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2019年04月05日
2019年04月04日
虚妄の意思
傷つくことを恐れ、行動に移すことが出来ない日々。青白く光るモニターに毒づいても、真実は変わらない。
自分でない誰かに憧れる。
それはとても自然で、誰の心にもある当たり前の感情。
ふとした時に映る自分の顔は嫌いだ。
鏡の前に映る間抜けで臆病な姿こそ、
他人に映る本当の自分なのに。
目的のない日々にはもう慣れた。
だが、この胸にある何かが欠けたような喪失感は何なのだろう……?
2019年04月03日
卑劣の意思
視覚を遮ると他の感覚が鋭くなるからね。
目、つぶりな。天国に連れてってやるよ。
油断した相手の胸を一突き。体格差なんてものは頭脳の前にはあってないようなものさ。
頭を失った組織なんて脆いものさ。
そう簡単に頭になれる器など現れない。
瓦解した組を掃討したシンデレラはあざ笑う。
「……あと、3つだ。」
2019年04月02日
正義の意思
2019年04月01日
束縛の意思
2019年03月12日
愛用の鍋
ヨナね とくべつなレシピをおべんきょうしたの!
これをたべたら どんなけがでも なおっちゃうんだって。
みんなも たいせつなひとに つくってあげてね!
よういするものは しかのおにく ウミガメのたまご
おにわでとれた しんせんなおやさいと やくそう
あとはさいごに さそりのつめを たくさんいれます!
おなべのなかに あつめたものを ぜんぶいれたら
あとは ふたをして よるがくるまで にこみます!
しろいゆげをみてると なんだか うっとりしてきちゃう。
……………………………………あっ! もうこんなじかん!
ふたをとって ふわっと かおりがたったら かんせい!
はやくおにいちゃんに たべさせてあげたいなぁ。
2019年03月11日
侘寂
『掟0:気に入らない掟は、住民投票で変える事が出来る』
私は王の側近、副官であります。今まで掟は絶対的なものでしたが、変えたい掟に一票を投ずる 『投票の儀』を行うこととなりました。さて、投票箱にはどんな意見が来ているのか……
『掟451:昼間から飲酒をしてはならない』
変えたい理由の欄には、お酒が好きだから……やはり匿名の投票では、このような私利私欲を満たすだけの意見も見受けられますな。もっと民意を反映できる仕組みに改善しなくては。
『掟356:王の館への謁見は、1日に1度までとする』
変えたい理由は、もっと王と一緒に居たいから……?これはもしやフィーアが……いやいや、あの真面目な娘に限ってこのような惚気た意見は出しますまい。ひとまず、次の意見を……
『掟68:王の側近は、常に王の傍らで奉仕すること』
理由の欄には、いつもありがとう。たまには休んでくれ……まさか王が投票を?長年従事した身として感激ですぞ。民も私の働きを見ているはず。賛同してくれるに違いありません。
※厳正な審議の結果、今回は投票の多かった『掟451:昼間から飲酒をしてはならない』が廃止されることとなった。
2019年03月10日
不浄なる斧
夜の闇を焼くように、劫火が家を包み込んでいる。少年はかろうじて家から逃げおおせたが、父も母も兄弟も、大切なものはすべて炎とともに消え去った。少年に残されたのは、家に火をかけた野盗が打ち捨てていった1本の戦斧と、身体中に這う火傷の痕だけだった。なぜ自分だけがこんな目に遭うのかと、少年は自身の不遇を呪いながら、火傷が癒えるのを待ち続けた。
数年後、少年は青年へと成長した。しかし火傷の痕は悪化する一方で、どんな良薬を使っても回復の兆しは見られない。傷痕に湧いた蛆を削ぎ落すたび、鬱屈とした感情と痛みが走る。この苦痛を少しでも紛うわそうと、青年はある傭兵団に入った。戦いの中、殺戮の瞬間だけは痛みを忘れられることに気づいた青年は、ようやく苦痛から逃れる方法が見つかったと喜んだ。
隣国間の紛争に参加した傭兵団は、敵国の村を蹂躙した。青年は火傷の痛みを狂気で塗り潰すかのように、自身の不遇を他者にも強要するかのように、戦斧を振るう。一軒の民家に押し入った青年は、命乞いする父親の頭を断ち割り、嬲るうちに息絶えた母親の身体を弄り続け、燃え盛る炉に赤子を投げ入れた。青年にとっては、火傷の痛みを忘れられる唯一の時間だった。
殺戮を愉しんだ青年は、もう用はないとばかりに、死体の転がる部屋に火をかける。青年が民家から出ると、炎に巻かれる家を見つめて泣く少女がいた。その姿を見た刹那、幼き日の自分からすべてを奪った劫火の記憶と、激しい火傷の痛みが青年を貫く。この苦しみから解放される本当の方法を悟った青年は、自らの身体に火を放つと、血塗られた戦斧を少女に手渡した。
2019年03月09日
不死鳥の槍
男は愛する妻のため戦場へと赴く。戦火の中、男は胸を貫かれ腹を斬り裂かれても、決して膝をつくことはない。彼は不死の体を持つ戦士だった。不死でもなければ、体躯にも腕力にも恵まれない男がここまで生き延びることもなかっただろう。
男が不死の体となったのは、一羽の美しい小鳥に出会ったあの日からだった。妻を一途に想う男に心打たれ、小鳥は自らの羽根を一枚差し出しながら言う。「この羽根を身に着けている限り、あなたは愛する人と寄り添えるでしょう」
ひとつ戦争が終わるたび、男はその報酬を手に妻と暮らす故郷の村へと帰る。妻に着飾らせてやることもできない、裕福とは程遠い暮らし。それでも、最愛の妻と一緒に暮らせることが彼にとっての生き甲斐だった。
男は愛する妻のため戦場へと赴く。戦火の中、男は胸を貫かれ腹を切り裂かれ、そして絶命した。その日、故郷の村では、男が肌身離さず大切にしていたはずの美しい羽根を、商人に売りつける妻の姿があった。
2019年03月08日
迷宮の歌
人々が教会で祈りを捧げていました。彼らの視線の先には、牛の頭を模した不気味な石像が鎮座しています。会堂に立ち込める厳粛な空気。それは神に捧げる生贄を決めるための、祈りの時間でした。長い沈黙を破り、司祭は神のお告げを伝えます。生贄に選ばれたのは物静かな少女でした。司祭に導かれ教会の奥へ消えていった少女の目からは、涙がこぼれていました。
人々が去った後の静まり返った教会に、少年が呆然と立ち尽くしています。少年は生贄に選ばれた少女の幼馴染であり、密かな恋心を抱いていました。いつも内気な少女のことを、少年はずっと見守ってきたつもりです。そして、自分だけに見せてくれる少女のくだけた笑顔は、少年の宝物でした。少年は周りに誰もいないことを確かめて、教会の奥へと踏み出します。
薄暗い廊下の奥で、少年はひとつだけ明りの灯る部屋を見つけました。中を覗き込むと、少女がひとりで泣いています。少年は少女の手を引き、教会から走って逃げ出しました。もう大丈夫だよ、これからもずっと一緒にいよう。肩を震わせながら泣き続ける少女に、少年は優しく声を掛けました。しかし少女はその言葉には答えず、うつむいたまま何かを呟いています。
少女の声は次第に大きくなって、やがて叫びに変わりました。「ああ神さま!やっとあたしを選んでくれた!このあたしを!もっと愛して!もットもットもぉットォォぉォォぉぉぉォ!」少女は感涙にむせびながら、隠し持っていた鋭利な牛の角を自らの胸に突き刺しました。少女の血を吸い赤く染まったその角は、まるで命を持ったかのように、妖艶に輝いていました。
2019年03月07日
百獣の双槍
2019年03月06日
鉄塊
とある荒野より発掘されたその剣は、
剣と呼ぶには余りに大きい代物だった。
戦闘に使うには重く、儀礼用にしては武骨過ぎる。
考古学者たちは、この剣の意義が分からなかった。
その剣が出土した地層と、同じ時代の文献を調べると、
この剣に関する逸話が見付かった。
どうやうこの剣の持ち主であった騎士は、
たった一人で、争う二国を二つとも滅ぼしたと言う。
この剣の材質を調べてみると、驚くことに、
鉄以外に、人間の骨や血の成分が含まれていた。
考古学者たちは、戦死者の装備や遺体から作られた、
戦争の戒めを目的として作られた物だろうと考えた。
戦争が起きて、考古学者たちは逸話が真実であると知る。
剣を保管していた倉庫に、文献にある騎士が現れたのだ。
騎士の正体、それは剣に宿る数多の怨霊の群れ。
彼等は戦争を繰り返す愚かな生者を、決して赦さない。
2019年03月05日
デボル&ポポルの杖
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ポポルさんへ
スープのつくりかたをおしえてくれてありがとう!おかあさんすっごくよろこんでくれました!
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村の子供から手渡された一枚の紙切れ。これは彼らが自我を持ち始めたことと関係があるのだろうか。
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ポポルさんへ
ポポルさんがくれた薬のおかげで、だいぶ楽になりました。まだ家の外には出れないけど、お礼だけさせてください。
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記録によれば、人間は感情を紙に書きつづり、他者に伝えていたようだ。彼らはどこで「それ」を学習したのだろう。
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ポポルさんへ
あなたのことが好きです。もしよかったら、僕と付き合ってもらえませんか?お返事待っています。
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彼らが紙切れに込めたモノを、私は少しも理解できない。それなのに、この胸に感じる違和感は一体、何なのだろう……
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ポポルへ
書置きですまない。今日は帰りが遅くなりそうなんだ。先に寝ていてくれ。
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もう、デボルったら。私にそんな気を使わなくてもいいのに。うふふ。
2019年03月04日
ハルアヘッド
今度連れてこられるのは、双子らしい。
白い壁と白いベッド、それ以外には何もない、まるで牢屋だ。
少しでも気晴らしになるものがあればいいのだが……
<ファイル_25_12:定期記録>
様子を見に行くと、姉は不安がる弟を優しく励ましていた。
それは、たった二人で耐えるにはあまりにも重い役割だ。
彼らが背負うものは、人類の希望とも等しいのだから。
<ファイル_26_06:定期記録>
実験が決行される日、その姉から手紙を渡された。
彼女は最後まで弟の安全を願っていた。
その願いを引き受けると、彼女は足早に去っていった。
<報告書:生体兵器開発について>
被験体(姉)の経過は順調に思われたが、容態が急変。
現状自我にあたるものは確認できていない。早急に被験体(弟)への作業に着手する。