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2024年03月19日

【短編小説】『永遠を解く鏡』2 -最終話-

【MMD】Novel Towa Kagami SamuneSmall1.png
【MMD】Novel Towa Kagami CharacterSmall1.png

【第1話:永遠に生きる孤独】からの続き

<登場人物>
宇佐見 永逢(うさみ とわ)
 主人公(♀)、とある国の統治者の子孫

道永 鏡(みちなが きょう)
 数え年21歳(♂)
 永逢が住む村の青年
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第2話:永遠を解く祈り】



私は鏡へのぎこちない態度を
何とか直そうとした。

寿命がない私と一緒にいて
彼は幸せになれるのか?

私の呪いのことを明かしたら、
彼は私を嫌いになるかもしれない?

そんなの些細なことだ。

たった一言
「私も鏡が好き」と伝えるだけなのに…。

どうして、その言葉だけが
喉に詰まって出て来ないんだろう…?



そうこうしているうちに、
村の青年たちへ領主からの招集命令が出た。

村で「隣国との関係悪化?」という噂を聞いた。

労役?もしかしたら兵役かもしれない。
長引けば鏡は数年間、村を離れることになる。


私は鏡が出発する日、
何とか彼と会うことができた。

永逢
「ごめんね…。」



『…何がです?』


永逢
「お返事、待たせちゃって…。」



『大丈夫です!』
『むしろそれだけ考えてくれて嬉しいです。』


永逢
「私…本当は鏡のこと…。」


私がそう言いかけた瞬間、
領主の使いの者から出発の号令が響いた。


『…しばしのお別れですね…。』


永逢
「鏡…。」



『必ず帰ってきます。』
『僕の永逢さんへの気持ちは変わりません。』
『帰ってきたら返事を聞かせてください。』


永逢
「…待っ……!」


私は鏡への想いを伝えられないまま、
鏡は城下町へ旅立って行った。


ーー


ある日、1人の老人が私の家を訪ねてきた。

老人
『ごめんください、あなたが永逢さんですね?』


永逢
「そうです、どちらさまですか?」


見たことのない人だ。
最近、村へ引っ越して来たんだろうか?

老人
『私は…道永 鏡の弟です。』


永逢
「え……?!!」


鏡には歳の離れた弟がいると聞いていた。

けれど、鏡が城下町へ旅立ったとき、
弟はまだ数えで8歳くらいだったはずだ。

鏡の弟を名乗る老人は、
ボロボロの手紙を私へ差し出した。

鏡の弟
『…兄から永逢さんへの手紙です。』
『兄の遺品を整理していたら出てきました。』


手紙の日付は50年前の今日になっていた。

永逢
「遺品…?もしかして彼はもう…?」
「50年前ってどういうこと?!」


私は動揺を隠せないまま手紙を読んだ。



鏡が城下町へ招集されて間もなく
隣国との争いが激化。

鏡はそのまま兵役に就いた。

鏡はそれでも
「告白の返事をもらっていないから」と、
いつか帰れる日を信じて10年間の任務に就いた。

永逢
「…10年……?!」


が、鏡の願いもむなしく、
彼は隣国の奇襲部隊との戦闘であっけなく…。




私の全身に激しい後悔が駆け巡った。

どうして私は
1度も鏡に会いに行かなかったんだろう?

城下町には1週間も歩けば着く。

どうして私は、
たったそれだけの距離を越えないまま、
50年も放置してしまったんだろう。

どうして私は、鏡の出発の時に
想いを伝えられなかったんだろう…。



どうして「たった数十年」
みんないなくなるんだろう?




父さまも母さまも、お姉さまもお兄さまも、
想い人も……。

永逢
「……?…”たった数十年”?」


それが脳裏をよぎった瞬間、私はハッとした。
永遠の呪いに生きる私には、老いも終わりもない。

刻が止まっているのは私だけなんだ…。


ーー


私は涙でにじんだ手紙を読み進めた。

手紙の最後に、
鏡の思いの丈がしたためられていた。

  -----鏡からの手紙-----

  僕は永逢さんが
  現人神の子孫であることを知っていました。

  なぜなら、僕はあなたに呪いをかけた
  高僧の子孫だからです。


  先祖の過ちを子孫が詫びても、
  あなたを救えるなんて思いません。

  ただ、これだけは伝えさせてください。

  僕は決して、僕の先祖が
  あなたに呪いをかけた罪悪感から
  あなたに近づいたのではありません。

  あなたに許してもらうためでも、
  償いをするためでもありません。

  僕はただ、
  永逢さんという人間を好きになったんです。


  たとえ寿命が違っても、
  僕があなたを残して旅立つとしても、

  現世にいる短い間、
  大好きなあなたと生きたかったんです。

  僕はいつまでも、
  あなたをお待ちしています。

  いつか、あなたを現世に縛りつける呪いが
  解ける日が来ることを祈っています。

  あなたへ伝えた想いの返事を
  まだもらっていませんから。

  道永 鏡
  -----




あれから何百年経っただろう。
私が住む村は様変わりした。

田畑は埋め立てられ、
住宅が建ち並んでいる。

かつて幅を利かせた呪術師たちは、
”カガク”という新しい呪術に地位を奪われた。

私は宇佐見 永逢
今もこの国を統べる現人神の子孫。

私は今も永遠からの解放の道を
探し続けている。


永遠に逢えないはずの
愛しき人に逢える日を夢見て。



ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
『雪の音色に包まれて』全4話

『500年後の邂逅』全4話


⇒この小説のPV

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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