まだだ!!まだ終わらんよ!!
・・・と言う訳で、月曜日。半分の月がのぼる空二次創作の日です。
今回からの話は、昔書きかけで放棄した一次創作の作品を元にしています。
だからいささか、これまでとは違った作風になってるかもしれませんが、どうぞ御了承ください。
・・・しかし、大概追い込まれてんなww我ながらwww
あ、あと最後に一つ。
前にも言いましたが・・・好きなんですよ・・・怪異譚。
それではコメントレス。
お疲れさまです。
どうもですーm(_ _)m
今作は原作の内容が少し入っていて、また読もうかなと思う内容でした。
里香が風邪を引いて人恋しい感じになったなった後の最終的な里香が裕一の部屋で子守唄を歌っているシーンがすごくいいと思いました。
次回もがんばってください。
ありがとうございます。楽しんでいただけてる様で、光栄の極みです。
今後も、何とか弾の装填が続く様に頑張りますです。
デレた素直な里香・・・・・最高ですよねwww
・・・同士よ!!
半分の月がのぼる空―looking up at the half‐moon (電撃文庫) 新品価格 |
―蛍煌―
―1―
暗い・・・。
とても暗い場所に、あたしは立っていた。
ここは、何処なのだろう。
辺りを見回す。
何もない。
誰もいない。
皆はどこに行ったのだろう。
たった今まで、近くで騒いでいた筈なのに。
彼は・・・?
ふと気付く。
いつもそばにいてくれる筈の、彼の姿も見えない。
「裕一・・・?」
周囲の闇に呼びかける。
だけど、返事はない。
だんだんと湧き上がってくる、不安。
もう一度、今度は大きな声で呼んでみようとしたその時―
おいで・・・。
声が、聞こえた。
おいで・・・。
おいで・・・。
・・・どこかで、誰かが呼んでいた。
おいで・・・。
おいで・・・。
闇の中、どこからともなく、聞こえてくる声。
それはとても優しく、そして甘い。
おいで・・・。
おいで・・・。
その声が、呼んでいる。
呼ばれている。
ああ、行かなくちゃ。
なんの疑問もなく、そう思った。
呼びかけられるまま、“そこ”に向かう。
おいで・・・。
おいで・・・。
声が呼ぶ
甘い響き。
誘う、声。
誘われるまま、あたしは歩く。
おいで・・・。
おいで・・・。
どれ程、歩いただろう。
いつしかあたしは、一つの棺の前に立っていた。
それは、水の様に透き通った、ガラスの棺。
透して見えるその中には、何もない。
けれど―
おいで・・・。
その“声”は、その棺の中から聞こえていた。
おいで・・・。
おいで・・・。
さぁ、おいで・・・。
呼ばれるまま、あたしは棺に近づく。
蓋を開けようと手を伸ばしたとき、その上に何かが乗っているのに気付いた。
見れば、それは小さな揺り籠だった。
中を覗くと、小さな、とても小さな赤ちゃんが、スヤスヤと寝息をたてていた。
おいで・・・
おいで・・・
相変わらず、声はあたしを呼び続ける。
だけど、それに答えるには、棺の蓋を開けなきゃならない。
蓋を開けるためには、揺りかごをどかさなきゃならない。
揺りかごを動かせば、きっと赤ちゃんは起きてしまう。
だから、あたしは蓋を開けられない。
おいで・・・
おいで・・・
響く声を聞きながら、あたしは一人、暗闇の中で立ちつくしていた―
「おい、里香!?里香!?」
自分の名を呼ぶ声に、あたしはハッと目を覚ました。
見れば、“彼”が心配そうにあたしの顔を覗き込んでいた。
「裕一・・・?あれ・・・?」
辺りを見回す。
見慣れない、カーキ色一色の風景。
ここは、何処だっけ。
「何かうなされてたぞ。大丈夫か?」
「裕一・・・あたし・・・。」
横たわったまま、ボーッとしているあたしの頭を、裕一の手がクシャッと撫でる。
「おい、ホントに大丈夫か?」
クシャクシャと、頭を撫でる手。日に炙られたのか、いつもよりも少し強い熱感を伴ったそれが、徐々にあたしの意識をはっきりさせていく。
ああ、そうか。ここは・・・
カーキ色の壁が、ジャッという音を立てて開いた。
そこから、一人の女の子が顔を覗かせる。
「裕ちゃん、里香、大丈夫?」
女の子―みゆきちゃんは、心配げにそんな事を言いながら、裕一の肩越しにあたしの顔を覗きこんできた。
開いたカーキ色の壁―テントの入り口からは、世古口くんと山西くんが、みゆきちゃんと同じ様な目であたしを見ている。
―ああ、そうか。ここは―
「あ、ん、大丈夫。ちょっと、変な夢見てただけ。」
あたしはそう言って、ニコリと笑って見せた。
ここは町の郊外にある、小さなキャンプ場。
夏休みの始め、山西くんが受験勉強が本格化する前に、何か高校生活最後の思い出を作ろうと言い出して(もっとも、裕一曰く、単に現実逃避したいだけだろうという事だったけど。)、それに裕一やあたし、みゆきちゃんや世古口くんも誘われた。
司くんやみゆきちゃんも思いは同じだった様で、二つ返事で了承した。もちろんあたしも異論はなかった。裕一はあたしの事を心配してか、今一つ乗り気ではなかったけれど、あたしが行きたいと詰め寄ると、渋々と頷いた。
内容は、皆で都合出来るお金の都合から、フリーサイトのキャンプに決定。
後は、男性陣が近場で手頃なキャンプ場を探した。
裕一が出来る限り町に近い方が良いと主張し(たぶん、万が一の事を考えて。)、町からバスで30分程度の山の麓にあるこの場所が決まった。
一番の問題はあたしだったのだけれど、それも決して無理をしないという条件付で病院から許可がもらえた。
許可をもらいに行った日、偶然谷崎さんに会ったら、
「なになに?一緒にキャンプだって?いいねぇ〜。若い者は。一応言っとくけど、“ほどほど”にしときなよ?」
などと言われて、ククク、と笑われた。
一体、何が“ほどほど”なのだろうか?
一緒に来ていた裕一に、「何の事だろうね」と訊くと、急に真っ赤になって「さ、さぁ・・・?」と顔を逸らされた。
ホントに、何の事だったのだろう。
そして待望のキャンプ初日、皆でテントを張り終わった時点であたしがダウンし、今に至るという訳だった。
「・・・ちょっと、はしゃぎ過ぎだぞ。お前。」
そう言って、裕一は横になっているあたしの傍らに腰を下ろした。
声音が、少し怒っていた。
「・・・ごめん。」
裕一の言うとおりなので、ここは素直に謝っておく。
「今後は、ちゃんとセーブする事!!」
「・・・はい。」
「今度具合悪くなったら、オレ達だけで帰るからな!?」
「えー・・・」
「からな!?」
「・・・はい。」
どうも事が事だけに、裕一に頭が上がらない。
何という屈辱。
この借りは、いつか必ず返してやろう。
ネチネチと続く裕一の小言を聞きながら、あたしはこっそりそう決意した。
「じゃあ、オレ、晩飯の準備手伝ってくるから。」
そう言って、裕一は腰を上げた。
「具合悪くなったら、すぐ呼ぶんだぞ?」
「うん。」
「我慢するなよ?」
「うん。」
「ホントだぞ?」
「分かったってば!!」
あたしが怒鳴ると、裕一はこっちを気にしいしい、外に出て行った。
「まったく・・・」
かけられていたタオルケットを直して、あたしはまた横になる。
さっきまでの不調はもう消えていたけれど、今は少し慎重になった方が良いだろう。
無理をして、このままとんぼ返りなんてなったら、それこそ身も蓋もない。
外からは、皆が夕食の準備をする音と、楽しげな声が聞こえてくる。
「・・・いいな。」
ポソリと、そんな言葉が漏れた。
こんな時、正直自分の身体が煩わしく思える事がある。
皆と同じ事をして、だけど皆と同じ様には出来ない。
それがとても煩わしくて、悔しい。
入院していた頃は、こんな事を思う事はなかった。
理由は簡単。
あたしが、あの世界しか知らなかったから。
白一色の部屋。何も変わらず、淡々と過ぎる日々。
その区切られた世界の一部として、存在する意味もなく、ユラユラと揺らぎながら生きていたあの頃。
あたしは全てを諦観し、悟りきった気になっていた。
だけど、あたしは知った。
この世界の本当の色を。日々色を変えていく、この世界の美しさを。
そしてそれは、耐え難い衝動となって、今のあたしの中にある。
もっと知りたい。
もっと感じていたい。
世の中を。この世界を。
望めば望むほど、もどかしく思う、この身体。
けど、どうにもならない、この身体。
ふと、テントの隙間から外を見る。
チラリと見える、"彼"の姿。
あたしに、この世界の色を教えてくれた人。
あたしに、この世界にいる意味を与えてくれた人。
だけどこんな時、その存在がひどく遠くに思える事がある。
明るい日の下にいる彼と、薄暗いテントの中のあたし。
それはそのまま、彼とあたしの住む世界の違い。
こんな事を言ったら、彼は怒るかもしれない。いや、間違いなく怒るだろう。
でも、今のあたしにはその想いを振り払う事は出来なかった。
外から聞こえる彼らの声を遮る様に、あたしはタオルケットの中に顔を埋めた。
続く