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2018年02月04日

不死鳥の大剣

ある日、森に一羽の鷹が迷い込んできました。大空を飛ぶ優美な翼は傷付き弱り果て、今にも死んでしまいそう。その姿を憐れに思った美しい小鳥は、必死に鷹の世話をしました。

美しい小鳥のおかけで、鷹は徐々に元気になりました。優々たる大きな翼に寄り添う、光輝く小さな鳥の姿は、森の動物たちの憧れの 的になりました。

傷が完全に治った鷹は、森の外へ帰ると言いました。けれど必ず戻ってくるとも。美しい小鳥は、友情の証としてその輝く羽根を一枚、鷹に与えました。

約束通り鷹は戻ってきました。その傍らに人間を連れて。「この羽根は高値で売れる。よくやった」人間は鷹を褒めると手にした大剣で小鳥を叩き殺し、その羽根を全てむし取りました。
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2018年02月03日

百獣の剣王

むかしむかしある王国に三人姉妹の王女がいました。中でも長女は世界一賢いと評判で、やがて女王となって国を治める立場に上り詰めました。

女王は国を強くする為に軍の強化を始めます。その為にお金が必要なので、民の税金を増やしました。民には稼ぎ口として、新たに建てた軍の工場で働かせました。

民は働き税金は増え軍は強くなり、軍が強くなれば工場の需要が増え民は働き税金は増え軍は強くなり民は働き――賢い女王の下で全ては計画通り効率よく進みます。

ソシテ国ヲ強クスル為ニ、我々民ハ工場デ良ク働クタメ工場デ機械ニ改造サレ、軍モ強イ機械ニ改造サレマシタ。今デモ国ハ制御システムニナッタ女王ノ下デ完璧ニ統治サレテオリマス。

2018年02月02日

双子の牙

双子の神に捧げられた幼い双子の魂が宿る武器。その刃は欠けても戻り、決して離れる事は無い。何があっても共にある事を約束された、二人で一つの美の結晶。

刃に宿った双子の魂は夢を見る。共に育ち共に大人になり共に人を好きになり共に恋に落ちる幸せな夢を見る。二人は一人。だからわたしもぼくも、おなじひとをすきになる。

わたしはわたし。ぼくはぼく。わたしをみて。ぼくをみて。わたしをすきになって。ぼくをすきになって。まねしないで。まねじゃない。

ふたりはいっしょ。しんでもいっしょ。あいてをころしてもいっしょ。ころしあってもいっしょ。ふたつのからだはひとつにもどる。おねがいだれかはなしてくださいはなして。

2018年02月01日

鉄塊

長きに渡る惰眠により鈍らと化した刀身は、その名の通りただの鉄の塊だ。血に彩られし過去は全て赤錆び、ざりざりと音を立てて剥がれていく。

不快な重みしか与えないこの塊を、誰が振るおうか。斬るのではなく肉を叩き潰すだけのその塊を、誰が好もうか。振るうほどに狂気に駆りたてるその武器を、誰が愛そうか。

眠り続ける平穏に安堵する。戦わなければ血でこの身が砥がれる事もない。このまま崩れて滅びる事も出来よう……だが、力を求める愚か者達はその安らぎを許しはしなかった。

剥がれ落ちる赤錆は鉄の涙。血と肉と脂に塗れる姿こそが呪いの証。ならば筋を斬り割こう。肉をすり潰そう。骨を砕こう。それが我が身の贖罪であるのなら。

2018年01月13日

ひのきのぼう

おきなさい おきなさい きょうはとてもたいせつなひ。〇〇〇がはじめて おしろに いくひ だったでしょ……という乱暴な母の声が聞こえる。少年はイヤイヤ布団から抜け出す。

今日は16歳の誕生日。王様に会いに行く約束の日だ。いきなりの仕事だと大変だから、と心配性の母親がヒノキで出来た棒を持たせてくれた。こんな細い棒で何が出来るのだろうか?

お城への道中、母親は僕の使命の崇高さと、今日という日がいかに大事かを延々繰り返していた。もう聞き飽きていたが、反論するとうるさいので、いつものように黙っている。

その時、お城から同い年の友達が出てきた。精悍な眼差しはまるで未来の勇者のようだ。お互い大変だよな、親の期待に応えるってのは……俺も立派な大工になれるようにがんばるよ。

2018年01月12日

エンジンブレード

広い広いお部屋。小さな王子は一人で寝ていました。
とうさま、とうさま。本当はひとりじゃこわくて眠れないの。
でも王子はがまんしました。忙しい王様を困らせたくなくて。

広い広い執務室。孤独な王は一人政務に追われていました。
本当は家族を……息子を優しく抱きしめてやりたい。
だが駄目だ。僅かな時間も、民の為にこの国を支え続けねば。

ひさしぶりの親子の夕食。父親は息子に欲しい物を問いました。
本当は、息子と二人、ゆっくりと過ごしたかったのだけど。
やがて、息子はゆっくりと、ある一振りの剣を指差します。

それは王家に伝わる剣。国を継ぐ覚悟の証。「いつかな」と呟く
父王の笑顔はどこか寂しく。王子も少しの微笑みを返し。
……本当は、一緒に絵本を読んで欲しかったのだけれど。

2018年01月11日

機械生命体の剣

過去の資料を読めば読むほど人類という種族の面白さが際立ってくる。我々機械生命体にとっては、貴重な資料となるだろう。今後は継続して記録していこう。

人類の記録をよくみると、繁殖行為と捕食行為が生命維持の重要な要素らしい。にも関わらず、それらの行為を罪深いコトとして捉える傾向があるのは何故だろう……?

今日は本を拾ってきた。調べたところ人類世界ではとても有名な本らしい。が、10回程読んでも全く理解できない。一体この文字列のどこに魅力があるのだろうか?

わかった!私には人類の……いや、世界の全てが理解できない事がようやく判明した!この世界が永遠に終わらない謎で満ちているとは、なんという素晴らしい事なんだろう!

2018年01月10日

ヨルハ制式鋼刀

こんにちは!ラジオを聞いているみんな、今日も元気かなぁ?うんうん。それじゃあ本日もボクっ娘24Dがパーソナリティを務める「モーニング☆レター」始めちゃいますね!

やあみんな!元気?うん。わかってる……昨日の掃討作戦は沢山の犠牲者が出ちゃったよね。だけどそんな時こそ残されたボク達は元気を出さなくちゃいけないんじゃないかな?

最近お便りが全然ないんだよね〜!24Dたんは悲しいぞ!ふふっ……もしかして、誰も聞いていなかったりして〜って、そんな事ないかぁ(笑)じゃあ今日も行ってみよう!

ねえ……本当にみんないる?ボクはアイドル24D。聞こえる?ぼくはアイドルだよアイドルだアイドルだアイドルだアイどるだアイドルだアイどるだアイドルダアイドルだアイドル

2018年01月09日

黒の誓約

むかしむかし、ある所に。七人の少年がいました。少年達は同じ場所で生まれましたが、兄弟ではありませんでした。でも、みんな仲良しで楽しく暮らしていました。

ある寒い夜。占い師がやってきて言いました。「お前達兄弟の中に裏切り者がいる」少年達はその占いを信じませんでしたが、翌朝になると七人のうち一人が殺されていました。

それから毎晩一人ずつ殺されていきました。明日は自分が殺されるかもしれません。少年達はお互いを疑いはじめ、誰を信じていいのかわからなくなっていきました。

6日後の朝。最後に生き残った少年が立っていました。結局誰が裏切り者だったのかはわかりません。少年は血まみれの手を見ながら「裏切り者を探しに行かなきゃ」と笑いました。

2018年01月08日

白の契約

私はいつまで戦い続けるのだろう。
この血塗られた、戦場の渦の中。

私はいつまで守り続けるのだろう。
終わる事のない、無限の戦争の中で。

私はいつまで信じ続けるのだろう。
欺瞞と虚飾に満ちた、この世界を。

私はいつまで嘘をつき続けるのだろう。
その暗い未来に、絶望し続けながら。

2018年01月07日

三式戦術刀

その職人が作る武器は飾りも無く色気も無く、おおよそ美術品としての価値は無かったが、実戦ではよく斬れると評判で、求めるものが後を絶たなかった。

ふと、職人は思った。自分は人を斬ったことはない。試し斬りはいつも豚か牛の死骸だ。だが皆はよく斬れるという。人を斬るというのは、いったいどのような手応えなのだろう。

職人は己の剣を手にして戦場に向かった。転がる死体を斬っては、あまりにもすんなりと通る刃の威力に驚いた。全くもってつまらない。もっと――もっと斬った手応えが欲しい。

かくして職人は、手応えを求めて剣に加工を施した。斬られる側の苦痛など微塵も考えず。だが、完成した剣は押し入った夜盗に奪われ、職人はその身体で設計通りの苦痛を味わった。

2018年01月06日

四◯式戦術刀

【ヨルハ技術開発部日誌:8月29日】
本日は新武装の開発進捗発表会だった。他の軌道衛星からの視察も多く期待されている事が伺える。

【ヨルハ技術開発部日誌:12月20日】
本日はコアの組み込み実験だったが想定外の不規則な出力とコア外周部のプロテクトの問題が顕在化した。

【ヨルハ技術開発部日誌:1月8日】
コアのプロテクトの解除を試みた部員3名の回路が立て続けに焼き切れた。部員の補充を申請。

【ヨルハ技術開発部日誌:1月15日】
司令部より正式な開発停止命令。本武器はコアを封印したまま正式運用が決定された。

2018年01月05日

古の覇王

ある日、少女が住んでいた村が盗賊に襲われた。少女は家族を守る為に、父が山中で拾ったという剣を手に取り、生まれて初めて人を斬った。血にまみれた娘に、家族は怯えた。

村が盗賊に襲われたのはその一回きりだった。その後十年二十年が経ち、守った家族が老いていく中で少女一人だけが年を取る事がなくなった。村人達は少女を次第に疎んでいった。

居場所のなくなった少女は村を出る。何年もの歳月をかけて放浪の旅を続け、多くの国を渡っていった。やがて少女は無類の剣豪として世に名を馳せる事になる。

無限の命と、強力な剣そして長年の知恵。力を得た少女は一国の女 王にまで上り詰め、何不自由もないように見える。だが少女は手に 入れていない。あの時欲しかった父の優しさだけは。

2018年01月04日

不死鳥の短剣

式のその日に親を殺され、愛を誓う男を殺され、それらの死骸の前で犯された娘がいた。「奴らを殺せるのなら死んでもかまわない」そう願う娘の前に光り輝く小鳥が現れた。

「叶えましょう。その剣に願い続ければきっと」小鳥は娘に短剣を授けた。娘はそれをかき抱き、涙ながらに呪詛を吐く。

時が経ち、復讐を果たした娘は老女になっていた。再び小鳥が現れる。「願いは?」そう言われても、老女には何の事だかわからない。そういえば、大事にしていた短剣はどこに?

その夜、老女の家に強盗が押し入った。娘は犯され孫は殺されてしまう。かろうじて生き延びた老女の前で光り輝く小鳥が再び問う。「今度はいつまで憎んでいられますか?」

2018年01月03日

百獣の剣

むかしむかしある王国に三人姉妹の王女がいました。三姉妹の二女は賢くはないけど世界一美しいと評判で、隣国の王の下へと嫁ぎました。

隣国の王は二女の美しさをこの上なく愛しました。毎日六回は新しいドレスに着替えさせ、毎日八回は新しい花を贈ります。愛される喜びに、二女の美貌は輝きを増していきました。

王の為にも美しくありたいと願う二女は、ありとあらゆる方法で美の技を求めます。しかし永遠に美を保つ術だけは手にできません。そんなある日、二女は妙案を思いつきました。

二女は自らをはく製とし、永遠の美となることを選びました。王は涙を流して感動します。二年後、隣国に戦が起こり、はく製は瓦礫に押し潰されてぐちゃぐちゃとなりました。
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