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2018年04月01日

天使の聖翼

昔、天使に憧れた悪魔がいた。神のみもとに仕えることを夢見ては、叶わぬ想いに身を焦がす。いつしか悪魔は、より天に近い人の世に姿を現すようになっていた。

人の世に現れた悪魔を倒すべく、一人の天使が遣わされた。神の使いに出会えた悪魔は歓喜の涙を流しつつ、己が想いを打ち明ける。どうか私に白い翼を下さい、と。

天使は悪魔の願いを聞き入れ、白い翼を与える約束をした。ただし、他の悪魔の首と引き換えに。喜び勇んだ悪魔は仲間を殺し、その手で首を狩り取った。

天使は悪魔を天の国へと導いた。そして数百年に及ぶ拷問にかけ、徐々に意識を奪い、悪魔すら恐怖するその仕打ちで、約束通り黒い翼を白くした。
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2018年03月09日

機械生命体の槍

僕ノ名前はプラトン1728。僕ア、出来損ナイの機械ダ。戦ウ為ニ作られたノニ怖クテ武器を使エナイんだ。ミンナには馬鹿にサレルし生イキテテもイイ事はナイ。

僕ア、ノロマな機械ダ。戦場で迷ッテシマイ何かの工場ニ迷い込ンダ。ソコには廃棄サレタ小さな人形が沢山イタ。コノ世界に居場所ガナイ物同士ダトオモッタ。

僕ア、間抜けナ機械ダ。ソノ日の戦場は例ノ工場ダッタ。そこに横タワル人形はドレもコレも壊レテイタ。仲間達と敵ハ、人形を踏ミナガラ戦争、戦争、戦争をシテイル。

僕ア、武器を起動サセテその場にいる仲間と敵ニ砲撃ヲ開始シタ。何故かは良くワカラナイ。ダケド、戦うッテ決メタンダ。ダッテ僕ア、愚カデ壊れた機械ダカラ。

2018年03月08日

黒の倨倣

その黒く醜い槍を作ったのは、美しい女刀鍛冶だった。その刃先を誰もが褒め称えたが、嫉妬した若い弟子の少年によって女は殺された。槍の行方は誰にも判らなくなったと言う。

二番目の持ち主は人形を操る傀儡子だった。彼の最高傑作は美しく何でも出来る少女のからくり人形。傀儡子が人形に槍を持たせると、見事な槍さばきで傀儡子を切り刻んだ。

三番目の持ち主は生まれたばかりの王子。後継者の証として槍を与えられた女城主は、その後すぐに亡くなってしまう。葬儀の夜、王子の部屋から槍は消え、赤子の遺体だけが残っていた。

四番目の持ち主は愚直な父親だった。父親には病の娘がおり、彼女の為なら何でもする覚悟があった。やがて父親は、その決意のままに全てを捧げた。彼の存在と、この世界の全てを。

2018年03月07日

白の矜持

その白く美しい槍を作らせたのはある国の暴君だった。美しい妻への贈り物として装飾された武器。妻は暴君と共に寝所に赴き、親の仇である暴君の腹を三十回槍で突き刺した。

二番目の持ち主は勇猛なる女戦士だった。彼女は何人もの野盗を斬り殺し、英雄となり、街の長となり、年月を経て老婆となり、月の夜に若い野盗に囲まれ、全てを奪われ、殺された。

三番目の持ち主は商売人の女だった。彼女は強欲で、人から金を奪うように生きていたが、やがて誰も近づかなくなり首を吊る事になる。飾られていた槍は一度も使われることはなかった。

四番目の持ち主は素直な少年だった。少年には病の妹がおり、彼女の為なら何でもするつもりだった。やがて少年は妹の為に全てを捧げた。彼の存在、そしてこの世界の全てを。

2018年03月06日

三式戦術槍

飾り気のない槍は、機械のように正確に急所を貫いては、鈍い刃で相手の骨を削り取る。その際に鳴るごりごりとした音とありえない程の苦痛の悲鳴を、傭兵の女はとても好んでいた。

今日も今日とて至上の音楽を聴く為に、女は戦場を駆け巡る。あの巨漢は脂肪がブルブルと鳴りそうだ。ああ、あの痩身は程良い骨の音を鳴らすだろう。さて誰から貫こう?

いくつもの戦場を渡り歩いて、いくつもの体を貫いて。理想とする叫びと骨の音を求めた女は、いつしか疲れ果てていた。ちょうど良い塩梅に、柔らかい肉と骨はないものか。

ふと、横を見ると丁度良い肉の塊が転がっていた。切り刻むと心地良い悲鳴を上げて女を満足させる。充実した笑顔で空を見上げた。それが我が子である事は、もう思い出せなかった。

2018年03月05日

四◯式戦術槍

ハーイ!ヨルハ部隊のアイドル!北部12C防衛本部の広報担当42Sでーす!今日からガンガン戦況を報告しちゃうから、ヨルハ部隊のみんながんばってくださいね!

戦場の皆さん!いつも放送を聞いてくれてありがとう!戦況は決して楽観視は出来ないけれど、衛星軌道基地群からの増援も予定されているから絶対に諦めないでくださいね!人類に栄光あれ!

こちら北部12C防衛本部!!誰か!誰かこの放送を聞いていませんか!?僕は広報担当の42S!現在、私達の本部施設が多数の機械生命体に囲まれて……

【このチャンネルは現在放送されておりません】

2018年03月04日

王位簒奪者の槍

ある国に2人の王子がいた。第一王妃の子は賢いが体が弱く陰鬱で、第二王妃の子は頭は悪いが明るく武勇に優れていた。

どちらの王子が正式な後継者か。王はその決定を下さぬままに戦で命を落としてしまう。残された王子たちは当然のごとく継承権を主張し合い、民を巻き込んで対立した。

醜い王位争いの中、王の子を名乗る第三の王子が現れた。それは知勇兼備で王として申し分のない青年。青年は愚かな兄たちを屠ると王位に就き、以降は名君として名を馳せた。

数十年後。王は亡くなる間際に民に告げる。自分は前王の子ではなく、ある貴族が仕立てた貧民の子であると。それを聞いた民衆は、王でなくなったその男を吊るし首にした。

2018年03月03日

草原の竜騎槍

ボクは夢を見ていた。カレと会った日の事を。
カレは、小さく弱かった。
ボクも、世界が嫌いだった。

ボクはカレを助けた。
カレもボクを助けた。
気づくとボク達は友達になっていた。

もちろん、全部が上手くいった訳じゃない。
きっとどこかで間違えていたんだろう
それでも、ボク達は友達だった。

この草原の風は青く、イイ匂いがする。
カレに頬を寄せると、くすぐったそうに身を捩る。
ボクは羽を広げ、カレを乗せて大空に舞い上がった。

2018年03月02日

百獣の双槍

むかしむかしある王国に三人姉妹の王女がいました。三女は世界一醜いと評判でしたが、とても心の優しい少女でした。

人の役に立ちたいと願う三女は野に下り、民に救いの手を差し伸べます。けれど、その手は弾かれ好意を受け取って貰える事はありません。それどころか人々は少女を疎み遠ざけます。

三女が拒まれるのは醜いからだと、ある人が言いました。しかし少女は自分の尽くす心が足りないからだと思い、毎日無償で奉仕を続けました。毎日毎日毎日毎日――

ある日、三女は路地裏で小さくなって死んでいました。けれどその遺体の醜さゆえに誰も葬ろうとはしてくれません。醜い少女は醜く腐ってそのまま土に帰りました。

2018年03月01日

不死鳥の槍

とある戦士の伝説があった。その戦士は屈強で何者にも劣ることなく、さらに不死鳥から不老不死の体を授かったという。戦士は力を振るう場所を求め、何十年も戦場をさすらった。

止まることのない争いは、やがて戦士を孤独にした。死ねない体を持て余した戦士は、手にした槍で何度も己を貫いた。しかし傷はたちどころに癒え、痕すら残すことは無い。

崖から身を落とし、火の中に飛び込み、濁流に身を投げても、その身は滅びることはない。いつしか戦士は意識を閉じた。そして数百年の後、その傍に一羽の美しい小鳥が舞い降りた。

小鳥は言う「貴方の罪は償われた。永遠の不死がもたらす孤独から救って欲しいのならそうしてやる」。戦士は涙を流し、神に感謝の言葉を述べ、それから小鳥を踏み殺した。

2018年02月09日

機械生命体の斧

ヒトは何故争うノダロウか?

ヒトは何故恋をするのだろうウカ?

ひトはナゼ集うノだろうか?

君は何故、生きているのだろうか?

2018年02月08日

黒の血盟

あの人に触れ合った時の事は忘れない。
この恋が永遠であるという確信。

あの人の側にいても、あの人の気持ちを判らず。
苦しくて、苦しくて。

あの人の近くにいれば、あの人を傷つける。
あの人から離れても、あの人を傷つける。

……ようやく、私の場所を見つけた。
あの人に最も近くて、永遠のように遠いこの場所を。

2018年02月07日

白の約定

アガ オモイビト ハジメテ フレアウ

アガ オモイビト ココロ ツカメズ

アガ オモイビト トオク サリテ

アガ オモイビト ソノ シ デ エイエン ナル

2018年02月06日

三式斬機刀

その大剣は、斬った相手に苦痛を与えると評判だった。だから男はどんなに重かろうとそれを背負った。恐怖を誇示することで無用な争いを避けようと考えていたからだ。

戦わずとも男の名声は村中に轟いた。「あの恐ろしい剣を抜かせるな」と皆が囁き合っていたからだ。己の思った通りの結果に男は心の中でほくそ笑み、恐怖こそが平和を作ると考えた。

男は同じような武器を職人に作らせ、他の者にも持たせた。そうすることで互いに互いを牽制し、話し合いで争いを解決させようと目論んだのだ。男の策は上手くいった……途中までは。

恐怖による牽制は、睨み合いでこそ威力を発揮する。では、誰かが使ったら――答えは簡単だ。一夜にしてその村は死ぬよりつらい苦痛の叫びで満ち溢れ、この世の地獄と化したという。

2018年02月05日

四◯式斬機刀

開発日誌:0504 タカダ
凄い事を思いついた。このアイデアは誰も実現出来ていない。明日からさっそくテストしよう。

開発日誌:0704 タカダ
金属と魔素の合金を作るというアイデアは部長に却下された。部長はわかってない。これがどれくらいの金になるかを……

開発日誌:1201 タカダ
進捗状況が思わしくない。ストレスのせいか、最近髪がよく抜ける。早く開発を成功させなければ。

開発日誌;1215 フジタ
データを確認したが問題を発見できない。だが諦めない。タカダさん亡き今、受け継ぐのは自分しかいないのだから……
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