どうして私に…?」



『永逢さんの誠実さと奥ゆかしさに惚れました。』


永逢
「誠実さと…奥ゆかしさ…?」


私は自分とかけ離れたことを言われ、困惑した。


『永逢さんはいつも村の役に立とうと動いています。』
『なのに決してそれを自慢しません。』


永逢
「それは…。」


すべてを諦めた人生の暇つぶし…。
などと言えるはずがなかった。





『悩んでいる人の話を黙って聞いたり。』
『見返りを求めずに困っている人を助けたり。』
『それがちっとも恩着せがましくない。』
『永逢さんのそういう姿に惚れました。』


永逢
「…私はそんな立派な人間じゃないよ…。」



『どういうことですか?』


永逢
「私は根暗で口下手で…。」
「村の人と上手く交流できない。」
「だから村の外れで暮らしているの。」



『…だから永逢さんの家だけ、村から離れて…。』


永逢
「私は恩着せがましくないって言ってくれたけどね。」
「善意でもないし、言葉が出てこないだけ。」



『理由なんて何でもいいんです!』


永逢
「どういうこと?」



『村のみんなが永逢さんに感謝しているのは事実です。』
『人を助ける動機より、何をするかが大切だと思います。』
『それをさりげなくできるあなたが好きなんです。』


永逢
「…ありがとう…。」
「まだ心の整理がつかないの。」
「お返事、少し待ってもらえる?」



『もちろんです!何年でも待ちます!』
『それくらい僕は本気ですから!』



ーー


それ以来、私は悩みに悩んだ。

鏡が本気で私を好いてくれていることは
十分すぎるほど伝わってきた。

だが、私には寿命がない。

もし鏡と一緒になっても、
数十年後、私は孤独に戻る。

鏡には私の呪いのことを明かしていない。
こんな話、信じてもらえないだろう。

それに、もし明かしたら
鏡は私を嫌いになるかもしれない。

永逢
「…私は…ちっぽけだ…!」


自分が傷つきたくないために、
こうして言い訳ばかり並べている。
彼の想いに向き合うことすらできていない。

自己嫌悪…。

私は村で鏡と顔を合わせても、
ぎこちない態度しか取れなくなっていった。



【第2話(最終話):永遠を解く祈り】へ続く

⇒この小説のPV

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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